コンクリートポンプ車総合改善委員会 第二分科会(検査・旧型機分科会

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コンクリートポンプ車総合改善委員会 第二分科会(検査・旧型機分科会 | Manualzz
建設の施工企画 ’
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建設施工の安全
コンクリートポンプ車総合改善委員会
第二分科会(検査・旧型機分科会)中間報告書の概要
コンクリートポンプ車総合改善委員会第二分科会
コンクリートポンプ車のブーム破損による労働災害防止のため,当協会の中に「コンクリートポンプ車
総合改善委員会」を設立した。
委員会の目的は,使用者・製造者が連携し,コンクリートポンプ車による労働災害防止に関する基本的
課題から対策までの検討・取りまとめを行い,機械の設計,現場での施工への反映を図るとともに,関係各
方面に働きかけを行う等による環境整備,一部検討結果の今後の C 規格への反映等を目指すこととした。
平成 17 年 10 月 26 日∼平成 19 年 12 月 13 日までの活動結果を報告する。
キーワード:コンクリートポンプ車,定期自主検査,ブーム,アウトリガー,旋回ベアリング,検査,
点検,疲労劣化,折損
1.はじめに
②労働安全衛生規則第 167 条に基づく定期自主検査及
び同規則第 169 条の 2 に基づく特定自主検査を確実
「コンクリートポンプ車のブーム破損による労働災
に実施すること。
害の防止について」(平成 15 年 7 月 23 日付け基安発
③上記②の検査の際には,車両系建設機械の定期自主
第 0723002 号)により標記労働災害防止の要請が出さ
検査指針(平成 3 年自主検査指針公示第 14 号)に
れたが,その後もコンクリートポンプ車のブームが破
基づき,ブームの曲がり,ねじれ,へこみ,き裂,
損し,落下したブームに激突された労働者が負傷する
損傷等の有無を調べること。
という災害が発生した。ブームの破損原因を調査した
④上記②の検査等により異常を認めたときは,労働安
ところ,過去にブームに過度の延長ホースを追加して
全衛生規則第 171 条に基づき,直ちに補修その他必
作業していたことが破損の原因になったものと推定さ
要な措置を講ずること。
れた。このため「コンクリートポンプ車のブーム破損
(3)コンクリートポンプ車の設計・製造を行う際には,
による労働災害の防止の一層の徹底について」(平成
実際に行われる作業を想定した負荷に対するブームの
16 年 11 月 9 日付け基安発第 1109001 号)において,
強度の安全性を向上するように努めること。また,ブ
下記の対策が講じられるよう関係者への要請がだされ
ームにかかる負荷を計測し,想定を超えた負荷がかか
た。
った場合には,ポンプの作動を自動的に停止する等の
(1)現在使用されているコンクリートポンプ車につい
「過負荷防止装置」等の開発に努めること。
て,販売ルート等を通じ使用事業場に対して,ブーム
のき裂・変形の有無を調べ,異常を認めたときは補修
これらの要請を踏まえ,当協会の中に「コンクリー
等の措置を早急に講ずる必要のあることを文書により
トポンプ車総合改善委員会」(以下本委員会という)
情報提供すること。
を設立し,コンクリートポンプ車による労働災害防止
(2)コンクリートポンプ車の使用に際しては,次の事
に関する下記の主要な課題三点について,使用者と製
項が遵守されるよう,取扱説明書に明示する等により,
造者とが連携し,基本的な課題から対策までの検討・
譲渡先等に対し情報提供を行うこと。
取りまとめを行い,機械の設計,現場での施工への反
①コンクリートポンプ車を用いて作業を行う時は,労
映を図るとともに,関係各方面に働きかけを行う等に
働安全衛生規則第 163 条に基づき,当該コンクリー
よる環境整備,一部検討結果の今後の C 規格への反
トポンプ車についてその構造上定められた安定度,
映等を目指すこととした。
最大使用荷重,ブーム先端ホース長等を守ること。
