iPadを活用した外国語授業実践からみたデジタル教科書の可能性と課題

iPadを活用した外国語授業実践からみたデジタル教科書の可能性と課題
2012 PC Conference
iPad を活用した外国語授業実践からみた
デジタル教科書の可能性と課題について
岩居 弘樹*1 Email: [email protected]
*1: 大阪大学全学教育推進機構企画開発部 ◎Key Words アクティブラーニング,iPad,デジタル教科書 1.
2.3 YouTube の活用
YouTube には、語学学校やドイツ語教員が作成した
教材やネイティブスピーカーによる発音指導ビデオ、
ドイツ語学習者が授業の一環で作ったと思われるビデ
オ、各大学が公開している教材や講義ビデオなど多数
の素材が公開されている (http://dafmov.rockys.name/)。
筆者はこれらの活用するだけでなく、学生のビデオ作
品を YouTube にアップロードし、復習及び相互評価に
も利用している。
YouTube には、ブ
ラウザ上でアノ
テーションをつ
ける機能がある。
ビデオ撮影の翌
週は、自分たちの
ビデオに字幕を
つけ、間違えた部
写真2 YouTube にアップした動画
分にメモを付け
る作業をする。これにより自分の姿やドイツ語を繰り
返し観察でき、客観的に問題点を明確にすることがで
きる。
はじめに
筆者は 2009 年から iPhone, iPod touch, iPad をドイツ
語初級の授業に導入し実践研究を行なっている。2011
年度には iPad2 14 台を追加し、市販の iOS アプリや
Web サービスを活用しながらアクティブラーニングを
試みた。
本稿では、まず実践事例を紹介し、授業実践からみ
たタブレット端末の可能性と、アクティブラーニング
を推進する立場から見たデジタル教科書をとりまく問
題点について検討する。
2. 実践事例
2.1 授業の流れとビデオ撮影
筆者が担当するドイツ語のクラスでは、ドイツ語の
基礎を学び、その成果を短いやりとりにまとめてビデ
オに記録し、 自己評価、相互評価をすることを目標に
している。授業では、グループにわかれてシナリオ制
作や練習からビデオ撮影にいたる作業を進め、授業外
では授業支援システム(Moodle)を用いて文法練習や
発音確認、情報共有を行なっている。ビデオ撮影は 1
セメスター15 回の授業の中で 2〜3 回行い、普段の授業
はビデオ撮影に向けての準備や練習を行う。
通常は CALL 教室で授業を行なっており、iPad は必
要に応じて学生に配布している。
2.2
2.4 発音確認
教科書のように決まったテキストがある場合は付属
の CD・DVD 教材などで発音を確認できるが、学生た
ちが自分たちでシナリオを作成するこのクラスでは、
Text to Speech (TTS)アプリやサービスを活用してドイ
ツ語の音声を確認している。
iOS アプリ Speak it! はテキスト入力したドイツ語を
読み上げるだけでなく、読み上げスピードの調整や音
声の保存もできる。
Acapelabox
(http://acapelabox.com)
や
SitePal
(http://sitepal.com) などのオンライン TTS サービスも学
生の授業外学習に活用している。これらのサービスは
基本的に無料で使えるが音声の保存はできない。オン
ライン・フラッシュカード作成サービスの Quizlet
(http://quizlet.com) は TTS 機能を備えており、学習者が
個別に音声付きフラッシュカードを作成できる。
発音の聞き取り練習だけでなく、学生自身の発音を
Speech to Text (STT)アプリでチェックするという試み
も行なっている。Nuance Communications が提供してい
る iOS アプリ Dragon Dictation は、英語ドイツ語日本語
をはじめとする合計 32 言語(6 月 10 日現在)に対応し
ている。STT サービスは実用レベルに達しており、ネ
ビデオ撮影と iPad
従来は小型のデジ
タルビデオカメラを
10 台ほど用意して、各
グループで並行して
ビデオ撮影を行なっ
ていたが、2011 年から
は、カメラ機能のつい
た iPad 2 を使用して
いる。iPad 2 は従来の
写真1 iPad でのビデオ撮影
ビデオカメラよりも
重く持ちにくいという欠点はあるものの、撮影後すぐ
にグループで画面を囲んで映像を確認でき、その場で
YouTube へアップロードできるというメリットがある。
撮影機材の準備・設定、取り扱いの説明や撮影したデ
ータのコピーなど、これまで多くの時間と労力をかけ
ていた作業が軽減でき、学生も教員も本来の授業タス
クに集中することができるようになった。
93
2012 PC Conference
な仕組みは考えておく必要があろう。
また、学校独自、教員独自の教材や資料を手軽にデ
ジタル化しデジタル教科書に連携できる仕組みも望ま
れる。しっかりと作りこまれ完結した自学自習用の教
材とは異なり、授業の現場で使う教材には完結性は逆
にデメリットになることもある。この点は、例えばオ
ンライン授業支援システムとの連携の道をつくること
で独自教材活用の可能性を広げることができる。
