実験プリント

実験プリント

はじめに

1. 目的

2005 年度 化学科 3 年次 物理化学実験

めざす.具体的には以下のようなことを自然にできるようになることが目標である.

① 実験の全体像と個々の操作の意味を把握する.

② テキスト・プリントを正確に読み取る.

③ 誤差が出ないように気を配りながら,実験操作を正確に,できれば工夫して効率的に

行う.

④ 結果を定性的に(場合によっては定量的に)予測しながら実験を進める.

⑤ 常に観察を怠らない.予測と異なる結果を見逃さない.

⑥ 結果と予測を比較し,両者が異なる場合はできるだけその場で理由を考察する.

⑦ 必要に応じて追実験を行う.

(2)学生同士もしくは教員・院生とのディスカッション,日報を通して,プレゼンテーション

能力,討論する力を身につける.

(3)化学実験に必要となる様々な技術(機器の扱い方,コンピュータの使用方法など)を習得

する.

(4)レポートの作成方法を習得する.

(5)実験を通じて授業で習った事項を復習する.

(6)物理化学のたのしさを実感する.

2. テキスト

テキストは「基礎物理化学実験 第 4 版,徂徠道夫・千原秀昭編,東京化学同人」.ただし,「物

理化学実験法 第 4 版,徂徠道夫・千原秀昭編,東京化学同人」にも全く同じ内容が載っている

で,こちらを使っても良い(掲載ページは異なる).テキストの補足として本冊子も用いる.

3. 実験テーマ

A 3成分系の相図(プリント p8,テキスト p82 参照)

B 二次反応速度(プリント p12,テキスト p94 参照)

C 凝固点降下(プリント p16,テキスト p69 参照)

D 超伝導体および半導体の電気伝導(プリント p20,テキスト p51 参照)

E 液体の蒸気圧(プリント p27,テキスト p58 参照)

F 自由参加実験(プリント p31)

4. 実験日に行うこと

(1) 出席: 各自がドラフト前の机に出されている出席簿に記名する.13:30までに記名

がなければ遅刻と見なす.遅刻した学生は教員に申し出ること.

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(2) 日報: 報告の準備ができた班から予習レポート,実験データ,報告用のメモ(実験で得

られた値等を簡潔にまとめたもの,ディスカッション用)を持って準備室に来る.2,3

日目の日報時には前回までの結果も持ってくること.報告用のメモは回収しない.2班ず

つ日報を処理したいので,日報準備ができた順に同じテーマをやっている班でペアを組ん

でおく.日報の順番を取るためにホワイトボードに班名を書く.終わった班は班名を消す.

待ち時間には考察等について班内で討論を行う.

(3) 掃除: 実験室および天秤室の掃除は当番制とする(ホワイトボードに各班の担当日を張

り出す).ゴミは段ボール,可燃物,ガラス類,プラスチック(ゴム類含む),金属等に分

別して,所定の場所に捨てること.

(4) 終了時刻: 装置の故障等,特別な事情がない限り,17:30には全ての実験を強制的

に終了する.予習をして手際よくやれば全ての課題ができるはずである.18:30には

実験室の施錠を行う.

(5) 各サイクル内でのスケジュール:

1 日目予習 以下の内容で全員がレポートを作成する.A4用紙を使用のこと.表紙は不要.1

枚目の先頭に,班名,学番,氏名を明記.

① 各実験の「予習課題」について,解答を書く.

② プリント・テキストの各実験について書かれている部分をすべて読み,わからない点

を書き出す.個々の実験操作の意味,データ解析手順についても考え,わからない点

を書き出す.

③ 全日程の実験手順をフローチャートにして見やすくまとめる.

1 日目 予習レポートの提出:

TA に提出.提出確認の押印をしてすぐに返却する.

班内討論(1h):

予習課題,操作手順,個々の操作の意味について班内で討論する.1日目の実験に

関係することを中心に議論し,時間があればその他のことも議論する.議論しても

わからない点は院生・教員に質問する.

予備的実験(2h)

日報(2h)

1 日目課題解答および予備的実験の結果と考察を報告する.

2 日目 実験(4h): 実験結果を院生・教員が随時チェックする.

日報(1h)

2 日目の日報は結果確認のみ.

3 日目 実験(3h): 実験結果を院生・教員が随時チェックする.

日報(2h)

3 日目課題解答および 2,3 日目実験の結果と考察を報告する.

予習レポートの再提出:

訂正すべき点を赤で直し,実験の感想を書いて,

3 日目日報時に班ごとに学番順に

まとめて提出すること.

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5. レポートについて

レポートは各実験のレポート作成責任者が班ごとに

1 部作成する.全員が少なくとも1回はレ

ポート作成責任者となること.構成員が3人の班ではレポート作成を2回担当する人が出る.こ

の人のレポート成績は点のよい方を採用する.作成責任者が複数のレポートは不可.

レポートの表紙に実験テーマ,班名,実験実施日,班員全員の学番および氏名(作成責任者に

〇印)を明記すること.表紙の次のページに,別途配布する「レポートチェック用紙」を綴じる.

提出するレポートは以下の項目を含むようにすること.

1. 序(実験の概要を記す.

2. 実験(サンプルの調製方法,使用した装置の概略,測定条件などを記す.)

3. 結果(測定データ,データ解析の手順と結果.

4. 考察(実験結果に対する評価・解釈,誤差要因の推定,より正確な測定のための方策など.

上記に関係しない文献調査の成果や実験の感想は考察ではないので別項目にする.)

5. 参考文献(文献を参考にした部分があれば必ず参考文献リストを作る.本の場合は,書名,

著者名,出版社,出版年を書く.ネット検索した場合は制作者名,

URL を書く.)

6. 感想(今後の参考にしたいので,率直な感想をぜひ書いて下さい.)

この他に,文献調査の成果をレポートに付け加えることを推奨する.

データ解析をしていない,データ解析の手順が書かれていない,考察が書かれていないといっ

た不十分なレポートは再提出してもらうことになる.他人のレポートの全部もしくは大部分を丸

写ししていることがわかった場合,写した者も写させた者も単位認定しない.

<レポート作成上の注意点>

(1)書くべき内容の選択基準

・ プリントおよび装置・器具の使用マニュアルを持っている化学科の

3 年生が追実験を行うこ

とを想定して,その人に必要な情報を過不足なく与えるつもりでレポートを書く.同時に,

正しい操作およびデータ処理を行ったことが教員に伝わるように書く.

・ 実験およびデータ解析の全体的な流れ(どのような実験を行い,どのようなデータが出て,

どのような方法で解析し,どのような結論が得られたのか)がわかるように書く.

・ 序で書いた実験目的に対する回答が結果もしくは考察に含まれていなければならない.

(2)形式的なこと

・ 読みやすい章立てを考えること.必要に応じて大項目,中項目,小項目といった階層構造つ

くること.実験結果等を日にちごとに分けて書かない.内容で分類・整理するべきである.

・ 本来,図・表は本文から独立したものではなく,本文の一部である.よって,本文から図・

表を参照できるようにする.例えば,本文中で「図1に○○の温度変化を示す.この図より

××がわかる.」といった書き方をするとよい.また,図やフローチャートを見れば理解可能

なことでも文章化して本文に入れた方がわかりやすくなる場合が多い.

・ 使用する図・表については番号( ex. 図1,表1)とタイトル(ex. サーミスタの電気伝導率

の温度変化)を付けること.グラフに複数のデータを表示するときは,どのデータが何に当

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たるか明記する.他の班と共同で実験を行った場合,自分たちの班のデータ( ex.○)と他の

班のデータ( ex.△)を区別して表示すること.

注: グラフ,イラスト(装置など),フローチャートなどは,すべて 図 に含まれる. 表

は,数値等を並べた一覧表のことのみを指す.

・ 物理量を示すときには必ず単位を書き添えること.

SI 単位系と SI 表記を使用すること(テキ

スト

p.226 参照).ただし,蒸気圧は mmHg (Torr)を使用してよい.

・ 有効数字を考慮し,不必要に下の桁まで書かない.

・ 各ページにページ番号を打つ.

・ 実験操作に関する記述は過去形で行う.

(3)考察について

・ 当然のことながら考察は論理的に正しくなければならない.自分の論理に飛躍がないかチェ

ックしてから書くこと.

・ 文献値( ex.化学便覧等)と比較検討すること.

・ 測定誤差要因が複数ある場合はそれぞれについて大体の誤差を見積もり,一番効いてくる要

因は何か考えた上で考察を書く.

・ 同じ測定を数回行った際には平均値を採用する.ただし,平均値から大きく外れているデー

タで,外れている理由が明確なものは,平均を取る際に除外してよい.残差(=個々の測定

値−平均値)の絶対値の平均も出しておくこと(下記の例を参照).誤差についての詳しい議

論はテキスト p173 参照.