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使用実態を踏まえながら,排ガス規制,ユーザニー
れば,ブーム折損等に関係する事例が約 47 %,アウ
ズ,その他将来方向について安全装置の開発,構造
トリガー折損が 15 %,旋回ベアリングボルト折損等
物の見直しを含めて,機械のあるべき姿を関係 3 者
が 9 %となっている。
で議論する場とする。
6全国コンクリート圧送事業団体連合会(以下【全
使用期間の長期化,稼働条件の高層化,大量施工,
圧連】という)調査による平成 16 ∼ 18 年の間の事故
コンクリートの高比重化,排ガス規制などの社会環
事例は 14 件あり,ブーム及びアウトリガー等に関係
境の変化などを踏まえ,安全上,経営上から適切な
する事故は 8 件ある。
検査項目の検討,検査方法,更新時期等の旧型機
(稼働機械)のあり方について議論する場とする。
ブーム折損,アウトリガー折損,旋回ベアリング固
定ボルト折損による災害は,コンクリート打設に意識
現状の施工業者の実態を踏まえた上で,安全なコン
が集中している作業員の上に,
ブーム等が突然落下し,
クリート打設作業をどう行うべきか,また,必要で
作業員に激突することにより発生している。また,ブ
あれば機械損料の見直し,新たな法的処置の検討,
ーム等は打設中のコンクリート上に落下するため,コ
普及促進策なども含めて議論をする場とする。
ンクリート打設場所全体への影響も大きい。
事例の多くは,金属疲労によるき裂が事故発生前に
本委員会では,第一ステップとして,
あったと想定されている。よって,ブーム等に無理な
・事故要因及び不具合等の実態把握
力が掛らないよう定められた使い方以外の使い方をさ
・既存機械の検査項目,検査方法等の実態と課題把握
せない方策の実施や,ブーム・アウトリガー・旋回ベ
・上記を踏まえた,望ましい点検・管理のあり方
アリング固定ボルトの確実な点検によって,事故を防
について,議論を平成 17 年 10 月 26 日∼平成 19 年
止できる可能性は大いにあるものと考えられる。
12 月 13 日まで 11 回実施したので,以下に報告する。
(2)小規模な破損(ひび割れ等)等の発生状況
2.災害・事故および主要部材不具合発生の
状況
ブーム,アウトリガー,旋回ベアリングの固定ボル
トはコンクリート打設時の配管内圧送負荷による繰り
返し荷重を受け,金属疲労による損傷が生じる可能性
コンクリートポンプ車に関連する災害・事故の事例
の高い部位である。
については,自損,物損のものまで含めた報告ルール
しかし,これらの部位のき裂,曲がり等不具合の状
が統一されていないため,必ずしも全体像を把握でき
況を早期に発見し修理したことで,大事故の発生防止
る状況にはない。そこで,本委員会では参加委員が把
につながった事例が多くあるという議論がなされた。
握している事故・災害事例および保守・点検により発
この点から,点検・整備で不具合を発見するための
見した小規模な破損(ひび割れ等)等の発生状況を個
留意点を明確にするために,ブーム長 26 m 以上の大
別に収集し,以下のとおりの全体的な整理を試みた。
型機種に限定し,製造会社委員各社より,保守・点検
によって発見したり,修理した時の状況と頻度の情報
(1)災害・事故の発生状況
提供を受け,分析を試みた。
(a)コンクリートポンプ車による主な死亡災害事例
(a)調査母集団の推定(製造実績と稼働台数から)
建設業労働災害防止協会で把握しているコンクリー
委員各社より提供を受けた点検・修理状況を整理す
トポンプ車に関連する平成 7 ∼ 17 年の間の死亡災害
るにあたり,調査情報の母集団の数量を認識する必要
事例は 15 件である。災害発生の 5 割が作業終了後の
がある。実際の稼働台数の統計データはないが,全ポ
ホッパー部洗浄作業中に起きている。このことから,
ンプ車の稼働台数は 10,000 台以上,ブーム長 21 m 以
死亡災害の再発防止にはホッパー部洗浄作業の安全対
上の機種は 5 ∼ 6,000 台と言われるなか,今回の調査
