第2章 研究成果 - PCALi(ピ カ リ)Blog

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第2章 研究成果

第1節

第2節

第3節

第4節

研究経過

理論研究

システム開発について

学習プログラムの開発と実施

11

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(1)

第2章 第1節

研究経過

小川義和

国立科学博物館

平成24年度

(1)理論的な枠組みの検討

従来の研究で開発した「世代別枠組み」を再検討し,博物館利用者の世代,科学に対す

る興味・関心等の区分からとらえた科学リテラシーの枠組みと評価の指針を策定した。科

学リテラシーの向上に関しては,以下(

2)の国際学会等において科学コミュニケーション

理論を調査するとともに,博物館のコミュニケーションに関する理論等を検討した。

(2)海外先行事例調査

科学コミュニケーションに関する国際会議である

PCST 12th conference では,科学コミ

ュニケーションの考え方や科学リテラシー向上のための枠組みに対して高い評価を得た。

ヨーロッパの科学館ネットワークの

OSR(Open Science Resources)では,博物館を子ど

もたちに利用させるため,基本的には

Inquiry Based Learning(探究的活動)の考え方で

教師向けの教材を用意していることがわかった。米国科学館ネットワーク(

ASTC)につい

ては,

Informal Commons や Exhibit Files 等におけるメタデータの構築方法等を参考にし

た。これら調査においては対話型学習モデルに基づき博物館資源と来館者をインターネッ

トで双方向的に結び付けるシステムはみられず,本研究の独自性を明確にすることができ

た。

(3)

システム開発は従来の研究成果を活用し,集積された科学系博物館のプログラムをもと

ラムの対象・目標・内容・実施館等の情報をデータベースに登録,表示し,各博物館がそ

れを活用してプログラムの改善と開発を行い,新たなプログラムを追加できるシステムを

再構築した。

(4)

実施班として,各地区の拠点博物館の学芸員が中心となり,データベースの活用とプロ

グラムの改善・開発を行う。それに先立ち,データベースの活用方法およびプログラムの

改善・開発に関して九州・北海道地区を中心に博物館等の職員を対象に研修を行い,シス

テム導入に向けた準備を行った。

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(1)

平成25年度

(1)海外先行事例との意見交換と成果発表

大英自然史博物館が進めている

Real World Science について担当者と意見交換を行っ

た。

Real World Science は科学学習プログラムの目標を 4 つに分類し,対象を就学期間の

年代(

KS:キーステージ)に分けた枠組みに基づき,英国内の 8 つの連携博物館が科学

学習プログラム開発と実施を行っている。

Real World Science のここ数年の取り組みは,

初等中等教育が中心であり,生涯学習の観点からのアプローチはなく,本研究の独自性を

明確にすることができた。

研究代表者らが

AAAS(アメリカ科学振興協会)の年次大会でこれまでの成果を発表し,

特に東北地区の放射線教育プログラムの取り組みなどが高い評価を受けるとともに,大会

参加者と意見交換を行った。

(2)科学リテラシーの評価方法の策定

従来の研究で開発した「世代別枠組み」を再検討し,博物館利用者の世代,科学に対す

る興味・関心等の区分からとらえた科学リテラシーの評価方法を策定した。本システムに

登録したモニターが学習プログラム参加後に回答することを想定したアンケートの質問

項目を検討し,以下の科学リテラシーパスポートβシステムにアンケートの送受信機能を

組み入れた。

(3)「科学リテラシーパスポートβ」導入のための準備

5つの地区の

16 の博物館・機関の学芸員等が中心となり,データベースの活用と学習

プログラムの開発・改善を行った。それに先立ち,データベースへの学習プログラム情報

の登録やその活用方法および学習プログラムの開発・改善に関して東北・関東・関西地区

を中心に博物館等の職員を対象に研修を行い,システム導入に向けた準備を行った。

(4)「科学リテラシーパスポートβ」の試験的運用

蓄積された各博物館の学習プログラムの対象・目標・内容・実施館等の情報をもとに,

データベースの構築を行った。各博物館の学芸員が本データベースを活用して学習プログ

ラムの改善と開発を行い,新たな学習プログラムを追加できるようにするとともに,登録

したモニターの自己学習履歴が蓄積されるシステムを構築し,試験的運用を行った。運用

に際し学習プログラム情報等のデータベース化に伴う著作権や個人情報の扱い等につい

て検証し,学芸員・登録モニターへ検証成果の周知を図った。データベースに登録された

学習プログラム情報は

220 件,また各館にて学習プログラムを実施し,参加者のモニター

登録を促し,

267 名が本システムに参加した。

平成26年度

(1)

システム開発班は,前年度に引き続き「科学リテラシーパスポートβ」システムの改善

を行った。その際,実施班での導入実績を踏まえ,より利用者が利用しやすい,インセン

13

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(1)

ティブが高まるサイト構造への改善と学習履歴を確認して,利用者から見た博物館の活用

モデルが構築できるシステムに改善した。

(2)美術館・歴史系博物館への導入

美術館や歴史系博物館においては,「世代別枠組み」の科学リテラシーの目標である「感

性」の涵養に資するなど,美術館・歴史系博物館の教育環境を踏まえたシステムの導入を

行った。

(3)各地区での「科学リテラシーパスポート」の運用

「科学リテラシーパスポートβ」に基づき,北海道地区では動物園・科学館・歴史系博

物館,東北地区においては科学館,関東地区においては自然系博物館・科学技術系博物館・

美術館,関西地区においては総合博物館・歴史系博物館,九州地区においては大学博物館・

美術館・水族館のネットワークの中で運用し,学習プログラムを実施した。データベース

に登録された学習プログラム情報は,

427 件,また各館にて学習プログラムを実施し,参加

者のモニター登録を促し,約

900 名が本システムに登録した。

(4)活用事例の集積・分析と評価方法の検討

本システムに登録した利用者が学習プログラム参加後に回答することを想定したアンケ

ートの質問項目について,その分析を行い,評価方法の再検討を行った。

(5)中間評価と研究成果の普及

本研究の2年間の成果をまとめ,研究会を日本科学教育学会で公開で行い,中間評価を

行った。また,

PCST (International Public Communication of Science and Technology

Conference) , STEM (Science, technology, engineering, and mathematics) ,

AAAS(American Association for the Advancement of Science)といった国際学会の場で研

究成果の普及を行った。また国際的な博物館学・博物館教育の研究者から外部評価を行い,

本研究の独自性について高い評価を受けた。アジア地域では

ASPAC 加盟館等の協力を得て,

学習プログラムを検討し,本システムの国際的な比較と改善を進めている。

14

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

第2章 第2節 項目1

博物館における生涯学習の動向と今後の方向性

高安礼士

千葉市科学館

1.生涯学習のはじまり

「生涯学習」または「生涯教育」は,「現代人に対する技術革新・都市化・工業化・高学

歴化・高齢化・核家族化・価値の多様化・地域間格差化・余暇の増大・性の商品化等の急

激な進行に対応するために,生涯にわたる学習の必要性」から,1965 年開催のユネスコの

第三回成人教育推進国際委員会の勧告書において,当時のユネスコ国際成人教育部長ポー

ル・ラングラン(Paul Lengramd)によって提唱された。(

酒匂一雄他『生涯学習の方法と計画』 p。p9-10

その後,同様の考えから 1968 年ハッチンズの『学習社会論』,1970 年ラングラン自らの

や 1973 年 OECD(経済協力開発機構)によるリカレント教育が提唱された。特にリカレン

ト教育は,生涯にわたる職業教育をねらったもので,簡単に言えば義務教育を終えた人々

が一定期間の労働と学習を繰り返して継続的に行うシステムであるといえる。

ラングランの後を次いで部長に就任したイタリアの E・ジェルピによって,やや曖昧さの

残していた「生涯教育」の概念はより深い展開を見せた。すなわち,社会参加の基本的権

利としての生涯教育である。これらを受けて,1985 年のユネスコ第4回国際成人教育会議

において,生涯にわたる学習の権利を保障する『学習権宣言』が提唱された。

『学習権』の内容としては,

① 読み書きの権利 ②問い続け,深く考える権利 ③想像し,創造する権利

④自分自身の世界を読み,歴史をつづる権利 ⑤あらゆる教育の手だてを得る権利

⑥個人的・集団的力量を発達させる権利

とされている。

として新たな展開をみせる。1965 年の ILO 総会において「家庭に責任を持つ婦人の雇用に

関する決議」が採択され,1974 年の総会では「有給教育休暇に関する条約」も採択されて

いる。このような流れはヨーロッパの先進諸国に影響を与え,1971 年にフランス,1973 年

にベルギー,1974 年にスウェーデンなどが条約を批准し,国際的な流れとなっていると言

われている。

我が国においては,労働省によって 1975 年に「有給教育訓練休暇奨励金交付制度」,能

力開発促進法によって 1985 年から「生涯能力開発給付金制度」が導入されている。

2.我が国における生涯学習の展開

(1) 生涯学習前史―社会教育の歴史―

戦後日本国民は初めてこの法令によって「教育を受ける権利」を得たほか,社会教

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

育が公教育としての法的根拠を持ち,国民自らが行い教育であり,国や地方公共団体

が「助長,奨励」するものとして位置づけられた。具体的には,図書館・博物館・公

民館などを社会教育機関として明文化した。

イ 社会教育法(1949 年)

があることを分類し,主として青少年と成人を対象として行われる組織的な教育活

「博物館」を設置し,学校施設の利用等の適切な方法で「家庭教育」および「勤労

の場所その他の社会で行われる教育」の目的の実現を地方公共団体が図ることを明

記した。

ウ 社会教育施設の整備について(1959 年社会教育審議会答申)

戦後の社会教育法の制定にかかわらず,社会教育施設の設置の進まない状況に対して次

の三点を強く要望した。

①社会教育施設運営費補助額の増額

②社会教育施設建設費補助の増強

③昭和 28 年度における社会教育施設の建築に対する起債の確保

エ 社会教育施設の振興の方策はいかにすべきか(1966 年社会教育審議会答申)

地方公共団体の財政的立ち直りの状況に鑑みて,いくつかの改善点を提言した。

オ OECD 教育使節団の報告(1970 年)

「一般に教育制度は教育内容そのもので評価できるものではなく,それが機能する

社会の構造との関連においてのみ評価できるものである」とし,日本の学校教育を中

心とする構造を説き明かした。先進的教育学者・ジャーナリスト・経済界等の識者へ

の影響は大きく,それ以後の我が国の教育制度に大きな影響を与えた。この報告書は

社会構造と教育効果の関係を論じ,「脱工業社会にあっては,教育が将来の生活の準

備以上のものとなり,教育が生活そのものとなる」として,当時のアメリカの理想的

教育論を展開して「生涯教育」も提案している。この報告から4半世紀たった我が国

でもようやく生涯学習の時代を迎え,学校が中心であった教育システムが変わろうと

している。

生涯学習は,学校教育の補完ではないし,就職のための再訓練(リカレント教育)

でもない。ここでは,生涯を通じて学ぶことを楽しみ豊かな生活を享受することが何

よりも重要な意味をもつのである。したがって,博物館の意義も社会構造との関連で

考えることが必要となる。世界の有名博物館はそれぞれの国や地域なりの独特の在り

方を示している。このことから博物館はその国や地域の人々によって育てられるもの

であると言えるだろう。

カ 急激な社会構造の変化に対処する社会教育の在り方について(1971 年社会教育審議

会答申)

国立社会教育研修所『博物館に関する基礎資料』国立社会教育研修所,2000)

社会構造の変化をいい,それらに対処するために「生涯教育」が必要との認識を示

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

したものである。また,公民館・図書館・博物館における専門職員である社会教育主

事・司書・学芸員の必要性を説いた。

キ 生涯教育について(1981 年中央教育審議会答申)(

国立社会教育研修所『博物館に関する

これまでの生涯教育の流れを整理して,人の生涯を①成人するまでの時期 ②成人

の領域別の課題として「家庭教育機能の充実」「学校教育の弾力化と成人教育に対す

ク 社会教育施設におけるボランティア活動の促進について(1986 年社会教育審議会)

社会教育施設におけるボランティア活動を提言し,またその社会的評価も提案して

いる。

ケ「生涯学習体系への移行」

酒匂一雄他『生涯学習の

方法と計画』p.p31-33

「臨時教育審議会」第二次答申は,これまでの社会教育と学校教育を柱とする教

がら,米国を始めとする諸外国との経済摩擦の解消,内需拡大等をねらいとした財

界好みのもの」

酒匂一雄他『生涯学習の方法と計画』p15

)という批判もあるものの,こ

れまで学校教育にのみに閉ざされていた「教育・学習の拡がり」を国民の前に提示

した効果は大きいと言えるだろう。

コ 「生涯学習体制の整備」の閣議決定と文部省生涯学習局の設置

「生涯にわたる学習機会を総合的に整備する視点から,民間教育事業との連携の

在り方を含め社会教育に関する法令の見直しに速やかに着手し成案を得る」

「生涯を通じ職業能力開発を総合的に推進するため,企業における職業能力開発の

振興,社会人が学習できる場としての大学・大学院等の整備,職業訓練施設等の整

備,育成及びこれらのネットワークなどの仕組みについて検討する。また,勤労者

の自己啓発を促進するための労働時間の短縮,有給教育訓練休暇制度の普及等をは

かる」

「各種スポーツ・レクリエーション行事の拡充,指導者の充実に努めるとともに民

間活力の導入等による一定地域を総合的かつ重点的に整備するための施策について

所要の調査研究を進める」等とした。

その手始めとして,1988 年 7 月社会教育局を拡大再編成して生涯学習局を発足さ

せた。

(2)「生涯学習振興整備法」の制定(1990 年:平成2年)

社会教育実践センター『博物館に関す

る基礎資料』)

我が国においてはこの法律の年を「生涯学習元年」といい,正式に国・県・市町村で民

間活力を活用するという「生涯学習」が始まった。

いわゆる「生涯学習振興整備法」であり,これをもって日本の生涯学習体制づくりの本

格的な展開が始まった,と言われている。

17

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

申)

「豊かな生涯学習社会」づくりのための当面の重点的課題として,以下の4点をあげて

いる。

①社会人対象のリカレント教育の推進・・・・・高等教育機関と企業の密接な協力を強調し,

職業能力開発のみならず一般教養も含めて企業の経済支援を考慮した有給教育訓練

休暇制度等の活用によるリカレント教育休暇の提唱等

②ボランティア活動の支援・・・・・・・・・・社会福祉活動に限定せず,地球環境問題,開発途

上国や外国人への支援等の国際協力にまで範囲を広げ,ボランティア休暇・休職制

度の積極的導入・普及を提唱

③学校週5日制に対応した青少年の校外活動の充実・・・・・

④現代的課題に関する学習機会の充実・・・・・国際化・情報化等の急速な進展を反映した

19 の課題を提示

ウ「地域における生涯学習機会の充実方策について」(生涯学習審議会(1996.4)答申:平

成 8 年4月)(

社会教育実践センター『博物館に関する基礎資料』

生涯学習の振興については,本審議会は平成4年7月に「今後の社会の動向に対応した生涯

学習の振興方策について」答申を行った。この答申では,生涯学習社会を「人々が生涯のいつ

でも,自由に学習の機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される」ような社

会と定義している。そして,当面重点を置いて取り組むべき課題として, i ) 社会人を対象としたリカレント教育の推進, ii) ボランティア活動の支援・推進, iii) 青少年の学校外活動の充実, iv) 現代的課題に対する学習機会の充実,

の四つを挙げるとともに,学習者の立場に立って,生涯学習全般にわたる振興方策を提言して

いる。審議の観点は以下のとおりである。

①大学をはじめとする高等教育機関

高等教育機関は高度で体系的かつ継続的な学習機会の提供者として,生涯学習社会の中で重

要な役割を果たすことが期待されている。高等教育機関においては,既に生涯学習機能を十分

に発揮しているところや,様々な改革努力を行ってきているところも見られるが,生涯学習の

推進という観点から社会の期待に十分にこたえるには,更に全体として広く社会に開かれなけ

ればならない。年齢に関係なく人生のいつでも必要な時に必要な学習ができる場として高等教

育機関が自ら変わっていかなければ,真の生涯学習社会は実現しないと言っていい。また,社

会人学生を受け入れることに加えて,施設の開放などによる地域社会への貢献も一層期待され

会人の受入れの促進」及び「地域社会への貢献」を進めるため必要な施策を提言した。

②小・中・高等学校など初等中等教育の諸学校

これらの学校は,人間形成の基礎を培う場であるとともに,生涯学習の基礎を身に付ける場

でもある。すなわち,自分で考え,判断し,行動する力を養い,生涯にわたって学習を続ける

ための意欲と能力を培う場である。また,子どもは地域社会の中で様々な教育的な影響を受け

て育っており,学校がその機能を十分に発揮するためには,地域社会と良好な連携・協力関係

を維持し,地域社会とともに発展するように努める必要がある。特に,学校週五日制が導入さ

れ,またいじめ問題への対応が課題となっている今日,学校と家庭や地域社会との連携の必要

性はますます大きくなっている。さらに,学校の施設は地域住民の学習活動の場として活用さ

れ,それを通じて地域社会づくりや人々の連帯感をはぐくむことにも役立つものであり,地域

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

社会への一層の開放が求められる。したがって,ここでは「地域社会に根ざした小・中・高等

「地域社会の教育力の活用」 「地域社会への貢献」を進

めるため必要な施策を提言した。

③社会教育・文化・スポーツ施設

これらの施設においては,既に地域の人々の活発な学習活動が展開されている。これらの施

設は本来,地域住民の多様な学習ニーズにこたえるために整備されたものであり,生涯学習機

会を提供する場として最も基本的な役割を担っている。地域住民にとって,これらの施設は今

後とも生活の質を高める上で欠かすことのできない存在である。さらに,学習を通じて人間関

係を深め地域意識を涵養し,豊かな地域づくりを進めていく上でも一層重要なものとなってい

くであろう。特に青少年の学校外活動をより豊かで充実したものにするために,これらの施設

の果たすべき役割は大きい。今後の課題は,ますます多様化し高度化する地域住民の学習ニー

ズにいかに柔軟,迅速,的確にこたえていくかということであろう。したがって,ここでは「地

様化・高度化する学習ニーズへの対応」 「組織運営の活性化」を進めるため必要な施策を提言

した。

④各省庁や企業の研究・研修のための施設

もとより,これらの施設は,それぞれの専門分野に関する研究・研修を目的に設置されてい

るものであり,教育活動を本来の業務とするものではない。しかし,それらが有する専門的で

高度な人的資源,施設設備,知識,情報,技術などは,生涯学習という観点から見て,貴重な

学習機会を提供し得る可能性を持っている。これらの施設は様々な資源を活用して,人々の多

様化し高度化する学習ニーズにこたえ,これからの生涯学習社会の中で重要な役割を果たすこ

とが期待されている。したがって,ここでは「生涯学習に貢献する研究・研修施設」という観

「多様な学習機会の提供」 「地域社会との連携」を進めるため必要な施

策を提言した。

題名といい,内容といい昭和 46 年

①今後の社会教育施設の運営体制の在り方

②今後の社会教育指導体制について

③その他,社会の変化に対応した今後の社会教育推進上の課題

についての文部大臣からの諮問を受け,平成 10 年3月に答申したものである。

を展開し,

・地方公共団体に対する法令等に基づく規制の廃止・緩和(博物館登録要件の緩和)

・社会教育施設の運営等の弾力化(社会教育施設管理の民間委託)

・地域の人材が活躍できる場としての社会教育施設の活用

・生涯学施設間の連携

これらの答申を受け,生涯学習審議会は平成 11 年 6 月に「生活体験・自然体験が日本

の子どもの心をはぐくむ」答申を行った。

現在の日本のさまざまな緊急的課題にこたえるためにまとめられたものであり,そのまと

め方がこれまでにない方法で行われたことが高く評価されている。

(3)新しい新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について~知の循環型社会の構築を目

指して~

平成17年6月の諮問「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」を受けて

19

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

<第1部> 今後の生涯学習の振興方策について

○総合的な「知」が求められる時代-社会の変化による要請

1)生涯学習の振興への要請-高まる必要性と重要性

社会の変化に対応していくためには,自ら課題を見つけ考える力,柔軟な思考力,身

に付けた知識や技能を活用して複雑な課題を解決する力及び他者との関係を築く力に

加え,豊かな人間性等を含む総合的な「知」が必要となる。また,その他,自立した

個人やコミュニティ(地域社会)の形成への要請,持続可能な社会の構築への要請等

を踏まえ,生涯学習振興の必要性が高まっている。

2)社会の変化や要請に対応するために必要な力

○次代を担う子どもたちに必要な「生きる力」

子どもたちに必要とされる「生きる力」は学校教育のみならず,実社会における多様

な体験等と相まって伸長していくもの。子どもたちが学校の内外で,その発達段階に

応じて「生きる力」を育むことができるような環境づくりが求められている。

○成人に必要な変化の激しい時代を生き抜くために必要な力

成人についても,変化の激しい社会を,自立した一人の人間として力強く生きてい

くための総合的な力を身に付けることができるよう,生涯にわたって学習を継続でき,

その成果を適切に生かせる環境づくりが求められている。

3)目指すべき施策の方向性

○国民一人一人の生涯を通じた学習の支援-国民の「学ぶ意欲」を支える~「個人の要

望」を踏まえるとともに「社会の要請」を重視~

・今後必要とされる力を身に付けるための学習機会の在り方についての検討

より効果的・効率的な社会教育のプログラムの在り方等について検討。成人について

も,社会の変化に対応できる総合的な力について検討。

・多様な学習機会の提供及び再チャレンジが可能な環境の整備

「学び直し」や新たな学びへの挑戦,学習成果を生かすことが可能な環境を整備。

・学習成果の評価の社会的通用性の向上

民間事業者が提供する学習機会について,その学習内容や学習成果等の質の保証や評

価を行う方策や,行政と民間事業者との連携方策等について検討。

○社会全体の教育力の向上-学校・家庭・地域が連携するための仕組みづくり

・社会全体の教育力向上の必要性

子どもの「生きる力」や,変化の激しい社会を生き抜くための成人の力を育成するた

めの環境づくりに社会全体で取り組むことが必要。

・地域社会全体での目標の共有化

どのような仕組みをつくってその教育力を向上させていくのか等について,地域社

会の各関係者が,当該地域社会におけるニーズを踏まえ目標を共有化することが必要。

・連携・ネットワークと行政機能に着目した新たな行政の展開

ネットワークを構築することにより,必要としている者に行き届くきめ細かい対応

をすること及び必要とされるところに「出向いていく」行政を推進することが必要。

4)具体的方策

○国民一人一人の生涯を通じた学習の支援-国民の「学ぶ意欲」を支える

①今後必要とされる力を身に付けるための学習機会の在り方についての検討

・子どもの学校教育外の学習や活動プログラム等の在り方の検討

20

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

②多様な学習機会の提供,再チャレンジが可能な環境の整備

・社会教育施設等を活用した多用な学習の場の充実 ・相談体制の充実

・情報通信技術の活用 ・再チャレンジ支援 ・学習成果を生かす機会の充実

③学習成果の評価の社会的通用性の向上

・履修証明制度等の活用 ・多様な教育サービスの在り方やそのための質保証の在

り方の検討

○社会全体の教育力の向上-学校・家庭・地域が連携するための仕組みづくり

・身近な地域における家庭教育支援基盤の形成等 ・家庭教育を支援する人材の養成

・学校を地域の拠点として社会全体で支援する取組の推進(学校支援地域本部,放

課後子ども

プラン) ・学校・家庭・地域を結ぶPTA活動の充実

・地域の教育力向上のための社会教育施設の活用 ・大学等の高等教育機関と地域

の連携

5)施策を推進する際の留意点

○「個人の要望」と「社会の要請」のバランスの視点

○「継承」と「創造」等を通じた持続可能な社会の発展を目指す視点

○連携・ネットワークを構築して施策を推進する視点

3.まとめと課題

(1) 社会教育と学校教育の役割分担と融合

明確と言われる。しかしながら,逆に学校教育に関しても,その目標や成果,学校教育

の中心とされる教科指導の評価に関係して「進学指導」がないとしたらはなはだ不確か

とは言えないだろうか。

つまりは,どちらにも実践はあるが理論が不足しているのではないか。この際考える

令に基づき考え,また新たな条件を補足すべきであろう。

(2) 生涯学習の目的と対象

同様なことは生涯学習についても言えるのではないか。生涯学習は「学校教育」と「社

会教育」を「統合」するものとしてあるのか。つまり,教育・学習は誰のために,何を

めに,その社会の維持・発展を行う公共的事業である。しかしその根拠は何か。

これまでは,教育基本法において「教育の目的は人格の完成」にあるといわれてきた

ものが,現代社会においては「現代的課題」を解決する能力の開発も加わったと考える

べきだろう。日本も欧米型の小さな政府による経済的発展をねらった新たな「資格社会」

に入ったと考えるべきであろう。

(3) 科学教育の課題

今回の報告の資料である『生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ』につ

いては,これまで経験してきた「科学教育」についていろいろ述べている点が興味を引

く。しかし,いくつかの点で違う内容となっていることは気になる。そのいくつかを述

21

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

べると

①小学校でも,中高校でも理科の実験はほとんど行われていない。

②家の手伝いや地域の活動に参加する子どもは「気のよい人」というのは分かるが,

勉強を一生懸命やる人を悪くいう理由が分からない。甲子園やサッカー日本一を目

指すのとどこが違うか。努力に対する見返りが悪く,個人の金銭的利益のために勉

強する人はいない。

③生涯学習への対応と言っているのが,それが何のためか書いていない。

④総合的学習への対応もいうが,その目的が明確ではない。やりっ放しの勉強のこと

を行っているわけではないとは思うが。

⑤本当に国際競争力のある科学技術を構築するのに体験学習や愉快にやる学習でよ

いのだろうか。

以上,分からない点も多いが,今回の報告を元に,「知の循環型社会における対話型

博物館生涯学習システムの構築に関する基礎的研究」における「なぜ学習が必要か」に

ついては共通理解を図っておきたい。

22

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-①

参考 1.サイエンス・リテラシーとサイエンスコミュニケーションに関する動向

参考 2.注目すべき科学的推論:アブダクション

関連資料

1 日本国憲法

2 教育基本法

3 学校教育法

4 社会教育法

5 ポール・ラングラン著,波多野完治訳『社会教育の新しい方向』ユネスコ国内委員会,1967

6 ポール・ラングラン著,波多野完治訳『生涯教育入門』全日本社会教育連合会,1971

7 ジェルピ著,前平泰志訳『生涯教育』東京創元社,1983

8 社会教育実践センター『博物館に関する基礎資料』国立社会教育研修所,2010

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

第2章 第2節 項目2

学校教育の動向と「科学リテラシー涵養活動」の関係性

高安 礼士

千葉市科学館

1.はじめに

2008 年 3 月に新しい「学習指導要領」が発表

され,現行の学習指導要領で強調されてきた「生

きる力」は継続して提案され,それらを支える

方向性として「活用能力の育成」などが提案さ

れている。今回の学習指導要領の改訂は,これ

までの改訂と違ってかなり特別な状況下で行わ

れた。それは,教育関係の最高法規である教育

参考1.学習指導要領の変遷

第 1 回(昭和 26 年)の教育課程改訂:

・経験主義教育をめざすもの

1947(昭和 22)年に,戦後の学校教育を再建するために,学

校教育の中味を示す国の基準の試案として「学習指導要領」と

いうものが作られた。カリキュラム編成の見本として,新設「社

会科」が花形教科となり,「平和と民主主義」を強調した「新

教育」

(自主カリキュラム)運動としての側面がだされた。その

後の

1952(昭和 26)年に,カリキュラム編成の手引きとして,

基本法の改定を受けて,学校教育法,教員免許

法,教育公務員特例法などの関連法令等の改訂

会議」や「教育再生会議」等の内閣の諮問機関

から社会全体で教育を支える方向が示され,学

校教育も地域等との協力関係も求められる状況

下にあることも考慮することが必要とされてい

る。

ここでは,

20 年の学習指導要領の改訂(平

23 年から実施)の時代背景と今後の科学技術

教育の方向性を,科学系博物館における教育普

及事業との関係の中で考えてみた。

2.新しい学習指導要領とカリキュラム開発

学習指導要領は,各学校におけるカリキュラ

ム開発(教育課程編成)上で最も大切なもので

科ことに授業時数の比率」を示し「生活単元学習」の全盛へと

導いたものである。

2 第 2 回(昭和 33 年)の教育課程改訂:

・系統主義・本質主義への転換

・教育課程の基準としての性格の明確化

(道徳の時間の新設,基礎学力の充実,科学技術教育の向上等)

(系統的な学習を重視)

第 3 回(昭和 43 年)の教育課程改訂:

・教育内容の現代化に即応

「教育内容の現代化」

(時代の進展に対応した教育内容の導入)

(算数における集合の導入等)

4 第 4 回(昭和 52 年)の教育課程改訂:

・初めて教育水準をダウン

ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化

(各教科等の目標・内容を中核的事項にしぼる)

5 第 5 回(平成元年)の教育課程改訂:

・隔週五日制と生活科の導入

社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成

(生活科の新設,道徳教育の充実)

第 6 回(平成 10 年)の教育課程改訂:

・完全五日制の実施と総合的学習の導入

基礎・基本を確実に身に付けさせ,自ら学び自ら考える力

などの[生きる力]の育成

(教育内容の厳選,「総合的な学習の時間」の新設)

新学習指導要領:「言理伝道体外特」の充実

上で述べたように)さまざまな前提条件下で検討が進められたものである。その中でも特に今回

の学習指導要領で目すべき点は,各学校における教育課程の編成,すなわちカリキュラム開発は,

学校内ばかりでなく,地域や学校経営全体を計画の中で作成されなければならない,という「新

(学習指導要領の変遷を右に挙げた。

今回の改訂は,歴史上「第三の教育改革」と呼ばれる,公教育制度全体に関わる改革の一環と

24

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

て,基本的知識・技能の習得型の学習を,教科を超える総合的学習における探究型の学習に,効

果的につなげることをめざしている。また,学習意欲や学習習慣を重視して,学習時間や授業時

間の確保や増加を図ることを目指すとともに,学校経営の全体の中でカリキュラム・マネジメン

トを重視した現場の尊重である。

教育内容に関する基本的な改善事項は,

①言語活動の充実の充実

②理数教育の充実

③伝統や文化に関する教育の充実

④道徳教育の充実

⑤体験活動の充実

⑥外国語教育の充実

⑦特別支援教育の充実

である。その他には,

・環境,家族と家庭,消費者,食育,安全に関する学習を充実

・情報活用,情報モラルなどの情報教育を充実

・障害に応じた指導を工夫(特別支援教育)

「はどめ規定」

・発達の段階に応じた学校段階間の円滑な接続

などがあげることができる。

3.新学習指導要領と理科教育の方向性

2008 年 1 月 17 日に,第4期中央教育審議会から

「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支

援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」

が公開され,この答申では,現行の学習指導要領

で強調されてきた「生きる力」を支える能力とし

て「思考力・判断力・表現力」が強調され,新し

い方向性として「活用能力の育成」などが提案さ

れている。その基礎にあるのは,教育を「データ

に基づく議論」するために利用される「国立教育

などの国際学力調査」である。これらの調査は,

単に学習達成度の得点を比較するのみならず,本

来習得すべき「学習到達目標」の各種側面が重要

となる。特に,PISA 調査はその問題作成の過程や

そのねらいが「キーコンピテンシー」といわれる

「基礎的な能力」の育成とその達成度にあり,世

界の新しい学習基準として認識されていることか

参考2.各教科等の主な内容の改善

○総則

・改正教育基本法等を踏まえ,伝統と文化を尊重し,

それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し,公

共の精神の尊び,他国を尊重し,国際社会の平和

と発展や環境の保全に貢献する主体性のある日

本人を育成することを道徳教育の目標に規定

・「生きる力」という理念の共有

・知識・技能を活用して課題を解決するための思考

力,判断力,表現力等の育成,言語活動の充実,

学習習慣の確立等を規定

・中学校の道徳教育では,職場体験活動等を通じ,

自他の生命の尊重,規律ある生活,自己の将来,

法やきまりの意義の理解,社会の形成への参画,

国際社会に生きる日本人としての自覚を重視す

ることを規定

・確かな学力を確立するために必要な授業時数の確

・体力の向上に加え,食育の推進や安全に関する指

導を規定

・学校教育の一環として生徒が自発的に取り組む部

活動の意義や留意点を規定(中学校)

○理科改訂の要点

要点1:理科に対する学習意欲の向上

要点2:観察,実験や自然体験,科学的な体験,言

語活動の充実

要点3:科学的な概念の理解など,基礎的・基本的

な知識・技能の確実な定着

要点

4:科学的な思考力・表現力を育成する学習

要点

5:指導内容の順序性の柔軟化

要点6:小中高等学校における学習系統性の理解

ら,新学習指導要領においても特に注意が払われ

25

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

ている。

今後の理科教育を考える際には,

①教育は学校のみならず国民総掛かりで対処する学校経営に努めること

②教科活動もカリキュラム開発という視点から「学校全体で取り組む」こと

③学校経営の立場からは評価に基づく「PDCA サイクル」をまわすこと

④社会のための科学という視点からは「科学技術リテラシー」

⑤課題解決型学習という視点から「探究的な学習」

⑥地方分権に対応するものとして「地域の教育資源を活用した科学技術教育」が重要

と考えられる。

(1)中核概念としての論理的思考力

新しい学習要領で思考力・判断力・表現力が強調されるのは,

PISA 型読解力や IEA(国際数

学・理科教育到達度調査学会

TIMSS)などの影響である。これらの国際調査を受け,文部科学省

による学力調査や千葉県の学力調査が実施されたが,内容的には国際学力調査のデザインに負う

ところが多い。学力調査もグローバルスタンダードに準拠せざるを得なくなっている。

ところで,思考力が問われたのは今回が初めてではなく,これまでも何度となく言われてきた

ことである。しかし今日改めて問題視されているのは,先に述べた国際的な学力テストで問われ

ている「課題発見・解決型」の学力であることから,改めてその中核的な概念である「論理的思

考力」が問われることとなったのである。

今後の社会においては,科学技術に強く依存することから様々な学習も科学技術教育に強い影

響を受けることとなった。先に述べた国際学力調査が,文化に依存しない分野,すなわち科学的

分野で行うことが基本となっており,様々な学力調査内容の多くが数学や科学技術研究の今日的

な状況に影響を受けている。その特質とは,

・科学技術の領域が拡大し,純粋な自然物よりも人間社会システムを構成する人工物( artifact)

が中心となってきている。

・その結果,純粋科学よりも技術に依存することが多くなっている。

・また,真理を追求する因果関係追求的研究よりも「目的達成型研究開発」が中心となった。

題解決型(目的論的)研究・開発の重要性がより強くなってきた。

これまで,特に

1960 年代までの科学研究の中心は「技術」よりも「科学」であり,それは特

に「因果関係」を追求する「学術的研究」が中心であった。しかし,アポロ計画を始めとするビ

ッグサイエンスの時代となり,研究をより計画的にマネージメントする必要性から徐々に「目的

論的アプローチ」が重要視され,今日の「研究資金獲得」や「研究成果の評価義務」によって,

更にその傾向が強まっている。成果を時間軸の中で示すことや様々な利害関係の中で提示・評価

するマネージメントの必要性がより高まる状況となっている。

また,今日では地球的規模の環境問題に代表されるように,原因と結果の直接的な説明が非常

に難しい問題や原子力発電のように利害関係が複雑であるテーマについても科学技術専門家が逃

れられない状況となっている。

これらの状況から,科学教育についても因果関係だけを追求し,その価値については「社会の

問題」としてきた「学会を中心とする学術研究」よりも課題解決を重要視する「目的論的なアプ

26

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

ローチ」が求められるようになってきた。この事情は経済学や社会学を始めとする「社会科学」

にも影響を与え,社会科学分野においても「目的論的アプローチ」が重要視されることとなって

いる。これらのことが今日の「

PISA 型学力」の根底にあり,日本における学校教育では「論理的

思考力」が打ち出される背景となっている。

(2)PISA による「科学的リテラシー」

「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し,意思決定するために,

科学的知識を使用し,証拠に基づく結論を導きだす能力」とし,その枠組みを「科学的知識・概

念」

①現象を記述し,説明し,予測すること

②科学的探求を理解すること

③科学的証拠と科学的結論を解釈すること

様々な状況で科学を用いることをあげている。

ちなみに,

PISA で調査しようとするのは,学校教育での達成度ではなく,義務教育の終わる

15 歳の年齢の時もっている知識や技能を,実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活

用できるかどうかを国際的な比較ができるよう測ろうというものである。ここでいう「知識や技

術の活用の力」を「読解力」

3 年ごとに

重点調査領域の調査項目を

2/3 と決め,残りの 1/3 を他の2領域に分けて調査を行うというもの

である。ちなみに,

2000 年は「読解力」に焦点を当て,2003 年は「数学的リテラシー」に 2/3

の問題を当て,分野にとらわれない「問題解決能力」を追加して調査を行った。科学的リテラシ

ーに関しては,

2006 年度中に行われることで準備が進められている。2000 年度の読解力調査で

は,日本の生徒が

OECD 平均程度までに低下したことを受けて,2005 年末に文部科学省は「読

解力向上プログラム」をまとめ,都道府県・指定都市教育長会議で配布した。都道府県段階でも

この種の試みが展開される予定である。

(3)Science for all Americans

「すべてのアメリカ人のための科学」は,米国科学振興協会によって「プロジェクト

2061」の

第1段階としてまとめられたもので,その後に続く「各州の学校教育のカリキュラムに反映させ

いる。この提言では,科学的リテラシーは科学,数学,技能,思考の習慣として考えられている。

元々アメリカでは,リテラシーは

19 世紀半ばには「小学校卒業段階の基礎学力」と考えられてお

り,

1930 年段階では「中学校卒業程度」,1950 年代では進学率の増大もあり「高校卒業程度の基

礎学力」と理解されている。

2001,p41)