測定値(

5 回):12.15,12.23,12.21,12.18,12.19 平均値:12.19

残差の絶対値:

0.04, 0.04, 0.02, 0.01, 0.00 残差の絶対値の平均:0.02

平均値は有効数字を考慮して書いてある.測定結果の表記は「

12.19±0.02」とする.

(4)その他

・ 正しい日本語を使う.特に考察の部分が日本語になっていないレポートを見かける.作文の

練習だと思って正しい日本語を書くよう心がける.必ず文章の推敲を行う.

・ レポート作成にはワープロ,表計算ソフトを使用するのが望ましい.膨大な量の測定データ

をレポートに書き出す際は,表計算ソフト等を用いてコンパクトに印刷したものを使用する.

6. コンピュータの使用について

(1)コンピュータの設置場所

天秤室および

13 号館 3F 控え室に計 8 台のコンピュータがある.

(2)コンピュータ使用優先順位

二次反応速度,超伝導体および半導体の電気伝導,その他の課題の順とする.

(3)コンピュータの効率的使用

コンピュータの台数が限られているので,1班で長時間占有しないようにする.具体的に以

下のことを守ること.

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① データ処理の準備が出来ていないのにコンピュータをキープするのは禁止.長時間作業を中

断するときはデータをフロッピーディスクに保存して自分のデータの画面を終了しておく.

② コンピュータで何をしたいかあらかじめ明らかにしてから使用するようにする.

③ コンピュータが込み合っている場合は必要最低限の作業だけに使うようにする.グラフの形

を整えるといった本質的でない作業は空いているときのみ行う(できなかった作業は実験終

了後に各自のパソコンか情報処理センターで行う).

④ コンピュータは夕方に込み合うので,できるだけ分散して利用するよう心がける.

⑤ 使用方法が分からない人はコンピュータが空いている時間帯に練習しておくこと.

⑥ データ入力とデータ解析は同時に行う必要はない.入力に手間取る人は,ある程度データが

たまった段階で入力だけしておくとよい.また,データが全部でそろっていなくても計算式

の入力等はできる.

(4)コンピュータが空いていないとき

天秤室のコンピュータが空いていないときは教員まで申し出ること.実験時間中にマルチメ

ディア教室もしくは情報処理センターに行くことは原則として禁止であるが,状況によっては

許可を与える.

(5)その他

① コンピュータの設定を変更しないこと.

② データを保存したい場合は,ハードディスクに保存せず,各自が用意したフロッピーディス

クに保存すること.

③ フロッピーディスクを使用した際には,自分のファイルをコンピュータ上で閉じてからフロ

ッピーディスクを抜く.先にフロッピーディスクを抜くとエラーがでる.

④ excel で近似直線の式を表示すると,横軸,縦軸の物理量が何であろうと横軸がx,縦軸が yとなる.これは明らかに間違っているので,横軸,縦軸の物理量に対応した数式に書き直

すこと.パソコンがこんでいる場合は手書きによる訂正でよい.

⑤ データ解析以外の用途(インターネット,ゲーム等)にコンピュータを使用しない.

7. 全般的注意事項

(1) テキスト・文献: テキスト(特に付録部分)には随所に実験を行うにあたっての諸注意,

基礎技術等についての記述がされているから,その都度関連事項を勉強すること.班での

討論に使うため,必要に応じて物理化学系の授業で使ったテキスト(バーロー物理化学な

ど)やプリントも持参すること.予習はこの実験および過去の授業で使ったテキスト・プ

リントを中心に行うとよい.辞典,インターネットより理解しやすいことが多い.

(2) 各自が用意するもの: 各自が実験ノートを用意し,実験中気づいた点などをすべて記録

する. また,必要に応じて方眼用紙を用意する.

(3) 効率的な実験: 時間内に終わるように計画を立てて実験する.平行してできる作業は班

内で手分けして行う.また,実験結果のプロットは実験と平行して行う.そうすれば,予

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想と大きく異なるデータが出た場合,実験をやり直して確認するなどの対処ができる.

(4) ディスカッション: 実験操作方法およびその意味,データ処理方法,考察,課題につい

てグループ内でよく議論すること.班討論では,わかっていない人が積極的に質問をする

ことが望ましい.また,教員および TA の院生とディスカッションすることを推奨する.

(5) 安全上の注意: 実験中はゴーグルを着用すること.万一実験で使用した溶液が目に入っ

た場合は,直ちに大量の水で洗い流す.何かトラブルが発生したら,すぐに教員を呼ぶこ

と.実験は白衣を着て行い,名札を着用すること.

(6) 器具破損時: 器具を破損した場合には,その都度原因を記した破損届け(学番・氏名・

破損器具・破損理由を書く,用紙は手持ちの紙でよい)を提出し,器具の取替を申し出る.

勝手に準備室の器具を持出さない.また,他班や 2 年実験の器具を横取りしないこと.

(7) 廃液: 実験で出た廃液は基本的に流しに捨ててはいけない.

中和槽 → 中和して流しに流してよい酸・塩基用.有機溶媒を入れない.

有機廃液タンク(各実験ごと) → 有機溶媒用.水,酸,塩基が混入してもよい.

(8) ごみの分別: 実験で出たごみは,分別して指定のごみ箱に捨てる.

(9) 実験終了後の片付け: 実験室が2年化学実験との共用なので,実験終了後は必ず実験台

の上を片づけて帰る.具体的な器具の片付け方は別紙参照.

(10) 個々の器具についての注意:

・ 天秤: 天秤付近にこぼした薬品はその都度清掃すること.精度を要求されないものの秤量

(例えば,NaOH )には実験室内の上皿天秤を使用すること.天秤が水平に置かれていない

場合は足の高さを調整して直すこと.

・ 恒温水槽: 恒温水槽を使用する場合,槽内の水量を多くすること.水量が低いとヒーター

が自動的に OFF になることがある.また,実際に水温を計って,温度制御ができていること

を確認すること.一般に実際の温度は設定温度と完全には一致しないが,多くの実験では温

度が少々設定温度からずれていても一定であれば問題ない.ただし,実際の温度を控えてお

くべきである.Control heater のみを使用し,Base heater を使用しないこと(Base heater

を ON にすると常時ヒーターに電流が流れて温度が上昇し続ける).

・ 水銀使用器具: 水銀を使用しているベックマン温度計(凝固点降下)および水銀温度計(液

体の蒸気圧)は破損しないように特に気をつける.万一破損した場合でも決してこぼれた水

銀を流しに落とさないようにすること.13号館からの下水道を洗浄しなければならなくな

る.また,自分たちで勝手に処理せず,すぐに教員に知らせること.

・ ベックマン温度計: ベックマン温度計は決して横に倒さず,立てて置くこと.

(11) 試薬の取り扱い: 試薬を瓶から取り出した後は,速やかにふたをすること.試薬を

こぼした場合は,速やかに掃除をすること.

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8.実験機具一覧(ガイダンス後に確認のこと)

アンダーラインを引いた器具以外は班ごとのダンボールの中にある.

器具が足りないときは速やかに申し出ること.

3成分系の相図

ビューレット 50mL×4,ビューレット台×2,恒温水槽×1,温度制御装置×1,

フェノールフタレイン×1,温度計×1,フラスコダイバーリング(おもり)×4,

ロート台×1,ピペット台×1

ピペット(メス or ホール)10 mL×4,安全ピペッター×1

三角フラスコ 200 mL×2,100 mL×8,500 mL×1,

メスフラスコ (ガラス)200 mL×1,メスフラスコ (プラスチック)500 mL×1,

洗びん×1,ゴム栓,ロート,ビーカー

共通 ドライヤー

二次反応速度 pHメーター×1,p

H メーター支持台×1,スターラー×2,スターラー回転子×1,

恒温水槽×1,温度制御装置×1,フラスコダイバーリング(おもり)×3,

温度計×1(必要な班のみ)

メスピペット

1 mL ( or 5 mL)×1,安全ピペッター×1,

メスシリンダー

(プラスチック) 250 mL×1,メスフラスコ(プラスチック) 500 mL×2,

三角フラスコ

300 mL×2,三角フラスコ 200 mL×2,温度計×2,ガラス棒×1,

ビーカー(pHメーター電極洗浄用)

100 mL×2,ゴム栓

凝固点降下

ベックマン温度計×1,虫眼鏡×1,塩化カルシウム用容器,

凝固点測定用器具一式,アルコール温度計(−50℃∼)×1,試験管×4,

ビーカー(500 or 300 mL)or コニカルビーカー×2

超伝導体および半導体の電気伝導(全体で収納する)

電気抵抗測定器,スタンド,ラボジャッキ,液体窒素用デュワー瓶,冷接点容器,

マルチメータ(大,小各1つ),電源回路,ヒーター線 or 0.1Ω抵抗素子,

サーミスタ(半導体),リード線(わにぐちクリップ付き)

共通 テフロンテープ,アルミホイル,ノギス,取り扱い説明書,乳鉢,乳棒

液体の蒸気圧(全体で収納する)

蒸気圧測定装置一式,ウォーターバス,L字型水銀温度計,クライゼンフラスコ×1,

ビーカー 200 ml(オイルバス冷却用)×1,ゴム栓

共通 沸石,M ボール

全テーマ共通: 洗瓶,バランストレイ,薬さじ,パラフィルム,タックシール,

キムワイプ(or トイレットペーパー)

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A.3成分系の相図

1. 概要

(1)3成分系の相図の見方(水−トルエン−エタノール)

あらかじめ渡しておいた相図を基に,一相領域,二相共存領域,等温臨界点の組成の溶液

を調製し,観察を行う.