策が構造的問題以外に重要である。
対象は,製造会社委員各社が把握しているブーム長
(b)ブーム付きコンクリートポンプ車の事故事例
製造会社委員調査によるブーム付きコンクリートポ
ンプ車(以下ブーム車という)に関する平成 14 ∼ 17
26 m 以上のブーム車の出荷台数から推定した。
本調査で把握したブーム車の出荷台数は 1,742 台で
あり,その内推定稼働台数は 1,475 台になった。
年の間の主な事故事例は 34 件あり,この内 5 件が前
また,【全圧連】で,コンクリートポンプ圧送事業
出の 15 件に含まれる。構造的不具合の事例は 23 件あ
者 511 社に対し保有台数調査を行った。回答を得た事
る。限られたデータであるが事故の部位との関係を見
業者は 180 社で,ブーム車保有台数は 1,250 台であっ
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②部位別修理個所数分布
よって,今回提供を受けた保守・点検・修理情報は
約 1,000 台強の母集団から得られた情報である。
(b)点検・修理状況
①部位毎・使用年数別修理個所数分布
図― 1 は部位毎と使用年数別に整理した修理個所
図― 2 は部位別に調査データすべてを合わせた修
理個所数の分布を示している。
各部位ともほぼ同様に,
き裂等を発見し修理を施している。あえて特筆すれば
ブームでは第二ブームが最も多く,ついで第一,第四,
第三の順になっており,アウトリガーでは左右を合わ
数の分布を示している。使用年数 8 年のものが,最も
せると 73 件となる。また,旋回台他のき裂数も多い。
多くの修理箇所が生じている。使用年数 9 年目以降は
③ブーム長毎の修理部位の割合
廃車や修理実施により件数が少なくなっていると考え
図― 3 はブーム長毎の修理部位の割合を示してい
られる。また,ほとんどの部位が修理対象になってお
る。ブーム車全体では特定部位に限定することは困難
り,特定部位を定めることはできない。一方,使用年
であるが,ブーム長によりそれぞれ特性がある。その
数 4 年でも修理を行っている例があるが,同様に特定
機種を熟知した資格者がこのような実績データをもと
部位に限定されることはない。
に,適切な方法で点検を確実に実施することが災害防
止に有効である。
図― 3 ブーム長毎の修理部位の割合
図― 1 部位毎・使用年数別修理個所数分布
以下にそれぞれの内容をまとめる。
26 M:平成 4 年から出荷開始。現在も出荷し総出
荷台数は 856 台である。平成 6 年以降に出荷したブ
ーム車が現在も稼働していると想定すれば 774 台が
稼働状況にあると推定され,稼働台数は最も多い。
第二,第四ブームの修理割合が多い。
30 M:平成 6 ∼ 12 年の間に 55 台出荷。それ以降
は生産されていない。平成 6 年以降に出荷した 55
台が稼働状況にあると推定される。
第二ブームの修理割合が多い。
31 M:平成 2 年から出荷開始。平成 10 年以降は出
荷されていない。この間の総出荷台数は 416 台であ
るが,平成 6 年以降に出荷した 231 台が稼働状況に
あると推定され,稼働台数は 3 番目に多い。
各々の部位がほぼ同様な割合で修理されている。
図― 2 部位別修理個所数分布
33 M:平成 9 年から出荷開始。現在も出荷し総出
荷台数は 348 台である。平成 9 年以降に出荷した
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348 台全てが稼働状況にあると推定され,稼働台数
配管又はホースの接続は許容するが適切な安全装置
は 2 番目に多い。
を設けること)
アウトリガー・旋回台他の修理割合が多い。
・安全装置(製造業者はブーム先端にかかる過負荷に
36 M:平成 6 年から出荷開始。平成 16 年以降は出
対する警報装置又は防止装置を積極的に開発するこ
荷されていない。この間の総出荷台数は 67 台であ
とを盛り込んだこと)
る。平成 6 年以降に出荷した 67 台全てが稼働して