(4)その他の国の状況

「科学的知識」以外の3つの基礎学力を加えたものとして捉えている。また,科学的探究能力,

27

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

分析的に捉えられ,発達段階に応じた「科学的態度」の育成が示されている。

イギリスの科学教育では,科学的探求能力がその中核的な役割を果たしている。2005 年に科学

未来館で行われた科学シンポジウム「世界物理年 2005-科学に若者をひきつけるために」の中で,

リーズ大学のフィル・スコット教授は「科学の概念」や「科学的な知識」とともに3つの「応用

「日常生活との関わり」をあげて,科学教育の適応範囲の広がりを紹介している。

(5)日本人のための科学技術リテラシー

ごく普通に言って,科学技術リテラシーとは「科学技術の知識・技術を運用する能力」という

ことがいえる。日本学術会議で 2008 年3月に策定された「日本人のための科学リテラシー像」は,

①日本人の感性や伝統を考慮する

②新しい時代の科学技術に即応する

③技術も重要な柱とする

④成人段階で考える(20才の大人)

⑤専門分野を総合する

⑥すべての人との対話を重視する

等を作成の方針として,日本人のもつべきリテラシーが構築され,その結果として,以下のよう

な効果が期待されている。

①人々にとって,身につけるべき基礎的知識・考え方・行動の指針となる。

②科学館・博物館・学校等で活動内容を検討する際の指針となる。

③メディアが科学技術コミュニケーションを考えるときの指針となる。

④政策担当者が科学技術と社会に関する政策を判断するときの指針となる

これらの背景となっているのは,科学の成果や活用に対して「共通の理解者」となることへの

期待である。科学技術リテラシーは「社会における科学と社会のための科学」を保証する基礎と

なる。

(6)科学リテラシーの核としての探求能力

科学リテラシーの中核をなすのは「探究的な学習」であり,その結果として問題解決能力が育

教育」であることを考えると,地域の自然や機関・施設及びそれらと密接なかかわりを持つ人材

を教育資源とした教育活動は,探求学習の中の「日常生活とのかかわり」や実感を伴った学習と

しての意義を増してくる。そのような意味で,科学技術の専門家として必要な「探究スキル」を

められる時代となったのである。

4.探求的学習と問題解決能力・活用能力と科学技術リテラシー

あり,もう一つは「科学的な探求」である。これまでこの探求の意味を「科学者や技術者のもつ

28

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

スキル」と理解し,理科教育のねらいを「科学者や技術者のもつ知識や技術の習得」と考えられ

てきた。科学の過程のスキルとしては,

①観察②分類③伝達

(Communicating)④測定⑤数の使用⑥空間・時間の認知⑦推論⑧予測⑨仮

説の設定⑩条件の統一⑪実験⑫操作的定義⑬モデルの構成⑭データの解釈

等が示されている。

これまでは,これらの資質技能を育成する教育プログラムをそれぞれの学習段階に適切に配置

することが求められていたのである。しかしながら今日では,理科系の技術者や理科教員にも「研

究所や企業活動の情報開示」や「開かれら学校づくり」に代表されるような「組織経営のマネー

も重視されることとなったのである。もっと幅広い理科教育が求められる時代となったのである。

筆者は,新たに「⑮外部との連携

(CommunicationⅡ)⑯科学技術の社会的役割と歴史的認識」の

追加を提案したい。

フィンランドのヘルシンキ大学のユーリア・エンゲストローム教授は「探求学習は産業社会に

特徴的なもので,これからは拡張的学習(expansive learning)を考える必要がある」と述べ,

「課題解決学習」や「総合的な学習」の方向性を示している。

特有の「自然を愛する心情」や「探究学習」の重視とともに,上であげた国々の科学教育の動向

と無関係ではなかったはずである。

5.今後の科学技術と理科教育

社会科学は,すべて社会(人工的環境)の中で起こっている事象に関する言説であって,本来

的に目的達成論的な学問である。一方,社会との関係性が少なければ少ないほど純粋でよいと考

じめとした様々な課題は,国際社会の制度や経済的問題との関係性の中で判断されることとなる。

理科や技術・家庭科,算数・数学等の科学技術教育は,今後とも更に「活用価値」や「文化的価

値」などの「社会的文脈」の中で考えることが必要になる。科学教育には,科学的な証拠に基づ

く社会的な論議がさらに求められる時代となる。

また,科学が科学たり得るためには,対象を示す「領域」と論理的な手順を示す「方法」が明

確に定義されていなければならない。その意味では,今日の自然科学は

19~20 世紀の物理・科

学を中心とした科学とはかなり異なっていることを認識する必要がある。

20 世紀初めまでは,多

くの科学はその理想を「ニュートン力学」に求め,狭い意味での機械論・運命決定論であった,

というべきであろう。特に学校における科学教育である「理科」は,入門段階では叙情的なもの

もあるが,中等教育にはいるととたんに数学的な基礎を持つ(線形代数的な)物理学を理想的方

法論として展開することとなっている。

19 世紀のイギリスに始まる科学教育論は,学習者中心の

「発見学習」を中心としたものから始まり,その後

20 世紀初頭のアメリカや 1960 年代の日本に

おける「科学教育の現代化」などで,

さて,今日の社会では純粋な「自然」科学はかなり狭い範囲となっており,私たちを取り巻く

29

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-②

すべきであろう。今日的な意味での「自然」とは,人工物を含む自然環境であり,その意味では

「社会」そのものも自然科学の対象として,科学的に論ずることとなっている。さすがに方法論

はこれまでの「自然科学方法論」に則って行うべきであるが,コンピュータの発達とも相まって,

統計学,確率論,シミュレーション,複雑系科学等を考慮したものとならなければならない。橋・

道路を始めとする建造物の設計や工事方法,危機管理,経済運営,環境問題など,どれをとって

も厳密解の存在が難しく,社会科学と同じように「合意」を「解」としなければならない「科学

技術」が存在することとなった。それはとりもなおさず,科学技術リテラシーと社会技術リテラ

シーを同時に考えることを意味することとなり,今後の科学教育を考えるには社会技術リテラシ

ーを考える必要がある。

その意味で理科教育も,その根底から考え直す時期に来ているのである。今回の「理科に関す

る新学習指導要領」はその第一歩として位置づけることができる。

6.学校教育の役割と博物館の連携の可能性

カリキュラム開発は今後の学校教育を考えるに当たって,教員の能力開発や地域の教育資源の

活用などを含めた「学校全体で行う教育課程の開発」を推進するための方策である。

その意味でも「科学技術教育」は理科・数学のみならず「技術・家庭科」及び「情報教育」を

一つの分野として捉え,学校全体の教科領域のカリキュラム開発を行うために中核的な役割を行

うべき教科である。

その意味で,科学技術リテラシーは狭い意味での自然科学のみならず算数・数学とともに技術・

家庭科や環境教育,キャリア教育棟を視野に入れながら,新しい学習指導要領が示す「地域に開

かれた学校つくり」や「活用能力の育成」等の新しい学習観の中核概念として役割が期待される

ものである。

それらの科学リテラシーの育成を科学系博物館などが支援し,教育委員会等との綿密な連携の

下,学習指導要領が求める「幅広い科学技術教育の構築」が可能となろう。特に学校教育では実

施することの難しい「実物資料を活用した学習」「教員研修」は,既に「地域の科学的活動の核」

としての役割を形成しつつあり,より幅広い地域の教育資源の活用を図りながら「裾野を広げて,

トップを伸ばす」科学技術教育形成のために科学リテラシー涵養活動が,以下のような効果に寄

与することが期待される。

① 理科教育も自然環境のみを学習対象するのみならず,社会的な環境もその対象できる

② 科学的探究方法も IT 技術や統計的手法などの幅広い新しい方法を提供できる

③ 言語活動の充実のためにサイエンスコミュニケーション活動が有用である

付記:本稿は,千葉県総合教育センター『科学技術教育』

2009 年 3 月)に掲載した「新しい学

習指導要領と「理科教育」の方向性」をもとに知見を加え修正したものである。

30

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-③

第2章 第2節 項目3

日本のサイエンスコミュニケーションの現状と課題

北原和夫

東京理科大学科学教育研究科,科学技術振興機構科学コミュニケーションセンター

1.サイエンスコミュニケーションとは

サイエンスコミュニケーションとは何かについては人々のもつイメージは多様である。

かつては,科学の専門家が一般の非専門家に科学の成果を伝えるという考え方が主流であ

った。しかし現在では,科学を通してあるいは科学的な思考を通して,社会の在り方を共

に考えていくという考え方が出てきている。2012年に発足した科学コミュニケーショ

発展を意識した活動が行われている。3.11において,社会において情報がもっと共有

され,また科学技術の現実認識が共有されていたらとの念があった。

2.サイエンスリテラシー

2005年から3年間150名程の科学者,教育者,技術者,行政者などが参加して「科

学技術の智」プロジェクトを実施,21世紀という時代に照らして全ての国民が身につけ

るべき科学技術の素養を言語化していった。普遍的な智の在り方を求めるものであった。

ついて必ずしも明確になっていなかったように思われる。その後の展開は,科学・技術に

ついての理解を定着化させるために啓発活動,科学コミュニケーション活動に発展してい

確であったところに,我々は3.11を経験することになった。

リスクも含めた科学・技術リテラシーの再構築,さらに何が豊かさなのかを再考する必

要性に迫られた。科学が伝えられても,また科学的考え方が伝えられても,対話がなけれ

ば,参加がなければ,社会は様々な変動に対応できないし,社会の変革は起こらない。

我々が目指すべきところは,対話,参加ということが日常性の中に定着する社会を「つ

くる」ことである。

. 科学的知見の暫定性:科学と民主主義

科学者・技術者と社会が共有できる「科学的な考え方」というのは何なのか。科学は自

然もしくは人間社会における現象を理解する営みであり,新たな知見が得られて,理解さ

31

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-③

れたことは修正されてさらに深められていく。一方で,技術とは何かというと,役に立つ

物もしくはシステムを設計して創出する過程である。その際には,与えられた条件のもと

で,失うものと得られるものとを良く斟酌して開発の方向性を決めていくのである。科学

が現象の理解,技術が設計と創出であり,異なる方向性をもつ営みではあるが,いずれも

永久不変な「正解」を与えるものではなく,現時点における「暫定解」を与えるものであ

るということに留意する必要がある。

あることが分かる。私たちは所属する集団の方向性を決めるときに,民主主義の方法によ

とに留意すべきである。そこで大事なことは,反対意見を記録に留め,また反対者がいた

ことも記録に留めておくことである。そうすると,決定後実際に実行してみて不都合が見

つかった場合に後戻りができる。むしろ全会一致の決定は危険であるとさえ言える。なぜ

なら不都合があっても,他の選択肢に向かって方針を修正することが困難になるからであ

る。ただし,大切なことは,反対の少数者をその集団から排除しないことが必要条件であ

る。視点の多様性を保持することが長い目でみて,その集団の健全な発展をもたらすので

ある。その意味で,民主主義の考え方は科学的な考え方と通じるところがある。

4. 科学的知見の公共性

また,近代の科学の成立の歴史を見てみると,科学的知見というものは「公共財」であ

るということが見えてきます。イギリスでは1660年に王立協会という学会が創立され,

以来雑誌を刊行してきている。それまでは研究の成果はその研究者個人もしくはその仲間

だけに留まっていた。しかし成果をおおやけにすることによって,さらに研究が継承され

て進展するのだという考え方が生まれて,学会が設立されたのである。成果を公共のもの

とすることの代償として,雑誌に論文を投稿して公表するという過程を通して第一発見者

の栄誉を社会が認知するということになった。同時代の1623年にイギリスでは特許制

度も始まった。これはだれでもアイデアを出して社会改良に参加できるようなシステムと

して作られた制度である。おおやけにするかわりに発明者の権利を守るのである。これら

の制度の背後には,科学と技術を個人のところに留めないで,公共財として公開すること

が社会の発展につながるという考え方がある。

公共財である以上,その発表の仕方などに一定の「作法」が必要となる。先行研究を引

用すること,新たな知見をその証拠を挙げて論理的に記述することなどである。このよう

な「公共財」という考え方で,研究が行われている限り,捏造といった倫理的な問題は生

じるはずがないのであるが,残念なことに研究現場で,研究とは何か,技術開発とは何か

という基本的なところが共有されないところで,問題が生じている。

5. 人間の本性としての科学の営み

私は科学という営みは,人が社会的存在であるという視点で考えたが,もっと人間の本

32

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-③

源的なところからくるように思われるのである。そこで「豊かさ」,「幸福感」が何かとい

う問いになる。

小学校までは理科好きの子どもが多いといわれている。好きであるということは一つの

快感もしくは幸福感の現れである。快感とは何かというと,おそらく生存の確かさを感じ

たときに得られる感情ではないだろうか。逆に不快感は生存が脅かされるときの感情では

ないだろうか。これらは長い進化の歴史の中で生き延びていくために獲得してきた感情で

はないかと思う。その快感が知的に高められたのが,好奇心,探究心など科学の営みにつ

ながる心情ではないだろうか。さらに,現実を見て次に起こることを予想し対応して生き

延びてきた歴史のなかで,好奇心,探究心,そして目に見えないメカニズムを推論する「想

像力」が育まれてきたのではないだろうか。そうだとすると,そのような好奇心,探究心,

想像力を抑圧する要因があると,逆に不快感やストレスとなっていくのではないだろうか。

小学校から中学,高校へと進むにつれて,学習内容が抽象化され,現実味を感じられなく

なると理科離れが起こると言われている。したがって,科学コミュニケーションにおいて

は,先ず,好奇心,探究心,想像力を人の本性と認めるところから出発することが必要で

ある。

6. 応答可能性(応答力)

欧州連合では responsible research and innovation が政治スローガンとなっている。ここに responsible ということばがあることが極めて重要である。responsible を「責任ある」と訳す

とその真意は伝わらない。responsible は決して「責めを負う」という責任の取り方を意味し

ない。response(応答する)と able(可能な)の結合したことばであり,敢えて訳せば「応

社会や環境が変化しているときに,人々にには二つの対応の仕方がある。一つは「適応

する(adapt)」ことであり,もう一つは「応答する(response)」ことである。適応は変化をそ

のまま受動的に受け入れて生き延びようとする。応答は能動的で,もし変化に問題があれ

ばそれを是正するし,さらにあるべき姿に向けて積極的に状況を変革しようとする。私は

21世紀人材育成とは「適応型」人材ではなく「応答型」人材を育成することであると考

えている。まさに欧州が研究とイノベーションに「応答可能な」responsible という形容詞を

用いているのは,社会変革を能動的に行うことの重要性を認識しているからである。

科学コミュニケーションの向かうべき先には,responsible individuals の協働によるよりよ

い世界の構築があるのではないだろうか。

33

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

第 2章 第2 節 項 目4

科学リテラシー涵養活動について

―その新たな展開を求めて―

千葉市科学館

高安礼士

1 .はじめ に

科学系博物館における学習 は,学校教育の影 響を受けながらも「学校教育 とは

異なる学習」を追求してきた。 生涯学習社

会を迎えることになり,その基 礎となる学

校教育との連携が求められると ともに「生

涯にわたる学習」が求められる こととなっ

た。しかし我が国における科学 系博物館に

個人的価値

習)に偏る傾向があった。

そこで,本プロジェクトでは 世代別の「学

習段階」を区分し,また学習目 標を「個人

文脈で学ぶ」「体系的に学ぶ」「 学術で生か

学術的価値 社会的価値

図 1 科学 系博物館 の社会 的機能

と学習プログラム作成の目標に よって科学

リテラシー涵養活動の目指すべ き領域を構

築した(表1)。

2 .21 世 紀の日本 社会で 求められ る能力 と科学 博物館の 役割

科学系博物館では,博物館 資料を用いて学ぶ ことが基本であるが,そのこ と自

体は教養講座的なものとなる 傾向がある。科学 系博物館は,情報社会の進展 にと

もなって単に科学情報の提供 のみならず「その 活用」を提示することが必要 とな

ってきた。そのための学習方 法として,これま での科学のプロセススキルの 修得

とともに課題発見・解決型の学 習補応報の開発 が求められることとなった。

そこで本プロジェクトではこ れまでの科学的 な探究学習(演繹・帰納法の 修得)

とともに,課題発見・解決型 学習(アブダクシ ョン)も方法として重視する こと

としている。

34

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

表 1 科学 系博物館 におけ る世代別 科学リ テラシ ー涵養活 動

3 .科 学教育や 生涯学習 におけ るさ

ま ざ ま な 科 学 教 育 の 目 標 と そ の 関

係 性

(1)現行の学習指導要領 における

扱い

2008 年 1 月 17 日に,第4期中央

教育審議会から「幼稚園, 小学校,

中学校,高等学校及び特別 支援学校

の 学 習 指 導 要 領 等 の 改 善 に つ い て

(答申)」が公開され,この 答申では,

現行の学習指導要領で強調 されてき

た「生きる力」を支える能 力として

「思考力・判断力・表現力 」が強調

され,新しい方向性として 「活用能

力の育成」などが提案され ている。

その基礎にあるのは,教育 を「デー

タに基づく議論」するため に利用さ

れる「国立教育政策研究所 による学

力状況調査」「

TIMSS や PISA など

の国際学力調査」である。 これらの

調査は,単に学習達成度の 得点を比

較するのみならず,本来習 得すべき

「学習到達目標」の各種側 面が重要

表2 各教科等の 主な内容の 改善

○総 則

・改 正 教 育 基 本 法 等 を踏 ま え ,伝 統 と文 化 を

尊 重 し,そ れ らを は ぐ く ん で きた我 が国 と

郷 土 を愛 し,公 共 の精 神 の尊 び,他 国 を尊

重 し,国 際 社 会 の平 和 と発 展 や環 境 の保 全

に 貢 献 す る 主 体 性 の あ る 日 本 人 を 育 成 す

る こ とを道 徳 教 育 の目 標 に規 定

・「生 きる力 」 と い う理 念 の共 有

・知 識・技 能 を活 用 し て課 題 を解 決 す る た め

の思 考 力 ,判 断 力 ,表 現 力 等 の育 成 ,言 語

活 動 の充 実 ,学 習 習 慣 の確 立 等 を規 定

・中 学 校 の道 徳 教 育 で は,職 場 体 験 活 動 等 を

通 じ,自 他 の生 命 の尊 重 ,規 律 あ る生 活 ,

自 己 の将 来 ,法 や き まり の意 義 の理 解 ,社

会 の形 成 への参 画 ,国 際 社 会 に生 き る日 本

人 として の自 覚 を重 視 する こ と を規 定

・確 か な学 力 を確 立 す るた め に必 要 な授 業 時

数 の確 保

・体 力 の向 上 に加 え,食 育 の推 進 や安 全 に関

す る指 導 を規 定

・学 校 教 育 の一 環 とし て生 徒 が自 発 的 に取 り

組 む 部 活 動 の 意 義 や 留 意 点 を 規 定 ( 中 学

校 )

○理 科 改 訂 の要 点

要 点 1:理 科 に対 す る学 習 意 欲 の向 上

要 点 2:観 察 ,実 験 や自 然 体 験 ,科 学 的 な体

験 ,言 語 活 動 の充 実

要 点 3:科 学 的 な概 念 の理 解 な ど ,基 礎 的 ・

基 本 的 な知 識 ・技 能 の確 実 な定 着

要 点

4:科学的 な思考力・表現力 を育成 する

学 習

要 点

5:指導内容 の順序性 の柔軟化

要 点 6:小 中 高 等 学 校 にお け る学 習 系 統 性 の

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

となる。特 に,

PISA 調査はその問題作成の過程やそのねらいが「キーコンピテ

ンシー」といわれる「基礎的 な能力」の育成と その達成度にあり,世界の新 しい

学習基準として認識されてい ることから,新学 習指導要領においても特に注 意が

払われている。

今後の理科教育を考える際に は,

①教育は学校のみならず国民総 掛かりで対処す る学校経営に努めること

②教科活動もカリキュラム開発 という視点から 「学校全体で取り組む」こと

③学校経営の立場からは評価に 基づく「

PDCA サイクル」をまわすこと

④社会のための科学という視点 からは「科学技 術リテラシー」

⑤課題解決型学習という視点か ら「探究的な学 習」

⑥地方分権に対応するものと して「地域の教育 資源を活用した科学技術教育 」が

重要

と考えられる。

新しい学 習要領で 思考力 ・判断力 ・表現 力が 強調される のは,

PISA 型読解力

IEA(国際数学・理科教育到達度調査学会 TIMSS)などの影響である。これ

らの国際調査を受け,文部科 学省による学力調 査や千葉県の学力調査が実施 され

たが,内容的には国際学力調 査のデザインに負 うところが多い。学力調査も グロ

ーバルスタンダードに準拠せざ るを得なくなっ ている。

ところで,思考力が問われ たのは今回が初め てではなく,これまでも何度 とな

く言われてきたことである。 しかし今日改めて 問題視されているのは,先に 述べ

た国際的な学力テストで問わ れている「課題発 見・解決型」の学力であるこ とか

ら,改めてその中核的な概念 である「論理的思 考力」が問われることとなっ たの

である。

今後の社会においては,科 学技術に強く依存 することから様々な学習も科 学技

術教育に強い影響を受けるこ ととなった。先に 述べた国際学力調査が,文化 に依

存しない分野,すなわち科学 的分野で行うこと が基本となっており,様々な 学力

調査内容の多くが数学や科学 技術研究の今日的 な状況に影響を受けている。 その

特質とは,

・科学技術の領域が拡大し, 純粋な自然物より も人間社会システムを構成す る人

工物( artifact)が中心となってきている。

・その結果,純粋科学よりも技 術に依存するこ とが多くなっている。

・また,真理を追求する因果 関係追求的研究よ りも「目的達成型研究開発」 が中

心となった。

変革を促し,課題解決型(目 的論的)研究・開発 の重要性がより強くなってきた 。

これまで,特に

1960 年代までの科学研究の中心は「技術」よりも「科学」で

あり,それは特に「因果関係 」を追求する「学 術的研究」が中心であった。 しか

し,アポロ計画を始めとする ビッグサイエンス の時代となり,研究をより計 画的

にマネージメントする必要性 から徐々に「目的 論的アプローチ」が重要視さ れ,

今日の「研究資金獲得」や「 研究成果の評価義 務」によって ,更にその傾向 が強

まっている。成果を時間軸の 中で示すことや様 々な利害関係の中で提示・評 価す

るマネージメントの必要性がよ り高まる状況と なっている。

また,今日では地球的規模 の環境問題に代表 されるように,原因と結果の 直接

的な説明が非常に難しい問題 や原子力発電のよ うに利害関係が複雑であるテ ーマ

についても科学技術専門家が逃 れられない状況 となっている。

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

これらの状況から,科学教 育についても因果 関係だけを追求し,その価値 につ

いては「社会の問題」として きた「学会を中心 とする学術研究」よりも課題 解決

を重要視する「目的論的なア プローチ」が求め られるようになってきた。こ の事

情は経済学や社会学を始めと する「社会科学」 にも影響を与え,社会科学分 野に

おいても「目的論的アプロー チ」が重要視され ることとなっている。これら のこ

とが今日の 「

PISA 型学力」の根底にあり,日本における学校教育では「論理的

思考力」が打ち出される背景と なっている。

(2)W型問題解決モデル

解決モデル」

(川喜田二郎著「続・発想法---KJ 法の展開と応用」中公新書, 1970)

を提示している。川喜田二郎 は,事例的調査の 分析手法としてKJ法を発表 して

いるが

(川喜田二郎著「発想法---創造性開発のために」中公新書, 1967),この「発

想法」を英訳すれば

"abduction"に当たるとしている。

"abduction"は,プラグマティズムの祖とされる C.パースが,"deduction 演繹

","induction 帰納法"に並ぶ推論として加えたもので,C.パース自身の造語と

される。

W型問題解決モデルでは,調査・推論の過程を 思考レベルと経験レベルに分け ,

さらに先入観を持たず仮説形 成を意図する 観察 段階と,仮設を検証しようと する

実験の段階に分けて整理してい る。

(1)問題提起から調査の準備(探検)

まず,問題提起が思考レベ ルで行われる。次 いで,その問題を解くために 先行

研究 の調 査を 含め 関連 する 情報 を集 め

(探検し),調査対象を選定するなどの準備

を行う。

(2)調査対象の観察

こ こで ,イ ンタ ビュ ー, 参与 観察 ,

(ドキュメント調査)などを含め調査対象の

観察を行う。この段階では, 事例的調査が中心 となり,先入観を排除し虚心 に情

報を収集していく。

(3)調査結果の分析

観 察で 得ら れた 多く の情 報を もと に, 調査 対 象の 分析

(説明)を行う。この過程

は abduction による説明が主体となるが,それなりの知識が形成される。ただし,

調査結果の説明仮説であり, 着想にとどまるも ので正しさの保証はない。こ こで

の知識を仮に「弱い知識」と呼 ぶことにする。

以上の

(1)~(3)の過程が野外科学と呼ばれる。

(4)仮設検証のための方法の検討

37

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

図 2 探究 学習にお ける学 習プロセ スのモ デル

さらに弱い知識の内容を確 実なものとしてい くためには,どのような事柄 が必

要か演繹的に

(理詰めで)推論する。この過程は書斎科学と呼ばれる。

(5)実験調査計画

検証方法の検討結果に基づい て,新たな実験 調査を計画する。

(6)実験調査

弱い知識を確実なものとす るための実験調査 を実施する。ここでは,調査 票調

査,公式統計二次分析など統 計的調査が中心と されるが,事例的調査を積み 重ね

ることもあろう。

(7)検証

この実験調査の結果から弱 い知識の検証を帰 納的に行っていく。枚挙的帰 納法

が主体となり,正しさの最終 的保障があるわけ ではないが,より高い蓋然性 を得

ていく。これによって得られた 知識を「強い知 識 」とした。

以上の

(5)~(7)の過程が実験科学と称ばれる。

W型問題解決モデルの要点 (図2)は,従来 の経験科学の範疇を野外科学 と実

験科学に分けて捉えたところ であろう。そして ,それぞれの段階で推論法に 違い

があることが重要である。こ れまで,事例調査 を行い体系的に説明する者( 遡及

的学問や記録型研究者)と, 統計調査を数理的 に解析して法則性を見いだす 者と

38

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

の間で対立しがちであったと されるが,その役 割が異なることを理解するこ とも

重要である。また,科学には 暫定性があり,必 ずしもいつも科学が正しいと いう

ことではなく,科学技術に基 づく推論には限界 があることを認識して,調査 研究

と問題解決に向かうことが重要 であろう。

→ 科学の方法にもさまざまな 手法があること から ,博物館の探究的学習に は「発

見・ 記録 型探 求 」と 「実 験 型探 究」 が存 在 する こと に配 慮し た 学習 プロ グ ラム

作成を行う。(「教員のための博 物館」など)

(3)日本学術会議の提案

う点でも,各学校段階(児童 ・生徒・学生の発 達段階)にふさわしい内容と 方法

で,科学・技術に関する基本 的な素養と系統的 な知識を育むとともに,科学 ・技

術と経済・社会や自然環境な どとの功罪両面を 含む多様な関係について,興 味・

関心を持ち,理解を深め,そ して,自ら考え判 断し活用する力と種々の問題 や課

題に適切に対応していく力を育 むものである。

そのために,小 学校 段階 では,

1) 科学・技術や自然に対する好奇心と興味関心を育み,

2) 科学・技術が日常生活の中でどのように活かされているか,もしくはどの

よう な弊 害を もた ら すか とい うこ と につ いて , 考え 調べ てみ よう と する意

欲と習慣の形成・定着を図り, 加えて,

3) 科学研究や技術開発に携わってみたいという夢や希望を育むことが重要で

ある。

中 学校段階 では,上記

1)~3)の深化・具体化に加えて,

4) 教科「理科」と他教科(「数学」,「社会」,「技術・家庭」,「保健・体育」や

「総合的学習の時間」)との連携を 図りつつ,科学と技術の違いや科学・技

術と 身体 ・社 会・ 自 然環 境と の関 係 につ いて , 応用 ・活 用や 弊害 も 含めて

考え理解を深めること,

5) 科学的・技術的な思考・探究への誘いを豊かなものとしつつ,教科「理科」

の学習内容の習得度を高めてい くこと,及び上 記

3) については,将来の職

業に つい ての 夢を 実 現す るた めの 学 習と 進路 選 択に つい て考 える 機 会を豊

かにすることが重要である。

また,この最後の点について は,中学校段階あ たりから学校段階が上がるに つ

れて,自然や科学・技術に対 する興味関心のジ ェンダー差が拡大し,女子生 徒の

理系に対する関心や進学意欲 が冷却される傾向 にあることを踏まえ,そうし たジ

ェンダー差の持続や冷却の作 用を改善するよう な教育を図っていくことも重 要で

ある。

高 校段階 では,上記

1)~5)のさらなる深化と適切な具体化を図ることに加えて,

6) 教科「理科」を構成する物理・化学・生物・地学の各科目の学習を魅力的

なも のに して 興 味関 心を 喚 起し ,そ の系 統 的な 知識 の習 得に よ って 科学的

な思考力・探究力の形成と好奇 心・探究心の高 揚を図っていくこと,

7) 教科「理科」と他教科(「数学」や「情報」,「保健体育」,「家庭」,「工芸」)

との 関係 も視 野 に入 れつ つ ,現 行の 学習 指 導要 領で 新設 され た 科目 「科学

と人間生活」の学習(その 内 容 に 類 す る 学 習 経 験

)を豊かにしていくこと,

8)大学における科学・技術分野の教育や将来の職業生活との連接関係につい

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

て考え理解する機会を豊かにす ること,が重要 である。

高等教育では,専攻分野の違 いに関わらず,基 本的には,第3章の

(2)節で述べ

る「新リベラルアーツ教育」 理念の下にカリキ ュラムや教育内容の充実を図 り,

学習経験を豊かなものにして いくことが重要で ある。特に学士課程教育では ,カ

リキュラムや開講科目の設定 と内容や教育 方法 において,理工学系の学生の 場合

も人文・社会科学系の学生の 場合も,それぞれ に,人文・社会科学系の基本 的な

素養ないし理工学系の基本的 な素養の重要性を 自覚し,その学修に積極的に 取り

組むことができるように,科 学・技術と経済・ 文化・社会や自然環境の様々 な問

題や課題との関係を視野に入 れた種々の工夫を していくことが重要である。 それ

要件を備えたものとなることが 重要である。

1) 専攻している専門分野の内容を専門外の人にも解るように説明できること,

2) その専門分野の社会的・公共的意義について考え理解すること,

3) その専門分野の限界をわきまえ相対化できること。

この3つの要件は,他分 野の学問との関係が深 い問題や課題に関わっていく場 合

にも,また,他分野の学問を 学んだ人と対話し協 働していくうえでも重要である 。

ここでは学士課程において 学生が培うべき能 力・技能とそれを支える教員 及び

大学スタッフが備えるべき資質 について整理す る。

40

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

(学生が)各専攻分野を通じて 培う学士力~学 士課程共通の学習成果に関する 参

考指針~として,

1.知識・理解

専攻 する 特定 の 学問 分野 に おけ る基 本的 な 知識 を体 系的 に理 解 する ととも

に, その 知識 体 系の 意味 と自 己の 存 在を 歴史 ・ 社会 ・自 然と 関 連付 けて 理解

する。

(1)多文化・異文化に関する 知識の理解

(2)人類の文化,社会と自然 に関する知識の 理解

2.汎用的技能

知的活動でも職業生活や社会生 活でも必要な技 能

(1)コミュニケーション・ス キル

日本語と特定の外国語を用いて ,読み,書き, 聞き,話すことができる。

(2)数量的スキル

自然や社会的事象について ,シンボルを活用 し て分析し,理解し ,表現する

ことが

できる。

(3)情報リテラシー

情報通信技術(ICT)を用いて,多様な情報 を収集・分析して適正に判断

し,モラルに則って効果的に活 用することがで きる。

(4)論理的思考力

情報や知識を複眼的,論理的に 分析し,表現で きる。

(5)問題解決力

問題を発見し,解決に必要な情報を 収集・分析・整理し,その問題を確実に

解決できる。

3.態度・志向性

(1)自己管理力

自らを律して行動できる。

(2)チームワーク,リーダー シップ

他者と協調・協働して行動できる。また,他者 に方向性を示し,目標の実現

のために動員できる。

(3)倫理観

自己の良心と社会の規範やルー ルに従って行動 できる。

(4)市民としての社会的責任

社会の一員としての意識を持ち ,義務と権 利を 適正に行使しつつ,社会の発

展のために積極的に関与できる 。

(5)生涯学習力

卒業後も自律・自立して学習で きる。

4.統合的な学習経験と創造的思考力

これまでに獲得した知識・技能・態度 等を総合 的に活用し,自らが立て た新

たな課題にそれらを適用し,そ の課題を解決す る能力

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

また,学士課程教育の充実 を支える学内の教 職員の職能開発 として,,教 職員の

やスタッフ・ディベロップメン ト(以下,「S D」という。)のそれぞれの改 善充

実の方策について述べている。

【国によって行われるべき支援 ・取組】

大学教員の教育力向上のため,全大学で充実したFDが実施されるよう,FDの

実質化に向けた主体的な取組を 各大学に促す総 合的な取組を進める。

F D の企 画 ・運 営 の充 実 に向 け ,実 施 体 制 の強 化 を支 援 す る (例 え ば , F D の専 門 的 人 材 の

配 置 ・養 成 等 )。ま た,す べ て の新 任 教 員 に対 し ,FD の機 会 が提 供 さ れ る よう ,各 大 学 に求

め て いく こ と も検 討 する 。

高度な専門職である大学教員に求められる専門性,FDによって開発すべき教育

力に関する枠組み等の策定につ いて検討する。

そ の際 ,大 学 団 体 等 が中 心 と な っ て ,主 体 的 な取 組 が 進 められ る よ う ,必 要 な支 援 を行 う 。

FDの理論や実践の基盤となる関連学問分野の知見を生かしつつ,大学教員の養

成やFDのプログラム,教材等 の開発を支援 す る。

そ の際 ,当 該 プ ロ グ ラ ム に参 加 し た成 果 が ,大 学 に お け る教 員 の採 用 ・昇 任 に当 た っ て利 用

さ れ る仕 組 み(例 えば ,イ ギリ ス に お け る高 等 教 育 資 格 課 程(P G C HE ))に つ いて視 野 に

入 れる。

優れたFD・SD活動等を行う大学に対して支援するとともに,それらの取組に

関する情報提供を行う。

例 え ば ,単 独 の大 学 の取 組 の み な ら ず ,拠 点 的 な F D セ ン タ ー等 を中 心 と す る大 学 間 連 携 に

よ る F D ・ S D活 動 や ,関 係 機 関 や専 門 家 の ネ ッ ト ワ ー ク化 の取 組 を促 進 す る 。教 育 業 績 の

評 価 に関 する有 効 な実 践 や,大 学 院 にお け る優 れ た プ レ F D活 動 に対 し て も支 援 す る 。

教職員海外派遣において,FD・SD推進の指導者等の養成を支援する。

大学間の連携,学協会を含む大学団体等を積極的に支援し,分野別のFDプログ

ラムの研究開発などを促進する 。

◆FDの推進に資する大学教育 支援の拠点の設 置について研究する。

そ の役 割 と し て は , 大 学 教 育 セ ン タ ー の F D 指 導 者 の 養 成 , F D ・ S D の パ イ ロ ッ ト プ ロ グ

ラ ム開 発 ,分 野 別 教 育 支 援 の ネ ッ ト ワ ー ク の 調 整 , F D に お け る e ラ ー ニ ン グ や I C T の活

用 ,優 れた F D の実 践 や革 新 的 な教 育 方 法 に関 す る情 報 収 集 と提 供 な ど が考 えら れ る 。

◆S Dの 推進 に かか わる 関 係団 体や 管理 職 養成 にか かわ る大 学 院等 と連 携 して ,検

定制度やSDプログラムの在り 方を含め,SD を推進する方策を検討する。

例 えば,関 係 団 体 ・機 関 間 の連 絡 協 議 の場 を設 け る等 ,主 体 的 な取 組 を促 す。

「指導者・スタッフ向けプロ グラム(博物館を どう使うか)」の二種類が必要 とな

ることも分かる。

(5)ESD が求める能力・態度

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基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

