技術・家庭科における安全指導の工夫

技術・家庭科における安全指導の工夫
技術・家庭科における安全指導の工夫
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すぐに活用できる技術・家庭科安全ハンドブックの作成
──
技術・家庭科研究会議
研究員
指導主事
Ⅰ
矢澤
匡彦
(川崎市立麻生中学校)
田中
伸英
(川崎市立西中原中学校)
山口三枝子
(川崎市立井田中学校)
濵
晴奈
(川崎市立野川中学校)
布川
広
野田
まなみ
主題設定の理由
技術・家庭科では、「生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技術の習得を通して、生活と技術と
のかかわりについて理解を深め、進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度を育てる。」ことを
目標としている。技術・家庭科は、実践的・体験的な活動を通して学習するものであり、生活に必要
な基礎的な知識や技術は、手や体を使って実習を行い、体験・経験する活動を通して自らが習得する
ものである。
平成 20 年1月の中央教育審議会答申においては、教育課程の改善の基本方針が示され、技術・家庭
科においても、
「その課題を踏まえ、実践的・体験的な学習活動を通して、家族と家庭の役割、生活に
必要な衣、食、住、情報、産業等についての基礎的な理解と技能を養うとともに、それらを活用して
課題を解決するために工夫し創造できる能力と実践的な態度の育成を一層重視する観点から、その内
容の改善を図る。その際、他教科等との連携を図り、社会において子どもたちが自立的に生きる基礎
を培うことを特に重視する。」とし、新しい学習指導要領における技術・家庭科の学習でも、より一層
実践的・体験的な学習活動や課題を解決する学習に重きを置くことを求められている。
実践的・体験的な学習活動や課題を解決する学習を展開するためには、学習のねらいに迫るための
題材の工夫のみならず、教材や使用用具の準備、教室等の学習環境の整備等が必要不可欠である。特
に、実習を伴った学習を進めるに当たり、生徒の生活環境や生活習慣、生活体験等には個人差があり、
今まで「当たり前」であったことが「当たり前でない」ということがしばしば見受けられる。そのた
め、慣れない用具や工具を使用する場合に、思いがけない事故やけがにつながることが予想される。
また、新しい学習指導要領において学習する内容すべてが必修となったことで、教師が授業の展開を
考える上で、事故やけがに配慮すべき項目が増加している。
そこで、題材のねらいを明確にもち、学校や子どもの実態に応じて実践的・体験的な活動が効果的
に行えるよう日頃からの学習環境の整備や安全点検を実施しなければならない。これは、家庭分野の
食品衛生管理、教材の安全な管理面からも必要である。また、生徒一人一人についても安全に対する
意識や配慮に気付かせ、日々繰り返し指導していくことが重要であると考える。
また、実習の指導に当たっては、施設・設備の安全管理に配慮しながら学習環境を整備するととも
に、火気、用具、材料などの取扱いに注意して事故防止の指導を徹底しなければならない。特に、実
習、観察、実験、見学、調査・研究などの指導においては、機器類、刃物類、引火性液体、電気、ガ
ス、火気などを扱って実習する機会が多いため、安全の保持に十分留意して学習指導を行う必要があ
る。そして、機器類を扱う際には、取扱説明書等に基づき適切な使用方法を遵守させるなど、事
故防止に万全の注意を払うとともに安全管理及び安全指導について十分留意が必要となってい
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る。
よって、本研究では全教職員が日々安全と衛生に十分留意するためには、技術室(木工室、金工室)、
家庭科室(被服室、調理室)、パソコン教室において常に安全・衛生管理に配慮した施設・設備を工夫
していく意識をもつことが大切であると考え、本主題を設定した。
Ⅱ
研究の内容
1
研究のねらい
本研究会議では、「はじめて技術・家庭科の授業を行う教師でも、安全と衛生に十分配慮して事故
防止に努めた学習活動が展開できる」ことをねらいとして、「中学校技術・家庭科安全ハンドブック」
の作成をすることとした。
2
研究の進め方と内容
(1) 研究の進め方
前回の平成 16 年度版「中学校技術・家庭科安全ハンドブック」が発行されてから7年が経過し、
平成 20 年改訂の学習指導要領も平成 24 年度から全面実施となり、技術・家庭科の学習もより実践的、
体験的な学習活動が求められている。今回の安全ハンドブックの作成に当たっては、あまり内容を盛
り込みすぎず、各内容の見直しとともに、ポイントを絞ったものになるよう工夫した。また、作成に
当たっては、技術分野と家庭分野とにそれぞれ分け、内容ごとに研究を進めた。技術・家庭科は、使
用(管理する)教室も多く、技術室(木工室、金工室)、パソコン室、家庭科室(被服室、調理室)
がある。また、学校によっては、技術分野、家庭分野のどちらかが、あるいは両分野とも非常勤講師
等というところも少なくはない。
そこで、どちらの分野における教師でも、わかりやすい内容となるよう努めることとし、次の4つ
の視点を考え、ハンドブックをまとめることとした。また、平成 24 年度より全面実施される学習指導