・使用者による検査(本機械は常に高負荷がかかり,
いると推定される。
定期的な詳細検査が必要であり,使用者による定期
第一,第二ブームの修理割合が多い。
検査,検査記録の保管などの,詳細規定を規格に盛
り込んだこと)
3.災害・事故再発防止措置の現状
⑤コンクリートポンプ車の過負荷防止装置の基礎的な
技術研究・調査
製造会社,建設会社,専門工事会社の取組事例の概
要を以下に示す。
(1)製造会社としての事故防止への取組み
①整備証明制度の推進【6日本建設機械工業会】
平成 15 年 4 月より正式に本制度を実施
②安全マニュアルの改訂【6日本建設機械工業会】
平成 17 年度に,ものつくり大学,各メーカー及び
【全圧連】協同で本装置の基礎的な試験を実施した。
(2)建設業界としての事故防止への取組み(施工
会社の事例)
①平成 15 年 7 月に厚生労働省の災害防止の要請を受
け,ブーム車のブーム破損による災害防止を,改め
平成 17 年 7 月に改訂版を発行
て作業所ならびに関係取引会社に徹底した。
主な改定内容
主な指示内容
・高圧運転モードにおけるブームの使用禁止
・特定自主検査・定期自主検査等でブーム装置のき裂
・下向き延長配管,上向き延長配管の禁止
の有無を調べ,き裂の疑わしい場合は探傷器で調べ,
・ブーム先端ホース長の規定化
異常時には直ちに補修措置を講じる。
(115A ホースの追加等)
・コンクリート輸送管摩耗限界肉厚の規定化(判り易
くするための見直しの実施)
・アウトリガーの最大張出しでの使用の規定化
③コンクリートポンプ車の設計製造に関するガイドラ
インの改訂【6日本建設機械工業会】
平成 14 年 10 月より下記項目を追加
今回の改訂版は,平成 17 年 7 月 1 日より製造する
全てのコンクリートポンプ車に適用する。
主な改定内容
・攪拌装置の自動停止装置の設置(ホッパースクリー
ンを上げると攪拌羽が停止する機能)
・コンクリートポンプ車の使用に当たっては,その構
造上定められた安定度,最大使用荷重,ブーム先端
ホース長等を厳守する。
・特定自主検査結果を必ず確認し,き裂の疑わしい場
合の探傷器による検査,異常時の補修措置について
も報告させる。
・第三者に対して,迂回路など安全確保と安全指導を
徹底する。
②平成 16 年 2 月にブーム車のブーム折損・旋回ベア
リング固定ボルト折損・アウトリガー折損の事故が
多発した同型式のブーム車について,事故の原因が
判明するまで,作業所ならびに関係取引会社に使用
・アウトリガーの開脚・開閉のマーキングの実施
禁止の徹底を図るよう,先に指示した再発防止対策
・開脚アウトリガーの操作装置の設置
より厳しい措置を追加し周知した。
④JIS 原案の策定(コンクリート及びモルタル圧送ポ
その後,ブーム車のブーム折損事故に対処するため,
ンプ,吹付機並びにブーム装置−安全要求事項)
【6日本建設機械化協会】
製造者と協議し,「ブーム弱点部の補強」,「オペレ
ーターへの使用制限に関する教育」,「コンクリート
平成 18 年 5 月に制定
ポンプ車機体への注意事項の掲示」などの措置を実
主な内容
施し,該当機種の使用禁止を解除した。
・非常停止装置(短時間に機能停止(エンジン又は電
動モータを停止)させる装置)を設ける
③平成 16 年 6 月に,ブーム車のブーム折損事故が,
頻発していること及び所有会社にはブーム車の特定
・ホッパースクリーンの自動停止装置を設ける
自主検査,定期自主検査等の検査・点検・補修の実
・打設ブーム先端ホース(スラブ打設等の水平方向の
施が義務づけられているが,事故を未然に防ぐ状況
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には至っていないことから,ある建設会社において
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(a)ブーム定期点検制度
は,取引会社に「超音波探傷検査」を新たに実施し
昭和 57 年(1982 年)当時,ブーム車の使用が一般
てもらい,検査時の不合格箇所を補修し,完了した