ESD の学習指導過程を構想し展開するために必要な枠組み」(国立教育施策

研究所

2008 年?)によれば,以下の 7 つの能力・態度を示して,各教科等にお

いての展開を期待することを述 べている。

「 ESD の 学 習 指 導 過 程 を 構 想 し展 開 す る た め に必 要 な 7 つ の 能 力 ・ 態 度 」

①批 判 的 に考 え る力

合 理 的 ,客 観 的 な情 報 や公 平 な判 断 に基 づ い て本 質 を見 抜 き,も の ご とを思 慮 深 く,建

設 的 ,協 調 的 ,代 替 的 に思 考 ・判 断 する力

②未 来 像 を予 測 し て計 画 を立 て る力

過 去 や現 在 に基 づ き ,あ るべ き未 来 像( ビ ジ ョ ン )を 予 想 ・予 測 ・期 待 し ,そ れ を他 者

と共 有 しな が ら , も のご と を計 画 す る力

③多 面 的 ,総 合 的 に考 える力

人 ・も の・こ と・社 会 ・自 然 な ど の つな が り・か か わ り・ひ ろ が り(シ ス テ ム )を理 解

し , それ ら を多 面 的 ,総 合 的 に考 え る力

④ コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを行 う力

自 分 の気 持 ちや考 え を伝 え る と と も に,他 者 の気 持 ち や考 えを尊 重 し ,積 極 的 にコ ミ ュ

ニ ケ ーシ ョ ン を行 う力

⑤他 者 と協 力 す る態 度

他 者 の立 場 に立 ち,他 者 の考 え や行 動 に共 感 す ると と も に,他 者 と協 力・協 同 して も の

ご と を進 め よ う と す る態 度

⑥ つ なが り を尊 重 す る態 度

人 ・も の・こ と・社 会 ・自 然 など と自 分 との つ な が り・か か わ りに関 心 を も ち ,そ れ ら

を尊 重 し大 切 に し よ うと す る態 度

⑦進 んで参 加 す る態 度

集 団 や社 会 にお け る自 分 の発 言 や行 動 に責 任 を も ち , 自 分 の役 割 を踏 ま え た上 で , も

の ご とに自 主 的 ・主 体 的 に参 加 し よ うと す る態 度

(6)

PIAAC が想定する「成人力」における能力

読 解 力

文章 や図表 を理解 し,評価 し,活用 する力

ホテルなどにある電話 のかけ方 の説明 を読 んで ,指 定 された相手 に電話 をかけるにはど

う し たら よ い か を答 える 。

図 書 館 の蔵 書 検 索 シ ステ ム を使 っ て ,指 定 さ れ た条 件 に合 う本 を選 ぶ 。

商 品 の取 扱 説 明 書 を読 み,問 題 が起 きた時 の解 決 方 法 を答 える 。

数 的 思 考 力

数 的 な情 報 を活 用 し ,解 釈 し ,伝 達 する力

食品 の成 分表示を見 て ,その食品 の一日 の

許 容 摂 取 量 を答 え る 。

商 品 の生 産 量 につ い ての表 を見 て , グラ フ を作 成 す る 。

作 成 中 の伝 票 を見 て ,商 品 の売 上 金 額 を答 え る 。

IT を活用 した問題解決力

コ ン ピュ ー タ や ウ ェ ブな ど を使 用 し て必 要 な情 報 を収 集 し ,評 価 し ,他 の人 と コ ミ ュニ

ケ ー ショ ン を し ,与 えら れ た課 題 を解 決 する力

指定 された条件 を満 たす商品 をインター

ネ ッ トで購 入 す る 。

複 数 の人 のス ケ ジ ュ ール を調 整 し た うえ で ,イン タ ー ネ ッ トで イ ベ ン ト の チケ ッ ト を予 約

す る 。

表 計 算 ソフ ト で作 成 され た名 簿 を用 いて ,条 件 を満 たす人 のリ ス ト を作 成 した う え で ,そ

の リ スト を メ ー ル で送 信 する 。

43

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-④

(7)答申・提言等にみられる 資質・能力

これまで述べた様々な学会 ,協会,研究者が 提言する「育成すべき能力」 につ

いて

,以下に表3としてまとめる 。今後本研究にお いて,幅広い議論の元となり ,今

後開発されるであろう学習プロ グラムの目標設 定に生かされることを期待する 。

表3

中教審・「生きる力 」

1996

OECD・「キーコンピ

テンシー」最終2003

大学審議会・「課題

探求能力」 1998

中教審・「学士力」

2008

注 *は汎用的技能

中教審・「基礎的・汎

用的能力」 2011

社会人基礎力研究

会・「社会人基礎力」

2006

社会通信教育協会講

座・レジ リエンス

(resilience、回復力・成

長力)2013未刊

社会通信教育協会講

座・デュラビリティ

(durability、持続力・成

長性弾力)2013未刊

基礎基本(厳選され

た教育内容)

言語・知識・技術の

活用能力

知識理解(文化、社

会、自然等)

専門的な知識・技能 専門力 専門力

自ら課題発見、学び、

考え、判断、行動し、問

題を解決する力

判断力(再掲)

考える力(再掲)

行動力(再掲)

考える力

自律的行動能力

自律、協調、他人へ

の思いやり、感動す

る心

多様な集団での人

間関係形成能力

課題探求能力

総合的な判断力

総合的思考力

課題解決能力

問題解決力*

基礎的・汎用的能力

としての課題対応能

考え抜く力(課題発

見力・計画力・創造

力)

問題解決力

創造力

創造的・論理的(*)

思考力、数量的スキ

ル*

論理的思考力

創造力(再掲)

考え抜く力(再掲)

判断力

創造力

論理力

情報リテラシー*

コミュニケーション・

スキル*、

チームワーク、リー

ダーシップ

自己管理力

基礎的・汎用的能力

としての人間関係形

成・社会形成能力

前に踏みだす力(主体

性・働きかけ力・実行

力)

チームで働く力(発信

力・傾聴力・柔軟性・情

況把握力・規律性・スト

レスコントロール力)

基礎的・汎用的能力

としての自己理解・

自己管理能力

計画力(再掲)

生涯学習力

倫理観、社会的責任

基礎的・汎用的能力

としてのキャリア・プ

ランニング能力

事象把握力

情報収集力

問題解決力

判断力

創造力

論理力

事象把握力

情報収集力

欠陥発見力

たくましく生きる健

康・体力

付記:本稿は2013年9月5 日の本研究内部 会議で初出した資料である。

44

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

第2章 第2節 項目5

本研究における目指すべき資質・能力について

~科学リテラシー涵養活動の目標観点の検討~

小川義和

国立科学博物館

1 .はじめ に

科学系博物館は科学技術に関 する資料を有し, その調査・研究とともに展示 や

教育を行う機関であり,人々 の科学リテラシー を涵養する社会的基盤として の役

割を期待されている

1)

研究代表者の小川らは,先行 研究において国立 科学博物館で開発された「科 学

リテラシー涵養活動」の枠組み

2 )

に基づいた学 習プログラムの開発を行い

3 )

,日

本科学教育学会の課題研究等 にて成果を検証し た 。その結果,科学リテラシ ーが

向上した個人がその成果を社 会に還元して,人 々の科学リテラシーの向上を 図る

ような,学習プログラムの研 究が不十分であり ,個人と社会全体の科学リテ ラシ

ーの関係については議論があま り進んでいない こと等が明らかになった。

そこで,自立した個人が学ん だ知識を地域に還 元し,協働して地域の課題や 活

動に参画していくことで,地 域社会全体の科学 リテラシーの向上が可能にな ると

いう仮説を立てた。そして, 本研究は個人の科 学リテラシーの涵養を図るこ とに

より,個人が自立することを 第一の目的とした 。また地域社会の課題に対し ,自

立した個人がサイエンスコミ ュニケーションを 通じて協働して取り組むこと を第

二の目的とした。さらに,これらを通じて価値 創造し ,社会変革を促すことを 第三

の目的とした。これによって 地域社会全体の科 学リテラシーの向上につなが ると

いう理念のもとに研究を行っ ている。そのため 複数の博物館等が連携し,博 物館

利用者の学習過程を記録・提 示することを通じ て,課題や世代に応じた博物 館活

用モデルを地域社会に還元で きるデータベース の運用を目指している。デー タベ

ースは「科学リテラシー涵養活 動」の枠組みに 基づき,構築した。

2.「個人 の自立と 社会にお ける協 働」が求 めら れている

第4期科学技術基本計画では ,地域に根差した サイエンスコミュニケーショ ン

を推進し,人々が対話を通じ て科学技術の知識 を活用できる科学リテラシー の向

上を目指している。当初サイ エンスコミュニケ ー ションは,専門家と一般の 人々

の間の対話のように,両者を つなぐための機能 と位置づけられていた。しか し震

災後の日本を考えれば,専門 家と一般の人々の 間をつなぐだけでは課題の解 決に

は至らないことは明らかであ る。そこでは,専 門家と一般の人々という対立 モデ

ルだけで はな く,多 様な専 門家 が社会 を構成 し ,社会変 革を もたら す

4 )

ような,

人々の多様性を踏まえたモデル を想定する必要 がある。

課題の解決には市民一人一人 の参画とそれぞれ の意見に基づいた合意形成が 必要

45

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

である。それは,一人一人が 課題に対し,自立 的に判断し,対話を通じて, 合 意

形成し,協働して解決してい く市民参画型社会 への過程である。小川は非営 利組

織の理論

5)

を援用し,現代社会における博物館 の位置づけを検討している。非 営

利組織は,ボランティアや寄 付によって活動が 支援され,社会の課題に対し 社会

変革を実現することを目的と している。その過 程で活動を支援したボランテ ィア

自身に市民性が育成されると いうもう一つの社 会的役割を見出すことができ る。

の課題に対して協働して解決 し,新しい価値を 創造していく地域社会の実現 に寄

与する。」と主張している

6)

本 研 究 で は ,個 人の 自 立 と 社会 に お け る 協働 を通 じ て 新 し い 価 値を 創 造 す る こ

とを目指すべく,市民と博 物館をつなぐ対話型 データベースの運用を試みてい る。

そこでデータベースの枠組みで ある「科学リテ ラシー涵養活動」の目標につ いて,

従来の能力や態度に関する議論 を参考に検討し た。

なお,博物館の社会のおける 役割と社会と博物 館をつなげることの議論は, 資

質・能力を考える上で重要な 論点となるので, 後述する「知の循環型社会に おけ

る対話型博物館モデルの提案」 を参考にされた い。

3.「科学 リテラシ ー涵養 活 動」に おける目 標の 構造

前述のように国立科学博物館 では,幼児から高 齢者までの世代別の到達目標 を

とは「自然界や人間社会にお いて実生活に関わ る課題を通じ,人々の世代や ライ

フステージに求められる科学 リテラシーを涵養 する継続的な活動体系」であ る。

代に分類し,科学リテラシー の目標を「感性の 涵養」「知識の習得・概念の 理解 」

それぞれの世代,目標に応じた 体系を提示した (図1)。

育む体験的な活動を通じ,科 学や自然現象に対 して興味・関心をもって接す るよ

学的な思考習慣の涵養」とは ,事象の中の疑問 を見出し分析し,問題解決の ため

の探究活動を行ったり,様々 な情報や考えを適 用して自ら結論を導いたりす るこ

表現し,人に伝えること。社 会の状況に基づい て,科学的な知識・態度を活 用し

たり,利点やリスクを考慮し たりして意思決定 すること。自らの持っている 知識・

能力を次の世代へと伝える等 ,社会への知の還 元を行い,豊かに生きる社会 作り

に参画することである。

46

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

47

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

4 .具体的 な比較検 討

「科学リテラシー涵養活動」 では,4つの目標 の内容をより具体的に示すた め

に,各目標に下に具体的な4 つの観点(以下 ,観点と表記)を設定している 。「科

学リテラシー涵養活動」は, おおむね個人の科 学リテラシーの涵養を目標に して

いるが,「社会の状況に適切 に対応する能力の 涵養」には,「自らの疑問や 考えを

適切に表現し,人に伝える。」や「社会の状況に 応じて自分の持っている科学的 知

識・能力を提供する。」のよ うに,個人の知識・能力を社会に還元することを想 定

した観点もある。

これらの 16 の観点と「キ ー・コンピテンシー」「生きる力」「ESD」等で提案さ

れている能力や態度等を比較 した。現在提言さ れている様々な資質・能力例 を以

下に列記する。

● 「キー・ コンピテ ンシー (主要能 力)」

対象・期間:生涯

特徴:グローバル化と近代化 により,多様化し,相互につながった世界において ,

人生の成功と正常に機能する社 会のために必要 な能力。OECD が主導し,多 数の加

盟 国 が 参 加 し たプ ロ ジ ェ クト で 国 際 的合 意 。(生 徒 の 学 習 到 達度 調 査 ( PISA)( 3

年ごと)や,国際成人力調査( PIAAC)(5 年ご と)がある。

主な資質・能力構成:

①言語や知識,技術を相互作用 的に活用する能 力

②多様な集団における人間関係 形成能力

③自律的に行動する能力

●「 生きる力 」

対象・期間:幼児~高等学校

特徴:国際化や情報化の進展 など,変化が激し い時代にあって,いかに社会 が変

化しようと必要な能力。「知・ 徳・体のバラン スの取れた力」

主な資質・能力構成:

①確かな学力

基礎・基本を確実に身に付け ,いかに社会が変 化しようと,自ら課題を見つ け,

自ら学び,自ら考え,主体的 に判断し,行動し ,よりよく問題を解決する資 質や

能力

②豊かな人間性

自らを律しつつ,他人とともに 協調し,他人を 思いやる心や感動する心など

③健康・体力

たくましく生きるための健康や 体力

● 「EDS の視 点に立 った学習 指導で 重視する 能力 ・態度」(国立教育政策研究所,

2012)

対象・期間:就学期間・大学

主な資質・能力構成:

①批判的に考える力

②未来像を予測して計画を立て る力

③多面的,総合的に考える力

④コミュニケーションを行う力

48

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

⑤他者と協力する態度

⑥つながりを尊重する態度

⑦進んで参加する態度

● 「学士力 」(平成 20 年中教審答申(学士課程教育の構築に向けて(答申))

対象・期間:大学

主な資質・能力構成:

①知識,理解

専門分野の基礎知識の体系的 理解,他文化・異 文化に関する知識の理解,人 類の

文化・社会と自然に関する知識 の理解

②総合的な学習経験と創造的志 向

獲得した知識・技能・態度等 を総合的に利用し ,自らが立てた新たな課題に それ

らを適用し,その課題を解決す る能力

③汎用的技能

コミュニケーションスキル, 数量的スキル,情 報リテラシー,論理的思考力 ,問

題解決力

④態度,志向性

自己管理力,チームワーク,リーダーシップ,倫 理観,市民としての社会的責 任,

生涯学習力

● 「社会人 基礎力」(社会人基礎力研究会(2006))

対象・期間:成人

主な資質・能力構成:考え抜 く力(課題発見力 ・計画力・創造力 ),創造力 ,考え

抜く力,計画力,前に踏みだ す力(主体性・働 きかけ力・実行力 ),チーム で働く

力(発信力・傾聴力・柔軟性・ 情況把握力・規 律性・ストレスコントロール力 )

●「 レジリエ ンス( 回復力・ 成長力)」 生涯学習事象理論(山本, 2013)

対象・期間:成人

主な資質・能力構成:

①情報収集力:情報を集める

②事象把握力:収集した情報を もとに対象をと らえる

③論理力:どのような論理構造 になっているか を明らかにする

④判断力:価値を判断する

⑤問題解決力:問題を解決する

⑥創造力:回復からさらに成長 するための力

+専門力

● 「成人力 」(OECD 国際成人力調査(PIACC)により定義)

対象・期間:成人

主な資質・能力構成:

知識をどの程度持っているか ではなく,課題を 見つけて考える力や,知識や 情報

を活用して課題を解決する力な ど,

実社会で生きていく上での総合 的な力

養活動」における目標の場合 ,その下位にある 16 の観点に注目し,~できる とい

49

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

能力で提案されている構成要素(能力,学力 ,人間性,資質,体力 ,~力,態度,

知識,技能等)を横断的に類 型化できるキーワ ードを策定し,整理,類型化 した。

横断的なキーワードとして,「活用・応用能力」「専門力」「探究力・問題解 決力」

7)

の他,「生きる力」「キー・コンピテンシ ー」「ESD の視点に立った学 習指導

で重視する能力・態度」

8 )

と関連付けること ができた(表2)。

5 .科学系 博物館の 学習プ ログラム の傾向

本研究を進めるにあたり,科 学リテラシー涵養 活動から見た科学系博物館の 学

習プログラムの傾向分析を行っ た。詳細は別 途 論文

9 )

に掲載されているが,以下

概要を示す。

(1)収集方法

方法:郵送による依頼,調査対 象館の館報,事 業計画,パンフレット等の回収

調査時期:2010 年 11 月~12 月

調査対象:全国科学博物館協議 会加盟館( 226 館)

回収数:106 館(回収率 47%)(内訳:自然史 系 39 館,理工系:50 館,総合:17

館 9))(事業数 962 件)

収集する学習プログラム:① 参加者が何らかの 学習を行うもの,②博物館職 員が

参加者と何らかの交流を持つも の,③概ね過去 5 年以内に実施されているも の,

を条件とし,各館における事業 単位で記録・集 計した。

聞き取り調査:集計後,特徴的 な館を抽出して 実施。

(2)集計方法及び結果

収集した学習プログラムを講座 の分類 10)ごと に分け,割合を集計した(表 1,

2)。体験学習・実験教室は多 くの館で実施され ている。事業単位で見れば, 理工

系では,全事業の 49%を占め ている。自然史系 や総合では,体験学習・実験 教室

についで野外教室・観察会が多 くなっている。

次に科学リテラシー涵養活動 の体系に沿って整 理した。学習プログラムの対 象

世代と目標を考慮し,それ ぞれ科学リテラシー 涵養活動の 20 のマス目へ当て はめ

た。1 つの学習プログラムで 複数の世代や目標 を設定している場合もあり, その

場合は該当する項目全てに当て はめ,割合を集 計した(表 3,4)。

実施館の割合に注目すると, 全体の傾向として ,学齢期に対応した学習プロ グ

たものについては,全ての世代 において 6 割以 上の館で何らかの学習プログラ ム

を実施しており,特に幼児から 中学生に限定す ると,約 9 割の館で実施さ れてい

た。

ては,小学校高学年から高等教 育向けで実施の 割合が高く,およそ 4 割の 館で何

50

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

グラムの割合は各世代 10%以 下で低い。

(3)科学リテラシー涵養活動 から見た傾向分 析

科学リテラシー涵養活動では ,4つの目標の内 容をより具体的に示すために ,

それぞれの目標の下に具体的な 観点を設定して いる(図1参照)。

(2)の集計結果では,「科 学的な思考習慣の 涵養」「社会の状況に適切に 対応

を見つける。」「様々な情報を 収集・選択して, 問題に適用する。」「疑問に対 して

科学的な手法を用いて追求す る。」「結論を導く 前に,様々な情報や考えを考 慮す

る。」のように,問題を解決 する過程を重視した 学習プログラムが少ないことに な

考えを適切に表現し,人に伝 える。」「個人や社 会の問題に対して科学的な知 識・

態度を活用して意志決定する 。」「科学の応用や 技術の導入について,社会と 環境

に及ぼす利点とリスクを多様 な視点から分析し て決定する。」「社会の状況に 応じ

て自分の持っている科学的知識・能力を提供す る。」と言った表現力や判断力 ,さ

らには社会に対し貢献する目標 を持った学習プ ログラムが少ないことになる。

6 .学習プ ログラム 共有の 場の必要 性

近年,科学研究は,地球環境 ,人工環境,情報 科学,生命科学等の新しい領 域

の誕生やその拡大とともに, 複雑な要因が絡み 合い容易に解決法が見いだせ ない

事象を扱うようになった。科 学研究に依拠する 科学教育では,解答や解決法 が明

らかでない社会的諸問題に対 する解決の過程に 学習を展開することが求めら れ,

従来の教育手法では対応でき ないものもある。 例えば「社会の状況に適切に 対応

スクを多様な視点から分析し て決定する」等の 社 会的な文脈の中で意思決定 する

能力が要求される。社会的問 題を解決する文脈 の中で展開される学習には, サイ

エンスコミュニケーションに 代表される多様な 個人の相互作用や専門家の協 働に

よる問題解決の過程が必要と なる。これには, 汎用性の高い問題解決モデル とコ

ミュニケーションモデルを組み 合わせる必要が あるだろう。

「科学的な思考習慣」や「社 会の状況に適切に 対応する能力」の涵養するた め

には,博物館において継続的 な学習プログラム が必要である。しかし,継続 的な

学習形態を実施している館は 必ずしも多くない 。表3によれば,連続講座を 実 施

している館の割合は全体で 30%である。表4の 事業数で比較すると,自然史 系 5%,

理工系 8% ,総合 3%,全体 6%で,他の事業形 態に比較して少ない。他の報 告書

からも継続的学習形態を実施し ている館の割合 は 3 割程度であることが指 摘され

ている

9 )

先行研究での聞き取り調査の 結果,「科学的な 思考習慣の涵養」「社会の状 況に

適切に対応する能力の涵養」 を目標に含む学習 プログラムについて「継続学 習の

事業も重要であるが,手間が かかる。」「参加人 数に制限があり,特定の人に 限定

参加者とも負担が大きい。」 等の意見がある。「 科学的な思考習慣の涵養」と 「社

51

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

会の状況に適切に対応する能 力の涵養」に分類 される学習プログラムは継続 的な

形態が多く,手間がかかるた めに,実施する館 や事業数は少ない割合になる と推

測される。さらに「「科学リ テラシー涵養活動」の4つの目標については,そ の必

人数を対象に長期の事業を行 う必要があり,費 用対効果という面で特に予算 が厳

しい博物館運営では優遇されに くい。」といった 地域博物館の課題が示されてい る

10)

全国の科学系博物館での科学 リテラシーの涵養 に資する学習プログラムを充 実

力の涵養」を目標とした継続 的な学習プログラ ムの開発・実施とそれを支え る人

材が不可欠である。また,そ の効果的・効率的 な開発・実施のためのノウハ ウの

蓄積とその普及が重要である 。そのためには, 現在展開されている学習プロ グラ

ムの情報をデータベース化し ,全国の博物館が 共有し,学習プログラムの改 善に

役立てる仕組みが必要である 。学芸員がこの デ ータベースを活用し,他館の 学習

プログラムを参考にするなど ,科学リテラシー 涵養活動の開発のためのポー タル

サイト機能の充実が図る必要が ある。

7 .まとめ

5.では,本研究のデータベ ースで活用してい る科学リテラシー涵養活動の 体

系に照らし合わせ,全国の科 学系博物館から収 集した学習プログラムを傾向 分析

した。その結果,我が国の科 学系博物館では, 感性の涵養と知識の習得・概 念の

理解を目標にした学習プログ ラムが多いこと, 科学的な思考習慣や社会の状 況に

適切に対応する能力を涵養する 機会が少ないこ とが課題であることがわかった 。

この傾向を表2の資質・能力 の比較表に当ては めて検討すると,倫理観,行 動

力,社会性といった社会との 関係性の能力(表 2の影部分)を目指した学習 プロ

グラムの開発が求められている と言える。

今後は,これらの能力・態度 に関する議論を進 め,学習プログラムの開発の あ

り方とその評価の枠組みを検討 する必要がある 。

主な参考文献

1) Shamos,B.M.H.:The Myth of Scientific Literacy,1995

2) 国立科学博物館科学リテラシー涵養に関する有識者会議:「科学リテラシー涵

養活動」を創る〜世代に応じた プログラム開発 のために~,

2010

3) 小川義和:科学リテラシーの涵養に資する科学系博物館の教育事業の開発・体

系化と理論構築,平成

19~22 年度科学研究費補助金基盤研究(A)研究成果報告書,

2011

4) 吉川弘之:社会の中の科学,社会のための科学,日本サイエンスコミュニケー

ション協会誌,

1(1),44-49, 2012

5) 田中弥生:コミュニティとしての社会教育施設への期待~ドラッガーの教え~,

平成

24 年度全科協総会, 2013

6) 小川義和:知の循環型社会における対話型博物館機能の提 案,日本ミュージ

アム・マネージメント学会第

18 回大会シンポジウム,2013

7) 山本恒夫:一人一人が培うレジリエンス,理想,107,p.2,2013

52

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

8) 角屋重樹:学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究最

終報告書,国立教育政策研究所 ,

2012

9) 日本科学技術振興財団・科学技術館:科学系博物館における継続型教育・学習

プログラムの開発に関する調査 研究報告書,

2012

10)小川義和:知の循環型社会の構築に向けた,科学リテラシー涵養に資する科

学系博物館の学習プログラムの 体系化・構造化 に関する実践的研究,平成

22 年

度文教協会助成研究成果報告書 ,

57p.2011

53

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

表 3 館種 別・講 座分類別 学習プログラムの傾向(実 施館数)

講座の分類

講演会

連続講座

体験学習・実験教室

野外教室・観察会

展 示 解 説 ・バック ヤードツアー

学校の授業への対応

出前授業

教員研修

博物館実習・インターン

その他

自然史

(N=39)

理工(N=50) 総合(N=17) 全体(N=106)

館数 割合 館数 割合 館数 割合 館数 割合

18 46% 22 44% 8 47% 48 45%

9 23% 20

26 67% 43

21 54% 20

10 26% 7

13 33% 28

7 18% 17

10 26% 23

14 36% 15

2 5% 5

40%

86%

40%

14% 4

56% 13

34% 3

46% 9

30%

10%

3

13

10

13

1

18%

77%

59%

6%

32

82

51

24% 21

77% 54

18% 27

53% 42

77% 42

8

30%

77%

48%

20%

51%

26%

40%

40%

8%

表 4 館種 別・講 座分類別 学習プログラムの傾向(事 業数)

講座の分類

自然史

(N=255)

事業

割合

講演会

連続講座

体験学習・実験教室

野外教室・観察会

31

12

76

54

展 示 解 説・バ ッ ク ヤ ー ド ツ ア

学校の授業への対応

出前授業

19

21

その他

7

教員研修

11

博物館実習・インターン 27

2

12%

5%

30%

21%

8%

8%

3%

4%

11%

1%

理工(N=528) 総合(N=179) 全体(N=962)

事業

36

41

257

50

9

57

19

44

22

6

7%

8%

49%

10%

2%

11%

4%

8%

4%

1%

事業

15

5

59

30

7

21

5

12

25

1

8%

3%

事業

82

58

33% 393

17% 134

4% 35

12% 99

3%

7%

1%

31

67

14% 74

9

9%

6%

41%

14%

4%

10%

3%

7%

8%

1%

54

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑤

表 5 「科 学リ テラ シー 涵養 活動」 の体 系から 見た 科学 系博 物館 にお ける学

習 プログ ラム の傾向 (実施 館数 ,N=106)

世代

目標

幼児・小低

学年

小高学

年・中学

高校・高等

教育

子育て・壮

熟年・高齢

館数 割合 館数 割合 館数 割合 館数 割合 館数 割合

感性の涵養

知識の習得・概念の理解

科学的な思考習慣の涵養

社会の状況に適切に対応す

る能力の涵養

95 90% 98 92% 78 74% 73 69% 71 67%

95 90% 98 92% 80 75% 83 78% 70 66%

16 15% 49 46% 41 39% 44 42% 14 13%

10 9% 47 44% 38 36% 16 15% 9 8%

表 6 「科 学リ テラ シー 涵養 活動」 の体 系から 見た 科学 系博 物館 にお ける学

習 プログ ラム の傾向 (事業 数 ,N=962)

世代

目標

感性の涵養

知識の習得・概念の理

幼児・ 小低学

事業

630

割合

65%

小高学

年・中学

事業

726

高校・高等

教育

事業

75% 486

子育て・壮

事業

51% 461

熟年・高齢

事業

48% 397

41%

589 61% 696 72% 479 50% 502 52% 385 40%

科学的な思考習慣の

涵養

27

社会の状況に適切に

対応する能力の涵養

15

3%

2%

87

67

9%

7%

81

65

8%

7%

94

34

10% 21

4% 14

2%

1%

付記:本稿は平成

25 年度日本科学教育学会第 37 回年回で発表した内容(小川義

和:科学リテラシー涵養活動の目標観点の 検討

-個人の自立と社会における協働を

通じた価値創造を目指して

-,平成 25 年度日本科学教育学会年会論文集,37,pp.

326-327,2013)と小川義和,五島政一:科学系博物館における科学リテラシー

を育成する教育活動の課題とそ の解決方略~科 学リテラシー涵養活動と

W 型問

2013 をもとに新たな知見を加え,修正したものである。

55

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

第2章 第2節 項目6

科学系博物館における学習活動の現状と今後の展開

高安礼士

千葉市科学館

1.科学博物館の特徴

科学博物館は,博物館法に記されている「産業,自然科学等に関する資料を収集し,保

教養,調査研究,レクリエーション等に資するために必要な事業を行い,あわせてこれら

の資料に関する調査研究をすることを目的とする」機関に相当する。『日本の博物館総合調

(産業技術史博物館) 「科学館・プラネタリウム」を含む。平成

20 年度の文部科学省社会

教育調査によると,全国の登録科学博物館は

105 館で,博物館類似施設 380 館を含めると

全体数

485 館と多く,その活動範囲は非常に多様で幅広い。

報活動(研究成果などのニュースの発信,メールマガジン配信,出版等)等に大きく分け

られる。どの活動も,博物館からの働きかけと来館者からの働きかけという意味合いで,

博物館と来館者との双方向の相互コミュニケーションが図られる場を生み出している。特

に科学博物館の展示の特徴は,主として自然史や科学技術史に関する資料を収集・保存・

整理し,資料に関する調査研究を通じて得られた情報や研究成果を展示することである。

さらに科学的原理・原則を伝えるための操作体験型の展示(ハンズ・オン展示)を通じて,

利用者の興味・関心を高める工夫が多くの博物館でなされている。

2.海外の科学博物館

博物館における教育活動の最も中心となるのは展示である。展示手法の観点から歴史的

に四段階があるとされており,現在は四段階目の時代をむかえている。

・珍しい資料を展示する宝物庫(キャビネット)型博物館

・資料を系統化し体系化して展示する自然史博物館や科学技術史博物館

・科学教育の体験に焦点化した科学館(サイエンスセンター,チルドレンミュージアム)

・最先端科学も展示し,社会との関係を示す先端科学・社会複合施設

近代的な意味での科学博物館は,19 世紀の産業革命によってもたらされた産業社会のヨ

56

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

ーロッパ都市に,万国博覧会の開催などを機会に博物館として誕生した。20 世紀半ばには

1957 年のスプートニク事件をきっかけに,科学教育はそのシステムから見直され,全米各

地に多くのサイエンス・センターを誕生させた。これらのサイエンス・センターは,歴史

的であるより,ハンズ・オン展示による科学の楽しさやすばらしさを伝える目的で設立さ

れており,1969 年にサンフランシスコに設立されたエクスプロラトリウムは世界の科学博

「科学教育の展開例としてのハンズ・オン展示」が生まれることとなる。近年は,博物館

の機能を総合的に展開しようとする試みも行われており,地域の文化施設としての色彩が

強く,単にこれまでのような博物館という機能にとどまらずに生涯学習活動の中核施設と

しての性格を持ち,図書館や集会施設の機能を付加された「文化複合施設」として建設さ

れている。これらの欧米の博物館事情は,そのまま我が国の科学博物館の現状に対応して

いる。

*(参考)海外の主な科学博物館としては,理工系ではかつては資料収集型,現在は新し

(イギリス・ロンドン) 「国立自然史博物館」 「ニュ

ーヨーク自然史博物館」

3.我が国の科学系博物館の教育普及事業

東京上野に位置する国立科学博物館は,我が国唯

表1 博物館教育の特徴

一の国立の科学博物館で,その歴史は

130 年以上と

長く,

1877(明治 10)年に「教育博物館」として創

設された。我が国初の教育博物館である。

①実物教育

②理解が容易な工夫展示・解説

当時は,教育上必要な内外の物品を集めて,教育

③情操教育に有効

④専門家の研究に役立つ

にかかわる教材,校具などの諸器具,動物・植物・

鉱物などの博物標本を中心にして陳列した。その後,

1916(大正 5)年には,コレラが流行したため,こ

⑤職業その他の実生活に役立つ

⑥資料保存の意義を伝える

・教育の経営効率が良く経済的

れを予防し公衆衛生の知識を高めるために展覧会を

開催した(最初の特別展覧会)

1931(昭和 6)年,上野の現在地に建物(現在の日本館)