この実験を通じて三角相図の読み方,溶解度曲線と連結線(タイ

ライン)の意味を把握する.

(2)3成分系の相図の決定(水−トルエン−酢酸)

水−トルエン−酢酸系の相図を作成するため,溶解度曲線の決定,中和滴定によるタイラ

インの決定を行う.自分たちの決定した相図を参考にして等温臨界点の組成の溶液を調製

し,臨界たんぱく光を観察する.

2. 予習課題

(1) 実験1−1で用いる溶液A∼Dの組成点を別途配布する日報用紙の相図上に書き込め.三

角相図の見方はテキスト参照.予習レポートと一緒に日報用紙も提出せよ.

(2) 実験1−1で溶液BとCは相分離するが,上相の比率が多いのはどちらか.てこの原理(テ

キストp83)を用いて考えよ.

(3) 溶解度曲線決定時に液が白濁することを利用するが,白濁するのはなぜか.

(4) 一般に,

2 つの液体を共存させたときに相分離するのはどのような場合か.

(5) 水−トルエン系にエタノールもしくは酢酸を加えていくと相分離しなくなるが,それはな

ぜか.

3. 実験

実験1(3成分系の相図の見方)

実験1−1(溶解度曲線,連結線の理解)

以下の各組成の溶液(全量はすべて

50 g)を調製してよく振り混ぜ,25℃の恒温相中につけ

て,各溶液の状態(一相,二相,臨界点),相分離する場合は上相と下相のどちらが多いかをチェ

ックする.

溶液名

トルエン分量

/%

水分量

/%

エタノール分量

/%

15.0 15.0 70.0

16.4 53.6 30.0

C 75.4

D

14.6 10.0

39.4 13.2 47.4

各成分の分量の単位は重量%

実験1−2(等温臨界点溶液の作製と臨界たんぱく光の観察)← 時間がある班のみ行う

溶液

D は等温臨界点溶液である.臨界たんぱく光を観察できない場合は組成が少しずれていると

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思われるので,状況(透明な一相か,二相分離しているか)に応じて適切な成分を少し追加して,

臨界たんぱく光が出現するようにする.

エタノール

x

3

単位は重量% x

3 x

2

トルエン

x

1

x

2

x

1

水−トルエン−エタノール系の相図(単位は重量%)

実験2(3成分系の相図の決定) テキストp82参照

1日目に行う溶解度曲線の決定の予備実験では,溶解度曲線上の組成点を始めの2点分測定す

る.2日目,3日目の実験についてはテキストのとおり.ただし,「(1)溶解度曲線の決定」に

ついては奇数班は水主成分側,偶数班はトルエン主成分側についてのみ行う.また,「(2)連結

線の決定」については,各班は一つの連結線のみを決定する(担当は当日指示する).他班から出

来るだけ多くのデータをもらって相図を書く(他班のデータと自班のデータのマークを変えて区

別すること)

<テキストの補足>

・ 溶解度曲線の決定における水主成分側の実験では,相分離が速やかに起こるので相分離開始

点を決定しづらいが,以下の要領で行えば決定できる.

トルエンを加えて振り混ぜると最初白濁するがすぐに消える.これはまだ一相領域である.

トルエンをさらに加えて振り混ぜると白濁が消えなくなる.この点が相分離開始点である.

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この溶液を静置すると相分離して(少量の上相が浮き上がる)透明になるが,振り混ぜて白

濁していれば相分離開始点と見なしてよい.

・ 溶解度曲線決定時には,水主成分側の溶解度曲線とトルエン主成分側の溶解度曲線が互いに

重なりあうように,測定点を少し多めにする.

・ シュウ酸水溶液の調製はガラス製メスフラスコ,水酸化ナトリウム水溶液の調製はポリスチ

レン製メスフラスコ,連結線決定用の溶液調整はビューレットを用いて行う.

・ 連結線決定時に相分離した溶液が5分ほど待っても若干白濁している場合,白濁したままで

滴定してもかまわない(ほとんど誤差の原因にはならない).

・ 作成した三角相図には連結線決定時の混合液全体の組成点もプロットしておくこと.

・ 必要であれば以下の密度の値を用いること.酢酸:

1.049 g/cm

3

,トルエン:

0.872 g/cm

3

実験3(連結線確認実験)← 時間がある班のみ行う

自班で決定した連結線上の任意の点(連結線決定に用いた溶液の組成点からある程度離れてい

る点がよい)を選び,その点に対応する溶液を調整し,上相および下相中の酢酸濃度を決定せよ.

実験の詳細は実験2の連結線決定実験と同じである.上相および下相中の酢酸濃度が連結線と溶

解度曲線の交点の酢酸濃度と一致することを確認せよ.

実験4(様々な液体の相互溶解・相分離の観察, p31 の自由参加実験 5)

様々な有機溶媒を用意しておくので,水と有機溶媒もしくは有機溶媒どうしが相互溶解するか

どうかを確かめ,その結果について考察せよ.相分離するものについては液体の混合比を変えて

実験し,大まかな溶解度を求めてもよい.

4. 注意点

(1)実験は25℃で行うこと.温度が変わると相図も変わってしまう.混合液はどの実験にお

いても基本的には恒温槽に浸けておくこと.溶液混合のための振り混ぜ,ビューレットか

らの滴下は恒温槽の外で行っても良いが,その際も出来るだけすぐに恒温槽に浸けること.

ただし,連結線決定時に上層,下層を分離した後は25℃に保つ必要はない.滴下を恒温

層内で行うためのセッティングは当日指示する.

(2)恒温槽内に酢酸をこぼさないこと(槽内が腐食されるので).これを防ぐため,酢酸の滴下

は恒温槽外で行うこと.

(3)

NaOH 溶液濃度の経時変化に注意せよ.調製した溶液からの試料の蒸発を防ぐために,必

要に応じてゴム栓を使用する.

(4)有機物が混ざった廃液は,たとえ中性でなくても有機用廃液タンクに捨てよ.ただし,純

粋なシュウ酸水溶液は有機廃液タンクではなく酸・塩基廃液溜めに捨てよ.

(5)酢酸は水を吸収しやすいので,ガロン瓶のフタはしっかり閉めておくこと.実験1がうま

くいかなければ酢酸への水の混入を疑え(教員に申し出よ).

(6)酢酸がビューレットのなかで凍った場合はドライヤーで暖めて融かす.室温が下がるとガ

ロン瓶中の酢酸も凍るので,使い終わったら準備室に返すこと.ガロン瓶中の酢酸が凍っ

た場合は,実験室に用意してある恒温槽(共通)に入れて融かす.

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(7)メスピペット,ホールピペット等は,水で洗ったあとメタノールで洗っておくと速く乾燥

する.

(8)テキストでは

3 成分系の溶液はガラス栓付き三角フラスコに入れることになっているが,

その代わりに普通の三角フラスコとゴム栓を用いる.

5. 日程

1日目

実験内容

・ 極性分子および無極性分子と電荷の間にはたらく力についての演示実験( p31 の自由参加実験

6)

・ 実験1(実験1−2は時間がある班のみ行う)

・ 実験2−(1)溶解度曲線の決定(予備実験,

2 点のみ決定)

日報課題 予習課題(1)∼(3)の報告(実験4をやった場合はその考察も行う)

日報時提出物

・ 実験1の実験結果報告用紙

・ 実験2(溶解度曲線の決定)の結果を書き込んだ三角相図

・ 水−トルエン−エタノール系の等温臨界点溶液(溶液

D)

2日目

実験内容

・ 実験2−(1)溶解度曲線の決定

・ 実験2−(2)連結線の決定

日報時提出物 実験2の実験結果を書き込んだ三角相図

3日目

実験内容

・ 実験2−(2)連結線の決定つづき

・ 実験3(時間のある班のみ)

・ 実験2−(3)等温臨界点の決定(さらに時間が余った班のみ)

日報課題 予習課題(4),(5)の報告

日報時提出物

・ 実験2の実験結果を書き込んだ三角相図

・ 水−トルエン−酢酸系の等温臨界点溶液(作った班のみ)

注: 実験4は,他の実験と平行して行う(できれば

1 日目).

- 11 -

B.二次反応速度

1. 概要

水酸化ナトリウム水溶液中における酢酸エチルの加水分解反応の進行をpHの変化を測定する

ことにより観測する.pHの時間変化のデータから反応速度定数を求める.また,反応速度定数

の温度変化より活性エネルギーを決定する.