化するとともに使用経年が増加し,ブーム等に部分変
ブーム車のみを登録して,現場で使用する「コンク
形・き裂等の不具合の発生が報告され始めた。
リートポンプ車の登録制度」を全国で行うよう指示
し,実施した。
複雑高度化したブーム車の点検等は高度な技術と所
用時間の確保が必要であった。しかしながら,コンク
リート圧送事業者は一般に小規模企業が多く,事業者
(3)専門工事会社【全圧連】での取組み
【全圧連】では,ブーム車を扱う作業員への教育を
下記の内容で積極的に実施してきている。
①コンクリートポンプ車に係わる特別教育(労働安全
だけでは点検等が十分に徹底できない状況にあった。
このような状況の認識から,ブーム等に限定した専
門技術者による定期点検制度の必要性が高まり,6日
本建設機械工業会(発足当時は6日本産業機械工業
衛生規則第 36 条)の実施
会・建設機械部)加入の製造会社と【全圧連】が共同
対象:圧送作業に初めて従事する作業員全員
で昭和 57 年 7 月に「ブーム定期点検制度」を発足さ
②コンクリートポンプ車に係わる特別再教育の実施
(
【全圧連】自主制度)
対象:特別教育修了者に対する 3 年ごとの再教育
③全国統一安全・技術講習会の実施
(【全圧連】自主制度)
対象:【全圧連】会員の全作業員を対象とし,年 1
回の受講を義務付け
④コンクリート圧送施工技能検定 1 級・ 2 級(国家資
格)の資格取得の奨励
⑤コンクリート圧送基幹技能者の養成
(国土交通省推奨資格)
対象:1 級技能検定資格者で実務経験 10 年以上,
職長教育修了者のすべての要件を満たす者
せ,実施した。その後,ブーム車における当該部分に
関連する災害事例は減少し,ブーム定期点検制度の実
施効果が確認された。
しかし,点検未実施のブーム車が存在し,当該部分
のき裂・変形等による災害事例があいついで報告さ
れ,この制度が業界全体の包括的制度にはなっていな
いという面が指摘された。
(b)特定自主検査
車両系建設機械の特定自主検査は昭和 54 年 6 月か
ら施行され,普及・定着等の事業は6建設荷役車両安
全技術協会により運営されている。
平成 2 年の施行令改正【労働安全衛生法施行令の一
部を改正する政令,労働安全衛生規則の一部を改正す
平成 20 年度以降は経営事項審査の対象資格となり,
る省令,クレーン等安全規則の一部を改正する省令等
職長経験は 3 年以上の要件に変更される。
の施行について
(平成 2 年 9 月 26 日)
(基発第 583 号)
】
において,「最近の建設機械等及びクレーン等に係る
4.ブーム車の点検管理の仕組みと課題
労働災害の発生状況等にかんがみ,これらについての
規制の整備・充実を図ること。
」から,平成 4 年 10 月
ブーム車の事故分析の結果から,発生要因としてブ
ーム車の使用上の問題(設計条件に適合しない使用)
と点検管理の不備があげられている。
よりコンクリートポンプ車が車両系建設機械に含ま
れ,特定自主検査対象機種となった。
このときに含まれたコンクリートポンプ車は配管車
ブーム車の点検管理面における課題・改善案につい
とブーム車の両方が対象となり,検査対象部位は車
て委員会で検討し,新たな提言としてまとめた結果を
体・コンクリートポンプ本体およびブーム等の全ての
以下に記述する。
部位となった。また,コンクリートポンプ車を使用す
る事業者すべてが対象となり,業界全体の包括的な検
(1)点検管理の仕組みの現状
年次の点検管理については,平成 4 年までは,製造
査・点検制度になった。
(c)特定自主検査とブーム定期点検制度の比較
会社が中心となって運営されていた「ブーム定期点検
検査対象部位,検査方法,検査実施事業者とも「特
制度(昭和 57 年∼平成 4 年)」により行われていた。
定自主検査」の方が「ブーム定期点検制度」よりもき
平成 4 年の労働安全衛生法施行令の改正以降はコン
め細かく規定されている。したがって,特定自主検査
クリートポンプ車が法規制の対象機種となり,現在で
の実施が徹底されていればブーム車のき裂による事