が完成し「東京科学博物館」となり,展示室の公開が始まり,その後天体観望や野外植物

採集会等もはじめ,今日の各博物館で行っている館外教育活動の先鞭をつけた。

1949(昭

24)年に文部省設置法により「国立科学博物館」となる。

国立科学博物館では,

1980 年代に全国に先駆けて青少年が自ら考え,科学する心を培う

ための参加型,探求・体験型展示に力を注ぎ,博物館と学校の理科教育との連携をより強

める役割を果たした。更に,

1986(昭和 61)年には,国立科学博物館は,全国で初めての

教育ボランティア制度を導入し,来館者との対話を通じた教育活動の充実に努めた。

2004

57

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

(平成

16)年,「地球生命史と人類」をテーマに地球館展示,2007(平成 19)年には,日

本列島の自然と私たち」をテーマに日本館展示をオープンし,現在では全館的に教育ボラ

ンティアを配置し,対話型の展示室運営に努めている。

その他の科学博物館としては,

1950 年代後半(昭和 30 年代)に,科学館建設ブームが

起こり,サイエンス・センターが主要都市に誕生した。科学技術館,名古屋市科学館,大

阪科学技術館である。

1980 年代前半(昭和 55~60 年)にかけて,科学館建設ブームが再

び起こり,各地の県・市においてエクスプロラトリウムのコンセプトをもとに,参加・体

験型展示を主体とした子ども科学館が多く誕生した。その後,

1994(平成6)年以降は,

自然史博物館建設の割合が増加し,教育普及事業が重要視された。

我が国の科学博物館は,学校連携,展示を活用した学習支援活動,アウトリーチなど各

館の特徴を活かして,実に様々な取り組みが行われている。地域博物館としての機能をい

ち早く示した平塚市博物館は,独自の事業を長年にわたり多数展開しており,地域の人々

と一緒に調査・研究に取り組んでいる。滋賀県立琵琶湖博物館では,地域と社会を結ぶ活

動を行った事例もある。こうした地域との結びつきを強めるとともに,最近は,各博物館

の連携を活かしたより幅広い活動が見られる傾向が出てきている。日立シビックセンター

科学館では,全国科学博物館協議会・全国科学館連携協議会の共催で毎年「サイエンスシ

ョー・フェスティバル」が行われている。既に全国各地で定着した「青少年のための科学

の祭典」を始め,研究機関および企業と科学博物館が連携した国際科学映像祭なども

2010

年には新たに行われ,毎年

11 月に開催される「アゴラ」は,科学を中心とした地域全体の取

り組みの中心的役割を担うようになっており,科学コミュニケーションを担う今後のあり

方を示唆している。

て,自然史では,ミュージアムパーク茨城県自然博物館,千葉県立中央博物館,神奈川県立生命の星・地球博物

館,兵庫県立人と自然の博物館など,理工系では千葉県立現代産業科学館,福岡県立青少年科学館など,多数の

博物館,科学館が挙げられる。ホームページ等を閲覧し,各館の活動を参照してもらいたい。

4.日本の博物館の教育普及活動の現状

(1)博物館とその数

日本においては,博物館は「登録博物館」,「博物館相当施設」,「博物館類似施設」

として分類されている。平成 17 年度実施の文部省の社会教育調査では,合計 5, 775 館(う

ち科学博物館数 485 館),登録博物館 907 館(同 70 館),相当施設 341 館(同 35 館),

類似施設 4,527 館(同 380 館)としている。

この中で科学博物館とされるのは,日博協の平成 20 年度「博物館の総合調査」によれば

自然科学博物館,自然史博物館,科学博物館,科学館,科学技術館,科学文化センター,

青少年科学センター等の名称をもつ施設であり,全博物館のうちのおおよそ 10%で約 480

58

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

館が相当し,さらに自然史系と理工系が半々と推定される。(平成 20 年度 国立社会教育

研修所版「博物館に関する基礎資料」参照のこと)博物館及び博物館類似施設について,

収集・保管・展示する資料の内容等により種類別にみると,博物館では美術博物館が最も

多い 449 施設(博物館総数に占める割合 36.0%),次いで歴史博物館が 436 施設(同 34.9%),

総合博物館 149 施設(同 11.9%)の順である。また,平成 16 年度実施した前回と比べて最

も増加したのは,歴史博物館の 31 施設増(伸び率 7.7%),次いで美術博物館 26 施設増(同

6.1%),野外博物館 5 施設増(同 38.5%)の順となっている。

で最も多く,次いで美術博物館 652 施設(同 14.4%),科学博物館 380 施設(同 8.4%)の

順となっている。また,前回と比べて最も増加したのは,歴史博物館の 96 施設増(伸び率

3.4%),次いで総合博物館 18 施設増(同 6.9%),科学博物館 14 施設増(同 3.8%)の順で

ある。

(2)最近の我が国の博物館動向

日本の博物館総合調査報告書(平成 20 年度日本博物館協会)によれば,平成 9 年以降の

博物館の変化として,「博物館の設置数やその内容が変化している」「厳しい運営と経営

環境」「変わり始めた運営―資料中心から教育普及活動重視へ―」「博物館としての基礎

の充実をめざす」「細かな運営課題に対応する」などがあげられている。

ア 変化のなかの博物館

① 博物館の「平均的な姿」として敷地総面積は変わらず,建物延床面積は多少狭くなり,

博物館資料は,人文系資料は増えているが自然系資料は減っている。開館日数は,300

日以上の館が最も多い。入館者数は 5,000 人未満の館が典型的である。

②新規の博物館の設置は減っている

③公立館に指定管理者制度が導入された。平成 20 年度に指定管理者制度が導入されてい

る館は公立博物館の 4 分の 1。行財政改革で,公立博物館の運営・経営のあり方が大き

く変化。

④新たな公益法人制度が発足し,それへの対応が大きな課題となっている。現時点では 4

割の館が移行の準備をしている。準備はしていないが移行を決定している館は同程度に

及んでいるが,税制上の優遇措置につながる公益性の認定の問題などが今後の大きな課

題。

イ 厳しい運営・経営環境のなかの博物館

①常勤職員が減り,非常勤職員が増える傾向が続いている)平成 9 年以降,1 館当たり

の常勤職員数は平均 7.9 人から 6.60 人に減っている。

②予算の減少傾向が続いている

59

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

③入館者数の増加を示す結果は得られなかった。むしろ,入館者数 5,000 人未満の館の

割合がさらに増えつつある。全体の 4 分の 1 を超えるところまできてしまっている。

「入館者 5,000 人未満」の館が増えることは,それが最も下のカテゴリーであるだけ

に入館者数における博物館格差の広がりを意味している。

ウ 変わりはじめた博物館

制度も含めた取り巻く環境の変化とさらに厳しさを増す運営・経営環境のなかで,博物

館の模索が続けられて,様々な努力も始まり,努力の結果が変化を生み出している。「教

「教育普及活動」に力を入れる館が増えている。博物館の最近の傾向は,市民や地域,学

校などを射程に入れた活動の強化である。博物館として目に見える活動を外に向かって示

していく。教育普及は,博物館の社会的機能として積極的に映ずるところである。各館が,

そうした目に見える活動に取り組み始めている。この点で明らかに博物館は変わりつつあ

る。

事として学校が団体で来館すること」だけでなく,「授業の一環として児童や生徒が来館

すること」「職場体験の一環として児童や生徒が来館すること」が「ある」とする館が,

少しずつ,増えている。ただ,「学芸員が博物館で児童や生徒を指導すること」「学芸員

が学校に出向いて児童や生徒を指導すること」「学校に資料や図書を貸し出すこと」「特

定の学校と博物館を利用した教育実践の研究をすること」など,立ち入っての連携となる

事に対しては多くない。博物館として学校に連携を求めても,学校の理解がなかなか得ら

れないということも耳にする。博物館の活動のなかに学校での教育活動をどのように位置

づけ,逆に,学校の教育活動のなかに博物館の活動をどのように位置づけるか。博物館と

学校の連携には双方向的な取組みが必要である。今のところ,行事や授業,職場体験での

来館が中心であり,双方向になり得ていない。

「教育普及活動」のなかには人材育成も含まれる。学芸員取得実習生などの受け入れが

このような活動である。平成 9 年度以降は減少し,受け入れるゆとりがなくなっている。

また,「考古資料」「歴史資料」「民俗資料」を収蔵・展示する館の割合が,やや減少し,

美術系が増える傾向がある。ている。わが国の博物館の中心は「歴史博物館」で全体の 4

割を占めている。収蔵・展示している資料は「歴史資料」「民俗資料」「考古資料」を収

蔵・展示している館の割合が高くなっている一方で,「歴史博物館」の比率が減少してい

るのは各館のアイデンティティーの問題として,博物館から「歴史」の色合いが薄れて「美

術館化」する傾向を示している。名称を「歴博物館」としないで「○○美術館」としてい

る。

最近では日中韓の博物館の交流が始まっているが,各国における博物館を取り巻く状況

は必ずしも同じではない。日本の状況は成熟社会の中での博物館の課題であり,資料保存

も十分ではない中で「博物館における学び」が鋭く問われることとなっている。学校教育

60

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

や科学教育分野と同じように,社会との関係から「リテラシー」が最近の課題となってい

る。

表2 我が国の博物館の基本事項

ア.博物館・美術館・動植物園等の数 (平成 20 年度社会教育調査)

区 分 合 計 総合 科学 歴史 美術 野外 動物 植物 動植物 水族館

全 体

登録・相当

類似施設

5,775 429 485 3,327 1,101

1,248 149 105 436 449

4,527 280 380 2,891 652

101

13

87

29

133

11

88 58 122

29

10

19

イ.博物館利用者数 (平成 20 年度社会教育調査,19 年度実績)(単位:千人)

78

41

37

区 分 合 計 総合 科学 歴史 美術 野外 動物 植物 動植物 水族館

全 体 279,871 17,068 35,085 77,389 57,256 6,873 33,464 15,400 7,654 29,682

登録・相当

類似施設

124,165 8,500 13,816 19,965 33,029 2,894 18,359 1,778 5,383 20,441

155,706 8,568 21,269 57,424 24,227 3,979 15,105 13,622 2,271 9,241

<参考.1 館当たりの入場者数> (単位:人)

区分

合計 総合 科学 歴史 美術 野外 動物 植物 動植物 水族館

全体

登録・相当

48,463 39,786 72,340 23,261 52,004 68,050 384,644 115,789 263,931 380,538

99,491 57,047 131,581 45,791 73,561 222,615 633,069 161,636 538,300 498,561

類似施設

34,395 30,600 55,971 19,863 37,158 45,216 260,431 111,656 119,526 249,757

ウ.1館当たりの職員数(平均値) (平成 17 年度文部科学省調べ)

区 分 合 計 総合 科学 歴史 美術 野外 動物 植物 動植物 水族館

全 体 14.5 15.1 16.5 9.7 12.1 29.3 52.8 25.0 48.3 35.9

うち専任 9.6 10.0 10.9 5.7 7.5 12.3 46.4 20.3 33.8 29.4

専任館長 0.5 0.5 0.5 0.4 0.4 0.6 0.9 0.6 1.0 0.8

5. 科学博物館における学び:タイプとトークン

科学系博物館の展示は,

① 歴史体系と系統文脈による構成(科学史,技術史,専門分野史,系統・体系)

② 人物文脈による構成(科学者,発見者,歴史人物,地域の人物,研究者)

③ 社会的文脈による構成(社会的地域的課題,技術的課題)

④ 政策・未来文脈による構成(新しい課題,今後の動向や政策提言)

とされ,また科学系博物館の教育普及事業は,その資料分類と研究方法の特徴から

① 生物系統樹に基づく進化論的分類体系の伝授

② 地質学・古生物学等の遡及的学説の伝授

61

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

③ 理工学の物質科学に関する科学知識と方法論の伝授

を実物教育を中心として実施してきた。その際,できるだけ科学的であらんとして,普遍

的法則( universal law )としての性格を持つ分析哲学でいう「タイプ(type)」に関す

る仮説や理論を対象としてきた。 一方,科学技術が社会との関わりを強め,抽象化された

科学と個人の関係を豊かなものとして取り返そうとして,ある特定の時間と空間で生じる

現象に関する物語的説明である「トークン(token)」という手法が博物館でも使用される

ようになってきた。あるタイプのものの集合(たとえば「クオーツ時計というタイプの時

計の集合)を構成する個々のもの(たとえば「タイガーウッズの持っていたクオーツ時計」)

がトークンである。1980 年代のスミソニアンで

開発された「社会との関わり展示」が始まりとさ

れるが,その後さまざまな分野の博物館にも採用

され,環境問題が主要な課題となっている 20 世

紀後半の科学系博物館展示の流れとなっていた。

しかし 21 世紀になり,科学技術の研究や実用

領域が,地球環境,人工環境,情報科学,生命科

学等の新しい領域の誕生やその拡大から,(新し

表 2-2-5-3 科学系博物館の展示手法

①原理展示(技術の科学的説明・タイプ展示)

②人物展示(人物のストーリー展示)

③技術史展示(歴史ストーリー展示)

④文脈展示(社会との関わり・入館者との対話)

⑤今後は「実物資料のトークン展示」

い学習指導要領に見られるように)科学教育その

ものの領域と手法が変わり,科学系博物館におけ

る学習領域と方法も「博物館の社会的使命」とともに新たな状況に対応させる必要が生じ

ている。

6.科学系博物館の科学リテラシー涵養活動

国立科学博物館の教育普及事業(以下,学習支援活動と記す)においても,当館研究員

に加え,学会や企業等との連携を活かし,専門的で多様な学習機会を提供するとともに,

世代に応じた科学リテラシーの涵養を図るための効果的なモデル的プログラムの開発や,

学校との連携強化のための新たなシステム開発など,先導的な事業の開発・実施を目指し

ている。定例的な取り組みとしては,土日祝日に,研究員が展示室にて展示や最新の研究

内容について語る「ディスカバリートーク」や体験型展示室での来館者と展示をつなぐコ

ミュニケーション活動や,館内の見どころを案内するガイドツアー,常設展示室および企

画展示室での展示解説や展示と関連した内容についてコミュニケーションツールを用いた

実演などの「教育ボランティアの活動」が挙げられる。

新たな取り組みとして,世代に応じた効果的な学習プログラムについて検討を進めてい

組みとして設定し,その枠組みの中で,社会と直接関わる内容を扱うプログラムとした。

ろスーパーなどで購入し,料理の材料となっている野菜について,親子で一緒に顕微鏡や

62

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

虫眼鏡で観察することで,野菜は植物であることを実感し,科学的な見方を養うとともに,

企業の食の安全への取り組みなどの話を聞くとで,社会的な課題を意識する内容とした。

1つのプログラム内で,親と子どもが一緒に活動をする部分もあれば,親子で別れて活動

を行い,それぞれ異なる目的を持ち活動することにより,効果的な学びを目指した。「水」

についての中高生向けの継続的な活動では,水について学んだことを展示し,来館者の前

で水の大切さについて語る内容とした。さらに,「エネルギー」についての熟年期向けの講

座では企業と連携し,ビール作り等を楽しみながら体験するとともに,工場での廃棄物を

資源として活用していることを知り,循環型社会についてグループディスカッションを行

う内容とした。こうした取り組みは,成人の科学技術に対する意識や理解の低さなどが課

題とされている社会的な現状に,博物館としてどう貢献していくかという視点を持ち,人々

の科学リテラシー向上を目指した新たな方策を開発し,科学博物館として生涯にわたる学

習機会の提供に取組んでいる。

これらのプログラムは,科学リテラシー涵養活動として,世代に応じたプログラムの開

発の枠組みを設け,各世代(幼児から熟年期までを5つに分類)において4つの目標(「感

標について世代に応じて適切にバランス良く取り組むことにより,人生を通じて長期的に

科学リテラシーを身につけて欲しいというもので,特に,社会的課題に対応した世代に応

じたプログラムの開発・実施を体系的に行った。

表 2-2-5-4 「科学リテラシー涵養活動」の目標

感じる(感性の涵養)

知る(知識の習得・概念の理解)

考える(科学的な思考習慣)

行動する(社会の状況に適切に

対応する能力の涵養)

感性・意欲を育む体験的な活動を通じ,科学や自然現象に対して興味・関心

をもって接するようにする。

科学や技術の性質を理解し,身のまわりの自然現象や技術の働きを理解で

きるようにする。

事象の中の疑問を見出し分析し,課題解決のための探究活動を行ったり,

様々な情報や考えを適用して自ら結論を導いたりする。

学んだことを適切に表現し,人に伝える。社会の状況に基づいて,科学的な

知識・態度を活用したり,利点やリスクを考慮したりして意思決定する。

自らの持っている知識・能力を次の世代へと伝える等,社会への知の還元

を行い,豊かに生きる社会作りに参画する。

自然界や人間社会の変化に適切に対応し、合理的な判断と行動ができる総合的な資質・能力

(独立行政法人国立科学博物館 科学リテラシー涵養に関する有識者会議より)

7.科学系博物館における様々な学びのスタイル

科学博物館において行われる学びは,習得的な学習の場合と,学習者を主体とした学習の場

合がある。

63

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

表5 科学系博物館における様々な学びのスタイル

★習得的な学習に関する学習スタイル

プロセス・アプロー

プログラム学習

科学者等が科学的な活動を展開する過程を細かく分析すると,その知的作業は多数の知

的プロセスが組み合わさって構成されていることから,それぞれのプロセスを習得させること

で,最終的に複雑な科学的活動ができるようになると考えるもの。観察したことを数で表現し

たり,測定したり,分類したりといった基本的な知的プロセスから,仮説を立てたり,変数を制

御したり,データを分析して解釈したりといったより複雑な知的プロセスまで,様々な知的プロ

セスが知られている。

学習者に身につけさせたい課題を,細かいステップに分割して,下位から上位に向けて,一

つ一つ段階的に無理なく学習を進めるもの。

有意味受容学習 学習者を主体とした探究的あるいは構成主義的な学習では,学習者の既有の概念や認識

をもとに学習を展開しようとするため,既有の概念や認識を持っていない場合等,深まりのあ

る学習に発展しにくいという批判から,新しい情報の学習に先立って,それを意味ある情報と

して受け入れられるように,概念的な枠組みを形成しておこうとする学習論。

講義・演示・演習によ

る学習

授業者が予め用意した内容と計画に沿って,話とデモンストレーションあるいは演習を織り

交ぜて,授業者から学習者に情報を伝える学習スタイル。

★学習者を主体とした学習スタイル

探究活動

(Inquiry-Based

Learning)

自由選択学習

(Free-Choice

Learning)

構成主義的学習理

討論・フォーラム・

シンポジウム web による情報を

活用した学習

アブダクション(仮

説形成型推論)

自然科学系博物館で行われている,inquiry(探究活動)を中心とした学習方法論である。学

習のプロセスは,プロセス・スキルズのような定型的な技法・方法に限らず,調査や実験のデ

ザイン,実践を自ら行い,結果を議論するという流れで進む。このプロセスにおいて,学習に

対する自己責任の意識(分からないことを分からないままで放っておかないという責任感)も

生まれてくる。

自分が主導して行う,自主的学習,個人のニーズや興味に応じてガイドされる学習理論の

一つである。生涯を通じてこの学習は続けられる。学習要素のすべて(何を,なぜ,どこで,

いつ,そしてどのように学ぶのか)が自己選択の要素となる。必要要件は,博物館のような膨

大なリソースに触れることができること,膨大な数のトピックを探究する機会が与えられること,

リソースやトピックとの出会いが深いものになっても,浅くても,偶然でも,何度あっても,自ら

や家族,社会,そして世界を少なくとも少しは良く理解することができることである。

人は,教師,教科書,学校等の存在なしに自然現象に対していろいろな意味を個々人の

頭の中で形成している。知識とはこのように個々人において得られるものであり,容器にもの

を入れるように移動するものではないという立場。個々人の学習が自分自身で意味を構成し

ていく。また,それを文脈の中で行ってこそ,知識の効果的な構築が可能となると考える。物

理の慣性の法則や天動説と地動説のように,常識を越えた概念を獲得する学習に素朴概念

を取り入れる等,特に有効な方法とされている。経験と知識等多様な背景を持った人々が来

館する博物館においては,構成主義的な考えに基づき,学習環境を提供することが有効。

人々や学習者の集団が,同一のテーマや問題について,互いに個人の意見を述べたり,

解決法について議論したりする。最終的に,議論の内容について整理したり,総合したり,過

去の議論の成果と関連づけたりすることで,全体的なまとめを行うことが大切である。

情報通信技術の普及によって,急速に進展してきた学習者を主体とした学習スタイルが, web による情報提供に基づく学習。インターネットにつながったパソコンだけでなく,携帯電話

等からも情報を検索することが可能となり,時と場所を選ばない学習手段となっている。

アメリカの論理学者・科学哲学者であるチャールズ・パース(Charles S. Peirce,1839~1914)

は,科学的論理思考には演繹法と帰納法のほかに,ある事象をもとに仮説を立て事実を説

明 し , 結 論 や 目 標 を 導 き だ す 「 ア ブ ダ ク ショ ン 」 ( abduction ) ま たは 「 リ トロ ダ ク ショ ン 」

(retroduction)と呼ばれる,もう一つの思考様式が存在することを提唱した。仮説形成型推論

は,地質学,生物進化論,歴史学に見られるような「遡及型推論」や,工学のトレードオフ(同

時には成立しない二律背反)の関係にある中での解決法,あるいは科学的に問うことはでき

ても科学的に答えることが難しい分野の探究的な学習に有効である。

(独立行政法人国立科学博物館 科学リテラシー涵養に関する有識者会議より)

64

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

8.

知の循環社会の中で生かすための科学系博物館における学習(教育普及活動)

(1)これまでの科学系博物館における学習(教育普及事業)の現状と改善

平成

12 年全科協「科学系博物館における教育普及事業に関する調査研究報告書」によ

れば、科学系博物館における展示及び教育普及事業については、博物館法に記される「教

育普及事業」が基本として考えられ、

① これまで科学系博物館の学習プログラムのテーマ

館・園の持つ資料に関連するテーマ、時の話題、環境・ロボット等の定番的テーマ

②これまで科学系博物館で多かった学習プログラムの手法

○児童・生徒向けの実技・実験・実習などを含む教室、講習会、ワークショップ、科

学実験・工作教室、パソコン教室など

○児童・生徒向けの野外教室、自然観察会、見学会など館外を活動の場とする教室、

講座、イベントなど

③学校と連携しながら児童・生徒の学習を支援する活動

・プラネタリウムの利用、学校教育に準じた理科実験教室

が多いとされている。

今後本研究が対象とする学習プログラムの開発については、学習手法と対象者は不可

分であるので、ここでは「子ども」

2 セグメントに対応するプログラムを基

(中学生以上) 「幼児向け」プログラムの

2 つのプログラムを開発することを基本とし

て、場合によっては一方だけのプログラムであっても良いこととするが、科学理 r¥照

ミュニケータ)をおくことを基本とすることを提案する(図1)

また、これまで実施されてきた学習手法は

①講演会

②フォーラム(市民対話)

③シナリオ・ワークショップ(市民対話)

④サイエンスショー(演示実験つき講演会)

⑤工作教室

/実験教室

⑥フィールド実習

⑦サイエンスカフェ

⑧ディベート

⑨ケーススタディー

⑩ブレーンストーミング

⑪レポート・エッセイの作成

などであり、それに最近では学校連携が進んできたこともあって、学校教育との連携を考

慮した以下のような「追加的学習の手法」も用いられるようになっている。

①読書活動

②ロールプレイ

③問題解決学習

④ゲーム

⑤議論(ディベート)

⑥プレゼンテーション

65

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

ミュージアム・ファシリテータの役割

個人的価値

(本質的価値)

自然環境・社

会の課題

学術的価値

(組織的価値)

学習者

価値創造

ミュージア

ML の育成

ファシリテータ・

コーディネータ

知の循環的役割

(手段的価値)

出典:小川義和:公益財団法人かながわ国際交流財団フォー

ラム 21 世紀ミュージアム・サミット,2013 を変形

図1 ミュージアム・ファシリテータの役割

(2)学習者主体の学習プログラム

これまで、科学系博物が提供する学習プログラムには、二つの特徴があった。それは、

「その館が持つ設置の目的と館が持つ博物館資料に基づくテーマ設定」と「学習成果の活

用場面の不足」といった特質があった。そこで、本プロジェクトでは、

① 学習者の関心に基づくテーマの拡張

② 学習方法の多様化

③ 成果の活用場面の創出

などでの学習プログラムの改善を目指すこととした。なお、改善に当たっては、本プ

ロジェクトのアンケート調査と「日本の博物館総合調査、平成

20 年、日博協会」を

参考とした。

マに限らずテーマの拡張性の確保が求められる。そのために、市民目線、博物館利用者の学

習ニーズに配慮して、テーマについてそれぞれの博物館の経営資源を活用した対応を行う。

66

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑥

表6 学習者の学習動機に基づくプログラムの構成

①資源、環境、エネルギーの保全に関

するテーマ

②安心な食料の確保

③子ども・若者に関するテーマ

④災害、事故等のリスクに関するテー

⑤高齢者・医療・介護・健康に関する

テーマ

⑥雇用・労働・教育に関するテーマ

⑦都市型生活にかかわるテーマ

⑧知的財産・

ICT・セキュリティーに

関するテーマ

⑨個人の楽しみのためのテーマ

また、学習手法としては多様性を確保し、その基本的方式としては、社会に還元すること

を考慮して「シナリオ・ワークショップ」を基本とし、知識・技術習得的な学習と協議・課題

解決的活動の

2 プログラム開発・実施を基本的構成としてプログラム開発を行うことを方

針とすし、講師の他にコーディネータ

/ファシリテータをおくことを条件とする。

そのような学習方法に適した方法としては、

①講演会

②フォーラム(市民対話)

⑨ケーススタディー

⑩ブレーンストーミング

③シナリオ・ワークショップ(市民対

話)

④サイエンスショー

⑪レポート・エッセイの作成

⑫読書活動

⑬ロールプレイ

⑤工作教室

/実験教室

⑥フィールド実習

⑧ディベート

などが考えられる。

⑦サイエンスカフェ

⑭問題解決学習

⑮ゲーム

⑯プレゼンテーション

67

以下に、

H23 年版 科学技術白書」でサイエンス・コミュニケーションして例示されたもの

を参考に掲げる。

表7 サイエンス・コミュニケーション活動の例(H23 年版 科学技術白書)

・科学技術に関する報道

・科学技術番組制作、放映

・科学雑誌・科学書等の発行

・科学技術に関する講演会、討論会、ワークショップ、サイエンスカフェ等

・学校等における科学技術に関する授業

・大学、企業、NPO法人等が行う地域の理科実験教室

・科学博物館等での展示

・科学技術に関する生涯学習講座

・サイエンスショップ(市民向け科学技術相談室)

・政府、地方公共団体、研究機関、企業による各種広報活動

・リスクコミュニケーション

・テクノロジーアセスメント等への参加

(3)世代別科学リテラシー涵養一覧表の改定(指導者者向け)

これまで掲げた「」について、科学系博物館のみならず様々な館種の博物館においても利用

できることを目指して、学習領域に配慮した「ミュージアム・リテラシー涵養活動一覧表」を

以下に示す。この表は、プログラム開発者のための指針となるものであり、別途「学習者の学

習動機に基づくリテラシー一覧表が必要である。

これらの考えをさらに進めるためには、開発プログラムについて

① 探究的(継続的)プログラムの開発(各館の友の会等の会員向け)

② 社会活動参加型プログラムの開発(主として大人向け)

③ 「観察法」「アンケート法」「インタビュー法」による評価

などを重視し、学習プログラムの達成目標に関する「評価項目」への与件として

①プログラムの実施前評価(形成的評価)

②プログラム実施後の総括的評価

③利用者に対する「能力形成」評価

④ 事業に対する事業評価

などを提言する。

68

表8 博物館におけるミュージアム・リテラシー涵養活動と学習動機

科学館・博物館等における「ミュージアム・リテラシー涵養活動」の学習動機と学習領域

学習動機

感動や発見体験(感性の涵養)

体系的知識習得(知識の習得・概

念の理解)

探究的学習体験(科学・社会・社会的な

見方・考え方の育成)

学習領域

自然・環境関連

(水族館、植物園、

自然史博物館)

自然環境に親しむ体験を通じて,身のまわりの事

象の美しさ,不思議さなどを感じる。

自然環境に親しむ体験を通じて,自然環境に対す

る興味・関心や実生活との関わりを感じる。自ら

進んで観察をしたり、疑問を探究する意欲を持

つ。

自然環境に親しむ体験を通じて,自然環境に対す

る興味・関心や自然環境の有用性を感じる。自然

環境や技術の分野で働く人に興味を持つ。

自然環境の有用性や自然環境リテラシーの必要性

への意識を高める。自然環境および自然環境に関

連する分野に対して,持続的でより豊かな情報に

裏打ちされた好奇心と興味を示す。

自然環境の有用性や自然環境リテラシーの必要性

への意識を高める。自然環境および自然環境に関

連する分野に対して,持続的でより豊かな情報に

裏打ちされた好奇心と興味を示す。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。わかる,できることを実感し,達成感を得

る。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。科学に親しむ体験を通じて,生活で直接関

わる科学・社会的知識を身につける。

興味・関心を持った事象を積極的に調べるなど、

自ら調べることを取り入れて活動できるようにな

る。興味・関心を持った事象について、自分なり

の考えを持てるようになる。

自然界や人間社会に興味・関心を持ち,興味・関

心を持った事象について、その規則性や関係性を

見いだす。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に理解を広

げる。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。

子どもの科学リテラシー涵養のための学習を通じ

て一緒に知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自身の趣味・教養など個々の興味・関心に応じて

科学・社会的知識を身につける。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。学んだことを総合力

として生かし,生活及び社会上の課題解決のため

に適切に判断する。

学んだことを総合力として生かし,生活及び社会

上の課題解決のために適切に判断する。学んだ成

果を,自身の趣味・教養に生かす。

地域・生活関連

(科学館・民俗博物

館・郷土博物館)

地域や生活に親しむ体験を通じて,身のまわりの

事象の美しさ,不思議さなどを感じる。

地域や生活に親しむ体験を通じて,科学に対する

興味・関心や実生活との関わりを感じる。自ら進

んで観察をしたり、疑問を探究する意欲を持つ。

科学に親しむ体験を通じて,科学に対する興味・

関心や科学の有用性を感じる。科学や技術の分野

で働く人に興味を持つ。

科学の有用性や科学リテラシーの必要性への意識

を高める。科学および科学に関連する分野に対し

て,持続的でより豊かな情報に裏打ちされた好奇

心と興味を示す。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。わかる,できることを実感し,達成感を得

る。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。科学に親しむ体験を通じて,生活で直接関

わる科学・社会的知識を身につける。

興味・関心を持った事象を積極的に調べるなど、

自ら調べることを取り入れて活動できるようにな

る。興味・関心を持った事象について、自分なり

の考えを持てるようになる。

自然界や人間社会に興味・関心を持ち,興味・関

心を持った事象について、その規則性や関係性を

見いだす。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に理解を広

げる。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。

子どもの科学リテラシー涵養のための学習を通じ

て一緒に知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。学んだことを総合力

として生かし,生活及び社会上の課題解決のため

に適切に判断する。

観察・実験・工作

(理工系博物館

・科学館)

参加体験・探究活

(子ども博物館・工

芸館)

科学の有用性や科学リテラシーの必要性への意識

を高める。科学および科学に関連する分野に対し

て,持続的でより豊かな情報に裏打ちされた好奇

心と興味を示す。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,身の

まわりの事象の美しさ,不思議さなどを感じる。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自身の趣味・教養など個々の興味・関心に応じて

科学・社会的知識を身につける。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。わかる,できることを実感し,達成感を得

る。

学んだことを総合力として生かし,生活及び社会

上の課題解決のために適切に判断する。学んだ成

果を,自身の趣味・教養に生かす。

興味・関心を持った事象を積極的に調べるなど、

自ら調べることを取り入れて活動できるようにな

る。興味・関心を持った事象について、自分なり

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,科学

に対する興味・関心や実生活との関わりを感じ

る。自ら進んで観察をしたり、疑問を探究する意

欲を持つ。

科学に親しむ体験を通じて,科学に対する興味・

関心や科学の有用性を感じる。科学や技術の分野

で働く人に興味を持つ。

自然科学や社会科学の有用性や科学・社会リテラ

シーの必要性への意識を高める。科学および科学

に関連する分野に対して,持続的でより豊かな情

報に裏打ちされた好奇心と興味を示す。

自然科学や社会科学の有用性や科学・社会リテラ

シーの必要性への意識を高める。科学および科学

に関連する分野に対して,持続的でより豊かな情

報に裏打ちされた好奇心と興味を示す。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。科学に親しむ体験を通じて,生活で直接関

わる科学・社会的知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に理解を広

げる。

子どもの科学リテラシー涵養のための学習を通じ

て一緒に知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自身の趣味・教養など個々の興味・関心に応じて

科学・社会的知識を身につける。

自然界や人間社会に興味・関心を持ち,興味・関

心を持った事象について、その規則性や関係性を

見いだす。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。学んだことを総合力

として生かし,生活及び社会上の課題解決のため

に適切に判断する。

学んだことを総合力として生かし,生活及び社会

上の課題解決のために適切に判断する。学んだ成

果を,自身の趣味・教養に生かす。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,身の

まわりの事象の美しさ,不思議さなどを感じる。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。わかる,できることを実感し,達成感を得

る。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,科学

と社会に対する興味・関心や実生活との関わりを

感じる。自ら進んで観察をしたり、疑問を探究す

る意欲を持つ。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,科学

と社会に対する興味・関心や科学の有用性を感じ

る。科学や技術の分野で働く人に興味を持つ。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。科学に親しむ体験を通じて,生活で直接関

わる科学・社会的知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に理解を広

げる。

興味・関心を持った事象を積極的に調べるなど、

自ら調べることを取り入れて活動できるようにな

る。興味・関心を持った事象について、自分なり

の考えを持てるようになる。

自然界や人間社会に興味・関心を持ち,興味・関

心を持った事象について、その規則性や関係性を

見いだす。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。

拡張的動活動(社会の状況に適切に対

応する能力の育成)

興味・関心を持った事象について、自分なりの考

えを持ち、まわりの人と意見を言い合ったり、ま

わりの人と一緒に活動したりできるようになる。

学んだことを表現し,わかりやすく人に伝える。

学んだことを自分の職業選択やキャリア形成と関

連づけて考える。

社会との関わりをふまえ,得られた知識・スキル

等を実生活の中で生かす。学んだことを職業選択

やキャリア形成に生かす。

社会との関わりをふまえ,学んだことを表現し,

人に伝える。地域の課題を見出し,その解決に向

けてよりよい方向性を見いだす。

地域の課題を見出し,その解決に向けてよりよい

方向性を見いだす。自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に効果的に次の世代

へと伝える。

興味・関心を持った事象について、自分なりの考

えを持ち、まわりの人と意見を言い合ったり、ま

わりの人と一緒に活動したりできるようになる。

学んだことを表現し,わかりやすく人に伝える。

学んだことを自分の職業選択やキャリア形成と関

連づけて考える。

社会との関わりをふまえ,得られた知識・スキル

等を実生活の中で生かす。学んだことを職業選択

やキャリア形成に生かす。

社会との関わりをふまえ,学んだことを表現し,

人に伝える。地域の課題を見出し,その解決に向

けてよりよい方向性を見いだす。

地域の課題を見出し,その解決に向けてよりよい

方向性を見いだす。自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に効果的に次の世代

へと伝える。

興味・関心を持った事象について、自分なりの考

えを持ち、まわりの人と意見を言い合ったり、ま

わりの人と一緒に活動したりできるようになる。

学んだことを表現し,わかりやすく人に伝える。

学んだことを自分の職業選択やキャリア形成と関

連づけて考える。

社会との関わりをふまえ,得られた知識・スキル

等を実生活の中で生かす。学んだことを職業選択

やキャリア形成に生かす。

社会との関わりをふまえ,学んだことを表現し,

人に伝える。地域の課題を見出し,その解決に向

けてよりよい方向性を見いだす。

地域の課題を見出し,その解決に向けてよりよい

方向性を見いだす。自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に効果的に次の世代

へと伝える。

興味・関心を持った事象について、自分なりの考

えを持ち、まわりの人と意見を言い合ったり、ま

わりの人と一緒に活動したりできるようになる。

学んだことを表現し,わかりやすく人に伝える。

学んだことを自分の職業選択やキャリア形成と関

連づけて考える。

社会との関わりをふまえ,得られた知識・スキル

等を実生活の中で生かす。学んだことを職業選択

やキャリア形成に生かす。

芸術・社会活動

(歴史博物館

・美術館)

自然科学や社会科学の有用性や科学リテラシーの

必要性への意識を高める。科学および科学に関連

する分野に対して,持続的でより豊かな情報に裏

打ちされた好奇心と興味を示す。

子どもの科学リテラシー涵養のための学習を通じ

て一緒に知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自然科学や社会科学の有用性や科学リテラシーの

必要性への意識を高める。科学および科学に関連

する分野に対して,持続的でより豊かな情報に裏

打ちされた好奇心と興味を示す。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自身の趣味・教養など個々の興味・関心に応じて

科学・社会的知識を身につける。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。学んだことを総合力

として生かし,生活及び社会上の課題解決のため

に適切に判断する。

学んだことを総合力として生かし,生活及び社会

上の課題解決のために適切に判断する。学んだ成

果を,自身の趣味・教養に生かす。

社会との関わりをふまえ,学んだことを表現し,

人に伝える。地域の課題を見出し,その解決に向

けてよりよい方向性を見いだす。

地域の課題を見出し,その解決に向けてよりよい

方向性を見いだす。自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に効果的に次の世代

へと伝える。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,身の

まわりの事象の美しさ,不思議さなどを感じる。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。わかる,できることを実感し,達成感を得

る。

興味・関心を持った事象を積極的に調べるなど、

自ら調べることを取り入れて活動できるようにな

る。興味・関心を持った事象について、自分なり

の考えを持てるようになる。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,科学

と社会に対する興味・関心や実生活との関わりを

感じる。自ら進んで観察をしたり、疑問を探究す

る意欲を持つ。

自然科学や社会科学に親しむ体験を通じて,科学

と社会に対する興味・関心や科学の有用性を感じ

る。科学や技術の分野で働く人に興味を持つ。

自然科学や社会科学の有用性や科学・社会リテラ

シーの必要性への意識を高める。科学および科学

に関連する分野に対して,持続的でより豊かな情

報に裏打ちされた好奇心と興味を示す。

身のまわりの自然事象や技術の仕組みを科学的に

知る。科学に親しむ体験を通じて,生活で直接関

わる科学・社会的知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に理解を広

げる。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。

子どもの科学リテラシー涵養のための学習を通じ

て一緒に知識を身につける。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自然界や人間社会に興味・関心を持ち,興味・関

心を持った事象について、その規則性や関係性を

見いだす。

多くの不確実な情報の中から科学・社会的知識に

基づいて判断し,行動する。学んだことを総合力

として生かし,生活及び社会上の課題解決のため

に適切に判断する。

興味・関心を持った事象について、自分なりの考

えを持ち、まわりの人と意見を言い合ったり、ま

わりの人と一緒に活動したりできるようになる。

学んだことを表現し,わかりやすく人に伝える。

学んだことを自分の職業選択やキャリア形成と関

連づけて考える。

社会との関わりをふまえ,得られた知識・スキル

等を実生活の中で生かす。学んだことを職業選択

やキャリア形成に生かす。

社会との関わりをふまえ,学んだことを表現し,

人に伝える。地域の課題を見出し,その解決に向

けてよりよい方向性を見いだす。

自然科学や社会科学の有用性や科学・社会リテラ

シーの必要性への意識を高める。科学および社会

に関連する分野に対して,持続的でより豊かな情

報に裏打ちされた好奇心と興味を示す。

生活や社会に関わる科学・社会的知識に対する理

解を深める。

自身の趣味・教養など個々の興味・関心に応じて

科学・社会的知識を身につける。

学んだことを総合力として生かし,生活及び社会

上の課題解決のために適切に判断する。学んだ成

果を,自身の趣味・教養に生かす。

地域の課題を見出し,その解決に向けてよりよい

方向性を見いだす。自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に効果的に次の世代

へと伝える。

【参考資料・参考文献補足】

文部科学省(2008)『社会教育調査-平成 20 年度結果の概要』

69

佐々木正峰(2009)『博物館これから』雄山閣

伊藤寿朗(1993)『市民のなかの博物館』吉川弘文館

世界科学会議(1999)『科学と科学的知識の利用に関する世界宣言』(国際科学会議とユネス

コの共催) s・ストックルマイヤー他 (2003)『サイエンスコミュニケーション 科学を伝える人の理論

と実践』丸善プラネット

・国立科学博物館ホームページ http://www.kahaku.go.jp

・国立科学博物館「科学リテラシー涵養活動」を創る~世代に応じたプログラム開発のために

~ http://www.kahaku.go.jp/learning/researcher/index.html

・科学技術の智プロジェクト:2008,調査研究報告書 http://www.science-for-all.jp/

・CANVAS コラム 日本のミュージアム事情について 科学博物館における新たな学び(Ⅰ)同(Ⅱ) http://www.canvas.ws/jp/hiroba/clm102.html