2. 目的

反応速度定数,活性化エネルギー,およびその背後にあるボルツマン分布といった重要な概念

を理解する.また, pH メーターの使用方法を習得する.

化学反応の速度が何によって決まるかは,それ自身現代化学の重要な研究テーマである.同時

に反応に限らず,拡散,粘性,相変化,などの様々な変化の速度を考える時,反応速度論で使わ

れる概念がそのまま援用できる場合も多い.本実験では多くの反応の基礎となる二次反応の反応

速度を取り扱う.

3. 予習課題

(1) 酢酸エチルを水酸化ナトリウム水溶液に入れたときに起こる化学反応の反応式を書け.

(2) 本実験における反応開始時および反応終了時のpHを反応前の2つの原液の濃度から計

算せよ.(酢酸エチルの密度は

0.9 g/cm

3

とする)

(3) 本実験において,反応速度は時間経過とともにどう変化すると思うか(増加 or 減少 or 変

化なし).理由も添えて答えよ.

(4) 温度が高いと反応速度が大きくなるのはなぜか.活性化エネルギーという言葉を使って説

明せよ.(単にアレニウスの式が正しければそうなるといった表面的な説明は不可.アレ

ニウス式がなぜ成り立つかを考えてほしい.)

4. 実験手順

テキストでは逆滴定により水酸化ナトリウムの濃度を決定しているが,本実験ではpH測定を

用いる.具体的な実験手順は以下のとおり.

(1) p

H メーター校正 p

H メーターのマニュアル(各班に配布する)に従いpH9とpH12の標準液を用い

2 点校正を行う.詳細については当日指示する.

注:

2・3 日目の測定前にpH9とpH12の標準液のpH を測定し,ずれているようで

あればp

H メーターの校正をやり直す.

(2) 原液の調製(2回分をあらかじめ作っておく)

原液A:NaOH水溶液(

0.025 mol/L) 500 mL 程度

原液B:酢酸エチル+水(

0.75 mL/500 mL) 500 mL 程度

(3) p

H 測定メーターの動作チェック

- 12 -

以下の溶液のp

H を測定し,結果を考察せよ.詳細については当日指示する.

0.01 mol/L の NaOH 水溶液

原液

A の 1/2 希釈溶液, 原液 A の 1/4 希釈溶液, 原液 A の 1/8 希釈溶液

原液の希釈にはメスシリンダーを使用する.測定結果が予測と異なる場合は,p

H メータ

ー電極の交換が必要な場合もあるので,速やかに申し出ること.

(4) 測定準備

原液A(NaOH),B(酢酸エチル)をフラスコに各

150 mL とる(原液Aは必ず 300 mL フラスコに入れる).これらのフラスコを恒温水槽の中に浸す.原液Aの方のフラス

コにはマグネティックスターラーの回転子を入れて回転させておく.また,pHメーター

の電極はろ紙もしくはキムワイプで検出部についている水を軽く拭き取った後,恒温水槽

中の原液Aの方に浸しておく.原液の温度が一定になるまで待つ(かなり時間がかかるこ

とがあるので注意!).

(5) 測定

原液A,Bの温度が一定になったら,原液Bを手早く原液Aの入ったフラスコに注ぎ,

反応を開始させる.pHメーター電極を速やかに反応溶液につける.このとき,pHメー

ター電極は液絡部が溶液から出てしまわないように出来るだけ深くフラスコに入れるこ

と(ただし回転子に当たらないようにすること).原液混合後30秒ほどは混合を促進す

るためスターラーの回転数を上げる.その後,マグネティックスターラーの回転速度は出

来るだけ遅くする(回転により渦が出来てp

H メーター電極のガラス膜部分が液面より上

に出ることを防ぐため).pHメーター電極を反応液につけて約1分後から,反応溶液の pHおよび温度の測定を開始する(この時刻を時間の原点とする).温度測定はpHメー

ターの温度測定機能を利用する.測定は,初めは1分ごとに,pH変化が緩やかになった

ら2∼10分ごとに行う.測定と平行して時間

対 水酸化物イオン濃度のグラフを書いて

いく(この段階では計算を簡単にするために水のイオン積は

10

− 14

(mol/L)

2

としてよい).

測定は,pHの変化が無くなり,系が平衡に達したと思われるまで行う.具体的には,時

対 水酸化物イオン濃度のグラフを見て,これ以上放置しても濃度が変化しないと思え

るまで測定を続ける.

(6) 測定終了時の処理

実験終了後は恒温槽ヒーター,スターラー,pHメーターの電源を切る.pHメータ

ー電極はイオン交換水で洗浄してビーカーに入れた蒸留水につけておくこと.スターラ

ー回転子は毎日回収するので,日報提出時に持参すること.

5. データ解析

各温度におけるpHの時間変化のデータから反応速度定数を求める.このとき,水のイ

オン積の温度変化(下表を見よ)を考慮すること.また,反応速度定数の温度変化より活

性化エネルギーを決定する.活性化エネルギー決定の際にはデータ点が2点では少なすぎ

るので,他班のデータをもらうこと.

反応速度定数の決定は天秤室のコンピュータに入っている表計算ソフト

(EXCEL)を使

用して行う.コンピュータの台数が限られているので,効率的な使用を心がけること.活

- 13 -

性化エネルギーの決定についてはコンピュータを使用する必要はない.すなわち,グラフ

用紙にデータをプロット(データ点を打つこと)して物差しで適当な直線を引き,傾き,

切片を求める. p

K w

と温度の関係 t

/ ℃ 10 15 20 25 30 35 40 45 p

K w 14.53 14.34 14.16 14.00 13.84 13.69 13.54 13.41 pH から pOH を算出する時は、p

K w

の温度依存性に注意!

6. 注意点

(1) pHメーターに関する注意:

・ pHメーターはマニュアルを見て使用方法をよく理解してから使うこと.

・ 電極各部の名称についてはp

H メーター取扱説明書p16参照.

・ pHメーターの電極の先端は乾燥させると使えなくなるので,長時間空気中に放置しないこ

と.

・ pHメーター使用終了後は電極をイオン交換水で洗浄した後ビーカーに入れた蒸留水につけ

ておくこと.

・ 校正時およびp

H メーターの動作チェック時には,電極を液になじませるために,電極で液

を軽く攪拌すること.もしくはマグネティックスターラーで攪拌すること.

・ p

H メーター電極先端の保護キャップ(プラスチック製)を取り外さないこと.応答ガラス

膜は壊れやすいので注意すること.

・ p

H メーター電極の「液絡部」の場所については,pH メーター取扱説明書ではわかりにく

いので,院生もしくは教員に確認すること.

・ 校正時,測定時には内部液補充口(ゴム栓)を開けること(取扱説明書p27,30).測定

が終わったら内部液補充口(ゴム栓)を閉じておくこと.

・ 温度コネクタをしっかり差し込むこと.うまく差し込めていない場合は,p

H メーター本体

の温度表示が

25.0 ℃のまま変化しないことになる.

・ 反応速度決定実験では,p

H メーターの MEAS キーを押さないで瞬時値測定(取扱説明書p

22)を行うこと.

・ pHメータが

30 分で自動的に OFF になることがあるので注意する.もしそうなった場合は,

POWER キーを押して電源を入れ,測定を再開すればよい.

・ pHメータの電池が切れていないか注意する.

(2) 原液調整後は成分の蒸発により濃度が変わらないように栓をして保管すること.

(3) アルコール温度計よりp

H メーターの温度表示の方が信頼性が高いので,正式な温度とし

ては後者を採用すること.

(4) コニカルビーカーは,口が広いので蒸発しやすいので,反応容器に使わないこと.

(5) 酢酸エチル入り

NaOH 水溶液は中和槽へ,酢酸エチル水溶液は流しに捨てる.

- 14 -

(6)

NaOH 水溶液の調整および保管にはプラスチック製のメスフラスコを使用する.

(7) 日報時のグラフ等で,反応速度定数および活性化エネルギーの単位を明記すること.

(8) この反応の活性化エネルギー(室温付近)の文献値は

87.9 kJ mol

-1

である.

7. 日程

1日目

実験内容

・ (1)p

H メーター校正,(2)原液の調製,(3)pH メーターの動作チェック

・ 振動反応,白金の触媒作用の観察(

TA による演示実験,p30 の自由参加実験1)

・ コンピュータ使用方法の確認

日報課題 予習課題(1),(2)の報告

日報時提出物

・ p

H メーターの動作チェックの結果

2日目

実験内容

・ 低温(奇数班25℃,偶数班28℃)測定,反応速度定数の決定

日報時提出物

・ 時間

対 水酸化物イオン濃度のグラフ(実験を行いながら書いた手書きのプロット)

・ 反応速度定数の値(単位付)とそれを決定するためのグラフ(横軸の単位は秒,パソコン使

用)

・ スターラー回転子

3日目

実験内容

・ 高温(奇数班31℃,偶数班34℃)測定,活性化エネルギーの決定

日報課題 予習課題(3)の報告

日報時提出物

・ 2日目と同じもの

・ 速度定数の温度変化のプロット(アレニウスプロット).この図は手書きでよい.

