埼玉県環境科学国際センター報 第6号 [自主研究] 大気降下物中の窒素化合物濃度の地域特性に関する研究 松本利恵 1 唐牛聖文 目的 米持真一 NH3については、成果のとりまとめと不足部分の追加調査 を実施する。 埼玉県は、降水中に含まれる硝酸イオン(NO 3-)と硫酸イ オン(SO 42-)の当量濃度比(N/S比)が関東地方の中で高い NO 3- については、光化学反応が生じやすい期間に詳細 値であり、窒素酸化物の寄与が大きい地域である。また、酸 な調査を実施し、大陸の影響についても考慮しながら解析・ 性物質の中和物質としてアンモニウムイオン(NH4+)が占める 取りまとめを行う。 割合が大きい。そこで、本研究ではこれらの窒素化合物の起 源及び降水成分へ影響を及ぼすメカニズムの解明を目的と している。幹線道路近傍における窒素化合物の主要な発生 源である自動車走行の影響を調査した。 2 方法 調査は幹線道路沿道に位置する鴻巣と農業地域に位置 する騎西において実施した。沈着物は、常時開放型ろ過式 採取装置を用いて、2000年11月から2003年5月まで約4週 間単位で採取した。測定項目は、導電率、pH、イオン種濃 度(Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+、Cl-、NO3-、SO42-)とした。両 図1 地点の降水量は採取量と採取面積から求めた。 [T-NH 4+/NO x]比の推移 調査地点のガス状物質及び粒子状物質中のイオン種濃 度はフィルターパック法により2001年3月29日から2003年5月 29日まで1~2週間毎に測定した。 3 結果 NO3-沈着量、粒子状NO3-、HNO3ガス濃度が幹線道路沿 道で大きくなる状況はみられなかった。NH4+沈着量とNH3ガ ス濃度は幹線道路沿道の鴻巣の方が、農業地域の騎西より 有意に高くなった。 NOxを幹線道路の影響の指標であると仮定し、幹線道路 の環境への影響を評価するために、NOx濃度に対する粒子 状NH4+とNH3ガスの合計(T-NH4+)濃度の関係を検討した。 図2 鴻巣では、騎西より[T-NH 4+ /NOx]モル濃度比の変動の幅 鴻巣における拡散モデルで予測した影響度と 観測されたNO x、T-NH 4+濃度の比較 が小さかった(図1)。 「経済産業省低煙源工場拡散モデル(METI-LIS)Version 文 2.00」1)を用いて、鴻巣における幹線道路からの相対的な影 デル(METI-LIS)Version 2.00 取扱説明書. 関係を検討したところ、有意な直線関係を示し、モデル計算 からも幹線道路のNH3の影響を明らかにできた(図2)。 4 献 1) 経済産業省関東経済局 (2003) 経済産業省低煙源工場拡散モ 響度を推計し、測定された大気中のNOx、T-NH4+濃度との 今後の研究方向 Study on the Local Characteristics of Nitrogen Compounds in Acid Rain - 60 -
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