・科学技術館 http://www.jsf.or.jp/

・日本科学未来館 http://www.miraikan.jst.go.jp/

・名古屋市科学館 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/index.htm

・大阪科学技術館 http://www.ostec.or.jp/pop/html/op_1.html

・日立シビックセンター科学館 http://www.civic.jp/science/index.html

・ミュージアムパーク茨城県自然博物館 http://www.nat.pref.ibaraki.jp/index.html

・平塚市博物館 http://www.hirahaku.jp/

・福岡県青少年科学館 http://www.science.pref.fukuoka.jp/

・神奈川県立 生命の星・地球博物館 http://nh.kanagawa-museum.jp/

・滋賀県立琵琶湖博物館 http://www.lbm.go.jp/

・兵庫県立人と自然の博物館 http://www.hitohaku.jp/

70

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑦

第2章 第2節 項目7

知の循環型社会における対話型博物館モデル

小川義和

国立科学博物館

1 .はじめ に

2006 年に改正された教育基本 法において生涯学 習の理念が明記され,2008 年の

中央教育審議会答申において ,知の循環型社会 の構築を目指し,自立した個 人や

地域社会の形成に向けた生涯学 習振興の重要性 が強調されている

1 )

2011 年に策定された第4期科 学技術基本計画で は,従来の政策的な観点か らの

サイエンスコミュニケーショ ンを,地域に根差 したサイエンスコミュニケー ショ

ンに発展させ,人々が対話を 通じて科学技術の 知識を活用できる科学リテラ シー

の向上を目指している。当初 サイエンスコミュ ニケーションについては,専 門家

と一般の人々の間の対話のよ うに,科学と社会 を相対する関係として捉え, 両者

をつなぐための機能と位置づ けられていた。し かし震災後の日本を考えれば ,専

門家と一般の人々の間をつな ぐだけでは課題の 解決には至らないことは明ら かで

ある。そこでは,専門家と一般 の人々という対 立モデルだけで

はなく,多様な専門家が 社会を構成し,変革を もたらす

2 )

ような,人々の多様 性

を踏まえたモデルを想定する 必要がある。地域 において知の循環型のシステ ムが

機能するためには,多様な人 々の対話による知 の還元が求められており,そ れを

支える博物館の役割の解明と構 築が必要である 。

2 .博物館 の文化的 な価値

博物館は,人類共有の財産で ある資料を収集保 管し,将来に継承するととも に,

資料に基づく調査研究を行い ,これらの成果を もとにして,一般の人々に対 し資

料の公開・展示と関連する教 育活動を営んでい る。博物館は,社会の中の, 社会

のための文化装置であり,自ず と文化的な価値 を持っている。

小川は,従来の文化的価 値の議論

3 )

を踏まえ,博物館には,個人が博物 館を 楽

しみ,知的な体験をするとい う個人的価値(本 質的価値 ),博物館が貴重な標 本資

料を収集管理し,調査研究の 成果を発信してい る学術的価値(組織的価値),そし

て,結果として博物館の活動 が社会,経済,文 化,教育に影響を及ぼす社会 的価

値(手段的価値)があると提唱 している

4 )

(図1)。

3 .博物館 と社会を つなげ るために

震災後の課題は,明らかに公 的な機関だけでは 解決することは困難で,市民 一

人一人の参画とそれぞれの意 見に基づいた合意 形成が必要である。一人一人 が課

題に対し,自立的に判断し, 対話を通じて,合 意形成し,協働して解決して いく

人々の対話を促進することに より,自立した個 人が地域の課題に対して協働 して

71

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑦

解決し,新しい価値を創造し ていく地域社会の 実現に寄与する。」と仮定で きる。

そこで,社会における博物館の 役割,価値を考 えてみよう。

図 1 博物 館の文化 的価値

田中によれば,NPO はボラン ティアや寄付によ って活動が支援され,社会の 課

題に対し社会変革を実現する ことを役割として いる。その過程で活動を支援 した

ボランティア自身に市民性が 育成されるという もう一つの社会的役割を見出 すこ

とができる

5 )

(図2)。

それに対して,博物館は,ボ ランティアはもち ろんのこと,来館する市民に よ

って支えられ,社会の課題に 対し,解決を目指 した新たな価値を創造するこ とが

可能な社会的装置である。そ の過程で,市民も 博物館も共に成長し,市民と 学芸

員の相互理解(ML:ミュージ アムリテラシー) が深まる。博物館を利用する 市民

は博物館の多様な個人的価値 を主張し,博物館 の関係者は博物館の学術的価 値を

主張する。さらに政策決定者 は社会の課題を解 決する社会的価値を博物館に 求め

る。三つの価値を理解し,結 びつけ,新たな価 値創造をする博物館の機能が 求め

られている

6 )

(図3)。

4 .対話型 博物館モ デル

上記のような議論をもとに, オーディエンス( 博物館利用者と潜在的利用者 の

総称)と博物館をつなぐ対話 型データベースの 提案をする(図4)。博物館 は,博

物館の持つ学術的価値を有す る展示資料やその 成果である学習プログラムを 提供

する。オーディエンスは,展 示や学習プログラ ムの体験を通じて,展示資料 や博

物の資料に個人的価値を見出 し,意味づけを行 い,その記憶や思い出を持っ て帰

るのである。

本研究では,博物館の学習プ ログラムのデータ ベ ースを構築し,各世代(幼 児・

小学生低学年,小学生高学年 ・中学生,高校生 ・大学生,成人・親子,熟年 ・高

齢者)のオーディエンスが学 習プログラムを体 験し,その成果を確認する「 科学

リテラシーパスポートβ」シ ステムを構築する 。これはオーディエンス間, 学芸

72

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑦

員間,そしてオーディエンス と学芸員の間をつ なぐデータベースである。オ ーデ

ィエンスが自分の学習履歴を 把握するとともに ,博物館側が複数のオーディ エン

スの利用傾向を横断的に把握で きる。本データ ベースには,科学系博物館の ほか,

動物園,水族館,美術館,歴 史系博物館,総合 博物館( 図中それぞれ,科, 動,

水,美,歴,総,と表記)が 参加する。各館の 学芸員はオーディエンスの活 用傾

向を分析して,人々が求める 博物館の連携,課 題を抽出し,オーディエンス や他

の学芸員からのコメントを参 考に,学習プログ ラムの改善を行う。博物館側 は,

本システムを博物館活用事例 のデータベースと して活用でき,オーディエン スは

それらを共有し,次の学習への 道筋を展望する 。

図 2 社会 における 非営利 組織の役 割

図 3 社会 における 博物館 の役割

6)

5)

用モデルを提示し,双方向性 の博物館活用モデ ルの提案を行う。②個人の成 長と,

博物館と学芸員の成長を促し ,その過程で科学 リテラシーの向上を評価し, 新た

な博物館の活用法を提案する。」

そして研究終了後は,本プロ ジェクトで蓄積さ れたノウハウ・ネットワーク ・

学習プログラムを活用して, 各地の博物館が主 体的に「③地域の課題解決の ため

の社会的価値を創造し,知の 循環型社会を担う プラットフォームとしての博 物館

の新たな社会的機能を提案する 。」ことを目的 として取り組んでいく (図5)。

主な引用文献

1) 中央教育審議会:新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について〜知の循

環型社会の構築を目指して〜( 答申),

2008

2) 吉川弘之:社会の中の科学,社会のための科学,日本サイエンスコミュニケー

ション協会誌,

1(1),44-49, 2012

73

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑦

3) Holden, J. “Cultural Value and the Crisis of Legitimacy: Why culture needs a democratic mandate”, Demos, 2006

4) 小川義和:社会のためのミュージアム‐心に残る新たな表現‐,日本ミュージ

アム・マネージメント学会第

17 回大会シンポジウム,(東京家政学院大学),日

本ミュージアム・マネージメン ト学会会報,

17(2),pp.p15-16,2012.6

5)田中弥生:コミュニティとしての社会教育施設への期待~ドラッガーの教え~,

平成

24 年度全科協総会, 2013

6) 小川義和:ミュージアムリテラシーの議論は何をもたらしたか,公益財団法人

かながわ国際交流財団主催フォ ーラム

21 世紀ミュージアム・サミット,神奈川

韓国会館,

2013.3

74

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑦

図 4 対話 型データ ベース システム の概念 図

図 5 これ からの博 物館の 社会的役 割

75

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

第 2章 第 2節 項 目8

学 習プログ ラムの開 発と評 価に関す る研究

高安礼士 *1 ,松尾美佳 *2

千葉市科学館 *1 ,国立科学博 物館 *2

1 .学習プ ログラム の開発 と評価規 準

(1)はじめに

ミュージアムにおける教育 または学習には, 学校教育でいわれる学習指導 要領

のようなガイドラインはない 。しかし,学習プロ グラムであるからにはその目的 ,

学習者の学習段階の配慮,学 習テーマや内容と 学習方法の選択,成果の評価 方法

などの全体構成を示す「学習 デザイン」が必要 である。学校教育における教 育評

価は,単に「学習場面での成 果」にのみに注目 するのではなく,個人個人の 成長

とともに教育活動全体を形成 する「カリキュラ ム開発」が行われ,それと対 を成

す形で「評価」が行われる。 つまり,個別の「 授業場面での学習成果」を評 価す

リキュラム」と対をなす「評価 規準」を設け実 施されている。

<学校の教育目標と具現化方策及びその評価場面>

〈学習指導要領及び各種通達・指針〉

教科書

各教科の学年目標と年

間指導計画

教材の開発・選択

小中高を通じたカリキュラム構造

単元目標群と単

元の指導計画

各教科等の主要目標と主要指導内容

教育課程の編成と実施に関する諸基

各教科等の年間時数と

登校日・行事等の年間

スケジュール

学校行事・ホームルーム・

クラブ活動・生徒指導,

等々各教科以外の教育活

動の年間指導計画

週時程

指導法の工夫

日課表

各時限の学習指導

父母の期待および学

校の諸条件の検討

各行事・単位活

動の計画

学校の雰囲気,師弟関係,

生徒相互の関係,等の検討

外部の教育資源 保護者会・PTA

注. これらの要素のすべての場面で評価は行われるが、学習者に直接関係する評価は、で行われる。

図 1 学校 教育にお けるカ リキュラ ム開発 と評価

本研究においても,これらの学校教 育における「カリキュラム開発」と「評価」

を参考として,本研究に則した知の 循環システ ムにおける学習プログラムの開 発

と評価を考えることとした。

(2)博物館における学習プロ グラムの開発と 評価法の一般的方法

本研究においては,学習プロ グラムの評価を 単にあるプログラム参加者の「 学

習成果に関する評価」とする ことなく,プログ ラムを開発実施する過程で生 じる

様々な要素に関して適宜評価 を行うこととする 。そのためには,①プログラ ムを

開発する場におけるマネージ メントに関する評 価,②プログラムを開発する 職員

の開発プロセスとキャリア形 成に関する評価, ③学習者の学習場面における 成果

と一定時間を経過後の成果に 関する評価(「水 平調査」と「垂直調査」)を 行うこ

76

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

ととする。

多 くの 場合 は ,個 々の 教 育普 及事 業( 学 習活 動) の評 価で は なく 行事 や 事業

に関する一般調査の一項目と して行われるが, 各プログラム毎に単独で行わ なけ

ればさしたる成果はあげること ができないもの である。

<博物館におけるミューッジアムリテラシー涵養活動の目標とカリキュラム開発の構造>

「ミュージアム・リテラシー涵養活

動」の目標

・感性の涵養

博物館法

各講座等の目標と年間

学習計画

・知識の習得・概念の理解

領域の目標群

と学習活動計

・論理的な思考習慣の涵養

・社会の状況に適切に対応する能力の

涵養

各領域の年間行事等の

年間スケジュール

博物館行事・友の会活動・

ボランティア活動等々の各

領域以外の活動の年間指

導計画

実施計画/

①事前評価

利用者の期待および博

物館の諸条件の検討

各行事・活動の

計画

教材の開発・選択

学習法の選択

日程表/

②形成的評

各学習プログラム

博物館の雰囲気,職員間の

関係,利用者相互の関係等

の検討

博物館の雰囲気等を

改善するための工夫

友の会・メンバー会・ボランティア

/

教育委員会

教育政策研究所

教育センター

文書館・図書館・公民館・学習センター

市町村教育委員会

市町村教育センター

企業等・研究所

市民団体・NPO

図 2 博物 館におけ るミュ ージアム ・リテ ラシー 涵養活動 と評価の 場

博物館における学習プログラ ム開発においても 館内の学習資源のみならず幅 広

い外部学習資源の活用が求め られる。特にここ では, そのような博物館にお ける

学習プログラムの開発の各ス テップに対応する 「評価」について考える。一 般的

に,博物館における展示や学習 活動における「 評価」には,

① 学習プログラムの企画立案段階 で行われる事前 評価(front-end evaluation)

② 学 習 プ ロ グ ラ ム の 実 施 直 前 や 期 間 中 に 行 わ れ る 形 成 的 評 価 (formative evaluation)

③ 学習プログラムが完了した段階 で行われる総括 評価(summative evaluation)

の3つのカテゴリーがあると言 われる。

具体的な手続きや作業として は,学習のねらい の確認,プログラム制作の精 度

や質,学習機能の完成度,学 習器材や設備の状 況,学習環境の安全・衛生, 学習

の容易さ・利便性,全体時間 における学習バラ ンス等 を学習デザインの全体 評価

とし,具体的な学習の現状把握 ,参加者の反応 等の評価方法として

① 利用者数

② 参加回数や総時間数

③ 反応の様子

④ アンケート評価

⑤ 専門家評価,その他新聞,雑誌 ,研究会,学会 等の記事

を総合的に評価の指標とする。

本研究における評価は,一般 的な事業評価とし て実施されるものから特定の 学

習プログラムの効果測定のよう な具体的・具象 的なものまで幅広い。また ,本研究

77

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

の参加者への評価調査のみな らず非利用者への 評価調査も重要とされる。評 価内

容は,調査対象の属性と学習 目的に関する項目 で構成され,項目間の関係性 を 求

めることで意味ある評価調査 となる。評価対象 のセグメンテーション(同質 な区

分け)が重要であり,具体的 な方法としては, 利用者の態度などを観点別に 記録

する「観察法」,調査目的に対 応した観点から直 接聞き取りを行う「面接調査 法」,

社会調査のように調べること を構造化した上で 実施する「質問紙法(アンケ ート

調査)」等が考えられる。さ らに最近では,ビッ グデータの一部を利用すること や

ツィッターや

Facebook 等の SNS を活用して,さまざまなデータ収集が可能とな

っているので,それらの手法を 活用することも 試みられてしかるべきで あろう 。

ア 観察法

業務日誌等のように運営の 概要を客観データ として記録する事実記録法, 評価

したい項目・観点の目録を予 め作っておき該当 する事象の発生頻度を知る事 象目

録法,予めその観点と評価段 階を作成しておき 当該の事象がその評定段階の どの

点に位置するかを測ろうとす る評定尺度法等が あり,客観的なデータを得る 工夫

が必要である。ワークショッ プ物の人気度や滞 留時間,魅力度などの傾向を 知る

ことができる。ただし,ワー クショップの意図 と成果の間には,学校教育の 中で

行われる評価とは違った手法を 開発することが 望まれる。

イ 面接調査法

他の調査法と併用することに よって,観察者 の生きた実感を得ることができ る。

実施に当たっては,相手が自 由に話してくれる 雰囲気を作り,批判的なそぶ り,

説教的な口調,批判めいた言 動は避け,記録を 取るのを嫌がる場合は,本人 の前

では記録を取らないような配慮 が必要である。

また,固定メンバーに対し て,一定期間定期 的に繰り返し調査を行い,時 系列

的な変化や傾向を捉え,被調 査者の考え方や行 動が時間の経過でどのように 変化

していくのかを調べる方法も ある。観覧回数を 重ねることによってワークシ ョッ

プに対する考えの変化等の調査 に有効である。

ウ 質問紙法(アンケート法)

調査の目的,内容を明確に し,調査の趣旨を 質問用紙のはじめに分かり易 い文

章で説明する。質問の内容は ,簡単で,具体的 ,客観的であるよう心がける 。回

答者が興味をもち,誰でも答 えられるように, 大まかな内容から細かな内容 につ

いての質問項目とする。言葉 や文章は,いろい ろな意味に取れる表現や否定 的な

言い回しは避け,回答者にふさ わしい言葉を使 用する。

処理法や回答者の便宜のた め,チェックや数 字による回答も必要である。 でき

るだけ,定量的な処理ができる ようにする。

このように,教育普及事業 の計画とその成果 の間の因果関係をさまざまな 調査

や評価によって知ることは, 各プログラムとそ の運営を改善する上で最も基 本的

で大切なことであり,積極的な 取り組みが望ま れているところである。

博物館協会での評価,社会教 育界での評価,学 会での評価,マスメディア等 での

評価があることを知っておくこ とは有効となる 。

これまで博物館における学 習プログラムの開 発については標準的なものが な

かったが,ここでは科学系 博物館における 開発 手順を一つのモデルとして想定 し,

それに対応する「評価規準」を 考える例を示す 。

本研究では,中長期的に見 た学習者の科学リ テラシーの変容に関する「垂 直評

価」と各プログラムを終了後 に行う「個別学習 の評価」として学習プログラ ム制

78

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

作者の立場からみた「学習到 達評価表」を作成 し,プログラムの実施後の成 果評

価に用いることとした。その 際,評価を行動目 標として評価出来るよう「・ ・・

ができる。」と表現し,プロ グラムの開発と表裏 一体のものとして考えるものと し

た。

具体的には,科学リテラシ ー涵養学習の4つ の目標に対して,目標 の具体 的な

観点をそれぞれ

4 項目を想定し, 16 の具体的な評価の観点を示した。

感性の涵養

・身近な出来事や科学に関係す る話題に興味と 好奇心を示す。

・自分で観察したり,疑問を探 究したいと思っ たりする。

・科学や技術の分野で働く人に 興味を持つ。

・持続可能な社会を維持するた めに行動しよう と思う。

知識の習得・概念の理解

・身のまわりの自然事象や技術 の仕組みを科学 的に説明できる。

・科学や技術の性質について理 解する。

・人間生活が技術によって変化 してきたことが 分かる。

・科学と技術が互いに依存して いることが分か る。

科学的な思考習慣の涵養

・課題解決のために調べるべき 問題を見つける 。

・疑問に対して科学的な手法を 用いて追求する 。

・様々な情報を収集・選択して ,問題に適用す る。

・結論を導く前に,様々な情報 や考えを考慮す る。

社会の状況に適切に対応する能 力の涵養

・自らの疑問や考えを適切に表 現し,人に伝え る。

・個人や社会の問題に対して科 学的な知識・態 度を活用して意志決定す

る。

・科学の応用や技術の導入に ついて,社会と環 境に及ぼす利点とリスクを

多様な視点から分析して決定す る。

・社会の状況に応じて自分の持 っている科学的 知識・能力を提供する。

これらは,あくまでのプロ グラム開発のため の評価規準であり,学習者の 立場

に立った「学習動機」とそれに 則した形成的評 価も今後は検討すべきと考える 。

以下に,開発した評価の観 点を,科学リテラ シー涵養体系に統合した図表 を示

す。図

3-1 は全世代に関わる評価基準と目標との関係性を整理している。図 3-2

から図

3-6 は,世代ごとの評価基準と水平調査と垂直調査時における質問項目(そ

れぞれ,水平評価ツールの質 問項目,垂直評 価 ツールの質問項目)について 示し

たものである。

79

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

世代及びライフステージ

学習が成立する環境

幼児 〜 小学校低学年期

小学校高学年 ~ 中学校

高等学校・高等教育期

子育て期

熟年期・高齢期

壮年期

学校教育(教育課程に基づく発達段階に応じた基礎的・基本的な学び

等)

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての領域の広がり 等)

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1)

感性の涵養

知識の習得・概

念の理解

・身近な出来事や科学に関

係する話題に興味と好奇心

を示す。

・テーマが何であるかをいう

ことができる

・自分で観察したり,疑問を

探究したいと思ったりする。

・科学や技術の分野で働く人

に興味を持つ。

・関係する人物を示すことが

できる

・持続可能な社会を維持す

るために行動しようと思う。

・科学や技術の性質につい

て理解する。

・人間生活が技術によって

変化してきたことが分かる。

・科学と技術が互いに依存し

ていることが分かる。

・科学と技術の相互関係に

ついて説明することができる

・課題解決のために調べる

べき問題を見つける。

評価の基準(行動評価)

・何を見て、何を感じたかを

いうことができる

・自分の環境との関係や将

来に対する願望を表現でき

・身のまわりの自然事象や

技術の仕組みを科学的に説

明できる。

・テーマに関する基本的知識

を修得できた

・科学技術の本質や暫定性

(「変化する科学」)について

述べることができる

・人類の科学技術の進歩に

ついて説明できる

・課題を発見できる

観点の

強調点

(*2)

世代及びライフステージに

求められる目標

観点の

強調点

(*2)

世代及びライフステージに

求められる目標

観点の

強調点

(*2)

○科学や技術に親し

む体験を通じて,身の

まわりの事象の不思

議さ等を感じる。

(*

3)

○科学や技術に親し

む体験を通じて,科学

に対する興味・関心や

実生活との関わりを

感じる。

○自分で進んで観察

をしたり,疑問を探究

する意欲を持つ。

世代及びライフステージに

求められる目標

○科学や技術に親しむ

体験を通じて,科学に

対する興味・関心や疑

問を探究する意欲を持

ち,科学の有用性を感

じる。

観点の

強調点

(*2)

世代及びライフステージに

求められる目標

(子育て期)

○子どもと一緒に学ぶこ

とで,科学の有用性や

科学リテラシーの必要性

への意識を高める。

観点の

強調点

(*2)

○科学や技術の分野

で働く人に興味を持

つ。

             (壮

年期)

○科学および技術に対して,興

味・関心や疑問を探究する意欲

を継続的に持つ。

○持続可能な社会を維持する

ために行動しようと思う。

(子育て期)

○子どもと一緒に学ぶこと

で,生活や社会を支えてい

る科学や技術の知識や概

念について幅広く理解を深

める。

世代及びライフステージに

求められる目標

○科学および技術に対して,

より豊かに情報を取り入れ,

継続的に好奇心と興味を示

す。

○持続可能な社会を維持す

るために行動しようと思う。

○身のまわりの自然

事象や技術の仕組み

を体験的に知り,わか

ることを実感する。

○科学や技術に親し

む体験を通じて,生活

で直接関わる科学的

知識を身につける。

(*

3)

○生活や社会に関わる

科学や技術の知識や

役割について理解を広

げる。

            (壮年

期)

○豊かに情報を取り入れ,

生活や社会を支えている科

学や技術の知識と役割につ

いて継続的に幅広く理解を

深める。

(子育て期)

○多くの不確実な情報

の中から科学的な知識

に基づいて疑問を探究

し,結論を導く。

○豊かに情報を取り入れ,生

活や社会を支えている科学や

技術の知識と役割について継

続的に幅広く理解を深める。

○自身の趣味・教養等,個々

の興味・関心に応じて科学的

知識を身につける。

科学的な思考

習慣の涵養

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に

扱うことができる

・疑問に対して科学的な手

法を用いて追求する。

・科学的な推論ができる

・結論を導く前に,様々な情

報や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論

に対し、別の様々な角度から

検証できる

○興味・関心を持った

事象について積極的

に調べ,活動し,自分

の考えを持てるように

なる。

○自然界や人間社会

に興味・関心を持ち,

興味・関心を持った事

象について,その規則

性や関係性を見いだ

す。

○多くの不確実な情報

の中から科学的な知識

に基づいて疑問を探究

し,結論を導く。

(*

3)

            (壮年

期)

○生活及び社会上の課題

に対し,学んだことを総合的

に活かし,科学的な考え方

を持って結論を導く。

(*

3)

○生活及び社会上の課題に

対し,学んだことを総合的に

活かし,科学的な考え方を

持って結論を導く。

○学んだ成果を,自身の趣

味・教養に活かす。

・自らの疑問や考えを適切

に表現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現

し、伝えることができる

(子育て期)

○社会との関わりをふま

え,学んだことを表現

し,人に伝える。

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・個人や社会の問題に対し

て科学的な知識・態度を活

用して意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学

的な言説ができる

・科学の応用や技術の導入につ

いて,社会と環境に及ぼす利点

とリスクを多様な視点から分析し

て決定する。

・科学と技術のメリットとデメ

リットを分析し、それを反映し

て導入できる

・社会の状況に応じて自分

の持っている科学的知識・

能力を提供する。

・社会的な文脈の中での科

学的な解決を提示し、場を

コーディネートして対話がで

きる。

○興味・関心を持った

事象について,自分の

考えを持ち,一緒に活

動できるようになる。

○学んだことを表現

し,わかりやすく人に

伝える。

○学んだことを自分の

職業選択やキャリア

形成と関連づけて考

える。

○社会との関わりをふ

まえ,得られた知識・ス

キル等を実生活の中で

活かす。

○学んだことを職業選

択やキャリア形成に活

かす。

            (壮年

期)

○地域の課題を見出し,そ

の解決に向けてよりよい方

向性を見出す。 (*

3)

○地域の課題を見出し,その

解決に向けてよりよい方向性

を見出し,判断する。

○自身の持っている知識・能

力を,社会の状況に応じて適

切に効果的に次の世代へと

伝える。

(*

3)

図 3-1 博物館に おける 科学リテ ラシー 涵養活 動に関す る評価規 準表

80

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

世代及びライフステージ

幼児 〜 小学校低学年期

学習が成立する環境

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1) 評価の基準(行動評価)

・身近な出来事や科学に関係

する話題に興味と好奇心を示

す。

・テーマが何であるかをいうことができる

学校教育(教育課程に基づく発達段階に応じた基礎的・基本的な学び 等)

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての

領域の広がり 等)

観点の強

調点(*

2)

世代及びライフステージに

求められる目標

評価の基準(行動評価) 水平評価ツールの質問項目 垂直評価ツールの質問項目

・テーマが何であるかをい

うことができる

「テーマ」について、おもし

ろいとおもう。

みのまわりのしぜんやふ

しぎなできごとについて、

おもしろいとおもう。

感性の涵養

・自分で観察したり,疑問を探

究したいと思ったりする。

・何を見て、何を感じたかをいうことができ

○科学や技術に親しむ体

験を通じて,身のまわり

の事象の不思議さ等を感

じる。

・科学や技術の分野で働く人に

興味を持つ。

・関係する人物を示すことができる

(*3)

・持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・自分の環境との関係や将来に対する願

望を表現できる

・身のまわりの自然事象や技

術の仕組みを科学的に説明で

きる。

・テーマに関する基本的知識を修得でき

・テーマに関する基本的

知識を修得できた

「テーマ」について、どうし

て「仕組み」か、かぞくや

友だち、がっこうのせんせ

いにせつめいできる。

みのまわりのしぜんげんしょ

うがおこるしくみや、きかいの

うごくしくみについて、かぞく

や友だち、がっこうのせんせ

いにせつめいできる。

知識の習得・

概念の理解

・科学や技術の性質について

理解する。

・科学技術の本質や暫定性(「変化する科

学」)について述べることができる

○身のまわりの自然事象

や技術の仕組みを体験

的に知り,わかることを実

感する。

・人間生活が技術によって変化

してきたことが分かる。

・人類の科学技術の進歩について説明で

きる

・科学と技術が互いに依存して

いることが分かる。

・科学と技術の相互関係について説明す

ることができる

・課題解決のために調べるべき

問題を見つける。

・課題を発見できる

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に扱うことがで

きる

科学的な思考

習慣の涵養

・疑問に対して科学的な手法を

用いて追求する。

・科学的な推論ができる

○興味・関心を持った事

象について積極的に調

べ,活動し,自分の考え

を持てるようになる。

・課題を発見できる

こんかいのイベントで

「テーマ」について、くわし

くしらべたいことがみつ

かった。

この1ねんかんでくわしく

しらべたいことがみつかっ

た。

・結論を導く前に,様々な情報

や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論に対し、別の

様々な角度から検証できる

・自らの疑問や考えを適切に表

現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現し、伝えること

ができる

・自らの探究の過程を表

現し、伝えることができる

「テーマ」についてあたら

しくしったことを、かぞくや

友だち、がっこうのせんせ

いにしらせたいとおもう。

あたらしくしったことを、た

とえばかぞくや友だち、

がっこうのせんせいにしら

せたいとおもう。

・個人や社会の問題に対して

科学的な知識・態度を活用して

意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学的な言説が

できる

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・科学の応用や技術の導入につい

て,社会と環境に及ぼす利点とリス

クを多様な視点から分析して決定す

る。

・科学技術のメリットとデメリットを分析し、

それを反映して導入できる

○興味・関心を持った事

象について,自分の考え

を持ち,一緒に活動でき

るようになる。

・社会の状況に応じて自分の

持っている科学的知識・能力を

提供する。

・社会的な文脈の中での科学的な解決を

提示し、場をコーディネートして対話がで

きる。

図 3-2 図3-1 におけ る幼児~ 小学校 低学年 期の評価 規準表

81

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

世代及びライフステージ

小学校高学年 ~ 中学校期

学習が成立する環境

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1) 評価の基準(行動評価)

・身近な出来事や科学に関係

する話題に興味と好奇心を示

す。

・テーマが何であるかをいうことができる

学校教育(教育課程に基づく発達段階に応じた基礎的・基本的な学び 等)

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての

領域の広がり 等)

観点の強

調点(*

2)

世代及びライフステージに

求められる目標

評価の基準(行動評価) 水平評価ツールの質問項目 垂直評価ツールの質問項目

・テーマが何であるかをい

うことができる

「テーマ」について、興味・

関心がある。

身近な出来事や科学に

関係する話題について、

興味・関心がある。

感性の涵養

・自分で観察したり,疑問を探

究したいと思ったりする。

・何を見て、何を感じたかをいうことができ

・科学や技術の分野で働く人に

興味を持つ。

・関係する人物を示すことができる

○科学や技術に親しむ体

験を通じて,科学に対す

る興味・関心や実生活と

の関わりを感じる。

・何を見て、何を感じたか

をいうことができる

今日取り上げた「テーマ」

について、さらに調べたい

と思う。

この1年間で新たに学んだこ

と、または「PCALi(ピ☆カ☆

リ)」のイベントで取り上げられ

たテーマについて、さらに調べ

たいと思う。

○自分で進んで観察をし

たり,疑問を探究する意

欲を持つ。

・持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・自分の環境との関係や将来に対する願

望を表現できる

知識の習得・

概念の理解

・身のまわりの自然事象や技

術の仕組みを科学的に説明で

きる。

・テーマに関する基本的知識を修得でき

・科学や技術の性質について

理解する。

・科学技術の本質や暫定性(「変化する科

学」)について述べることができる

・テーマに関する基本的

知識を修得できた

「テーマ」について、どうし

て「仕組み」か、家族や友

達、学校の先生に説明で

きる。

身の回りの自然現象や科

学技術の仕組みを、家族

や友達、学校の先生に説

明できる。

○科学や技術に親しむ体

験を通じて,生活で直接

関わる科学的知識を身に

つける。

・科学技術の本質や暫定

性(「変化する科学」)に

ついて述べることができ

科学的に考えれば、世の

中のすべてのことについ

て説明できると思う。

科学的に考えれば、世の

中のすべてのことについ

て説明できると思う。

・人間生活が技術によって変化

してきたことが分かる。

・人類の科学技術の進歩について説明で

きる

(*3)

・科学と技術が互いに依存して

いることが分かる。

・科学と技術の相互関係について説明す

ることができる

・課題解決のために調べるべき

問題を見つける。

・課題を発見できる

・課題を発見できる

「テーマ」について、さらに

知りたいこと、疑問に思う

ことを見つけることができ

た。

この1年間で新たに学んだこと、ま

たは「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベン

トで取り上げられたテーマについ

て、さらに知りたいこと、疑問に思う

ことを見つけることができた。

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に扱うことがで

きる

科学的な思考

習慣の涵養

・疑問に対して科学的な手法を

用いて追求する。

・科学的な推論ができる

○自然界や人間社会に

興味・関心を持ち,興味・

関心を持った事象につい

て,その規則性や関係性

を見いだす。

・結論を導く前に,様々な情報

や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論に対し、別の

様々な角度から検証できる

・自らの疑問や考えを適切に表

現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現し、伝えること

ができる

・個人や社会の問題に対して

科学的な知識・態度を活用して

意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学的な言説が

できる

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・科学の応用や技術の導入につい

て,社会と環境に及ぼす利点とリス

クを多様な視点から分析して決定す

る。

・科学技術のメリットとデメリットを分析し、

それを反映して導入できる

○学んだことを表現し,わ

かりやすく人に伝える。

○学んだことを自分の職

業選択やキャリア形成と

関連づけて考える。

・自らの探究の過程を表

現し、伝えることができる

「テーマ」について、自分

の疑問やその時に生じた

考え方を、友達や家族、

学校の先生に伝えようと

思う。

自分の疑問やその時に

生じた考え方を、家族や

友達、学校の先生に伝え

ようと思う。

・社会の状況に応じて自分の

持っている科学的知識・能力を

提供する。

・社会的な文脈の中での科学的な解決を

提示し、場をコーディネートして対話がで

きる。

図 3-3 図3-1 におけ る小学校 高学年 ~中学 校期の評 価規準表

82

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

世代及びライフステージ 高等学校・高等教育期

学習が成立する環境

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1) 評価の基準(行動評価)

・身近な出来事や科学に関係

する話題に興味と好奇心を示

す。

・テーマが何であるかをいうことができる

学校教育(教育課程に基づく発達段階に応じた基礎的・基本的な学び 等)

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての領域の

広がり 等)

観点の強

調点(*

2)

世代及びライフステージに

求められる目標

評価の基準(行動評価) 水平評価ツールの質問項目 垂直評価ツールの質問項目

・テーマが何であるかをい

うことができる

「テーマ」について、興味・

関心がある。

身近な出来事や科学に関

係する話題について、興

味・関心がある。

感性の涵養

・自分で観察したり,疑問を探

究したいと思ったりする。

・何を見て、何を感じたかをいうことができ

・科学や技術の分野で働く人に

興味を持つ。

・関係する人物を示すことができる

○科学や技術に親しむ体

験を通じて,科学に対する

興味・関心や疑問を探究す

る意欲を持ち,科学の有用

性を感じる。

・何を見て、何を感じたかを

いうことができる

今日取り上げた「テーマ」に

ついて、さらに調べたいと

思う。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に調べたいと思う。

○科学や技術の分野で働

く人に興味を持つ。

・関係する人物を示すこと

ができる

「テーマ」に関連する職業

に興味をもっている。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマに関連する職

業に興味をもっている。

・持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・自分の環境との関係や将来に対する願

望を表現できる

・自分の環境との関係や将

来に対する願望を表現でき

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

・身のまわりの自然事象や技

術の仕組みを科学的に説明で

きる。

・テーマに関する基本的知識を修得でき

・テーマに関する基本的知

識を修得できた

「テーマ」について、どうして

「仕組み」か、 人に 説明でき

る。

身の回りの自然現象や科

学技術の仕組みを、 人に 説

明できる。

知識の習得・

概念の理解

・科学や技術の性質について

理解する。

・科学技術の本質や暫定性(「変化する科

学」)について述べることができる

・人間生活が技術によって変化

してきたことが分かる。

・人類の科学技術の進歩について説明で

きる

○生活や社会に関わる科

学や技術の知識や役割に

ついて理解を広げる。

・科学技術の本質や暫定

性(「変化する科学」)につ

いて述べることができる

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

・人類の科学技術の進歩に

ついて説明できる

「テーマ」によって、我々の

生活が変化してきたことが

説明できる。

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

人類の科学技術の進歩に

よって、我々の生活が変化

してきたことが説明できる。

・科学と技術が互いに依存して

いることが分かる。

・科学と技術の相互関係について説明す

ることができる

・課題解決のために調べるべき

問題を見つける。

・課題を発見できる

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に扱うことがで

きる

科学的な思考

習慣の涵養

・疑問に対して科学的な手法を

用いて追求する。

・科学的な推論ができる

・結論を導く前に,様々な情報

や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論に対し、別の

様々な角度から検証できる

・科学と技術の相互関係に

ついて説明することができ

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

・課題を発見できる

「テーマ」について、さらに

知りたいこと、疑問に思うこ

とを見つけることができた。

この1年間で新たに学んだこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に知りたいこと、疑問に思うことを見つ

けることができた。

○多くの不確実な情報の

中から科学的な知識に基

づいて疑問を探究し,結論

を導く。

・さまざまな情報を総合的

に扱うことができる

・科学的な推論ができる

「テーマ」について、いろい

ろな情報や知識を使って考

えることができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、いろ

いろな情報や知識を使って考えること

ができる。

「テーマ」について、自分な

りの根拠をもって考えること

ができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、自分

なりの根拠をもって考えることができ

る。

(*3)