・ 活性化エネルギーの値(単位付)

- 15 -

C.凝固点降下

1. 概要

(1)水+尿素の2成分系の凝固点をおおざっぱに決定し,相図の全体像を把握する.

(2)尿素による水の凝固点降下を希薄溶液領域でベックマン温度計を用いて正確に測定し,こ

のデータより尿素の分子量を決定する.

2. 目的

(1)2成分系の凝固に関する相図を実験的に理解する.

(2)希薄溶液における凝固点降下と濃度の関係について理解を深める.

(3)過冷却現象の観察を通じ,熱力学的平衡状態について理解を深める.

3. 予習課題

(1) 実験1−(2)の結果(尿素水溶液の固体析出温度の濃度依存性)を定性的に予測し,模

式的にグラフ化せよ(横軸:濃度,縦軸:凝固点).予測の根拠も述べよ.

(2) 実験2の純水の冷却曲線(左下の図参照)は,

B 点まで温度が下がってから,C 点まで上

がり,その後

CD 間では温度が一定になる.なぜこのようになるのか?

(3) 尿素水溶液の冷却曲線(右下の図参照)は,純水とは違い

CD 間で温度が下がっていく.

なぜこのようになるのか?

(4) 分子量決定の際の凝固点として,線分

CD の外挿によって求めた点 A の温度を採用するの

はなぜか?

純水

A

C D

B

時間

4. 実験手順

実験1 水+尿素系の相図の全体像把握

A

B

C

尿素水溶液

時間

D

実験1では簡便な方法でおおざっぱに固体析出温度の濃度依存性を測定し,相図の全体像を把

握する.

(1)冷媒調製

CaCl

2

用と書かれた容器を半分ぐらい氷水で満たす(氷が大目の方がよい).

② これに

CaCl

2

を適量入れてよくかき混ぜる.

- 16 -

③ この系はうまく濃度調節をしてやれば原理的には−50℃付近まで自発的に温度降下す

る.しかし実際には周囲からの熱の流入などにより,そこまでは温度低下しない.氷水と

CaCl

2

の量を調節するなどして,−15℃

∼ −20℃ぐらいまで下げて見よ.

(2)固体析出温度の決定

① 氷水を使用してアルコール温度計の校正を行う.このとき氷を多めにすること(氷の隙間

を水が埋める程度がよい).こうしないと0℃にならない.

注: アルコール温度計の校正とは,氷水が0℃であることを利用して,真の温度と

温度計の目盛りの関係を調べることである.例えば温度計を氷水につけたとき+2℃

であったなら,{(温度計の読み)−2}が真の温度である.

② イオン交換水を

8.5 g 試験管に入れる.

③ 尿素を所定量計り取り,試験管内の水に溶かす.尿素の量は

0, 2, 4, 6 g とする.

④ これにアルコール温度計を差し込み,先ほど作った冷媒(氷水+

CaCl

2

)につけて冷却す

る.

⑤ 時々冷媒から取り出して試験管内部を観察し,固体が析出してくる温度を読み取る.

⑥ 析出した固体をスパチュラで取り出し(出来るだけ固体のみをすくうようにする),素早

く液体部分をキムワイプで吸い取る.残った固体が室温でとけるかどうかを観察する.こ

の実験の結果を元にして析出してきた固体が何であるか推測する.

⑦ ①から⑥の操作を繰り返し,異なる濃度の尿素溶液の固体析出温度を決定する.

⑧ 実験結果をグラフ化する(横軸:濃度,縦軸:温度)

⑨ 必要に応じて再現性を確かめる実験,指定した以外の濃度での実験も行う.

注: 水,尿素の量は正確に指定した値である必要はない.この実験方法は誤差が大きいので,

定量的に再現性のある結果を得ることは難しい.

実験2 水+尿素系の凝固点降下測定

基本的にテキストのとおり.ただし,測定する濃度は水約

40 g に対し,奇数班は尿素約

0, 0.25, 0.75g,偶数班は尿素約 0, 0.5, 1.0gとする.濃度決定には実際に秤量して決定した

正確な重量を用いる.測定は各濃度について3∼5回ずつ行う.

5. 補足および注意点

(1)ベックマン温度計について

① テキストでは凝固点降下測定にサーミスタ温度計を使用しているが,実際にはベックマ

ン温度計を使用する.ベックマン温度計は上部の水銀だめの水銀量を調整することによ

り測定温度領域を変えることができる.ベックマン温度計の目盛りは温度の絶対値を与

えるものではない.しかし,温度差(今回の実験では純水の凝固点と尿素水溶液の凝固

点の差)を決定することはできる.ベックマン温度計の構造を眺めてみて上記の内容を

理解するようにせよ.理解できない場合は院生もしくは教員に聞くこと.

② ベックマン温度計は決して横に倒さず,立てて置くこと.位置を狂わせてしまうと実験

を始めからやり直すことになる.次の班への引渡し時にも立てて保管する.

③ 各サイクルの最初にベックマン温度計を使用する際に,純粋な氷水(氷が多めのもの)

- 17 -

にベックマン温度計をつけて,ベックマン温度計の読みで1∼2℃になることを確認す

る.1∼2℃にならない場合は,院生もしくは教員に報告する.

注: このときの温度は正確に

0 ℃ではない.

④ ベックマン温度計を再調整する必要が生じた場合は,教員もしくは

TA の院生に調整方

法を聞き,自分たちで行う.調節時には水の氷点で水銀柱を適当な位置にあわせる.こ

の時,最高濃度のときのΔ

T

が測定できるようにする.

⑤ 測定中にベックマン温度計の水銀が切れる(水銀柱が途中で切れて空隙が出来る)こと

があるので注意する.水銀が切れた場合は,いったん温度を上げればつながる.

(2)実験2について

① 寒剤容器内の温度は−

10℃ぐらいがよい.実験2では寒剤として CaCl

2

ではなく

NaCl

を使用する.

CaCl

2

を使用すると冷媒の温度が下がりすぎる)

② 試料の温度を均一にするため,内管および外管のかきまぜ棒を一定のペースで静かに動

かしながら測定を行うこと.

③ 試料を冷やしすぎると試料全体が凍ってしまい,ベックマン温度計を破損することがあ

るので注意すること.試料全体が凍る前に測定を終了すること.

④ 攪拌するときに氷が多すぎると攪拌棒に力がかかって溶接部がおれてしまうことがある

ので注意すること.

(3)その他

① この実験のデータ解析には準備室のパソコンを使用しないこと(パソコンの台数が限られ

ているため).凝固点降下量の濃度依存性から分子量を出す際には最小自乗を使わず,も

のさしで適当な直線を引き,その傾きを用いる.

CaCl

2

NaCl の添加量(溶液濃度)と冷却温度との関係をテキスト(p198)でよく

理解し,

CaCl

2

NaCl を浪費しないこと.

③ 実験1では実験2で使う

NaCl+氷水用容器を使用しないこと(NaCl+氷水用容器はベッ

クマン温度計を立てておくために使用する).

④ 尿素水溶液は流しに捨ててかまわない.

6. 日程

1日目

実験内容

・ 実験1,実験2(純水の測定を1回は行う)

日報課題 予習課題(1),(2)の報告

日報時提出物

・ 固体析出温度の濃度依存性のグラフ

・ 冷却曲線(測定温度の時間依存性)のグラフ

2日目

実験内容

・ 実験2(純水の測定)再現性を見るため3∼5回

- 18 -

・ 実験2(低濃度尿素溶液の測定)再現性を見るため3∼5回

日報時提出物

・ 冷却曲線(測定温度の時間依存性)のグラフ

・ 凝固点降下および分子量の濃度依存性のグラフ(下図)

濃度

理論値

実験値の最小二乗結果

この図における分子量は各濃度での凝固点降下量より求めたもので,濃度ゼロに外挿すれば真

の分子量が求まる.また,テキストにあるように凝固点降下の濃度依存性のグラフで直線を引い

て,その傾きから分子量を求めてみること.このとき,本来この直線は原点を通るはずであるが,

原点自身も測定で求めたデータ点と見なせるので,原点を通る直線を引く必要はない.さらに尿

素の分子量の文献値から凝固点降下の濃度依存性の理論式を出して同じグラフにプロットしてみ

ること.上図横軸の濃度は溶媒

1 kg 中の溶質の質量(単位:g)であり,尿素および水の質量の

実測値から計算したものを用いる.

3日目

実験内容

実験2(高濃度尿素溶液の測定)再現性を見るため3∼5回

日報課題 予習課題(3),(4)の報告

日報時提出物 2日目と同じ

- 19 -

D.超伝導体および半導体の電気伝導

1. 概要

(1)超伝導物質

YBa

2

Cu

3

O

7-y

を合成する.