は,特定自主検査(年次)および定期自主検査(月次)
故・災害はもっと減らせるものと考えられる。
と作業開始前点検から成り立っている。
しかしながら,特定自主検査の実施率は,【全圧連】
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の平成 17 年調査によると,事業内検査と検査業者検
査を含めて 80 %であり,必ずしも全数が実施できて
いるとは言えない。また,「ブーム定期点検制度」の
に実施できるよう,関係者が協力する。
(d)検査制度・整備制度・取扱いに関する事項の
関係業界への啓発活動の展開
ように製造会社のサービス工場等の検査業者検査に限
①特定自主検査の完全実施を目的として,コンクリー
った場合は 53 %となり,同様に全数が実施できてい
ト圧送事業を行うコンクリートポンプ車所有者への
るとは言えない。
指導及び建設会社への検査実施確認の徹底と,関係
改正後 8 年を経過した平成 12 年以降,ブーム車の
ブーム等に部分変形・き裂等の不具合が報告され始
め,災害の発生が再び増加傾向となった。
行政機関の協力のもと,関連団体・事業者に対する
啓発活動に努める。
②コンクリート圧送事業を行うコンクリートポンプ車
よって,高度な技術と所用時間の確保が必要な複雑
の所有者および使用者において「コンクリートポン
高度化したブーム車の点検管理をより有効なものとす
プ車整備証明制度」の意義を充分に認識していただ
るためには,事業者が確実に点検検査の実施できる管
くよう,関係行政機関の協力を得て,関係団体に対
理の仕組みおよび検査員が適切に検査できる技量と認
する啓発活動を展開する。
識を持てるような能力向上教育の徹底が必要である。
(e)ブーム車オペレーターの資格
①ブーム車オペレーターについては,業界の自主的資
(2)点検・管理の改善への提案
格認定制度(免許制度に準ずるもの)の導入を提案
(a)複雑高度化したブーム車に適合する検査・点検
する。これは圧送作業の安全性向上に加え,有能な
①迅速に日常点検ができるように日常点検重点チェッ
人材を集めようとする経営者の意識向上,就業して
ク項目を選定し点検表を簡素化する。
いる若手労働者のモチベーションの向上にもつなが
また,作業当日の時間的制約のため十分な点検がで
るものと考える。
きない場合,出動前日の帰社後の点検を確実に行う
ように事業者に周知し指導する。
②ブーム車における重要点検箇所については,特定自
②将来的なあり方として,建設機械施工技士 2 級の種
目にブーム車の運転技能が追加されるように自主的
資格認定制度を関係者が協力し定着させる。これに
主検査の検査・整備基準値表(6建設荷役車両安全
より,コンクリート打設に関する安全性向上に加え,
技術協会発行)や安全マニュアル(6日本建設機械
品質向上,生産性向上,技術・技能の継承が図れる
工業会発行)に述べられているが,改めて重要点検
と期待される。
箇所を明示し,業界にその旨周知し,それを徹底す
る。特に,ブーム,アウトリガーのき裂の検査にあ
5.おわりに
たって,き裂の恐れのある箇所については,「浸透
探傷法(カラーチェック)」による検査を行うこと
とし,き裂が疑わしい場合は超音波探傷器等で詳細
検査を行うことを推奨する。
利害が相反する関係者が議論するにあたって,
第 1 に,
本委員会の基本かつ共通の認識として,ブーム車の
③メーカーは出荷又は工程検査時に,重要で溶接欠陥
ブーム折損,アウトリガー折損,旋回ベアリング固定
の出やすい箇所については,超音波探傷検査を実施
ボルト折損の構造的不具合を要因とする災害,事故の
して記録に残す。購入者には求めに応じて,出荷時
発生は,製造会社,施工会社,専門工事会社にとって,
に点検証明(欠陥が無いこと)を開示し,更には求
各々の立場から社会的にも大きな影響を与える責任問
めに応じた別の箇所の検査を実施して結果を開示す
題であり,関係行政機関からの指摘を踏まえて喫緊の
ることが望まれる。
果たすべき課題であるとの認識をもつことであった。
(b)旋回ベアリング取付ボルト点検と交換
そして,