・自らの科学的推論や結論

に対し、別の様々な角度か

ら検証できる

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

・自らの疑問や考えを適切に表

現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現し、伝えること

ができる

・自らの探究の過程を表現

し、伝えることができる

「テーマ」について、自分の

疑問やその時に生じた考え

方を、 人に 伝えようと思う。

自分の疑問やその時に生

じた考え方を、 人に 伝えよ

うと思う。

・個人や社会の問題に対して

科学的な知識・態度を活用して

意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学的な言説が

できる

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・科学の応用や技術の導入につい

て,社会と環境に及ぼす利点とリス

クを多様な視点から分析して決定す

る。

・科学技術のメリットとデメリットを分析し、

それを反映して導入できる

○社会との関わりをふま

え,得られた知識・スキル

等を実生活の中で活かす。

・社会的な文脈の下で、科

学的な言説ができる

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

○学んだことを職業選択や

キャリア形成に活かす。

・科学技術のメリットとデメ

リットを分析し、それを反映

して導入できる

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

・社会の状況に応じて自分の

持っている科学的知識・能力を

提供する。

・社会的な文脈の中での科学的な解決を

提示し、場をコーディネートして対話がで

きる。

・社会的な文脈の中での科

学的な解決を提示し、場を

コーディネートして対話が

できる。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

図 3-4 図3-1 におけ る高等学 校~高 等教育 期の評価 規準表

83

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

子育て期

世代及びライフステージ

壮年期

学習が成立する環境

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1) 評価の基準(行動評価)

・身近な出来事や科学に関係

する話題に興味と好奇心を示

す。

・テーマが何であるかをいうことができる

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての領域の

広がり 等)

観点の強

調点(*

2)

世代及びライフステージに

求められる目標

評価の基準(行動評価) 水平評価ツールの質問項目 垂直評価ツールの質問項目

(子育て期)

○子どもと一緒に学ぶこと

で,科学の有用性や科学リテ

ラシーの必要性への意識を

高める。

・テーマが何であるかをい

うことができる

「テーマ」について、興味・

関心がある。

身近な出来事や科学に関

係する話題について、興

味・関心がある。

・自分で観察したり,疑問を探

究したいと思ったりする。

・何を見て、何を感じたかをいうことができ

・何を見て、何を感じたかを

いうことができる

今日取り上げた「テーマ」に

ついて、さらに調べたいと

思う。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に調べたいと思う。

感性の涵養

・科学や技術の分野で働く人に

興味を持つ。

・関係する人物を示すことができる

・持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・自分の環境との関係や将来に対する願

望を表現できる

・身のまわりの自然事象や技

術の仕組みを科学的に説明で

きる。

・テーマに関する基本的知識を修得でき

・関係する人物を示すこと

ができる

「テーマ」に関連する職業

に興味をもっている。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマに関連する職

業に興味をもっている。

             (壮年期)

○科学および技術に対して,興味・関

心や疑問を探究する意欲を継続的に

持つ。

・自分の環境との関係や将

来に対する願望を表現でき

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

○持続可能な社会を維持するために

行動しようと思う。

(子育て期)

○子どもと一緒に学ぶことで,生

活や社会を支えている科学や技

術の知識や概念について幅広く

理解を深める。

・テーマに関する基本的知

識を修得できた

「テーマ」について、どうして

「仕組み」か、

る。

人に 説明でき

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

身の回りの自然現象や科

学技術の仕組みを、 人に 説

明できる。

・科学や技術の性質について

理解する。

・科学技術の本質や暫定性(「変化する科

学」)について述べることができる

・科学技術の本質や暫定

性(「変化する科学」)につ

いて述べることができる

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

知識の習得・

概念の理解

・人間生活が技術によって変化

してきたことが分かる。

・人類の科学技術の進歩について説明で

きる

・科学と技術が互いに依存して

いることが分かる。

・科学と技術の相互関係について説明す

ることができる

・課題解決のために調べるべき

問題を見つける。

・課題を発見できる

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に扱うことがで

きる

科学的な思考

習慣の涵養

・疑問に対して科学的な手法を

用いて追求する。

・科学的な推論ができる

・人類の科学技術の進歩に

ついて説明できる

「テーマ」によって、我々の

生活が変化してきたことが

説明できる。

人類の科学技術の進歩に

よって、我々の生活が変化

してきたことが説明できる。

            (壮年期)

○豊かに情報を取り入れ,生活

や社会を支えている科学や技術

の知識と役割について継続的に

幅広く理解を深める。

(子育て期)

・科学と技術の相互関係に

ついて説明することができ

○多くの不確実な情報の中

から科学的な知識に基づい

て疑問を探究し,結論を導く。

・課題を発見できる

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

「テーマ」について、さらに

知りたいこと、疑問に思うこ

とを見つけることができた。

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

この1年間で新たに学んだこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に知りたいこと、疑問に思うことを見つ

けることができた。

・さまざまな情報を総合的

に扱うことができる

「テーマ」について、いろい

ろな情報や知識を使って考

えることができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、いろ

いろな情報や知識を使って考えること

ができる。

            (壮年期)

○生活及び社会上の課題に対

し,学んだことを総合的に活か

し,科学的な考え方を持って結論

を導く。

・科学的な推論ができる

「テーマ」について、自分な

りの根拠をもって考えること

ができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、自分

なりの根拠をもって考えることができ

る。

・結論を導く前に,様々な情報

や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論に対し、別の

様々な角度から検証できる

・自らの疑問や考えを適切に表

現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現し、伝えること

ができる

(*3) ・自らの科学的推論や結論

に対し、別の様々な角度か

ら検証できる

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

(子育て期)

○社会との関わりをふまえ,

学んだことを表現し,人に伝

える。

・自らの探究の過程を表現

し、伝えることができる

「テーマ」について、自分の

疑問やその時に生じた考え

方を、 人に 伝えようと思う。

自分の疑問やその時に生

じた考え方を、 人に 伝えよ

うと思う。

・個人や社会の問題に対して

科学的な知識・態度を活用して

意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学的な言説が

できる

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・科学の応用や技術の導入につい

て,社会と環境に及ぼす利点とリス

クを多様な視点から分析して決定す

る。

・科学技術のメリットとデメリットを分析し、

それを反映して導入できる

・社会の状況に応じて自分の

持っている科学的知識・能力を

提供する。

・社会的な文脈の中での科学的な解決を

提示し、場をコーディネートして対話がで

きる。

・社会的な文脈の下で、科

学的な言説ができる

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

            (壮年期)

○地域の課題を見出し,その解

決に向けてよりよい方向性を見

出す。

(*3)

・科学技術のメリットとデメ

リットを分析し、それを反映

して導入できる

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

・社会的な文脈の中での科

学的な解決を提示し、場を

コーディネートして対話が

できる。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

図 3-5 図3-1 におけ る高等学 校~中 学校期 の評価規 準表

84

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

世代及びライフステージ

子育て期

壮年期

熟年期・高齢期

学習が成立する環境

4つの目標(*1) 目標の具体的な観点(*1) 評価の基準(行動評価)

・身近な出来事や科学に関係

する話題に興味と好奇心を示

す。

・テーマが何であるかをいうことができる

科学系博物館の学習 (豊富な物(資料)を活用した体験型の学び ・ 環境や医療等学校以外での学びとしての領域の広がり 等)

観点の強

調点(*

2)

世代及びライフステージに

求められる目標

評価の基準(行動評価) 水平評価ツールの質問項目 垂直評価ツールの質問項目

・テーマが何であるかをい

うことができる

「テーマ」について、興味・

関心がある。

身近な出来事や科学に関

係する話題について、興

味・関心がある。

感性の涵養

・自分で観察したり,疑問を探

究したいと思ったりする。

・何を見て、何を感じたかをいうことができ

・科学や技術の分野で働く人に

興味を持つ。

・関係する人物を示すことができる

○科学および技術に対して,より

豊かに情報を取り入れ,継続的

に好奇心と興味を示す。

・何を見て、何を感じたかを

いうことができる

今日取り上げた「テーマ」に

ついて、さらに調べたいと

思う。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に調べたいと思う。

○持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・関係する人物を示すこと

ができる

「テーマ」に関連する職業

に興味をもっている。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマに関連する職

業に興味をもっている。

・持続可能な社会を維持するた

めに行動しようと思う。

・自分の環境との関係や将来に対する願

望を表現できる

・自分の環境との関係や将

来に対する願望を表現でき

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

人々が豊かに生きる社会

にするために、自分なりに

貢献しようと思う。

・身のまわりの自然事象や技

術の仕組みを科学的に説明で

きる。

・テーマに関する基本的知識を修得でき

・テーマに関する基本的知

識を修得できた

「テーマ」について、どうして

「仕組み」か、 人に 説明でき

る。

身の回りの自然現象や科

学技術の仕組みを、 人に 説

明できる。

知識の習得・

概念の理解

・科学や技術の性質について

理解する。

・科学技術の本質や暫定性(「変化する科

学」)について述べることができる

・人間生活が技術によって変化

してきたことが分かる。

・人類の科学技術の進歩について説明で

きる

○豊かに情報を取り入れ,生活

や社会を支えている科学や技術

の知識と役割について継続的に

幅広く理解を深める。

・科学技術の本質や暫定

性(「変化する科学」)につ

いて述べることができる

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

今まで正しいとされてきたこ

とがらが、科学の発見や技術

の発展によって変わってしま

うことがあると思う。

○自身の趣味・教養等,個々の

興味・関心に応じて科学的知識

を身につける。

・人類の科学技術の進歩に

ついて説明できる

「テーマ」によって、我々の

生活が変化してきたことが

説明できる。

人類の科学技術の進歩に

よって、我々の生活が変化

してきたことが説明できる。

・科学と技術が互いに依存して

いることが分かる。

・科学と技術の相互関係について説明す

ることができる

・課題解決のために調べるべき

問題を見つける。

・課題を発見できる

・様々な情報を収集・選択し

て,問題に適用する。

・さまざまな情報を総合的に扱うことがで

きる

科学的な思考

習慣の涵養

・疑問に対して科学的な手法を

用いて追求する。

・科学的な推論ができる

・科学と技術の相互関係に

ついて説明することができ

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

科学の発見や、技術の発

展によって、新たな発見や

発展が生み出された事例

を挙げることができる。

・課題を発見できる

「テーマ」について、さらに

知りたいこと、疑問に思うこ

とを見つけることができた。

この1年間で新たに学んだこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、さら

に知りたいこと、疑問に思うことを見つ

けることができた。

○生活及び社会上の課題に対

し,学んだことを総合的に活か

し,科学的な考え方を持って結論

を導く。

・さまざまな情報を総合的

に扱うことができる

「テーマ」について、いろい

ろな情報や知識を使って考

えることができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、いろ

いろな情報や知識を使って考えること

ができる。

○学んだ成果を,自身の趣味・教

養に活かす。

・科学的な推論ができる

「テーマ」について、自分な

りの根拠をもって考えること

ができる。

この1年間で新たに知ったこと、また

は「PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイベントで

取り上げられたテーマについて、自分

なりの根拠をもって考えることができ

る。

・結論を導く前に,様々な情報

や考えを考慮する。

・自らの科学的推論や結論に対し、別の

様々な角度から検証できる

・自らの科学的推論や結論

に対し、別の様々な角度か

ら検証できる

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

自分が出した結論に対し、

別の様々な角度から検証

することができる。

・自らの疑問や考えを適切に表

現し,人に伝える。

・自らの探究の過程を表現し、伝えること

ができる

・自らの探究の過程を表現

し、伝えることができる

「テーマ」について、自分の

疑問やその時に生じた考え

方を、 人に 伝えようと思う。

自分の疑問やその時に生

じた考え方を、 人に 伝えよ

うと思う。

・個人や社会の問題に対して

科学的な知識・態度を活用して

意志決定する。

・社会的な文脈の下で、科学的な言説が

できる

社会の状況に

適切に対応す

る能力の涵養

・科学の応用や技術の導入につい

て,社会と環境に及ぼす利点とリス

クを多様な視点から分析して決定す

る。

・科学技術のメリットとデメリットを分析し、

それを反映して導入できる

○地域の課題を見出し,その解

決に向けてよりよい方向性を見

出し,判断する。

・社会的な文脈の下で、科

学的な言説ができる

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

自分の身の周りや社会の

問題にも科学的根拠を利

用して判断しようと思う。

○自身の持っている知識・能力

を,社会の状況に応じて適切に

効果的に次の世代へと伝える。

・科学技術のメリットとデメ

リットを分析し、それを反映

して導入できる

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

新しく科学技術を利用した仕組みを導

入しようとするときに、利用しようとす

る科学技術のメリットとともに、それが

もたらすデメリットも考慮して自分の結

論を出そうと思う。

・社会の状況に応じて自分の

持っている科学的知識・能力を

提供する。

・社会的な文脈の中での科学的な解決を

提示し、場をコーディネートして対話がで

きる。

(*3)

・社会的な文脈の中での科

学的な解決を提示し、場を

コーディネートして対話が

できる。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

ある場面で自分の持ってい

る知識を活用して、様々な

人の意見を調整しようと思

う。

図 3 - 6 博 物 館 に お け る に お け る 科 学 リ テ ラ シ ー 涵 養 活 動 に 関 す る 評 価 規 準

85

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

2 .評価シ ステム

本研究中でモニターである PCALi(ピ☆カ☆リ)会員を対象に実施したアンケー

トは,合計7パターンある。前 述のとおり,大 きく分けると水平アンケート( 水

平調査と同義)と垂直アンケ ート(垂直調査と 同義)の2種類で,何れも PCALi(ピ

☆カ☆リ)のウェブサイト上で 実施されるオン ラインアンケートである。ピカリ会

員は幼少期から高齢期までに渡 ることから,質 問の手法・内容・言葉遣い等 々は,

対象とする世代ごとに工夫し, 垂直アンケー ト は全3パターン,水平アンケー ト

告書の付録を参照。)。例として ,水平アンケー トと垂直アンケート内容をそれ ぞ

れ1パターンずつ使って,質問 の意図,対象世 代ごとの質問の編集の仕方につ い

て説明する。内容はアンケ ート本文の後に※に て説明しているので参照された い。

幼~小

小~中

高等学校・ 高等教育

1 9 歳以下 2 0 歳以上

子育・ 壮年 熟年・ 高齢

言葉 ひらがな やさしい 普通

水平

属性( 問3)

リテラシー

クラス タ

変容( 問6)

言葉

理科は好き か等 理科は好き か等

×

幼~小Ve r.

( 全4項目)

ひらがな

×

小~中Ve r.

( 全8項目)

やさしい

普通

理科は好き か等

×

高等以上V e r. ( 全16項目)

普通

垂直

属性( 問4)

リテラシー

クラス タ

変容( 問6)

理科は好き か等 理科は好き か等 理科は好き か等

×

幼~小Ve r.

( 全4項目)

×

小~中Ve r.

( 全8項目)

×

高等以上V e r.

( 全16項目)

理科は好き か等

高等以上V e r. ( 全16項目)

水平アンケート:全3パターン

垂直アンケート:全4パターン

注)変容の質問内容は、垂直か水平かで異なる。 また世代によっても異なる。

※属性(問4): 属性を見るための質問。 5つの項目に対して、 気持ちの度合いを答える。 例:理科は好き か

※リテラシークラスタ: 属性を見るための質問。 ただし、 20歳以上にしか使えない。

図 4 世代 別アンケ ートの パターン

■水平アンケート(世代:高等 学校・高等教育 以上の全世代)

(図4中のパターン⑤)

問1:「○○○○(開催館)」に 来たのは何回目 ?

(選択回答)初めて/2 回目/3回目/ 4回以上

※バックグラウンド調査 。全世代共通。

(選択回答)いない/友人/親/ きょうだい/祖 父母/子/配偶者/その他

86

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

親戚/恋人/その他 合計 ( )人

※バックグラウンド調査。全世 代共通。

問3:あなたは理科(科学)や 社会,歴史,美 術についてどう感じますか。

(選択回答)そう思う/ ややそう思う/ あまりそう思わない/そう思わ な

・理科(科学)は得意なほ うだ。

・理科(科学)は好きだ 。

・社会の出来事に興味が ある。

・色々なことの歴史が好 きだ。

・絵を観たり描いたりす るのが好きだ。

※属性を問う質問。全世 代共通。

問4:あなたは「○○○○(プ ログラム名)」 に参加してみてどう感じました か。

(選択回答)そう思う/ ややそう思う/ あまりそう思わない/そう思わ な

・わかりやすかった。

・楽しかった。

・今後の生活に役立ちそ うだ。

※プログラム評価。全世 代共通。

問5:今日の「○○○○(プロ グラム名)」の ねらいは何だと思いますか。

自由に書いてください。

※「タイトル」を作った学芸 員のねらいと,受講 者の意識の乖離をはかる。

プログラム評価の一環。受講者 のニーズ調査も 兼ねる。全世代共通。

問6:「○○○○(プログラム 名)」に参加した 後のあなたについて教えてくだ さ

い。それぞれの項目に対してあ なたの考え・態 度に近いと思うものを選ん

でください。該当するイベント に参加していな いと思う場合,あるいは,

どう答えてよいかわからない場 合は,「わから ない」を選択してください。

(選択回答)そう思う/ややそ う思う/あまり そう思わない/そう思わな

い/わからない

「テーマ」について,興味・関 心がある。

今日取り上げた「テーマ」につ いて,さらに調 べたいと思う。

「テーマ」に関連する職業に興 味をもっている 。

人々が豊かに生きる社会にする ために,自分な りに貢献しようと思う。

「テーマ」について,どうして 「仕組み」か, 人に説明できる。

今まで正しいとされてきたこと がらが,科学の 発見や技術の発展によっ

て変わってしまうことがあると 思う。

「テーマ」によって,我々の生 活が変化してき たことが説明できる。

科学の発見や,技術の発展によ って,新たな発 見や発展が生み出された

事例を挙げることができる。

「テーマ」について,さらに知 りたいこと,疑 問に思うことを見つける

ことができた。

「テーマ」について,いろいろ な情報や知識を 使って考えることができ

87

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

る。

「テーマ」について,自分なり の根拠をもって 考えることができる。

自分が出した結論に対し,別の 様々な角度から 検証することができる。

「テーマ」について,自分の疑 問やその時に生 じた考え方を,人に伝え

ようと思う。

自分の身の周りや社会の問題に も科学的根拠を 利用して判断しようと思

う。

新しく科学技術を利用した仕組 みを導入しよう とするときに,利用しよ

うとする科学技術のメリットと ともに,それが もたらすデメリットも考

慮して自分の結論を出そうと思 う。

ある場面で自分の持っている知 識を活用して, 様々な人の意見を調整し

ようと思う。

※4つの目標の達成度の自己 認識を測る。4つ の目標の具体的な観点のうち ,該

当する世代の全設問が出る。 年間の受講結果と 変化した項目の関係を調べる 。 前

述のとおり,科学リテラシー 涵養学習の4つの 目標に対して,目標の具体的 な観

点をそれぞれ

4 項目想定し,16 の具体的な評価の観点を示した。(上記の表中で

世代ごとにその

16 の評価の観点を質問文にしたものが,図3-2,3-3,3

項目」である。

問7:次に参加するならどのよ うなテーマが良 いですか。こんな分野のことを 体

験したい/こんな能力を身に付 けたい/こんな 社会貢献に興味がある・・・

など,自由に書いてください。

※受講者の選択テーマおよびそ の変容の調査。 全世代共通。

見・ご感想など自由に書いてく ださい。

※全世代共通。

■垂直アンケート(世代:20 歳以上の全世代 )(図4中のパターン⑦)

問1:あなたが「PCALi(ピ☆ カ☆リ)」に参加し ようと思った理由は何ですか 。自

由に書いてください。

※自由記述。博物館や本プロジ ェクトそのもの に対する受講者のニーズ調

査。全世代共通。

問2:あなたは博物館を過去1 年間に何回ぐら い利用しましたか。また,あな た

がそれらの場所を利用する理由 は何ですか。

総合博物館/科学博物館/歴史 博物館/美術博 物館/野外博物館/動物園

/植物園/動植物園/水族館

※理由は任意回答。自由記述。 バックグラウン ド調査。来館者のニーズ調

査。全世代共通。

88

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

問3:あなたのおすすめの博物 館活用法は何で すか。誰にどんな活用法をすす め

たいですか。

※自由記述。全世代共通。

問4:あなたは理科(科学)や 社会,歴史,美 術についてどう感じますか。

(選択回答)そう思う/ややそ う思う/あまり そう思わない/そう思わな

・理科(科学)は得意なほうだ。

・理科(科学)は好きだ。

・社会の出来事に興味がある。

・色々なことの歴史が好きだ。

・絵を観たり描いたりするのが 好きだ。

※属性を問う質問。全世代共通 。

問5:それぞれの項目に対して ,現在のあなた の考え・態度に最も近いものを 選

/そう思わない

・科学技術についての知識は豊 かなほうだ

・ものの共通点をとらえるのが 得意だ

・科学技術についてもっと知り たい

・地域社会分野に興味がある

・福祉分野に興味がある

・文化分野に興味がある

・経済分野に興味がある

・科学的な発見や新技術の開発 は社会や人間を 豊かにする

・社会の中に科学的な考え方が 浸透するとよい

・科学技術に関する理解は日常 生活に役立つ

※「科学技術リテラシー簡易テ スト」(「科学 技術リテラシーの実態調査

と社会的活動傾向別教育プログ ラムの開発」研 究代表者:西條美紀)を引

用。属性を問う。このテスト は回答者が 20 歳以 上の場合にのみ使用される。

でのイベントに参加したことが ありましたか。

(選択回答)ある/ない

ください。

※全世代共通。

問7:水平アンケートの問6と 同じ内容。

問8:過去1年間に「 PCALi(ピ☆カ☆リ)」のイ ベントをきっかけに,以下の 行事

に参加・企画しましたか。その 回数を教えてく ださい。

(選択回答)0回/1回/2回 /3回/4回/ 5回以上

・サイエンスカフェなどの交流 的活動

・博物館等の展示解説・ボラン ティア(調査研 究協力,展示説明など)

89

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑧

・学校支援活動(学校でのクラ ブ活動における 指導など)

・科学フォーラム・学会発表( 学会活動,フォ ーラム等の開催など)

・地域の環境に関する社会的活 動(環境美化, リサイクル活動,牛乳パッ

クの回収活動など)

・地域の復興・防災・災害対策 に関する社会的 活動(自主防災活動や災害

援助活動,子どもの登下校時の 安全監視など)

・地域の経済・産業・観光( 観光ボランティア など),社会福祉・人権(介

護など),対外的活動(留学生 援助など),そ の他の社会的活動

※受講者の社会的活動に対する 態度の変容を測 る。全世代共通。

問9:上記の問で,一度でも「 1」~「5」の どれかを選択した方にお尋ねし ま

す。何のプログラムにいつどこ で参加しました か。企画した方にお尋ねし

ます。何のプログラムについて いつどこでどの ような関わり方をしました

か。

※自由記述。全世代共通。

問10:「PCALi(ピ☆カ☆リ)」 について,ご意 見・ご感想など自由に書いてく だ

さい。

※自由記述。全世代共通。

3 .今後予 定する評 価活動

①プログラムを開発する場にお けるマネージメ ントに関する評価

②プログラムを開発する職員の 開発プロセスと キャリア形成に関する評価

③学習者の学習場面における成 果と一定時間を 経過後の成果に関する評価

90

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑨

第2章 第2節 項目9

インターネットを用いた

博物館および科学・社会への興味関与度に対する意識調査

庄中雅子

*1

,松尾美佳

*1

,鈴木和博

*2

,小川義和

*1

国立科学博物館

*1

,株式会社文化環境研究所

*2

1.はじめに

本稿では「知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築に関する基

礎的研究」において開発中のインターネット上双方向性データベースシステム PCALi

(ピ☆カ☆リ)の使用を想定される母集団に対する科学・社会への興味関与度を中心に,

インターネットによる意識調査を行った。

PCALi(ピ☆カ☆リ)は,博物館にて受講する学習プログラムのイベントの受講履歴

を保存したり,開催予定の学習プログラムのイベント検索を行えるウェブサイトで,利

用登録者の科学リテラシー涵養が行えることはもちろん,学芸員側が利用登録者に対し

て全国的なアンケートを実施できるツールの実現等も目的の一つにしている。

この科学リテラシー涵養の指針となるのが,

1)

科学リテラシー涵養活動の体系であ

る。この体系では,5つの世代(幼児~小学校低学年期,小学校高学年~中学校期,高

等学校・高等教育期,子育て期・壮年期,熟年期・高齢期)に対し,それぞれ感性の涵

社会の状況に適切に対応する能力の涵養(行動する),の4つの目標が定められている。

PCALi(ピ☆カ☆リ)で取り扱う学習プログラムでも,学習内容がそれぞれどの目標に

対応し,どういった能力を涵養することを目的とするかをあらかじめ利用登録者に対し

て明示する構造となっている。

本稿におけるインターネット調査の目的は,このサイトを通じて学習プログラムや博

物館を利用する PCALi(ピ☆カ☆リ)利用登録者(登録者)がどのように変容するかを

知るためのコントロール調査である。よって,サイトに利用登録をすると仮定される集

団が,PCALi(ピ☆カ☆リ)利用前にどのような意識をもっているか調査を行った。

2.方法

調査は平成 26 年 2 月 7 日~10 日の 4 日間で,統計調査センター株式会社の提供する

インターネット調査にて行った。ここで使用する博物館および博物館種の分類は,文部

科学省社会教育調査にて採用されている分類に従った(表1)。

本調査でのアンケート回答者を,想定される登録者と近い条件にするために,アンケ

ート回答前にスクリーニングを行った。スクリーニングでは,表 1 にて提示した館種の

り科学リテラシー涵養の体系に近い条件で世代別に分類(表2)を行い,本研究で特に

注目している高等学校以上の世代に絞ったうえで,博物館で行われるイベントへの参加

経験も尋ねた。

有意差は,有意水準5%のχ二乗検定で判定した。

91

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑨

日本の全都道府県に在住の 800 サンプルに対して調査を行ったが,このサンプルの

分布は,実際の人口分布とほぼ一致した。

本発表で報告するアンケートの設問はここに示す(表3)。

表1 博物館種の分類

・総合博物館

・科学博物館

・歴史博物館

・美術博物館

・野外博物館

・動物園

・植物園

・動植物園

・水族館

(文部科学省 社会教育

調査 2012 による)

表2 本調査で用いた世代別分類

表2 本調査で用いた世代別分類

世代名

高等学校・

高等教育期

高等学校・

高等教育期

概要

2013年度に満16歳以上

20歳未満の、子どもの

いない学生

2013年度に満20歳以上

60歳未満の、子どもの

いない学生

年齢 結婚

16~19 未婚

20~59 未婚

子ども

なし

なし

職業

学生

学生

子育て期

青年期・壮

年期

熟年期・高

2013年度に満16歳以上

60歳未満。学生ではな

い。義務教育以下の子

どもがいる

2013年度に満16歳以上

60歳未満。学生ではな

い。義務教育以下の子

どもがいるいない

16~59 既婚

16~59 不問

中学生以

下の子ど

もあり

中学生以

下の子ど

もなし

学生では

ない

学生では

ない

学生では

齢期 2013年度60歳以上 60~ 不問 不問 ない

本調査の学生とは、義務教育以外の(高校、大学、専門学校等)の学生をさす。

本調査では、本研究で重視している高等学校・高等教育期以上の世代に限った。

3.結果

博物館イベント参加状況においては,博物館イベント参加経験者は全体の8%であっ

た。

興味のある館種や,最近1年の博物館の利用状況に関しては,世代別,館種別に傾向

が異なることがわかった。

科学・社会への興味関与度に関しては,特にイベント参加経験者において,「絵を観

多かった。

科学リテラシー涵養の目標に対する調査においては,特にイベント参加経験者では,

科学リテラシーのひとつ科学的な思考習慣の涵養(考える)の設問3つにおいて,肯定

的な自己評価を行うものが全体に比して有意に多かった(図2)。

92

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑨

表3 アンケート設問(抜粋)

◆これまでに博物館で行われるイベント(講演会・

ワークショップ・体験学習等)に参加したことはあり

ますか?

ある/参加したことはないが,参加してみたいと思う

/参加したことはないし,参加したいとも思わない

◆あなたは以下の博物館等各種施設を過去 1 年

間に何回ぐらい利用しましたか。また,あなたがそ

れらの場所を利用する理由は何ですか?

総合博物館/科学博物館/歴史博物館/美術博物

館/野外博物館/動物園/植物園/動植物園/水族

◆あなたは理科(科学)や社会,歴史,美術につい

てどう感じますか。それぞれの項目に関して,現在

のあなたの考え・態度にもっとも近いと思うものを

選んでください。

そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そう

思わない

・理科(科学)は得意な方だ。

・理科(科学)は好きだ。

・社会の出来事に興味がある。

・身近な出来事や科学に関係する話題に,興味・

関心がある(感じる)

・新たに知ったことについて,さらに調べたいと思う

(感じる)

・新たに知ったことに関連する職業に興味をもって

いる(感じる)

・豊かに生きる社会にするために自分なりに貢献

しようと思う(感じる)

・身の回りの自然現象や科学技術の仕組みを,人

に説明できる(知る)

・正しかった事柄が科学の発見や技術の発展で変

わることがある(知る)

・科学技術の進歩によって,生活が変化してきたこ

とが説明できる(知る)

・発見や発展によって新たな発見や発展が生まれ

た事例を挙げられる(知る)

・新たに学んだことに,更に知りたい,疑問を見つ

けることができた(考える)

・新たに知ったことに,いろいろな情報や知識を使

い考えることができる(考える)

・新たに知ったことに,自分なりの根拠をもって考

えることができる(考える)

が異なることがわかった。

・自分が出した結論に対し別の角度から検証する

た。

ことができる(考える)

興味のある館種や,最近1年の博物館の利用状況に関しては,世代別,館種別に傾向

・自分の疑問やその時に生じた考え方を,人に伝

科学・社会への興味関与度に関しては,特にイベント参加経験者において,「絵を観

近いと思うものを選んでください。どう答えてよいか

えようと思う(行動する)

多かった。

・身の周りや社会問題にも科学的根拠を利用して

科学リテラシーのひとつ科学的な思考習慣の涵養(考える)の設問3つにおいて,肯定

思わない/わからない

結論を出そうと思う(行動する)

・自分の知識を活用して様々な人の意見を調整し

93

ようと思う(行動する)

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑨

*印は全体とイベント参加者との間に有意差があった項目。

図1 科学・社会への興味関与度

4.考察

を行っている点である。また,イベント参加者は「絵を観たり描いたりするのが好きだ」

に肯定的でもあり,さらに有意差はなかったが「科学・社会への興味度」の問い,「感

ント以上上回っていた。ここから,イベント参加者がさまざまな事象に対する関心およ

び自分の行動に対して積極性が高いと自負している傾向が読み取れる。

今後の課題として,

PCALi(ピ☆カ☆リ)システムでの調査の中で,イベント参加者

のこれらの自信や積極性の高さが博物館のイベントに参加して得られたものなのか,そ

の他の自己の学習によって高められたものなのかという因果関係を明らかにする必要

があるだろう。

1)科学リテラシー涵養活動の体系 国立科学博物館有識者会議(

2008)

付記:本稿は

『JMMA 会報 No.72 Vol.19-3』より転載したものである。

94

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑨

95

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

第2章 第2節 項目10

PCALi(ピ☆カ☆リ)登録者属性および

「おすすめ活用法」から見られる博物館活用傾向

庄中雅子

国立科学博物館

1.はじめに

本稿では,PCALi

(ピ☆カ☆リ)の受講者権限登録者の属性および,第2章第2節項目

7で述べた垂直調査のアンケートの自由記述内容に対する因子分析の結果から,PCAL i

(ピ☆カ☆リ)受講者権限ユーザの傾向を調べた。以下にそれぞれの結果を報告する。

2.PCALi(ピ☆カ☆リ)登録ユーザー分析結果

(1)要旨

まず

PCALi の受講者権限でのユーザー登録者の属性をまとめた。今回,登録者層全体で

は4つの人分布の山がみられたことから,これら山に属する世代についてさらに各種検定,

因子分析を行えそうな項目を探り,山と谷の形成要因を探らなければならない。ここで山

と谷の形成要因をさらに裏付けるため,山および谷にあたると考えられるモデル登録者に

ついて来年度以降個別インタビューその他の調査を行う必要がある。

また,今回はデータ量が全体的に少ない関係から,各世代間のギャップに関して属性上で

細かくみることは困難と考えられる。なお,ここでは2015年1月10日現在の登録ユ

ーザー情報を用いた。

(2)PCALi(ピ☆カ☆リ)による世代分類について

全データは以下のルールによって2014年度現在の年齢で世代別に分類した。

世代名:分類方法

幼児~小学校3年生:

2005 年 4 月-2015 年 3 月生まれ

小学校4年生~中学校3年生:

高等学校・高等教育期1:

1995 年 4 月-1999 年 3 月生まれの未成年で, 義務教育

以下の子どもがいない学生

1999 年 4 月-2005 年 3 月生まれ

高等学校・高等教育期2:

1995 年 3 月以前生まれの成人で,義務教育以下の子ども

がいない学生

子育て期:学生であるなしに関わらず,義務教育以下の子どもがいる人

壮年期:

1954 年 4 月-1999 年 3 月生まれの成人で,義務教育以下の子どもがおらず,

学生でない人

熟年期・高齢期:

1954 年 3 月以前生まれの成人。

(3)PCALi(ピ☆カ☆リ)登録者全体データ

ア 都道府県別登録者数と性別

96

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

図1 都道府県別登録者数

北海道,福島県,東京都の順で多い(図1)。北海道は主に旭山動物園,福島県はムシテ

ックワールド,東京都は国立科学博物館をホームグラウンド館指定したユーザーが主であ

る。

図2 PCALi(ピ☆カ☆リ)登録者性別

イ 登録方法

図3 登録方法

2014年度途中からインターネットで会員登録ができる仕組みを導入したが,元来各

館で書類を書いて入館申込みする仕組みであったため,後者の方法で登録した人が多い(図

97

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

3)

ウ 生年別分布

学習プログラムの潜在的な受講者として,小さいほうから順に,4つの山があった。

図4 生年別分布

1 の山:2009-2000年生まれ(5~14歳,幼稚園年中~中学2年)

2 の山:1995-1991年生まれ(19~23歳,大学1年~修士1年前後)

3 の山:1983-1965年生まれ(31~49歳)

4 の山:1961-1957年生まれ(53~57歳)

それぞれの山について,今後はその特徴を詳細に分析する必要がある。

考察:第

1 の山は義務教育期に知識を増やすことが主目的か。また,第 2 の山は,専門性

を高めたい高等教育期の学生であろうか。しかし,これらの山からは受験や就活など即効

性のあるスキルが必要とされる人生の勝負時には博物館に足が向かないことが推測できる。

2 の山を築いている大学生たちは,おもに国立科学博物館にて大学の学芸員養成講座を

受講している層と考えられる。高等教育期世代のうち大学生に対しては,このように専門

的コースを設けることで学習プログラムの需要を伸ばすことができると考えられるが,高

校生に対しては切り札がない。高校生の利用者が少ないという博物館共通の悩みがあるわ

けであるが,高校生に対しては専門的な学習プログラムが用意しづらいため,例えば常設

展示を高校生でも理解しやすい環境をサポートする手当が必要となるのではないか。

3 の山は,子育て期。20代後半から30代前半にかけて結婚・出産した女性を中心と

した子育て世代が,40代にかけて子どもを連れてくるのであろうか。壮年期世代との区

別も必要と思われる。

4 の山は,実は退職前の壮年期世代。第 3 の山と第 4 の山では,女性中心かと思いきや,

女性のピークより1歳程度年齢が上の層では男性のピークもある。

リタイア世代の山は見られていない。リタイア世代が学習プログラムに参加することが少

ないのか,インターネットを使い慣れていないからか?