(2)超伝導体の電気抵抗測定で四端子法を用いる理由を理解し,マルチメータの使い方を理解

するために,

0.1Ω抵抗素子の電気抵抗を測定する.

(3)様々な物質の電気伝導率を測定してみる.また,磁性についても観察する.

(4)超伝導物質

YBa

2

Cu

3

O

7-y

の電気抵抗の温度変化を四端子法により測定し,液体窒素温度付

近で超伝導が実現していることを確かめる.また,マイスナー効果も観察する.

(5)半導体(サーミスタ)の電気抵抗の温度変化を二端子法により測定し,エネルギーギャッ

プを決定する.

2. 理論

(1) 電気抵抗,電気抵抗率とは

図1において試料を流れる電流を

(アンペア),

2点間の電圧を

(ボルト)としたとき,電気抵抗

(オーム)は以下の式で与えられる.

は電気抵抗率(比抵抗)

ρ

と次の関係がある.

ρ

ここで, L は電圧を測定するための端子間の距離,

は電流が流れる断面積である.電気抵抗の値はサ

ンプルにより異なるが,電気抵抗率は物質に固有の値

である.通常の金属の室温での

ρ

は10

-4

∼10

-6

Ω・ cm である.

ρ の温度変化は十分低温でなければ

温度

に比例する(図2参照).

(2) 超伝導について

通常の電気伝導においては電子は常に結晶中の原

子と衝突しており,これが電気抵抗の原因となってい

る.金属伝導では温度が上昇すると原子の熱振動によ

る振幅が大きくなるので,電子が衝突する回数も増え

る.従って温度上昇とともに電気抵抗は増大する.金

属では温度低下とともに抵抗が減少するが,銅や銀など多くの金属では絶対0度近くになっても

抵抗が残っている.これを残留抵抗といい,不純物や格子欠陥によって生じる.

- 20 -

超伝導現象とは低温になるとある温度で電気抵抗が急にゼロになる現象をいう.

Ti,V,Nb,

Mo などの遷移金属や Pb,Hg などが超伝導を示す.この機構はBCS理論で説明されている.

この理論によると,超伝導は電子が2つで対を作り(クーパーペアと呼ばれている),それらが格

子振動をしている原子の間をすり抜けてゆくような現象と考えてよい.最近(1986年)ベド

ノ ル ツ と ミ ュ ラ ー に よ っ て よ り 高 い 超 伝 導 転 移 温 度

YBa

2

Cu

3

O

7-y

は代表的な酸化物超伝導体(

T c を示す銅酸化物が発見された.

T c =90 K)である(図3).構造は超伝導を示すもの

は斜方晶である.図4に示すように銅原子の回りに5つの酸素のある(5配位)

Cu(2)と,4つの

酸素が平面配位(4配位)している

Cu(1)がある.Cu(2)を含む銅酸素面(ab 面)が超伝導に直

接関与しているとされている.超伝導体は完全反磁性となり,超伝導体内部に磁力線を入れない

という性質がある.これをマイスナー効果とよぶ.

(3) 半導体について 別紙参照

3. 予習課題

(1) 超伝導,半導体,熱電対について調べ,その結果を簡潔に記せ.

(2) 実験2において,2端子法で測った抵抗値と4端子法で測った抵抗値では,どちらが大き

いと思うか.理由も添えて答えよ.

(3) 半導体の電気抵抗が高温ほど低くなるのはなぜか?

4. 実験手順

実験1 試料(

YBa

2

Cu

3

O

7-y

)の合成 ← 基本的に

TA の院生が行う

Y

2

O

3

BaCO

3

CuO を原料とする.YBa

2

Cu

3

(金属原子のみの重量)が

3.0 g になるよう

にするには

Y

2

O

3

BaCO

3

CuO がそれぞれ何 g 必要かを計算する.元素比は Y : Ba : Cu

= 1 : 2 : 3 となるようにすること.

② 上で計算した原料粉末を天秤で秤量する.

③ 秤量した3種類の粉末を乳鉢でよくすりつぶして混合する.すりつぶし・混合は30分ほど

かけて丁寧に行う.すりつぶすときにはある程度力を入れないと効果が薄い.また,乳鉢内

の試料全部をすりつぶすように(すりつぶせていない部分が残らないよう)に注意する.

- 21 -

④ 混合粉末をプレス器でペレット状にする.

⑤ ペレットを電気炉に入れ930℃で1日反応させ,室温まで冷却する.

⑥ 電気炉から取り出したペレットを③と同じ要領で乳鉢を用いて再粉砕後,再びプレス器でペ

レットにする.

⑦ 930℃で1日反応を行わせ,200℃まで徐冷して電気炉から取り出す.

実験2

0.1Ω抵抗素子の抵抗値測定

超伝導体の電気抵抗測定では4端子法を用いる.4端子法は2端子法に比べ正確に電気抵抗を

測定できる.

0.1Ω抵抗素子の抵抗値を2つの方法で測定することを通じて,その理由を考える.

同時に電源,マルチメータの使い方をマスターする.これらの使い方は装置に付属のマニュアル

を参照のこと.

(1) 2端子法

図5のように結線して,マルチメータだけ使って抵抗値の測定を行う.マルチメータは

大きい方を使用する.マルチメータの使用方法は

TA の院生もしくは教員に確認すること.

使用方法を誤るとマルチメータが壊れてしまう可能性がある.具体的な手順は以下のとお

りである.

① 図5のように結線する.ただし,マルチメータは抵抗計として使用する.マルチメータの

電圧・抵抗端子と電流端子を間違えないこと.配線が終わったら

TA の院生もしくは教員

に必ずチェックしてもらうこと.

② マルチメータのパワーを

ON にする.抵抗測定モードにする.マルチメータのレンジは必

AUTO にしておくこと.マルチメータの AVERAGE のランプがついている場合は消し

ておく.

③ 2端子法で

0.1Ω抵抗素子の抵抗値を測定せよ.

④ 抵抗測定モードのまま,

0.1Ω抵抗素子につないでいた端子(わにぐちクリップもしくは

テスター棒)同士を短絡して抵抗値を読んで見よ.

抵抗計(抵抗測定モードのマルチメータ)の中身が電源,電圧計,電流計からなっているとして,

抵抗計の中はどのような結線になっているか考えてみよ.

マルチメータ

(抵抗測定モード)

抵抗体

5 2 端子法による抵抗測定回路図

A

V

図6 電流計,電圧計を使った抵抗測定

- 22 -

(2) 4端子法

電源,電圧計,電流計を用いて抵抗値を測定する場合,一般に以下のように結線する.4

端子法の結線も基本的には上記のとおりであるが,電圧測定用の端子を試料に直接取り付け

る点(図1参照)に特徴がある.

図6のような配線で4端子法を行おうとすると,本来マルチメータが2台必要である(電

は電源に附属している電流計を使用する.具体的な手順は以下のとおり.この実験は配線を

員の立ち会いのもとで行うこと.

① 図6のように結線する.ただし,マルチメータは電圧計として使用する.マルチメータ

の電圧・抵抗端子と電流端子を間違えないこと.電流計は電源に附属しているものを使

用するので,特別に配線する必要はない.配線が終わったら

TA の院生もしくは教員に

必ずチェックしてもらうこと.

② マルチメータのパワーを

ON にする.電圧測定モードにする.マルチメータのレンジは

必ず

AUTO にしておくこと.マルチメータの AVERAGE のランプがついている場合は

消しておく.

③ 定電流電源のパワーを

ON にする.0.1Ω抵抗素子に100mA 程度の電流を流す.定電

流(

CC)モードで作動しているかどうかチェックする.

④ 電流値と電圧値を測定する.

⑤ 測定した電流値と電圧値から抵抗値を計算する.

⑥ 2端子法と4端子法で異なる抵抗値が得られる原因を考えよ.

注意点:

— 測定中は電源が定電流(

CC)モードで作動しているか常にチェックする.負荷が変わると自

動的に

CC モードから定電圧(CV)モードに変わることがある.

実験3 装置の点検

装置の点検で異常が見つかったら,ただちに

TA の院生もしくは教員に申し出ること.

(1)電気抵抗測定装置の点検

マルチメーター(小)を使って電気抵抗測定装置の断線・リークチェックを行う.チェッ

ク項目は以下のとおり.

① リード線に断線がないか.

② 熱電対線に断線がないか.(赤線と黄線の間に導通があるか).

③ リード線どうしやリード線と熱電対線の間に電気的リーク(導通)がないか.

注: リード線の被覆がはがれているとリークが発生することがある.

これらの点検を通じて電気抵抗測定装置の構造を理解する.電気抵抗測定時にどのリード線

をどこに結線すればよいか確認しておく.

(2)熱電対の点検

本実験では温度測定に熱電対(テキスト p215 参照)を用いる.マルチメータで測定した熱

電対の起電力から別途配布する換算表を用いて温度を決定する.温度測定準備の手順は以下

- 23 -

のとおり.換算表に見方については

TA の院生もしくは教員に聞くこと.