さらに、デジタル教科書、教材、電子黒板などのイ
ンターフェイスについても、極力シンプルなデザイン
が望ましい。取扱説明書が必要なデバイスやアプリは
現場での活用は難しくストレスのもとになる。先に紹
介した StripDesigner はかなり複雑な作業もできるが、
写真の配置とフキダシの挿入自体は単純な操作で実行
できるため、1度デモンストレーションするだけで使
えるようになる。PC 用ソフトのインターフェイスとは
異なる次元で設計する必要があろう。
イティブスピーカーの音声であればほぼ正確に認識さ
れテキスト化されるが、外国語学習者の場合には正し
く認識されないことが多い。しかし、認識結果から発
音上の問題点を捉え適切な指導をすることで発音が矯
正され STT で正しく認識できるようになるケースも多
く見られる。なにより正しく認識された時の喜びは大
きく、次のステップに進む強い動機付けとなる。
2.5 シナリオのビジュアル化
2011 年後期の授業では、ビデオ撮影用のシナリオを、
iOSアプリStripDesignerを使用してコミック風の作品に
した。このアプリは写真の割付やフキダシの挿入が手
軽にできるため、
インストラクシ
ョンの時間をほ
とんど取らずに
作業に入ること
ができる。当初は
あまり深く考え
ずに導入した試
みだったが、セリ
フの意味を考え
写真3 コミック風シナリオ
ながら、どのよう
な構図、表情、立ち位置がふさわしいかを相談し、写
真撮影をして作品を仕上げていくグループがいくつか
現れ、その有効性を認識することができた。
3.3 タブレット端末の問題点
文字入力は現時点では最大の弱点である。手書きメ
モなどは、ストレスにならないスムーズな動きのもの
が必要である。これらの点は多くのユーザーが感じて
いることであり、いずれ改善されるか新たな入力方法
が現れると期待している。
4.
おわりに
受動的学習であれば、現在提案されているような電
子ブックリーダーの技術を発展させることで効果的な
教材ができあがると思われる。ただし、紙の教科書と
同じようにマーカーを付けたりメモを書き込んだり、
場合によっては落書きしたりできるような仕組みはぜ
ひとも必要であろう。
一方アクティブな学習を支援するツールを望む場合
は、デジタル教科書のような完結したパッケージでは
対応できないことはすでに見てきたとおりである。ア
クティブな外国語学習には今回例示した TTS アプリや
STT アプリは必須であろう。また、外国語学習に限ら
ず、写真・動画制作加工、音声加工、プレゼンテーシ
ョンのためのアプリなど表現のためのツールが自由に
使える環境があれば、学習成果を手軽にアウトプット
することができるようになり、学習へのモチベーショ
ンもあがる。
最後に、タブレット端末やネットワーク環境には、
教員=教える人、学生・生徒=学ぶ人という役割に縛
られない柔軟性と使いやすさを優先した管理方法を導
入することが望ましいと考える。
2.6
授業支援システム Moodle の活用
Moodle は、教員からの指示、教材やリンクの提示、
シナリオ作成の場として授業のバックボーンとなって
いるが、特に教員と学生のコミュニケーションのツー
ルとして大きな役割を果たしている。
(参考文献 2 参
照)
3. タブレット端末・デジタル教科書の課題
3.1 タブレット端末活用のメリット
このように、ビデオ撮影・編集、発音確認、レイア
ウトなどの作業を「使い方の練習」をせずにすぐに現
場に投入できる点がタブレット端末の特徴だと言える。
この特徴を支えているのが、個々のアプリのシンプル
な操作性と、アプリ相互の連携、外部サービスとの連
携可能性である。
3.2 タブレット端末導入に際しての課題
筆者はこれまで市販のアプリやサービスを利用して
授業実践を行なっているが、ここでは導入したアプリ
にあわせて授業を組み立てるのではなく、学生が最も
アクティブに学習するために必要なアプリやサービス
を導入することを念頭に置いている。現在、毎日のよ
うに新しいアプリやサービスが公開されており、数ヶ
月もすると現在よりも優れたものが現れるため、常に
開発動向をチェックしながらアプリの入れ替えを行な
っている。
タブレット端末の導入は組織単位で行われるためあ
る程度の管理・制限は必要かとは思われるが、有用な
アプリやサービスが現れた時に簡単に利用できるよう
参考文献
(1) 岩居弘樹:”iPad を活用したドイツ語アクティブラーニン
グ”『大阪大学大学教育実践センター紀要』8, pp1-8
(2011)..
(2) 岩居弘樹: “授業支援システムの活用と学生とのコミュ
ニケーション
「日誌」
機能の活用についての実践報告.
“大
阪大学大学教育実践センター紀要 7, pp1-7 (2011)..
94
Was this manual useful for you? yes no
Thank you for your participation!

* Your assessment is very important for improving the work of artificial intelligence, which forms the content of this project

Download PDF

advertisement