98

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

ちなみに,ウィンドウズ95が発売された1995年に60歳を迎え,社会人であったと

しても業務にそれほどインターネットを使用していなかったと考えられるのは1935年

生まれで,1955年生まれは当時40歳の働き盛り,すなわち第

4 の山の1961-1

957年生まれは34~38歳の社会人でいえば中堅世代でインターネット普及黎明期を

迎えた。今回の登録者は現役時代にほぼ全員がインターネットに触れられる可能性のある

世代である。

PCALi

(ピ☆カ☆リ)による属性データは博物館利用者の中でも

・インターネットが利用可能な者

・学習プログラム受講者

という2重の制限がかかるため,ユーザー数も伸びず,展示のみを見に来て学習プログラ

ムを受けていない来館者という,来館者として最も厚い層にない偏りが生じている可能性

がある。

いずれにせよ,協力館が各々持っている展示を含めた入館データと突き合わせ,PCAL i

(ピ☆カ☆リ)ユーザーに見られる特徴はなにかを比較する必要がある。

エ 世代別分布

図5 世代別登録者分布

就学前~義務教育期は男性が多く,それ以降の世代は壮年期まで女性が多い。熟年・高

齢期では男性がわずかに多い。

こちらも第

1 の山(幼~中),第 3 の山(子育て世代),第 4 の山(壮年期)が如実に読み

取れる。第

2 の山は年齢幅が狭いためか,一般的に来館者層として本来薄い層であるため

か,総数としては目立たない。

3.垂直データ調査結果(速報)

概要

垂直調査アンケートの

Q3:「あなたのおすすめの博物館活用法は何ですか。誰にどんな活

用法をすすめたいですか。」について,自由記述の結果を分類した。

活用法(ユーザ本人が好きな博物館利用法と仮定)に関して4分類に大別できると考えら

れる。

この4分類を基本として,さらに細かい要素があると考えられるため,次年度からはよ

99

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

り細かい選択肢を備えたアンケートを用意して,より具体的回答を引出す利用者意識調査

の詳細を検討すべきである。

なお,本稿にて述べるものは現在収集途中のデータを用いて見出した傾向であり,今後

分析方法または分析に用いるデータ数の増加等により変化しうるものである。

方法

垂直調査に2年連続で回答した受講者権限ユーザの

Q3 自由記述18名分計36件の記

述から,特徴的な要素を抽出し,それらを9のカテゴリに分類した(表1,最左欄)

1つの文章には当然複数のカテゴリが含まれるため,それら複数のカテゴリを持つ複数人

の文章を因子分析で再分類することとした。

この因子分析の結果,カテゴリ1,4&5,6&7,9の4成分に分類できた(表1)。

表1 成分行列 a

カテゴリ 成分

1 2 3 4

1.新体験・新知識・わくわく・新視野・楽しい

.697 .014 .504 .086

2.テーマに沿ってみる

3.コミュニケーション(ボラと)

.440 -.165 .353 .272

.419 .182 .208 .129

4.じっくり・好きなだけ

5.展示を見る

6.お手頃価格

7.子ども教育

-.144 .774 -.385 .096

.491 .700 -.020 -.019

-.543 .101 .654 -.120

-.526 .432 .566 -.026

8.学習プログラム

.261 .269 .052 -.746

9.リフレッシュ,リラクゼーション

-.134 .258 .003 .708

上記因子で

Chronbach のαが算出できたものはカテゴリ4「じっくり・好きなだけ」と

カテゴリ5「展示を見る」の2点のみであり,その値は表2の通りであった。

表2 表1における信頼性統計量

Cronbach のアルファ 標準化された項目に基づい

た Cronbach のアルファ

項目の数

.519 .543 2

なお,このカテゴリ分類をさらに垂直調査全回答66名分74件の記述に対して拡大し

て行い,上記4分類に再現性があるか検証した(表3~5)

100

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

展示を見る

じっくり・好きなだけ

テーマに沿ってみる

リフレッシュ,気分転換,リラクゼ

ーション

新体験・新知識・わくわく・新視野・

楽しい

おひとり様

子ども教育

コミュニケーション(ボラ,学芸員,他校)

お手頃価格

学習プログラム

因子抽出法: 主成分分析 a. 4 個の成分が抽出されました

表3 成分行列 a

1

.713

.629

.390

-.171

2

-.157

.117

-.298

.615

成分

3

.016

.433

-.216

.039

-.226

.394

-.261

.057

-.185

-.416

.510

.495

-.359

-.285

-.389

-.074

.055

.265

.681

-.536

.533

-.052

4

.230

.284

-.203

-.480

.364

-.110

.045

-.102

-.365

.651

表4 パターン行列 a

成分

3 1 2

じっくり・好きなだ

展示を見る

子ども教育

お手頃価格

新体験・新知識・わ

くわく・新視野・楽

テーマに沿ってみ

コミュニケーション(ボラ,学

芸員,他校)

リフレッシュ,気分

転換,リラクゼーシ

ョン

学習プログラム

おひとり様

.819

.666 -.150 -.272

.062 .776 .125

-.111 .754 -.215

.037

.115

-.247

-.266

.070

-.227

-.084 -.541

-.293 -.419

-.091

.089

.646

.176

-.096 -.067 .514

.429 -.085 .140

因子抽出法: 主成分分析

回転法: Kaiser の正規化を伴うプロマックス法 a. 7 回の反復で回転が収束しました。

101

4

.000

-.180

-.202

.080

.027

-.015

-.171

.738

-.602

.485

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑩

表5 構造行列

成分

3

じっくり・好きなだ

展示を見る

子ども教育

お手頃価格

新体験・新知識・わ

くわく・新視野・楽

テーマに沿ってみ

コミュニケーション(ボラ,学

芸員,他校)

リフレッシュ,気分

転換,リラクゼーシ

ョン

学習プログラム

おひとり様

1 2

.815 .080 .048

.665 -.176 -.336

.039 .781 .170

-.090 .738 -.140

.001 -.173 .627

.144 -.128 -.556

-.239 -.333 -.442

-.211 -.054 .241

4

.081

-.147

-.163

.076

.073

-.049

-.234

.726

-.179 -.044 .467

.464 -.058 .146

-.573

.532

因子抽出法: 主成分分析

回転法: Kaiser の正規化を伴うプロマックス法

表3においては4分類は不明確であったが,表4,5においては4分類が再現可能であっ

た。

また,66名分に拡大した場合,上記分類には該当しなかったが,以下の新しいカテゴ

(2名) 「ボランティアをする,能力の社会的活用」 (1

名) 「ミュージアムショップ」

(1名) 「友人にすすめたい」(9名)

(2名) 「教員志望学生」

上記4分類に暫定的に分類できたことをもとに,博物館利用者の全体的な来館目的調査

実施の際の質問の選択肢を設定してはどうか。また,それをもとに,より細かい選択肢を

作成し,来年度以降のより詳しいアンケートを作成し,学校団体など多量の回答者数が見

込める母体をターゲットに調査を実施して,回答数を増加させ,調査の信頼性を高めるこ

とを提案する。

102

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

第2章 第2節 項目11

オープンサイエンスリソースの実態調査

小川義和

*1

,本間浩一

*2

,松尾美佳

*1

国立科学博物館 *1 ,

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所 *2

1 .調査の 目的・調 査期間 ・調査先

博物館等における科学リテラシ ー涵

養のあり方とそれに関するプロ グラム

開発事例の調査を行った。調査期間は,

2012 年 9 月 2 日~ 9 日 で, 調査 先は ミ

ュンヘン,ウィーン,ミラノ であった。

調査日程

日時

9 月 3 日

(月)

13:30-17:00

9 月 5 日

(水)

訪問先

 Deutsches Museum:ドイ

ツ国立博物館 (ミュン

ヘン)。

対応者:Jonahhes-Geert

Hagman

Annette

Noschka-Roos

 BMUKK

(Bundesministerium für

Unterricht, Kunst und

Kultur)

:オーストリア文部省

(ウィーン )。

対応者:Reinhold Hawle

9 月 7 日

(金)

 Museo Nazionale della

Scienza e della

Tecnologia “Leonardo da

Vinci”

:レオナ ルド・ダ・ヴィ

ンチ記念国立科学技術

博物館(ミラノ)。

対応者:Maria xanthoudaki

2 .調査の 概要

(1)OSR 概要

OSR とは ,欧 州委 員会 との 共同 資金 で

Ecsite が 企画を 行い 2009 年 6 月から 3

年間ヨーロッパで実施したプロ ジェク

トである。参加組織の構成は,EU 圏

内(一部例外あり)の科学博物 館,科

学センター,大学,教育関連の 政府組

織などである。博物館等の科学 教育資

源とそれを利用した学びの道筋 をオン

ライン上でユーザーに提供して いる。

Zistler

Elisabeth

Monika Moises

David Smith

Christian

Reimers

 Natural History Museum

Vienna:自然史博物館

(ウィーン )

対応者:Reinhard

Golebiowski

OSR の狙 い は,ヨ ーロ ッパ の科 学博 物

館やサイエンスセンターそれぞ れの持

つデジタルコンテンツを共有し ,ユー

ザーの Formal Learning と Informal

Learning の 両方 に役 立つ 用に 提 供 する

ことである。OSR ポータル サイトでは,

Contents と Learning Pathway の二つを

検索可能。その二つを検索・閲 覧する

だけでなく,アップロードする ことも

可能だが,これにはユーザー登 録が必

要である。ユーザーの Social Tagging

によって,検索を容易にしたり 関連性

103

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

のあるコンテンツへのアクセス を可能

にしたりするための工夫が見ら れる。

運営団体 EU各国:ギリシャ,フィ

ンランド,スウェーデン ,

ドイツ,フランス,ベル ギ

ー,オーストリア,ハン ガ

リー,イタリア,ポルト ガ

ル。EU外:アメリカ,台

主たる出

資元

湾。

EUの欧州委員会

(European Commission)の

ICT PSP

翻訳語数

8 言語(英,独,仏,西,

芬,伊,希,ハンガリー)。

但し全てのコンテンツが

翻訳されているわけでは

ない。

1 日当たり

アクセス

者数

[人/ 100

万人・日]

人数(人口

10 億人と

して)

5.1 人 ( OSR ポ ー タ ル は

0.31)

5000 人 ( OSR ポ ー タル は

310 人)

(2)キーワード

 Ecsite:

European Network of Science

Centers and Museums. 20 年前に設

立され,50 ヵ国に亘る 400 の組 織

を 様 々 な 企画 や 活動 を 通し て 結 ぶ。

加盟しているのは,科学館,科 学

博物館,自然史博物館,動物園 ,

水族館,大学,研究機関,企業 な

ど。

 Social Tagging:

公開の Web サイトなどで,集積さ れ

た一つ一つの情報に対して個々の

ユーザーが短いフレーズや単語 (タ

グと呼ばれる)を付加して整理する

ことにより,効率よく分類や検索が

行えるようにする手法のこと。(引

104

用:IT 用語辞典 e-Words)

 Inquiry Based Learning:

自 然 科 学 系博 物 館で 行 われ て い る, inquiry(探究活動 )を中心とした学

習方法論である。学習プロセスは ,

プロセス・スキルズのような定 型

的な技法・方法に限らず,調査 や

実験のデザイン,実践を自ら行い ,

結 果 を 議 論す る とい う 流れ で 進 む。

このプロセスにおいて,学習に 対

する自己責任の意識(分からな い

ことを分からないままで放って お

かないという責任感)も生まれ て

(3)成果

ア 学校との連携

OSR は一 般 の利用 者 に 開 かれた シ ス

テムではあるが,主な対象者は 学校教

員である。オーストリアの参加 組織は

博物館ではなく文部省である為 ,特に

学校と強い連携関係にある。ド イツ国

立博物館もオーストリア文部省 ほどで

はないにせよ,学校と強い連携 関係に

ある。イタリアでは,ワークシ ョップ

(OSR 利用方法を教 員向けに説明す

るもの)の前まで連携をとって いる。

その連携の強さは国によっ て異なるが,

OSR プロ ジ ェクト の 参 加 組織は そ れ

ぞれ学校と連携しながら運 営している。

絶対数から考えて博物館学芸員 の数よ

りも学校教員の数の方が多い。 「科学

リテラシーパスポート」のプロ ジェク

トを進める上でも,特に地方館 と連携

する時には,その地域の学校教 員にも

頼らざるを得ない。

イ Social Tagging の効果

OSR に Social Tagging を取り入れたこ

との効果は,まだ評価されてお らず明

白ではない。しかし,3 つの運 営団体

を訪問して得られた感触では, 期待し

ていたほどの効果はなかったこ とが推

測される。社会に対して少しで も開か

れた環境を構築する為の工夫と して

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

Social Tagging という新しいツー ルを

導入してはみたものの,あまり 成果は

なかったという印象を受けた。 基盤 S

のウェブサイト「科学リテラシ ーパス

ポート」構築の際は,ツイッタ ーなど

Social Tagging とは別のツールを 用い

て一般ユーザーに対して開かれ た環境

提供をする工夫をすべきである 。

ウ テーマ設定

今回訪問した館では,展示や教 育普及

活動の中に博物館利用者目線に 立った

テーマ設定がされ始めている。 例:ド

イツ国立博物館の7つの Exhibition cluster(後述), レオナルド・ダ・ヴ

ィンチ記念国立科学技術博物館 の“食

物と健康”の i.labs( 後述)。しかし ,

OSR ポ ータ ル サ イ ト の Contents や

Learning Pathway のテーマは,科学そ

のものを学習する為に設定 されており,

そこには博物館利用者側の視点 で考え

られたテーマというものは 見られない。

基盤 S の「科学リテラシー パスポート」

では,学習プログラムのテーマ 設定に

おいて,地域社会や社会問題と の関連

性を重視すべきである。科学リ テラシ

ー涵養を目指す知の循環型シス テムを

構築することが目的である為, ①社会

と時代に合ったもの,②地域住 民のニ

ーズに合ったもの,③科学研究 の進捗

に応じた新しいもの をテーマ に,博

物館利用者の立場を考慮した設 定をす

る必要がある。

エ 学習プログラム開発担当者

OSR ポ ータ ル サ イ ト 上の Contents や

Learning Pathway は,博物館学芸員/

教育関係者/一般ユーザーの誰 もがア

ップロードできるようにな っているが,

資源のある博物館(例:ドイツ 国立博

物館)では,研究者等の専門家 が学習

プログラム開発を行う。内容の 認証を

行うシステムがあるとはいえ, その質

の向上を目指す為には,ドイツ 国立博

物館の方法が最も効率が良く, 間違い

105

が少ないと考えられる。基盤 S の学習

プログラム開発の際も,可能な 限り協

力館内の研究者にプログラム開 発を依

頼したい。

オ 個人の学習成果の評価方法

OSR には , アップ ロ ー ド された

Contents や Learning Pathway を他人が

評価する方法はあるが,ユーザ ー本人

の学習成果を評価する方法 は存在せず,

自己評価をするしかない。基盤 S の「科

学リテラシーパスポート」では ,科学

リテラシーの変容を量ることを 計画し

ている為,ユーザーが学習プロ グラム

に参加したことによって得られ る成果

を何らかの形で評価する方法が 不可欠

である。アンケートを利用して 受講者

の自己申告の理解度を分析 対象とする,

または,感想文等を記述しても らい,

それを博物館学芸員が評価する (ある

いはテキストマイニングを導入 )など,

「科学リテラシーの見える化」 実現の

為の方法を検討していく必要が ある。

カ 教育理論の活用と共通認識

各館・組織でのヒアリングで教 育理論

に関することを尋ねたが,様々 な用語

の中で Inquiry Based Learning について

は,各所で用語として認識 されていた。

基盤 S の「科学リテラシー パスポート」

でも,共通認識を持てる学習理 論を一

つ(あるいは,対象者の世代別 にそれ

ぞれ)定めることが必要である 。協力

館の学芸員ともその情報を共有 するこ

とで,学習プログラムに一貫性 を持た

せることができる。

キ 学習プログラム認証の実施

Contents や Learning Pathway といった

内容は,博物館関係者以外の人 物でも

ユーザー登録後であればアップ ロード

可能である。そのアップロード 内容の

認証作業は,国別の幹事組織が 実施し

ている。センターとなる認証組 織がな

いという点が日本的感覚では目 新しい

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

と感じられた。基盤 S の「 科学リテラ

シーパスポート」では,学習プ ログラ

ムを一般ユーザーがアップロー ドする

ことはない。しかし,ユーザー 同士の

コミュニティー作りの場として の機能

も持つサイト上では,コメント 等の書

込み機能を設けることが想定さ れる。

それを管理するなどの作業は, センタ

ーとなる国立科学博物館ではな く,協

力館ごとに行うべきである。

ク 消極的な学習者

参加組織の中には台湾の大学が 含まれ

ていた。台湾での OSR 利用 について間

接的に聞いた話によると,台湾 の学生

は消極的である為,OSR の 活用は難し

を企画する上では,国民の性格 的な特

徴も考慮に入れなければ,ユー ザーに

継続的に利用してもらうことや ,それ

によって新しい博物館利用モデ ルと知

の循環型社会を築くことは難し い。グ

ローバル化に対応できる設計を 考える

ことも大切だが,「科学リテラ シーパ

スポート」に関しては,日本人 の国民

性を考慮し,敢て“ガラパゴス 化”さ

せ,日本の風土に合ったシステ ムを構

築する必要がある。

ケ 学習プログラム開発者・学芸員同

士の交流

OSR に は,ユ ー ザ ー 同 士 の コ ミ ュ ニ テ

ィサイトというものは存在しな い。そ

れぞれの Contents や Learning Pathway

にレート付をしたりコメントを 書き込

んだりすることは可能であり, 他のユ

ーザーのアップロードやタグ付 けは分

かる仕組みであるが,ユーザー 同士が

情報交換できるようなユーザー コミュ

ニティーは存在しない。「科学 リテラ

シーパスポート」では,ユー ザー同士,

ユーザーと学芸員,学芸員同士 の対話

を生み出す為に,複数のコミュ ニティ

サイトを設置すべきである。特 に学芸

員には,ユーザー同士の会話を 見るこ

とで,新たな博物館利用モデル を発見

できるという利点が生まれる。

コ 携帯電話の利用

OSR の携 帯 電話専 用 サ イ トや,OSR の

携帯電話用アプリが開発されて いる。

これにより,科学博物館や科学 センタ

ーを実際に訪ねた際の学習にも 役立て

られる。(具体的な利用例は, オース

トリア文部省とレオナルド・ダ ・ヴィ

ンチ記念国立科学技術博物館の 報告を

106

も携帯電話で利用できるように すべき

である。ユーザーにとっても学 芸員に

とっても気軽に使えるシステム にする

ことで,市民が科学に馴染み易 い環境

を作るべきである。

サ 資金と人的資源

OSR の運 営 ,経営,マ ネー ジメ ント 論

に関しては,リサーチしなかっ た。こ

れは反省点として今後の研究に 活かし

たい。「科学リテラシーパスポ ート」

を汎用化する為には,持続可能 な運営

の為のノウハウも同時に研究す る必要

がある。

シ 使い易さとモチベーション

OSR の問題点として,イン ターフェイ

スの複雑さが挙げられている。 このこ

とを理由に,イタリアでは,か なりの

時間を教員向けの OSR 利用説明に費

やさざるを得なかった。他の国 におい

ても,このことが理由で OSR ポータル

サイトへの貢献者(Contents あるいは

Learning Pathway をアップロードする

人)をそれほど得られなかった 。ICT

に馴染みのある教員とそうでな い教員

では,モチベーションに差が出 るのは

当然である。「科学リテラシー パスポ

ート」の場合は,協力館の学芸 員に自

館の学習プログラム入力を依頼 する。

この際に学芸員のモチベーショ ンを低

下させない為の使い易い入力シ ステム

を構築することが重要である。 同様に

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

ユーザーのモチベーションも低 下させ

ない為の工夫も必要である。

(4)Deutsches Museum

ア 当館の概要

ドイツ国立博物館は,1903 年に電気

技師オスカー・フォン・ミラー 氏によ

って設立された科学技術博 物館である。

自然科学,産業技術,そして特 にそれ

らの歴史についてリサーチする ことを

目的としている。教育だけでな くエン

ターテイメントも提供するとい う方針

は,設立されてから 100 年以上 変わっ

ていない。

1925 年に現在の建物で一般公 開さ

れたが,戦時中に破損し 1947 年に建て

直された。現在は,ミュンヘン とシュ

ライスハイムとボンに分館を持 つ。ま

た,2010 年~2025 年にかけ て,4 億ユ

ーロを投資して収蔵庫増設・博 物館建

替プロジェクトが進行中である 。

イ 教育普及活動

当館の教育普及活動に含まれる もの

は以下のとおりである。①ガイ ドツア

ー:館内の教育普及活動の 原点である。

②デモンストレーション:当館 は,サ

イエンスセンターと博物館を複 合した

ような所であり,様々なデモン ストレ

ーションが行われている。例: ハイボ

ルテージ。③教師の為のトレー ニン

グ:会議とセミナーで構成。博 物館の

利用の仕方を学ばせる。④Writing workshop: 科 学 を 学 ぶ 上 で 重 要 なス キ

ルであるライティングスキルを 高める

目的。特に女子生徒の間で 効果がある。

⑤Open Research Labo:ミュンヘン大学

PHD プログラムの一環。学 生のサイエ

ンスコミュニケーション能力を 高め,

同時にリサーチの内容や様子を 一般来

館者にも公開する。⑥Children’s

Kingdom: 2003 年 に オ ー プ ン 。 子 供 向

けのハンズオンが豊富にある。

その他,展示にビデオやタッチ スク

107

リーンなどの新技術を導入した 為,館

内のエネルギー消費量は増え続 けてい

る。

ウ 展示のテーマ設定

最新の技術が次々と生み出 される為,

臨機応変に対応できるよう,電 子工学

関連の展示に関しては,テーマ に柔軟

性を持たせてある。限定的にせ ず,少

し幅を持たせたテーマにする工 夫をし

ている。展示テーマを選ぶ上で 重要な

のは,歴史的文脈と現在の両方 に関連

性を持たせることであり,これ は全て

の分野の展示に共通して言える ことで

ある。

2010 年~ 2025 年 にか けて の大 きな

増築・改装プロジェクトの中で 考え出

されたものの一つに,7 つの Exhibition

Cluster があ る。学 術 的な視 点か ら 見た

テーマ分類ではなく,一般の来 館者目

線で理解し易いテーマ分類を用 いて展

示を行うことになった。これに より博

物館利用者が来館する際に見学 の方向

付けをし易くなる。

エ 展示方法

ミュンヘンの分館

“Transport and

Mobility”では,Contextual Exhibition と

いう展示方法がなされている。 物質を

単体で展示するのではなく,そ れが使

われる文脈の中において物質を 展示す

る。例:車は車のみで展示する のでは

なく,移動手段という文脈の中 に置い

て展示する。

オ OSR への取り組 み

インターネット上には,科学関 連

資料が大量にあるが,利用者が 欲し

い資料を見つけ出すことは,大 変困

難であった。OSR では,複 数のサイ

トを結びつけること,スタンダ ード

化すること,タグ付けすること ,ユ

ーザーコミュニティーを作るこ と,

そして,ユーザーが今まで興味 を持

っていなかった博物館に対して 興味

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-A

を持つきっかけを与えることを 目指

した。

Contents と Learning Pathway は別

のものである。OSR に自ら の館の資

料を Contents としてアップ していな

くても,Learning Pathway をアップ

することはできる。Learning Pathway

とはシナリオのことで,たとえ ば

Structured Pathway では Pre-Visit,

Visit, Post-Visit の 三 段 階 に 分 け るこ

とができる。Structured Pathway に対

して,3 段階に分かれていない Open

Pathway もある。

OSR の 目 的 は 来 館 を 促 す 為 だ け

ではない。

利用者が博物館に実際に足を 運ば

ずバーチャルな体験で終わって も構

わない。実際に行くことができ ない

遠方の博物館であったとしても ,そ

こにユーザーの興味の対象とな るコ

レクションがあること,またそ のコ

レクションについて知ってもら うこ

とに意味がある。

人的投資。OSR のパートナ ーミュ

ージアムの中では,少ない 方である。

Project manager 1 人 , Content

Development 2 人 。博 物 館 全 体 の 10%

の力を 11 カ月間 OSR に注いだ。

教授法として最も重要なものは ,

構成主義に基礎をおいた Free

Choice Learning である。

ソーシャルタギング:ユーザー に

よる Social Tagging によって,検 索

がし易くなる。登録済みのユー ザー

のみがタグ付けすることができ る。

Social Tagging の 評 価 は ,投 票 シ ステ

ムで行っている。

教育理論:ギリシャやフィンラ ン

ドには教育研究機関あり。

著作権について。Create Commons

を用いて意思表示してもらう。

全てのコンテンツを多言語翻訳 す

る予定はない。充分な時間と資 源が

ない。

108

新しいテクノロジーを用いるこ と

に戸惑う教師が多い。また,ユ ーザ

ーの殆どは閲覧するのみで Contents

や Learning Pathway を積極的にアッ

プロードする人は予想以上に少 なか

った。この部分を少し楽観視し 過ぎ

ていたのが反省点として挙 げられる。

OSR ユー ザー の教 員 た ちか らは ,リ

ソースが充分でないという苦情 もあ

る。

OSR と似 たよ うな サ イ トに ,OER

Commons (USA) や How to Smile.

ORG (USA)といったものがあ る。

Thematic Pathway とは Learning

Pathway の種 類の 内 の 一つ 。当 館で

はこのやり方が導入されている 。

Thematic Pathway とは, 代 表的な 物

質を用いてテーマを学んで いくこと。

たとえば,Communication Thematic

なら,プリンター,電話機,カ メラ

などが選ばれる。直線的な学び の道

筋がある訳ではなく,ユーザー は自

分に適した順序で学習すること がで

きる。

High Voltage Demonstration

の 様 子

2-(2)-⑪-B

第2章 第2節 項目11-B

OSR(公開科学教材)システムに関する EU 参加各国の現状調査

高安礼士,土屋実穂,庄中雅子

全国科学博物館振興財団(当時),国立科学博物館

1.調査の目的・調査機関・調査先

9 月 6 日

フランス・パリ

18:30-20:00 Musée d'Orsay 2009 年からウェブ上で公開されている

OSR(Open science resources, 公開科学

教材)システムは,EU各国および米国,

台湾の協力施設が中心となって企画開発

したものである。平成24年度基盤研究

(S)での生涯学習をサポートするための

科学リテラシーパスポート(仮)システ

ムの開発にあたり,博物館等に於ける科

学リテラシー涵養のあり方と,それに関

するプログラム開発事例の調査を行った。

調査期間は 2012 年 9 月 3 日乃至 9 月 7 日

で,調査先はドイツのミュンヘン,フィ

ンランドのヘルシンキ,フランスのパリ

である。

9 月 7 日

10:00-12:00

対応者

13:00-16:30

対応者

17:30-19:30

-16:30 日仏英通訳 鈴木素子

Cité des Sciences et de l’Industrie

Palais de la découverte

Musée du Louvre

2.OSR の概要

2.1 OSR とは

2.2 OSR の参加国とスタッフ

調査日程

日時

9 月 3 日

訪問先

ドイツ・ミュンヘン

2.3 OSR サイトの実際

13:30-18:00

対応者

Deutsches Museum

9 月 4 日

10:00-11:30 Alte Pinakothek

フィンランド・ヘルシンキ

9 月 5 日

10:00-12:00

対応者

University of Helsinki

13:00-13:20

14:00-17:00

Teknikaan Museo

Heureka

図1

OSR ポータルの画面。ソーシャルタグクラウドを用い,ア

クセスの多いタグほど大きなフォントで表示されている。

109

2-(2)-⑪-B

3.ドイツ調査結果

(1)OSR におけるドイツの役割

ドイツでは,

ドイツ博物館の展示資料を

生かして

OSR に教材を投稿している。ミ

ラノ,パリと並んで,ミュンヘンは

OSR

におけるバーチャルミュージアムの教育プ

ログラム作成拠点となっている。

(2)Deutsches Museum

ドイツ博物館は,科学博物館と科学館の

中間といえる構成で,1903年から産業

技術史の資料を中心に収集・展示・演示を

行っている。近年では生物工学,医療,生

命倫理などの先端バイオロジーの話題も扱

う。

教員や学芸員の研修事業のかたわら,若

者向けのプログラム開発にも取り組んでお

り,幼児とその両親のみ入場可能な「子供

の王国」

14 歳~高校生の女子生徒に対する

サイエンスライティングのワークショップ

も行っている。

OSR においては,自館のうちでも異なる

部が管理する展示物やバーチャルコンテン

ツを使っていくつかの展示パスウェイを作

っている。

まず,一つのテーマに関連ありそうな自館

の資料情報を集め,それをつなぐシナリオ

翻訳語の内容の生後を確認する。このよう

な手順で作成した,エネルギーに関するパ

スウェイの実例を紹介する。

<OSR プログラム>Energy is everywhere: historical and contemporary power generation(エネルギーの種類と動力源の

歴史的変遷について,まず原理を説いた

うえで,館内で実際に稼働している水車

等の例を用いて解説している)

http://www.osrportal.eu/connect.php?m= thenewviewer&nid=94960

OSR に参加することでドイツ博物館の

スタッフにとっての成果は,調査能力やシ

ナリオ作成能力の向上,および自館の様々

な展示物を新鮮な目で見直して理解を新た

にできる点が挙げられるという。また,同

様の取り組みを一般的な科学館と博物館と

の間で行った場合は,双方の教育資源をう

まく使ったパスウェイを作ることで,互い

の存在意義を高めあうことができるという

点を挙げることができる。

こ の よ う に 作 成 し た ド イ ツ 博 物 館 の

OSR 教材は,すでにユーザー登録者だけで

も2000人以上がアクセスしている。シ

ナリオは教師向けの部分もあるが,一般ユ

ーザー,自発学習向けのものもある。

OSR にかかわるスタッフは,常勤のコン

テンツ作成者が2名,非常勤が10名。非

常勤の中には2名の科学者も含む。

教 育 思 想 と し て は , フ ィ ン ラ ン ド の

Salmi 教授を中心として,構成主義に基づ

いた教授法(

Inquiry-based learning,後

述)を行っている。

投稿された内容については,科学的な正

確性や,ウェブ上のリンクが機能するか,

付与したメタデータが正しいかを学芸員が

チェックする。3人がかりでチェックを行

コンテンツあたり

9 か月かかった。このチ

ェック作業を受けたものが,ウェブサイト

上で「

OSR マーク」を付けることができる。

それでも粗いレベルでの内容確認しかでき

ないことが頭の痛い点である。ましてや,

8か国すべてに対応した多国語翻訳をする

ことは現状では不可能である。

4.フィンランド調査結果

(1)OSR におけるフィンランドの役割

フィンランドは国土面積約34万km

,北海道ほどの土地に約500万人の国

民が居住している。人口密度で比較する

と日本の20分の1以下である。この少

ない人口ゆえに,学齢期には手厚い教育

を施すことができると一般的には認識さ

れている。

110

2-(2)-⑪-B

このフィンランドでは,OSR における

教育理論確立と国際調整役をヘルシンキ

大が,教育の実践を科学館 Heureka が担

っている。

(2)University of Helsinki

ヘルシンキ大のプロジェクト中心人物

は教育学者 Hannu Salmi 教授である。1

981年,ヘルシンキ大在学中に実践的

科学教育の場としてハンズオンの先進的

科学館 Heureka を企画し,1984年に

開館。2003年からのダーナ大学サイ

エンスコミュニケーションコースを経て,

2006年から週1日 Heureka で来館者

の反応をみつつ,ヘルシンキ大で教授法

を研究している。

図1 後列左から2番目より

Suvanto

氏,

Salmi 教授,Koivula 氏

Salmi 教授のフィンランドの理科教育に

対する見解は以下4点に集約できる。

ア 博物館教育は経験論により運営さ

れているといっても過言ではない。博物

館の教育資源を有効に利用する知識体系

がない。

イ 教師が単なる education しかなせな

いことに比べ,科学館は科学,技術,教

育の接点であり Science education と vocational education を行うことができる

(図1参照)。このように特殊な学習環境

を体験できる科学館で,生徒の学習意欲

をいかに引き出すかが教授法の鍵である。

図1 変化の激しい昨今の社会・文化の文

脈中で,科学館の担う役割も大きく変わる。

(Salmi, 1993 より)

ウ 科学館を訪問する文脈(context of sience centre visit)における事前学習シス

テム(pre-lesson system)と事後学習教材

(post-material)に重きを置く。すなわち

科学館訪問前後の予復習を行うことが,

生徒・教師に対してともにきわめて教育

効果が高い。

エ 科学館や博物館を訪問する教師は,

教育のコストパフォーマンスを向上する

ため,館の展示物はじめ引率の方法や当

日の面会者(親や館長,校長含む)につ

いてまで,予習をしておくことが大切で

ある。

日常生活から「偶然学ぶ」(Learning by chance)ことは生徒にとってインパクトは

あるが,野放しにしていては,そこから

得られる考察はわずかなものにとどまっ

てしまう。教師の裁量に応じ自由な実践

を重んじるフィンランドの教育指導要領

111

2-(2)-⑪-B

では,インフォーマルラーニングおよび

インフォーマルエデュケーションに接す

る際の偶然による学びを生かすことがで

きるため,特に教育効果が高いという研

究成果を得ている。

このような考えから Salmi 教授は,科

学 館 訪 問 時 の 教 師 の Inquiry-based learning におけるパフォーマンスを最大

限とするためのツールとして OSR プロ

ジェクトを利用している。

Salmi 教授のチームが OSR に実際に投

稿したプログラムを例にとろう。フィン

ランドは小学校5年生で必ず Heureka を

訪問することになっているため,引率の

教師はウェブを閲覧することで,このプ

ログラムが提供する教育パスウェイを知

り,指導要領にない科学館の教材を使い

こなすことができる。

<OSR プログラム>Heureka Classics(科

学館 Heureka の常設展示について)

URL: http://www.osrportal.eu/en/node/95849

OSR では,一つの教材の使い方を,

Salmi 教 授 の 主 張 す る Pre-visit, visit, post-visit の3段階の教育パスウェイとし

て登録することができる。各段階のメニ

ューボタンをクリックすることで,それ

ぞれの段階に応じ,展示に接するために

必要な準備や,実際に展示に触れる際の

使用方法などの説明文やパノラマ画像, youtube の動画を表示することができる。

Pre-visit:物理実験の展示について,写

真や文章で説明されている。金属製のレ

ールでできた坂道を車輪が転がる仕掛け

や,吹き出す空気によって空中に浮かぶ

ボールなどの運動の様子について学べる

展示があることがわかる。また,重力の

法則などの原理解説のページにジャンプ

することもできる。あらかじめ生徒もこ

のページを見て,興味をもった(provoke curiosity)ものについて実際に展示を体験

することになる。ここで教師への注意と

して,展示品に接する際に生徒が視覚・

聴覚を使うだけでなく,転がり距離を測

るためのテープ,ストップウォッチや風

速計を用意して定量的な測定ができるよ

うな準備をするよう指示している。

Visit:訪問の際に,科学館の職員が行う

実演の動画や,どういったミスコンセプ

ションが生じうるかという資料を閲覧で

きる。

また,次のように教師へ指示も行って

いる。

“科学館があらかじめ用意している表な

どのワークシートに生徒自身の測定結果

を書き込む。それに対し,教師は4つの

質問を投げかける。

①あなたは展示に対する原理を理解し,

表に事実を書き込めましたか。

②あなたはこの測定結果が正しいと思い

ますか。

③この展示の測定結果からなされるこの

現象の説明と,あなたが信じていた原理

は一致しましたか。もし一致しなかった

場合は何が一致しませんでしたか。

④もし①や③であなたが信じていた原理

と結果が異なる場合,あなたが信じてい

か。

――ここで,生徒が「公式」であると答

えた場合,教師はさらに次のように説明

112

2-(2)-⑪-B

する。

うことを知らなければなりません。しか

し,もしあなたが思っていた原理そのも

のと結果が異なる場合,あなたはそれを

仮説によって説明し,その仮説が科学的

に正しいことを立証しなければなりませ

Post-visit:展示に対する復習クイズも設

けて,体験の振り返りと知識としての定

着を図っている。生徒にとって引率の教

師だけで科学的説明が不十分な場合は,

生徒はプログラム作成者にウェブ上で直

接質問することができる。図2はその例

である。現時点では,フィンランドの3

人のスタッフ中 Suvanto 氏のみが質問の

回答にあたっている。質問数が少ないた

め,1 人であっても全質問への回答が可

能という。

Salmi 教授は,Heureka Classics の実例

をもとに,OSR についての以下のような

考えを展開した。

・ICT により教材を提供する意義は,生

徒に多くの機会を与えること。双方向性

のアクティビティ自体が最新の行動形式

であり,これに子どものころから親しむ

ことで恒久的な人間的価値を生み出すこ

とができる。ICT 教材が常に高い水準で

整 備 さ れ 続 け る こ と で , 教 師 に よ る education のあり方を刷新できるだろう。

・OSR コンテンツは,研修を受けさえす

れば誰でも作成できる。自由度が高い分,

その内容の正確性を第三者が評価しなけ

ればならない。

・Heureka Classics はメタデータの分類

上 open か structured かでいえばどちらか

というと structured である。目下の課題と

して,インフォーマルエデュケーション

に教師をどうやって参加させるかという

問題があるが,structured な教育パスウェ

イを作成することは教師の参加を促すの

に効果的であると考えている。

・教育思想として,Inquiry based learning

ではあるが,生徒に先入観がない場合や,

しっかりした思考能力が備わっている場

合には,演繹法より帰納法のほうが教育

の目的に適うと考えている。

・フィードバックは OSR プロジェクトに

参加している教師たちから口頭で得られ

るので,これをもとに教材の内容を改善

することがある。

・ICT で科学館と学校をつなぎ,EU 有数

の優れた展示物からなる教材に,あらか

じめ与えられたメタデータだけでなくソ

ーシャルタギングできることを,EU の他

のプロジェクトとの差別化として本プロ

ジェクトを始めたが,ソーシャルタギン

グは現時点でうまく機能していない。

(3)Heureka

Salmi 教授の実践活動の場として,子ど

も向けのハンズオン展示が多数設置され

ている。特に,物理の原理を展示した体

験コーナーでは,館に設置された展示に

加え,持ち運び可能なプラスチックコン

テナに収納した教材セットを用いて学芸

員が実演を行う。例えば,温度の原理を

説明する展示では,2種の熱伝導率の異

なる金属棒を等しいエネルギーで加熱し

たとき,どのように温度差がでるかを,

実際に金属棒を握ることで比較すること

113

2-(2)-⑪-B

ができる。また,教材セットとして,金

属棒の温度を実測比較するために,赤外

線放射温度計およびそれで計測した温度

を一覧表として書き込めるワークシート

が組み合わされている。プロセス・スキ

ルズ

5.フランス調査結果

(1)OSR におけるフランスの役割

ヨーロッパでドイツと並ぶ大国である

フランスゆえに,科学系博物館の規模も,

収蔵物の量も質も非常に優れ得ている。

フランスではこの豊富な資源を生かして,

EU の国際協力プロジェクトに参加する

こと自体が最大の意義であると考え,

OSR への教材登録を Cité des Sciences et de l’Industrie と Palais de la découverte の2

館を中心に委託している。

(2)