① ゼロ接点容器に氷水を入れる.0℃を実現するためには,容器を基本的に氷で満たし,そ

の隙間を水で埋める程度にして,氷の量を多くしてやる必要がある.詳しくはテキストp

345 参照.

② 図7のように熱電対,ゼロ接点容器,マルチメータ(小)を接続する.

③ 熱電対の動作チェック: 準備が出来たら熱電対の起電力を測定して,室温付近に対応す

る電圧になっているか確認する.また,熱電対の先を指で軽く触ってみて電圧が上昇する

か確認する.

注意点:

— ゼロ接点容器への入力と出力の結線は両方とも極性が正しくないといけない.

— 熱電対線は細くて切れやすいので注意して扱うこと.

クロメル線

(黄色)

アルメル線

(赤色)

ゼロ接点容器

電気抵抗測定装置

図7 熱電対の起電力測定のための結線

実験4 超伝導体の電気抵抗率の測定

(1)試料の測定装置へのセッティング

銅線

マルチメータ(小)

① 電気抵抗率の決定に必要なので,試料のサイズ(長さ

,断面積

)をノギスで測ってお

く.

② 必要であれば,試料のセッティング時に熱電対線を切らないようにするため,いったん熱

電対線をゼロ接点容器からはずす.

③ 試料設置部分の銅板をテフロンテープで巻く(絶縁のため).

④ 試料をワニ口クリップ4本で挟み,リード線に接続する.

⑤ 試料をワニ口クリップごとテフロンテープで銅板に巻き付けて固定する.この時同時に熱

電対をテープに巻き込んで固定する.熱電対が試料と電気的に接触しないように注意する.

⑥ テフロンテープで巻き込んだ部分全体をアルミホイルで巻く(温度を均一にするため,お

よび試料の固定のため)

⑦ 測定の準備が完了したら,実際の測定に入る前に

TA の院生もしくは教員に配線等をチェ

ックしてもらうこと.

③∼⑥については,詳しい説明を実験室に張り出しておくので参考にすること.

- 24 -

注意点:

— クリップで試料を挟む前に断線がないか,結線方法に間違いがないか確認すること.

— クリップ4本のうち内側2本が電圧測定用,外側2本が電流供給用であるので,区別して使

うこと.

— 試料ペレットをクリップで挟むときは,接触抵抗を小さくするためにできるだけ深く挟む方

がよい.

— クリップを挟んだ時点でテープを巻く前にもう一度抵抗を測る(マルチメータの抵抗測定モ

ードで).もし k

Ωオーダーの抵抗があれば,接触不良になっていると考えられるので,挟み

直す.

— 電気抵抗測定器のリード線のエナメル被覆が十分むけていない場合があるので注意すること.

接触不良の原因となる.

(2)電気抵抗率の測定

① 抵抗値の測定方法は4端子法によるヒーター線抵抗測定(実験3の(2))時と同じであ

る.抵抗値と試料のサイズ(

;あらかじめ測定しておいたもの)から,電気抵抗率

を計算する.

② 図8の要領で室温から温度を下げながら,試料の電気抵抗率,その時の温度を測定する.

測定温度間隔は熱電対の起電力になおして

0.2 mV とする.ただし,110 K 以下の温度で

0.1 mV 間隔で測定する(超伝導発現による抵抗値の急激な減少を確認するため).測

定した熱電対起電力を温度に換算する際の精度は1℃でよい.すなわち,測定電圧に一番

近い電圧値を換算表で見つけ,それに対応する温度を採用する.

③ 液体窒素温度まで測定したら,今度は温度を上げながら同様の測定をする(時間がなけれ

ば省略).

図8のようにジャッキを徐々に上げていく

図8

サンプル

液体窒素

ジャッキで

高さを調整

と試料の温度を徐々に下げることが出来る.

逆に温度を上げる場合はジャッキを徐々に

下げる.

④ 横軸に絶対温度,縦軸に電気抵抗率をとり測定結果をグラフ化する(時間がない場合は横

- 25 -

軸:熱電対起電力,縦軸:超伝導体にかかっている電圧のままでもよい).

⑤ 実験終了後は速やかに超伝導試料を

TA の院生に渡すこと.また,電気抵抗測定装置は線

がからまないようにしてスタンドに固定しておくこと.

実験5 半導体の電気抵抗

別紙参照.半導体の測定は二端子法(マルチメーター大の抵抗測定モード)を用いて冷却方向の

み行う.

実験6 様々な物質の抵抗率の測定(当日指示する)

実験7 マイスナー効果の観察(

TA の院生による演示実験)

磁石の上に超伝導体を置くと,マイスナー効果により超伝導体表面に超伝導体内部の磁場をう

ち消すような渦電流が流れる.その結果,超伝導体は磁石から離れ空中に浮き上がる.これを実

際に観察する.

実験8 低温実験(当日指示する, p30 の自由参加実験 3 を含む)

5. 日程

1日目

実験内容

・ 実験2,3,6

・ 日報後に実験7,8

日報課題

・ 予習課題(2)の報告

・ 実験4,5で用いる装置で試料の温度はどのようにして測定されるか?

日報時提出物

・ 実験2の結果(2端子法と4端子法で測定した抵抗の値)

・ 実験6の結果

2日目

実験内容 実験4(超伝導体)

日報時提出物 超伝導体の電気抵抗の温度依存性のグラフ

3日目

実験内容 実験5(半導体)

日報課題

・ 予習課題(3)の報告

・ エネルギーギャップの決定方法を説明せよ.

日報時提出物

・ 半導体の電気抵抗の温度依存性のグラフ(横軸:絶対温度の逆数,縦軸:電気抵抗の対数)

- 26 -

E.液体の蒸気圧

1. 概要

ヘキサン,エタノールの蒸気圧の温度変化を測定する.そのデータからクラウジウス−クラペ

イロン(

Clausius-Clapeyron)式を用いて蒸発のエンタルピーと蒸発のエントロピーを決定し,

文献値と比較する.

2. 目的

(1) エンタルピー,エントロピーについて理解を深める.

(2) 液体の蒸気圧を分子論的に理解する.

(3) 熱力学を用いると,任意の液体について,蒸気圧の温度変化の情報から,一見まったく関

係ないと思われる蒸発のエンタルピー(=潜熱)が決定できてしまう.このことから,熱

力学の普遍性・有用性を実感する.

(4) エタノール等の蒸発エントロピー変化がトルートンの法則からずれている原因を考察し,

液体中での構造形成について理解を深める.

3. 予習課題

(2) エタノールの蒸発のエントロピーがトルートンの法則からずれる原因を説明せよ.

(3) 液体の蒸気圧は同じ温度で比較しても液体の種類によって異なるが,その本質的な原因は

何か.

(4) 一般に,ある液体に固体を溶かした溶液と純液体の蒸気圧を比べると,どちらが高いか.

(5) 二種類の液体を相互溶解させた溶液の蒸気圧と,もとの純液体の蒸気圧との関係について

論ぜよ.

4. 実験手順

4.1 実験1(蒸気圧から蒸発エンタルピー・エントロピーを決定) テキストp58参照

<テキストと異なる点>

(1) サンプルはヘキサンとエタノールにする.

(2) 加圧方向の測定のみを40℃から大気圧下の沸点まで測定する.時間のある班は,1つ

の試料について2回測定する.その際,1回目の測定が終わって試料が冷えた後で新し

い沸騰石を追加してから2回目の測定に入る.

<真空ラインについて>

真空ラインの構造がテキストp61の図8.4と以下の点で異なる.

(1) 真空ライン中にコールドトラップがない.コールドトラップはアスピレータの方にサン

プル蒸気が行かないようにするためのものだが,なくても特に支障はない.

(2) テキストp61の図8.4ではガラスカラムにサンプルを入れているが,ガラスカラム

- 27 -

の代わりにクライゼンフラスコを使用している.この場合の真空ラインへの接続方法は

テキストp64の図8.5に示されている.

(3) 圧力計が水銀マノメータではなく,デジタル圧力計になっている.デジタル圧力計の使

用方法は壁に貼りだしてある.

(4) コック3にあたるコックがついていない.

実際使用する真空ラインの概略図を以下に示す.ただし,下図に描かれていないコックがつい

ている装置,リークコックがついていない装置もあるので注意すること.下図のコック1,コッ

ク2,リークコックはテキスト中の同じ名前のコックと対応している.

コック2

コック1

アスピレーターへ

リークコック

冷却管

温度計

デジタル

圧力計

バラスト瓶

クライゼン

フラスコ

ウォーターバス

<テキストの補足>

(1) デジタル圧力計は大気圧との差を

Torr 単位で表示してある(表示の値が大きいほど低

圧である).実験当日の大気圧についてはアネロイド気圧計で1時間毎のデータを記録し

ておくこと.