要領の内容に則した内容としている。
①
安全指導と事故防止
②
技術・家庭科教室の整備
③
学習内容ごとの安全指導
④
イラストや写真で具体例を図示
(2)研究の実際
① 学習指導要領の内容に則した安全指導
平成 24 年度に全面実施される学習指導要領における、安全指導の内容について抜粋し、わかりや
すく明示した。
② 教師の側に立ったハンドブックの作成
今回の「中学校技術・家庭科安全ハンドブック」は、指導者の側にスタンスを置き、個々の道具
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や工具の安全で正しい使い方は最小限とし、
「安全・衛生管理に配慮した学習環境をどう整えるか」、
「生徒の安全指導と事故防止をどう図るのか」、
「実習や実験、観察などの活動を行う際に、生徒の
基礎的・基本的な技能や知識をどう押さえるか」にポイントを絞った。
③ 技術・家庭科の教室を使用する側に立った内容
使用する者にとってイラストや実際の教室等の写真などを掲載し、誰もがわかりやすく使いやす
い内容になるように努めた。研究メンバーが、実際の授業での様子や自校での授業時の体験、地区
研究会等での他校の公開授業などで、工夫した事例などを持ち寄りながら、よりわかりやすい内容
にした。
「丸のこ盤」
教材製作や木工機械の観察等で、同じ寸
④ 技術分野の安全指導
法の木材を均一に短時間で仕上げるこ
技術科の管理する教室は、学校によって違うが、木工室、
金工室、パソコン教室(学校による)と数多くあるが、技術
室として木工・金工室が統合されたところも増えてきてい
とができることから、使用することがあ
る。
~ハンドブックより~
る。ここでは、
「技術室」として取り扱い、西中原中学校の技
術室を実際の例に示し、掲示物などを含めた教室環境の整備を例
示した。
また、内容ごとの安全指導においては、
「材料と加工」は、電動
工具の取り扱いについて主に示している。木工機械(丸のこ盤・
かんな盤など)を生徒が直接使用はしないが、管理の状態や使い
方によっては大きな事故を招くものであり、普段の動作確認等を
行う必要がある。また、教材の準備などで教師自身が使用することも多く、定期的な点検を実施し
安全かつ有効に活用して欲しいと考える。
「エネルギー変換」、「生物育成」については、授業の中での配慮事項や薬剤散布等についてまとめ
た。また、
「情報」では、情報モラルの内容については割愛し、授業を進めるに当たって必要な配慮
事項のみを取り上げ、まとめた。パソコン教室が新たに増設され、年月が経った学校も多い中、室
内の照明や外光の遮断など学習環境の整備がきちんとなされているか、改めて確認する必要がある。
⑤ 家庭分野の安全指導
各校の安全指導についてのアンケートを実施し、その結果を検討し、その内容も踏まえて研究を進
めた。
調理室、被服室での実習について具体的な場面を取り上げまとめた。特に、調理室に関しては、食
品衛生管理の観点からも環境整備に配慮が必要であり、また、家庭科の授業以外の使用も考えられる。
そこで、イラストや写真をできるだけ用いて、誰にでもわかりやすい内容とするとともに、そのまま
掲示すれば、使用マニュアルの掲示物としても使用できるようにした。
食生活の内容については、調理室の環境整備や実習について、イラストや写真を多く用いて、わか
りやすくまとめた。調理実習では、実習する生徒の身支度などの準備とともに、実習に際しての安全、
衛生に対する意識付けをすることが重要であり、環境整備を通じて生徒の意識の向上を図っていく必
要があると考える。衣生活の内容については、被服室での作業やアイロン、ミシンの管理についてま
とめた。
- 151 -
校外活動における安全指導では、必修となった幼児との触れ合う活動についてまとめた。学内での
実習とは違い、対外的な必要な手続きなどや、相手への配慮事項などもまとめた。
包丁の使い方
柄をしっかりもって、切るものを押さえる手は指をまるめ、
押さえる位置に注意する。
~ハンドブックより~
○
Ⅲ
×
研究のまとめ
実践的・体験的学習を重視した技術・家庭科において、安全指導を進めることは必要不可欠なこと
であり、授業の行われる技術室、家庭科室の整備はもとより、生徒一人一人の日頃からの安全へ意識
付けを忘れてはならない。各学校での整備状況はそれぞれに違うが、授業のねらいを達成するために
も、安全指導と事故防止向上に努め、学習環境の整備を常に心がける必要がある。今回の安全ハンド
ブックは、ポイントを絞った内容にし、できるだけわかりやすく実例に則した内容とした。各校の技
術室、家庭科室の安全環境の整備をそれぞれに進めていただきたいと考える。
今後は、ハンドブックがより有効に活用され、安全な環境づくりの推進、安全指導の工夫が学校全
体で取り組めるよう地区研究会等の場面を活用して周知を図っていくことが重要であると考える。ま
た、さらなる安全指導の向上についても研究・実践を進めていきたい。
最後に、研究を進めるに当たり、ご支援、ご助言をいただきました先生方、また、校長先生をはじ
め学校教職員の皆様に、心より感謝し厚くお礼を申しあげます。
【指導助言者】
川崎市立中学校技術・家庭科教育研究会長(川崎市立向丘中学校長)
菅原
隆雄
川崎市立中学校技術・家庭科教育研究会長(川崎市立京町中学校長)
櫻井
恵
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