そのことの重要性と緊急性を十分に考慮し,
重要点検箇所として,旋回ベアリング取付ボルトの
3 者の立場から,持っている災害,事故,構造的不具
検査にあたっては,必ずトルクレンチにより検査する。
合の情報を出し合い,議論を重ね,知恵を出し合って
1 本でもトルクレンチでゆるみがみられる場合に
は,ボルト折損の恐れのある範囲内において更に点検
し,その状況に応じてボルトを適切に取り替える。
(c)ブーム車検査員の能力向上方策
地域ごとにブーム車検査員の能力向上教育を定期的
まとめることであった。
第 2 に,
集められたこれらの情報を,
既存の機械の検査項目,
検査方法等に照らして,実態上どのような問題点があ
り,どのような解決方法があるのか,3 者の立場から
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提案し,まとめるよう努めた。
一方で,ブーム車の取扱上の禁止事項は,ブーム車
第 3 に,
の機動性等から設定された機械設計条件により制約さ
ブーム車の取り扱いに関し,現状の特定自主検査制
れる事項である。しかし,これらの禁止事項は,取扱
度を尊重したうえで最も適合する検査・点検の実施方
説明書等には記されているものの多くの建設機械に装
法について,3 者の立場から取り組むことのできる,
備されている過負荷検出による安全装置等の機械制御
いわば推奨基準や自主管理の手段をまとめた。
によりコントロールできるものではなく,使用禁止事
その例として,「日常点検重点チェック項目の選定
項があるにもかかわらず使用できてしまい,機械個々
や点検項目数の減少と点検表の簡素化」
,「ブーム・ア
の性能に対する情報の少ない建設現場で,設計条件不
ウトリガーのき裂検査における浸透探傷法による検査
適合の状態で使用がなされてしまう場合もあると推定
の採用やき裂が疑わしい場合の超音波探傷器等による
される。したがって,今後製造される機械には,設計
詳細検査の実施」
,「旋回ベアリング取付ボルトの点検
条件とは異なる状況では使用できないような安全措置
と交換方法」等の提案がある。
や警報装置,制御装置等の安全装備が望まれる。
また,「検査員の能力向上方策」や「検査制度・整
備制度・取扱いに関する関係業界への啓発活動の展
最後に,本事例の災害防止策は,関係業界が労働安
開」や「オペレーターの資格の付与」などもブーム車
全衛生法の立法趣旨にのっとり,関係法令を厳格に遵
の点検・管理の改善への提案に関連して不可欠な要素
守し,また,自主的な推奨基準や管理基準を作成して
であるのであえて付言している。
関係業界全体で自主管理に取り組むことにあるとの共
通認識をもつことであると考えている。
建設の施工企画 2007 年バックナンバー
平成 19 年 1 月号(第 683 号)∼平成 19 年 12 月号(第 694 号)
1 月号(第 683 号)
6 月号(第 688 号)
10 月号(第 692 号)
建設機械特集
建設施工の安全対策特集
維持管理・延命特集
2 月号(第 684 号)
7 月号(第 689 号)
11 月号(第 693 号)
道路工事・舗装工事特集
建設施工における新技術特集
情報化技術特集
3 月号(第 685 号)
8 月号(第 690 号)
12 月号(第 694 号)
除雪特集
防災・災害復旧特集
ロボット・無人化施工特集
4 月号(第 686 号)
9 月号(第 691 号)
■体裁 A4 判
環境特集
河川・港湾・湖沼・海洋工事
■定価 各 1 部 840 円
特集
(本体 800 円)
■送料 100 円
5 月号(第 687 号)
ダムの施工技術特集
社団法人 日本建設機械化協会
〒 105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8(機械振興会館)
Tel. 03(3433)1501
Fax. 03(3432)0289 http://www.jcmanet.or.jp
J C MA

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