(2) この実験では真空ラインに漏れがあるとうまく測定できないので,蒸気圧測定の前に,

真空漏れテストを行う.テストは,真空漏れが検出しやすいように,ある程度真空引き

をしてから(圧力としては

100 mmHg 程度)行うとよい.

(3) 真空漏れが見つかったら場所を特定する必要がある.存在するすべてのコックを利用

して,それらの開閉したとき圧力がどのように変化するか調べることによって,ある程

- 28 -

度場所の特定が可能である.真空漏れの主な原因はクライゼンフラスコのゴム栓につい

たゴミである.ゴミを取るには,濡れた布(もしくは濡れたキムワイプ)で拭き取ると

よい.

(4) クライゼンフラスコに入れる液体試料の量は底から

2 cm 程度で十分である.

(5) ウォーターバスを使用する際には,保温のために水面上に

M ボールを敷き詰める.

(6) 沸騰し始めてすぐの温度・圧力を測定データとして採用してはいけない.温度・圧力

の値がほぼ一定になったときの値を採用すること.

(7) 蒸発・還流している状態であるが沸騰していない(沸石から泡が出ない)ことがある.

このときは沸石を新しいものに変えたほうがよい.

(8) 激しく蒸発・還流して冷却管より上に蒸気が上がっている(ガラス管が曇ってくるこ

とでわかる)場合は,コック1が閉まっていることを確認する.また,コック

2 を開い

て圧力を少し上げるか,ウォーターバスの温度を下げる.

(9) 圧力測定中は真空引きを行わないこと.

(10) バラスト瓶は真空系内の圧力を安定させるためのものであり,測定中はクライゼン

フラスコと常につながっていなければならない.

(11) ウォーターバスの温度を急速に下げたいときは,ウォーターバスに氷を投入すると

よい.

(12) アスピレータの水を止めるときは,逆流防止のため必ず事前にリークをすること.

(13) 異なる液体の測定に入るときは丸底フラスコを測定する液体で共洗いする.

(14) トルートンの法則の詳細については,バーロー物理化学を参照のこと.

4.2 実験

2(様々な物質の蒸気圧の測定)

メタノール,トルエン等の蒸気圧を40∼50℃付近の3∼4点の温度で測定する(昇

約40℃にしておき,減圧して沸騰をはじめたところで測定に入るとよい.どの液体を

選ぶかは自由.水+エタノールのような

2 成分系について測定してもよい.尿素等の固

体を溶解した液体の蒸気圧を測定してもよい.このデータより各物質の45℃での蒸気

圧を決定し(決定方法の詳細は各自考えよ),種々の試料の結果を比較・考察せよ.

この実験の目的は,液体の蒸気圧が何によって決まるのか自分なりに考えてもらうこ

とにある.予習課題(2)∼(4)の解答を参考に,自分達で確かめたいことを決め,

等を参考にして,熱力学的および分子論的に考察せよ.

注: 純粋な水は,蒸気圧が低すぎるので,この実験に適さない.

注2:

2 成分系の測定をするときには,おおよその濃度を決めておくこと.また,相

互溶解しているかどうかを確認すること.

5. 注意点

(1)この実験については真空系のコック操作を誤らないようにする.そのためには,コック操

- 29 -

作を機械的に行うのではなく,装置の構造と行いたいことを明確にした上で,一度頭の中

でシミュレーションをしてみるとよい.

(2)装置の主要部がガラス製であり,補修しにくいので,特に丁寧に扱うこと.

(3)水銀温度計を破損しないように気をつける.水銀温度計をゴム栓から抜かないこと(破損

と(水質管理センターでモニターしており,13号館から水質管理センターまでの下水道

を洗浄しなければならなくなる).また,自分たちで勝手に処理せず,すぐに教員に知らせ

ること.

(4)エタノールは流しに捨てて良い.沸石は有機廃液タンクに入れないこと.

(5)パソコンが空いていない場合,蒸発のエンタルピー変化,蒸発のエントロピー変化の計算

は手書きのグラフに物差しで適当な直線を引いて行うこと.

(6)実験結果のグラフ化は実験と並行して行うこと.

(7)圧力計の電源は実験終了時には

OFF にしておくこと.

6. 熱力学量の文献値(化学便覧より抜粋)

(注: 式中の log は常用対数)

<様々な物質についての文献値>

A

B

C

Antonie 式の係数,

T

0

760 Torr における沸点, ∆

H

760 Torr の沸点における

蒸発のエンタルピー変化である.

760 Torr の沸点における蒸発のエントロピー変化 ∆

S

S

= ∆

H

/ T

0

で求められる.

エタノール:

A

= 8.21337,

B

= 1652.05,

C

= 231.48,

T

0

= 351.7 K,

∆ H

= 38.6 kJ/mol

ヘキサン:

A

= 6.87776,

B

= 1171.530,

C

= 224.366,

T

0

= 341.90 K, ∆

H

= 28.85 kJ/mol

- 30 -

7. 日程

1日目

実験内容

・ 測定準備(真空漏れテスト等)

・ 実験2(1サンプル)

日報課題 予習課題(2)∼(4)の報告

実験2の試料選択の理由および

3 日目に測定する試料についての説明

日報時提出物

・ 測定データのプロット.横軸 T

-1

/kK

-1

(=1000/T),縦軸 ln( p

/ p

0

),

2日目

実験内容 実験

1(奇数班はヘキサン,偶数班はエタノール)

日報時提出物

・ 測定データのプロット.文献値(前のページを参照せよ)も一緒にプロットすること.

・ 蒸発のエンタルピー変化,蒸発のエントロピー変化の値.文献値との比較.他班のデータを

もらってヘキサン,エタノールの両方の値をそろえる.

3日目

実験内容 実験

2(1∼2サンプル)

日報課題 予習課題(1)の報告

日報時提出物 測定データのプロット.

F.自由参加実験

1. 概要

主に物理化学に関係した手軽で面白い実験をいくつか用意した.やりたい人は手の空いている

ときに院生または教員まで申し出てほしい.これらの実験は高校生でも楽しめるものなので,特

でに書かれた実験テーマ

A∼E に含まれる.自分が行わなかった実験テーマに附属している実験

行う.

2. 実験内容 (詳しい内容は院生もしくは教員に尋ねること)

実験1 反応速度関係(

2 次反応速度実験に付属)

(1) 振動反応

発的に発生することもある(空間的振動).生命体が刻むリズムとも関係がある.

- 31 -

(2) 白金触媒

白金触媒にメタノールの蒸気を接触させると,メタノールが燃焼する.同じ原理で自動車排気

ガスの無害化もできる.

実験

2 凝固点降下を利用した冷媒(凝固点降下実験に附属)

氷水に食塩もしくは塩化カルシウムを加えてよく撹拌し,温度の低下を観察する.詳しくはこ

の冊子のp16の「実験1−(1)

実験

3 液体酸素の観察(超伝導および半導体の電気伝導実験に付属)

① 空気中で液体窒素に試験管を浸けて液体酸素をためる.

② 酸素ガス中での燃焼実験(上記の方法で集めた液体酸素を三角フラスコの中に入れて気

化させてから火をつけた線香を入れる).

③ 純粋な酸素ガスを液体窒素で冷やして液化させ,色を観察する.

④ 集めた液体酸素に強力な磁石を近づけて,酸素の磁性を確かめる.

実験

4 液体窒素冷却後の状態観察(希望者のみ)

① 液体試料を

100 ml ビーカー(ビーカーは試料ごとに用意されている)に少量入れる.

試料量が多すぎると実験中にビーカーが破損する恐れがある.室温における状態(粘性

など)も観察しておくこと.

② その上から液体窒素を入れて冷却する.液体窒素の量は試料が固化した頃に蒸発してな

くなる程度がよい.多く入れすぎると③の作業になかなか移れない.

③ 液体窒素がなくなったら温度が上がり始めるので状態変化を観察する.ピンセットを使

って固体の堅さ等を確認する.

④ 各自が持参した身の回りの物質(例えば食品など)についても液体窒素による冷却,昇

温によって何が起こるか同様に観察する.

準備している液体試料: 水,ヘキサン,オクタン,シクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,ア

セトン,酢酸エチル,メタノール,エタノール, n

-プロパノール, n

-ヘキサノール,エチレング

リコール,グリセロール,ポリエチレングリコール,その他.

注意点: 液体窒素で冷やされたビーカーの側面に手を触れないように気を付けること.

実験

5 様々な液体の相互溶解・相分離の観察(3成分系の相図実験に付属)

様々な有機溶媒を用意しておくので,水と有機溶媒もしくは有機溶媒どうしが相互溶解するか

どうかを確かめ,その結果について考察せよ.

実験

6 極性分子および無極性分子と電荷の間にはたらく力(3成分系の相図実験に付属)

ビューレットに水もしくは有機溶媒(アセトン,トルエン)を入れて滴下する.そこに正に帯

電させた塩化ビニルの棒または負に帯電させたガラス棒(紙でこすると帯電する)を近づけ,液

体と電荷の間にはたらく力を観測する.

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