Cité des Sciences et de l’Industrie

フランス経済財政産業省傘下の産業経

済公的機関である。職員は非公務員で,

民間企業と同様の雇用形態をとっている。

そのため,民間企業からの研究資金の導

入も多い。展示においても企業の見本市

を行うことがある。内部にどのような施

設を併設するかも,周辺住民へのマーケ

ティングを行い決定するなど,日本の公

的施設にはあまりみられない柔軟な組織

となっている。

当施設は展示ゾーンと図書館ゾーンに

分かれており,図書館ゾーンはさらに科

学に関する図書室,医療都市,職業都市,

若者のための都市の4つに分かれている。

医療都市,職業都市,若者のための都市

はそれぞれ医師,職業カウンセラー,相

談員がおり,平日昼間でも訪れるものが

後を絶たない。

図2 図書館ゾーンの内部。上階は若者

のための都市,映写室,自習室(午前中

は司書志望者や学芸員に開放),下階は

医療都市,図書室,地階は職業都市とな

っている。建物内には書誌ほか科学的コ

ンテンツに触れられる端末がふんだん

に設置されている。

利用者本位の当施設が OSR に参加した

理由は,従来図書館での本の書誌情報管

理に Dublin Core からなるメタデータを

利用していたことが挙げられる。情報技

術担当職員は同じく Dublin Core に準拠

した OSR のデータ入力を容易に行うこ

とが可能である。この環境を利用して,

24カ月間にわたって教授法の研究者の

出向を受け,図書館で従来から作ってい

たデジタルコンテンツを4つの教育パス

ウェイとして投稿している。

教育パスウェイの作成は,複数の学校

の教師から過去にどの展示を見たかをイ

ンタビューしてから行った。主として,

114

2-(2)-⑪-B

教師が生徒を館に連れてくる際に,どの

ようなインターフェースにすれば使い勝

手がよいのかを研究する意味もかねて,

認知科学者を交えて作成した。

これらの結果を踏まえつつ,当施設で

は新たなデジタルコンテンツを独自開発

している。たとえば,食物連鎖を直感的

に理解するために,複数種の魚を「食べ

る―食べられる」の関係で並べなおすと

いう子供向け iPad 用教材を作成した(図

図3 プランクトンから青魚,大型のサメ

まで,食物連鎖でつながっていることを直

感的に理解できる電子教材。いずれアップ

ルストアで販売したいという。

一般に,OSR に投稿した教材について

評判はよいが,明らかになった問題点も

ある。教材の投稿時に要求される入力項

まないという声が現職の教師たちから寄

せられているという。

科学系博物館は時代とともに,人々が

求める形に変化していく必要がある。そ

の際,すでに自館が持っている教育資源

を見せるだけではなく,新たに電子教材

を作るなどの行動を起こさねばならず,

教材には人気のあるソーシャルネットワ

ークサービスも積極的に取り入れたほう

がいいと考えている。

(3)Palais de la découverte

Cité des Sciences et de l’Industrie と同様,

フランス経済財政産業省傘下の公施設法

人の Universcience に属する。しかし職員

は国家公務員であり,テクノロジー分野

に重きを置く前者と異なり,当施設では

科学の原理や理論を理解するための展示

を中心としている。

たとえば,フーコー振り子を,天井か

ら下がる振り子ではなく,水平に伸びる

金属棒で作ったり,アラビアの伝統的な

デザインモチーフには幾何学が深く関係

していることを来館者がパズルを通して

体験する常設展示がみられる。

当施設では,幼稚園を除く学齢期から

大人までの生涯学習プログラムを行って

いる。提供可能なすべての学習プログラ

ムはウェブ上にリストアップされている。

これらプログラムは,特に子供たちに科

学への興味を与えることに注力しており,

常勤の科学コミュニケーターによるスリ

リングな実演も豊富である。例えば,科

学コミュニケーターが,高電圧をかけた

金属棒同士を近づけて来館者の目の前で

激しい光と音を伴う空中放電を見せ,こ

の現象がコンデンサの原理であり,落雷

現象にも関連していることを説くプログ

ラムがあげられる。

6.考察

(1)ドイツ

OSR 学習プログラムにはオープンパス

115

2-(2)-⑪-B

ウェイが多く,教員だけでなく一般人,

学芸員でも対応可能な内容といってよい。

特にドイツ博物館は日本の国立科学博

物館と館の形態やパスウェイ作成の思想

が似通っているため,科学リテラシーパ

スポート(仮)作成の際の国際パートナ

ーとして最適であるといえる。

図4 OSR の教育パスウェイ入力画面。

Introduction, Pre-visit, Visit,

Post-visit, Final の5段階に分かれてい

る。最初の4段階では教材の内容をテキス

トやその他の画像および動画形式で入力す

る。最終段階では,権利関係に関するメタ

データを入力する。

(2)フィンランド

ドイツと対照的に,教員が科学館に生

徒を引率してくる場合のみを想定したス

トラクチャードパスウェイのみを作って

いた。

正しいと思われていたことに対し,実

験を通して仮説を立て,それが正しいこ

とを証明するのが科学である――小学生

のころから Inquiry-based learning を国民

全員に向けて実践するという,日本から

するとハイレベルな教育が行えるのは,

まさに人口が少ない国家ならではの対応

である。

今回の Salmi 教授訪問で,フィンラン

ドの一般的な日本観も知ることができた。

従来,図1における R&D に対する教育

的発展を見せることができたが,時代の

変 化 に乗 り遅 れ次 世代 の Inquiry-based learning を怠ったために,実社会の様々な

課題に対応する能力を育成できず,経済

的失速を遂げたという見方だ。

だが,フィンランドの優良企業として

知られているノキア社が,昨年韓国サム

スン社に携帯電話売上首位の座を明け渡

し,シェア縮小の一途をたどっている。

産業競争力を向上するという観点からは,

日本は単にフィンランドのやり方を模倣

するではなく,旧来の R&D の教育法と

ともに Inquiry-based learning の方法論を

体系化し,どちらの教育手段も両立する

という挑戦をしなければならない。これ

は理科教育の枠にとらわれるものではな

く,教育という営み全体を統合し,かつ

効率化する刷新的な方法を生み出さなけ

ればならないことを意味する。

(3)フランス

人口の多い国,学習資源が多い施設で

あるほど,日々の仕事の中で入力作業に

要するマンパワーが不足しがちという現

状がある。フィンランドが理想とする,

館訪問前後のしっかりした予復習教材の

理念は,フランスの教育現場での多大な

負荷状況では不可能であることを見せつ

けられた。また,理科離れが進み,2000

年代に教育指導要領の内容が大幅削減さ

116

2-(2)-⑪-B

れたという。フランスのこれらの事情は

日本の状況に酷似するもので,今後の動

向も決して無視できない。

理科離れ防止のために子供たちに科学

に興味を持たせることが重要であるなら

ば,普遍的に人気のある天文学,健康関

連といった古典的な話題への説明も決し

てなくしてはならない。科研費 S のプロ

ジェクトのデータベースに投稿すべき内

容も,古典的なものも必ず揃えておくと

いう方向にすることが成功へのヒントに

なりそうだ。

(4)総括

今回の調査全体を通して,以下の点に

気付いた。

・地域住民のニーズに沿った内容で館

の構成そのものを変化させることが必要

となってくる。

・ドイツ博物館,Heureka では時代に合

った教育プログラムを作成するため,研

究者を多用している。

・OSR 学習プログラム受講生の科学リ

テラシーの評価をするという観点は,ど

の国にも存在しなかった。日本では評価

方法を以下3点のパターン中から検討す

べきである。

①受講者の自己評価で行う

②受講者に学習プログラムを実施した

現職の教員・学芸員が行う

③学習プログラム内容および受講生の

科学リテラシーの評価担当人員を新たに

養成し,この人員が行う

①も②も構成主義に基づく学習プログ

ラムおよび科学リテラシーを統一的視点

で評価できる専門性および客観性を特定

の基準まで向上することが,時間的にも

負荷的にも難しい。プログラム内容およ

び評価の質を高めるためには③が最も適

していると考えられる。

・OSR には台湾も参加しているが,OSR

教材の EU での反応と,台湾の高校生の

反応とは異なるものであったという。メ

タデータ等形式上は国際規格にも合わせ

つつ,評価方法や学習プログラム内容は

社会文化的側面からの日本に即したカス

タマイズ,いわゆるガラパゴス化も必要

である。

今後本科研費 S の研究においては,フ

ィンランドやギリシャのきめ細かな教育

理論を理想としつつも,先進国で生じた

「時間がない」という問題点,そして台

湾の実例を学んでアジアの文化・民族的

な差異点を踏まえ,日本の現状,また日

本人の行動心理に即したカスタマイズを

加えることが必要である。そのためには,

教育心理学や比較文化論など別の切り口

からの意見も積極的に取り入れていきた

いと考えている。

117

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-C

第2章 第2節 項目11-C

アメリカにおけるオンラインリソース提供方法の実態調査

小川義和

*1

,本間浩一

*2

,奥山英登

*3

,庄中雅子

*1

,松尾美佳

*1

国立科学博物館

*1

,慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント

研究所

*2

旭山動物園

*3

1.調査の目的・調査期間・調査先

博物館等における科学リテラシー涵養の

あり方とそれに関するプログラム開発事例

の調査を行った。今回の調査の中心は,シ

ステムデザインとしてアクセス情報や SNS,

ユーザーフィードバックをどのように活用

しているかや,それにまつわる技術上の問

題点があるかという点であった。調査期間

は,2012 年 11 月 25 日~30 日で,調査先は

ニューヨーク,ワシントンであった。

調査日程

日時

11 月 26

日(月)

10:30~

12:00

訪問先

 Columbia University:コロン

ビア大学(ニューヨーク)。

対応者:Karen Kane

 American Museum of Natural

11 月 28

日(火)

13:30~

15:00

History (AMNH):アメリカ自

然史博物館(ニューヨーク)

対応者:Robert Steiner, Carter

Emmart, Jane R. Kloecker

 Association of

Science-Technology Centers

(ASTC):(直訳)科学技術

センター協会(ニューヨー

ク)

対応者:Trevor Nesbit, Kalie

Sacco

2.調査対象サイト概要

(1)OMuRAA

コロンビア大学のオンライン学習ポータ

ルサイト。複数の美術館のオンライン鑑賞

システム・教材をテーマ別に閲覧できる。

(2)Asia for Educators

コロンビア大学のオンライン学習サイト。

教員向けのリソースの使い方を教えるサイ

トである。

(3)Seminar on Science

小学校から大学までの教員向けに,サイ

エンスのリソース,講座を提供する。

(4)Informal Commons

学習プログラム情報を載せるポータルサ

イト。学者,教育者,政策立案者などが対

象とされる。

(5)Exhibit Files

博物館のエデュケーターが対象のデータ

ベースシステム。展示のノウハウやレビュ

ー等の情報交換が行われる。

3.キーワード

118

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-C

1) ISE:Informal Science Education の略。イ

ンフォーマルな科学教育のこと。

2) オンラインコース:オンライン開講され

るコースのこと。

4.成果

(1)アクセス解析

Asia for Educators では,受講者がオンラ

インコースのウェブサイトをどのぐらい閲

覧しているかアクセス解析して,成績評価

にも活かしている。サイエンスリテラシー

パスポートの場合,受講者のサイエンスリ

テラシーの変容を測る為の評価方法が必要

になる。しかし,サイエンスリテラシーを

測る前にまず,学習プログラム自体に興味

を持ったか,楽しいと感じたか,という部

分のみを測るのであれば,Asia for Educators

の例を参考にするのも一つの手段だと考え

ることができる。サイエンスリテラシー変

容以外に,何を評価することが可能なのか,

(2)メタデータについて 1

Informal Commons では,インフォーマル

サイエンスエデュケーション内容専用の独

自メタデータを確立している。ダブリンコ

アという世界的なメタデータの標準を利用

しつつ,独自の項目を追加して,Informal

Commons 専用のメタデータを作り上げて

いる。サイエンスリテラシーパスポートで

も,同じことをする必要が出てくると推測

され,これからも Informal Commons に情報

提供を依頼することが予想される。

(3)メタデータについて 2

Informal Commons では,既存のデータベ

ースから,Informal Commons にデータを移

行する際は,エクスポート・インポートそ

して手作業による分類という方法で

Informal Commons メタデータに落とし込む。

この作業は時間と労力がかかる。Informal

Commons の方が後から出来たため,これは

仕方のないことである。サイエンスリテラ

シーパスポートの場合は,これからメタデ

ータを作成する。将来的に作成されるであ

ろう関連データベースはどんな物になるか,

その際どのようなメタデータであれば支障

がないかなどを綿密に計算する必要がある。

(4)コミュニケーションの場

Exhibit Files には主に2つの機能がある。

Case Studies と Exhibit Reviews である。前者

は,学芸員が,自館で自らが携わった特定

の展示について,その意図や目的,達成ま

でのプロセスなどを紹介するというもの。

後者は,若手の学芸員や博物館学の学生が

自分の興味を持った展示について自由に投

稿し意見を交換できる場である。博物館フ

ィールドでの若手育成の場にもなっている。

サイエンスリテラシーパスポートでも,学

芸員同士のコミュニケーションをとれるコ

ミュニティを設ける予定である。Exhibit

Files の例を研究して参考にする価値があ

(5)動画,生放送システムの活用

Asia for Educators では,ストリーミング

のシステムを搭載し,教員向け講義を行っ

ていた。動画,特に生放送のシステムは日

本の教材サイトではあまり見られない。た

だし,日本では来館者を増やすという究極

的な命題のために,手放しで動画や生放送

を容認できない。日本で採用する場合は,

119

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-C

TVCM として使うのか講義なのかサイエン

スショー生中継なのか事前に館で意思決定

しておく必要がある。また,日本では動画

の作成をする人的余裕が各館にあるかも大

きな課題となる。

5.その他

(1)Columbia University – OMuRAA

検索のフィルター項目のジャンル分け

(例:Art Subject Area)はシステム作成に関

わったスタッフによって経験的に行われて

いる。サイエンスリテラシーパスポートで

は,閲覧者の視点で考えるジャンル分けを

行いたい。

(2)Columbia University – Asia for

Educators

オンライン上でリソースが提供され,全

ての講義はオンラインで受講する。Simul

Cast によって,講義の動画も閲覧可能。再

生時間終了から一週間以内に質問メールを

投稿すると回答も得られる。

また,オンラインコースのプラットフォ

ームとして Moodle を利用している。

Facebook など SNS を利用した交流の場も

設けられている。

講師が全ての受講者の全ての提出物の評

価をすることは不可能である為,部分的に

受講者間で評価(peer evaluation)させている。

(3)AMNH について 1 – Seminar on

Science

AMNH では,200 人以上の研究者を抱え

ている。小学校から高校までの先生向けの

教育を行うのが Seminar on Science である。

リソースはテキスト主体だが,絵,写真,

グラフ,データ,動画などもある。

ディスカッションの為の掲示板が設けら

れている。人々が考え,研究し,書く機会

を持つことに重きを置いている。

(4)AMNH について 2

博物館にプラネタリウムが併設されてい

る為,必ずしも宇宙に関係するテーマの上

映のみ実施しているわけではない。生命に

関する可視化や,科学に直接関係のないテ

ーマを扱うこともある。プラネタリウムが

デモンストレーションの場として活用され

ている例だと言える。

(5)ASTC – Informal Commons

National Science Foundation(アメリカ国立

科学財団)からの助成金によって運営され

ている企画が CAISE (Center for

Advancement of Informal Science Education)。

その CAISE が持つ複数サイトの内の一つが

Informal Commons である。

Informal Commons は,ISE の学術的バック

グラウンドを持つ人(評価者やコンサルタ

ントなど)と,実行者の間を繋ぐ役目を担

う。様々なリソースを網羅出来るポータル

サイトである。CASE や Informal Commons

の対象ユーザーは,ISE のプロフェッショ

ナル(評価人や研究者)/STEM scientist/

政策立案者・管理者が対象である。一般ユ

ーザーは対象としていない。

リソースの提供者との関係性は,場合に

よって異なる。ステークホルダーである提

供者の意見を聞いて,場合によっては,リ

ンクと限られた情報しか Informal Commons

には載せないこともある。このようなケー

スとして、例えばオリジナルのサイトでオ

リジナルの正しい情報を得て欲しいという

120

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-C

提供者側からの希望があった。

Informal Commons の構成の中での各

リソースの位置づけやその使い方について

は,リソース提供者側とよく相談して決め

ている。年に一度各オンラインリソースの

代表者と NSF が集ってミーティング

(Infrastructure Coordination Roundtable )をし

て同意を得る。

データのフィルタリングの際に,重要に

なってくる情報がメタデータである。ダブ

リンコア(National Science Digital Library で

も利用)に,Informal Commons が独自で追

加したメタデータの一つに Target Audience

がある。ISE の対象が,親子なのか,幼児

なのか,小学生なのか…といったような分

類分けである。Informal Commons では,メ

タデータの概要作成に 6~8 ヶ月を費やし

た。

将来は,National Cataloging System を用い

て,NSDL (National Science Database Library) database でウェブサービスと XML を経由し

て自動メタデータ採取を行えるようになる

予定。

(6)ASTC – Exhibit Files

Informal Commons 同様 National Science

Foundation(アメリカ国立科学財団)からの

助成金によって運営されている企画である。

6.総括

今回の調査対象の東海岸の各施設では,

利用者の解析など利用者の実態調査に関し

てほとんど行っていない印象を受けた。そ

れに対して,西海岸の OEM Commons は掲

載リソース数もコメント数も多く一般に活

用されていると考えられること,シリコン

バレーにも近く IT 技術者が地理的に豊富で

あることも考えると,Formal Education やグ

ラント獲得に重きを置いた思想の東海岸よ

りも,西海岸を我々が参考にすべきなので

はないか。

Informal Commons は科学や科学教育に携

わる専門家間の情報共有,Exhibit Files は,

博物館業界で働く人達の情報共有を目的と

している。Seminar on Science,OMuRAA,

Asia for Educators は,教える者から教わる

者へ学習の場やその為の教材を提供するこ

とを目的としている。

本研究で作ろうとしているシステムは,

博物館学芸員と博物館利用者が双方向にア

クセス利用できるものである。これは,今

回の出張で調査したどのサイトの在り方と

も異なり,独自性・新規性があるものだと

言うことができるだろう。

博物館学芸員は,自館で展開されている

学習プログラム内容をオンライン上で共有

するが,それは Informal Commons や Exhibit

Files のように専門家の枠に留まらない。ま

た,このシステム上では,博物館職員とい

う専門家から博物館利用者の学習の為に学

習素材が提供されるわけでもない。あくま

でも学習の機会が与えられるのは博物館で

実施される学習プログラムの場であり,継

続的な来館と学習プログラムへの参加を促

すために,本システム上では学習プログラ

ムの開催内容を提供する。今回の調査対象

としたどのサイトとも異なるのは,オンラ

イン上のみで情報の提供や共有がなされる

ことが目的ではなく,その先の「博物館へ

行き学習プログラムに参加する」という行

動を生み出すことが真の目的だということ

121

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-C

である。

調査対象とした4つのサイトは,ターゲ

ットが明確に設定されていた。本研究でこ

れから作成するシステムは,博物館学芸員

と博物館利用者の為のものであるが,利用

者の中でもどの層をターゲットにするか,

その明確な定義付けをすることは重要だと

感じた。既存の博物館ヘビーユーザーなの

か,潜在的な博物館ユーザーなのか,今は

博物館に一切興味を持っていないがいつか

博物館に足を運ぶかもしれない人達なのか,

これによって,広報の方法もシステムのユ

ーザーインターフェイスの整え方も,学習

プログラムの企画・実施方法も変わってく

ると推測される。

最後に,様々な地域に分散する協力者と

1 つのプロジェクトを進めるうえでの工夫

がこれから必要になってくると感じた。

CAISE では,wiki を使ってスタッフ間の作

業進捗状況を連絡しあっており,メッセー

ジのみならず必要なデータの共有も,スタ

ッフ専用のウェブサイトを設けて行ってい

る。そして,本当に重要な決定や確認が必

要な案件のために,最低限年に一回は外部

の協力者達に召集をかける。

本研究の協力者は,全国にいるため,頻

繁に会議を開くことが難しいことが既にわ

かっている。CAISE の例のように,何らか

の工夫をして,円滑なプロジェクト進行を

心掛けたい。

122

2-(2)-⑪-D

第2章第2節項目11-D

アメリカ合衆国における国立動物園と国立水族館

1.調査目的・調査期間・調査先

奥山英登

旭川市旭山動物園

我が国には、国立動物園の設置構想の機

運が一部にあるが、アメリカ合衆国におい

ては、首都のワシントン

D.C.に国立の動物

園と水族館がすでに設置されている。その

両施設を訪問調査した。

調査期間、および調査先は、

2012 年 11

27 日 に Smithsonian’s National

Zoological Park(以下、国立動物園)、お

よび同年

11 月 28 日に National Aquarium in Washington, D.C.(以下、国立水族館)

である。

2.調査概要

( 1 ) Smiths onian’s National Zoological

Park

・所在地:

3001 Connecticut Ave. NW, Rock

Creek Park, Washington, D.C., USA

・入園料:無料

・敷地面積:約

・飼育点数:約

・訪問日時:

・年間入園者数(

2012):約 230 万人

660,000 ㎡

400 種 2,000 点

11 月 27 日 13:30-16:30

図 1 国立動物園の入場口

アン博物館と同様に入園料は無料であり、

2012 年度の入園者数は約 230 万人である。

敷地面積約

66 万㎡(旭山動物園は約 15 万

㎡。日本最大級の多摩動物公園は約

52 万

㎡)の中に約

400 種 2,000 点の動物が飼育

展示されており、滞在

3 時間では全てをく

まなく回りきることはできなかった。

訪問当日は、冬期ということもありワオ

キツネザルなど南方系動物の展示は行われ

ていなかった。アジアゾウも残念ながら展

示されていなかったが、

Elephant Trails

という飼育展示施設は敷地面積約

9,000 ㎡

リカ合衆国の中でも最古の動物園の

あり、スミソニアン学術協会

1 つで

(Smithsonian

Institution)が運営している。他のスミソニ

2)。また、展示施設の一角には、国立動物

園が行っている繁殖研究や保全活動を体験

的に理解できるハンズオンコーナーが設け

られていた(図

3)。

123

2-(2)-⑪-D

図2 橋から見下ろす Elephant Trails

の全景

図4 飼育展示施設 Amazonia 内のディス

カバリールーム

図3 Elephant Trails のハンズオン

コーナー

園内には、多くの屋内型飼育展示施設が

あり、どれもハンズオンの展示物が多く、

ディスカバリールームを備えるところもあ

った(図

4)。園内各所で見かけることので

きる掲示物には、動物の生態や生息地など

の基本的な情報の他にも、野生下における

現状や脅威など、野生動物保全に関する情

報や国立動物園が取り組む学術研究や保全

活動の情報が多くあった。

さらに、毎日、来園者に向けて数多くの

教育プログラムが実施されている。訪問時

は、

Small Mammal House で行われてい

Meet a Small Mammal というプログラ

ムに参加することができた。このプログラ

ムでは、ハダカデバネズミについて学ぶこ

とができ、飼育担当者が実際に動物を展示

図5 Meet a Small Mammal の様子

施設から連れ出し、間近に観察しながら解

説してくれるものである。当日は、平日で

雨天ということもあり園内を歩く来園者は

まばらであったが、プログラム開始時間に

なると来園者が集まりだし、およそ

10 名

弱の来園者がプログラムに参加した。熱心

に飼育担当者の解説に耳を傾ける来園者の

姿が印象深かった(図

5)。

国立動物園の使命は、

Animal care、

Science、Education、Sustainability にリ

ーダーシップを示すことであるとしている。

例えば

Education の項では「Teach and inspire people to engage in conservation of wildlife, water, and habitats.」と、それ

らの使命の端々には

Conservation(保全)

という言葉が散見される。今回の訪問は、

124

2-(2)-⑪-D

園内の見学のみに留まるものであったが、

展示からも野生動物保全に向けた国立動物

園の姿勢が伺えた

(2)National Aquarium in Washington

D.C.

・所在地:

1401 Constitution Avenue, NW,

Washington, DC 20230, USA

・入館料:大人

$9.95,小人(3-11 才)$4.95

など

・年間入園者数(

2010):約 21 万人

・飼育点数:

250 種 1,500 点以上

・訪問日時:

11 月 28 日 15:00-16:00

アメリカ合衆国には、メリーランド州

ボルチモアとワシントン

D.C.にそれぞれ

国 立 水 族 館 が あ る 。 ボ ル チ モ ア に あ る

National Aquarium in Baltimore は 1981

年のオープンであるが、ワシントン

D.C.

の国立水族館は

1873 年にオープンした合

衆国最古の水族館である。それぞれ独立し

た水族館であったが

2003 年に提携を結ん

でいる。両館ともスミソニアン学術協会と

の関わりはない。

National Aquarium in Baltimore は

飼育点数約

660 種 16,000 点以上、年間

入館者数は約

140 万人(2010)を誇る大規

模な水族館であるが、一方、ワシントン

D.C.の国立水族館は、飼育点数は約 250 種

1,500 点であり、施設も合衆国商務省の本

部があるビルの地階

1 フロアのみという大

変小さな水族館である。公式

Web ページや

パ ン フ レ ッ ト に は 、「

The 45-minute, self-guided tour」や「Enjoy 45-minute introduction」とあり、実際に 45 分あれ

ば十分に館内を見学できる(図

6,7)。

訪問当時は夕方近くであり、残念ながら

午後

2 時に行われるサメのフィーディング

タイム(解説付きの給餌時間)に参加する

図6 国立水族館の入場口

図7 地階 1 フロアの水族館

図8 National Marine Sanctuary の展示

の 1 つ

ことができなかった。フィーディングタイ

125

2-(2)-⑪-D

ムはサメの他、日替わりでワニやピラニア

で実施されている。

展示は

4 つのセクションに分かれており、

それぞれ魚類、両生類、爬虫類等が飼育展

示されている。例えば、セクションの

1 つ

である

National Marine Sanctuaries and

National Parks Gallery で は 、 Florida

Keys National Marine Sanctuary などア

メリカ海洋大気庁(

NOAA)の National

Marine Sanctuaries Program で 保護さ

れている生息地の動物を飼育展示している

(図

8)。他には、カミツキガメやロングノ

ーズガーといったミシシッピー川やコロラ

ド 川 な ど の 淡 水 域 生 物 を 飼 育 展 示 す る

American Freshwater Ecosystem Gallery

など、館内は主に合衆国国内やアメリカ大

陸に生息する生物が展示されており、アメ

リカの身近な生物に特化した水族館といえ

る。

国立水族館における使命は、

To inspire conservation of the world’s aquatic treasures. 」 と し て お り 、 や は り

Conservation(保全)という語が含まれて

いる。小規模ながら地域の身近な自然を伝

えるという野生生物保全に向けた国立水族

館の姿勢が展示から伺えた。

3.まとめ

今回の訪問調査では、十分な時間がとれ

ず訪問先で学芸員等のスタッフに話を聞く

ことはできなかった。しかしながら、展示

からも両施設が野生動物保全に向けて努力

する姿が伺えた。特に、国立動物園におい

ては、生息域内での保全活動や繁殖などの

学術研究が多く紹介されており、動物園が

社会的に果たす役割の大きさを改めて認識

した。我が国においても、動物園・水族館

研究」があるが(齋藤

勢は、今後の我が国の動物園・水族館が果

たすべき社会的役割の参考になるものと考

える。

参考文献

国 立 動 物 園 を 考 え る 会 Web ペ ー ジ , http://www.kokuritsudoubutsuen.jp/in dex.html(2013.3.31)

National Aquarium:Watermarks, MAGAZINE

OF THE NATIONAL AQUARIUM, 28,

2011.Spring

園水族館協会,1999.

Smithsonian National Zoological Park:

National Zoo Strategic Plan, Moving forward, The next ten years at the

National Zoo, 28, 2007.2

Smithsonian National Zoological Park 公

式 Web ペ ー http://nationalzoo.si.edu/

ジ : default.cfm(2013.3.31)

東京都:都立動物公園マスタープラン,

2011.9

, http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/k ouen/zoo_masterplan/zenbun.pdf

(2013.3.31)

, 1999)、両施設の姿

National Aquarium 公 式 Web ペ ー ジ : http://www.aqua.org/(2013.3.31)

ンドブック動物園編 第 3 集 概論・分

126

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-E

第2章 第2節 項目11-E

第 4 回アジア動物園教育担当者会議(AZEC-4)参加報告

松尾美佳,小川義和

国立科学博物館

1. 会議の概要と参加目的

第 4 回大会として、福岡県福岡市を会場

に全 5 日間にわたって開催された。主要な

会議は、マリンワールド海の中道に隣接す

る ホテル・ザ・ルイガンズにて行われた。

開催国日本を中心に、アジア圏を中心とす

る世界の国々の動物園、水族館、その他の

館種の博物館、研究機関等から多くの参加

者があった。

主催組織等:主催「人文系と自然系博物館

の連携」実行委員会、共催日本動物園水族

館教育研究会、公益財団法人日本博物館協

会、公益社団法人日本動物園水族館協会、

海の中道海浜公園、後援全日本博物館学会、

日本ミュージアムマネージメント学会、日

本展示学会、福岡県博物館協議会、福岡県

教育委員会、公益財団法人福岡観光コンベ

ンションビューロー

本会議の開催テーマは「人文系と自然系

博物館の教育連携~連携が生み出す新たな

命のメッセージ~」であった。過去 3 回の

AZEC では動物園・水族館の教育普及担当

者を中心に開催されてきたが、今回は人文

系博物館とも連携して開催された。これに

より博物館の教育機能の推進について,国

や館種を超えて研究発表,人材交流,情報

交流を行ない,合わせてアジア各国の博物

館関係者に日本の博物館の現状や活動をア

ピールする場となった。会議では、このテ

ーマに基づいて 2 つの基調講演、25 の口頭

発表、20 のポスター発表、2 つのワークシ

午前

ョップが組まれた。

スケジュール上,報告者らは出席できな

かったが,12 月 12 日~14 日にはマリンワ

ールド海の中道、海の中道動物の森、到津

の森公園の自由見学や、志賀島歴史研究会

との共同セッション、また最終日には、オ

プショナルツアー(行先:九州国立博物館、

九州歴史資料館、阿蘇火山博物館、大分マ

リーンパレス水族館)が実施された。

表1 メインコンファレンスの日程

12 月 9 日 12 月 10 日 12 月 11 日

基調講演 口頭発表

午後

夕刻

アイスブレイク

パーィー

口頭発表 口頭発表

/ポスター発

ウェルカ

ムディナ

筆者は、口頭発表のセッションにて発表を

行った。本調査研究の成果を中間報告する

こと,また,人文系と自然系博物館の教育

連携を行う本研究についてアピールするこ

と等を目的とした。

127

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-E

図1 会場の様子

2. 実施報告

<12 月 11 日 口頭発表>

Circulating Knowledge of Humanities and

Sciences Museums through Communication between Public and Curators

Mika Matsuo, Yoshikazu Ogawa, Motoko

Shonaka-Harada (National Museum of Nature and Science, Tokyo)

本研究のツールとして開発されたシステ

ム「サイエンスリテラシーパスポートβ」

について、その使用方法や影響、登録され

ている学習プログラム内容等について発表

した。人文系・自然史系の枠を超えた 18 の

博物館(2013 年 11 月現在)が連携し、全館

種が一つの共通の枠組みを使用して学習プ

ログラムのデータ蓄積を行っている点が好

評であった。

参加者からの質問には、本システム上で

の博物館利用者と博物館職員間のコミュニ

ケーション方法やその効果についての質問

が寄せられた。

図2 口頭発表の様子。

128

図3 発表後、会場にて。

3. まとめ

人文系・自然史系の博物館の教育連携と

いうテーマではあったが、こういったテー

マが取り上げられること自体が初めてであ

ったためか、連携をあまり感じさせない発

表(園館の紹介のみに留まるもの等)も見

られた。連携するとは具体的に何を指すの

か、館種を超えて連携することのメリット

は何なのか、それを実施する上での課題と

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-E

その克服の方法は何であるのか、連携する

上で博物館だけでの連携に留まらない連携

があるとすればそれは何か、それはどうす

れば実現可能かといった様々な問いに対し

て、今後大きな関心が払われることになる

という印象を受けた。

そのような中で、本研究が提示した「科

学リテラシーパスポートβ」のシステムは

新規性を持っており、引き続き国内外へ広

く普及していく意義あるものと考えられる。

129

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-F

第2章 第2節 項目11- F

英国における科学リテラシー涵養活動

―幼児期・学齢期・高齢期を対象とした学習プログラム事例を中心に

坂倉真衣 *1 ,松尾美佳 *2 ,小川義和 *2

九州大学大学院総合新領域学府・日本学術振興会特別研究員(DC) *1 ,国立科学博物館 *2

1.はじめに ~中学校),高齢期の学習プログラムを実施

近年,科学技術の著しい発展で日常生活

は便利になった。しかし,その一方で,生

命倫理など科学者コミュニティのみでは解

決が難しい問題も増えてきている。このよ

うな問題の増加に伴い,一般の人々もその

問題を理解し,科学的に考え,判断をする

ことのできる科学リテラシー 1

の重要性が

叫ばれている。国立科学博物館(

2010)は,

人々の科学リテラシーを涵養する活動を

「科学リテラシー涵養活動」として,世代

(幼児~小学校低学年期,小学校高学年~

中学校期,高等学校•高等教育期,子育て期

/壮年期,熟年期•高齢期)や目標(感性の

涵養,知識の習得・概念の理解,科学的な

思考習慣の涵養,社会の状況に適切に対応

する能力の涵養)などに応じた新たな学習

プログラム開発及びそれらの活動の体系化

を行っている。

科学リテラシー涵養活動に類似した体

系化の枠組みに基づいてプロジェクトを展

開している大英自然史博物館や,我が国に

おいて学習プログラムの実施が少ない世代

である幼児と高齢者 2

について先進的な取

り組みを行っている英国の施設を中心に

2014 年 1 月 13 日から 18 日にかけて調査

した。本稿では,幼児期,学齢期(小学校

しているユーリイカ!子どものための博物

館,大英自然史博物館,エイジ•エクスチェ

ンジでの事例を報告する。

2.ユーリイカ!子どものための博物館

ユーリイカ!子どものための博物館は,

1992 年に設立された英国のハリファック

スにある英国唯一の子どものための博物館

である(図1)

Learning through PLAY

(遊びを通して学ぶ)を大きな理念の

1 つ

としており,来館者の多くは

5~9 歳である。

本施設は「子どものための博物館」である

ので科学に限らず,子どもたちの生活の中

にある様々な分野のもの(消防車,銀行な

ど)が展示されている。本施設では,特に

幼児期~小学校低学年期を対象とした「科

学リテラシー涵養活動」として参考になる

事例が多くあった。

まず, 3

を用い

たサイエンスショーである。本施設のサイ

エンスショーでは,ストーリーの中に生徒

も先生も組み入れ,ドラマ的に見せるとい

いうサイエンスショーでは「エイリアン」

が登場し,博物館スタッフだけでなく,生

徒,先生にも役を与えて演じてもらうとい

130

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-F

図1 ユーリイカ!外観

う。このようなストーリーを通して経験す

ることで,参加者にその現象について強く

印象づけることができ,記憶にも残りやす

いという効果がある。

また,本施設では生活の中の出来事を科学

とリンクさせて学ぶ数多くのプログラム 4

も多く開発されている。

Blast from the

Past”という歴史を通して薬について学ぶ

ものや,

The Science of Sports”という

スポーツに関わる様々な力がアスリートに

どのように影響するかを学ぶもの,

Fast

Food Fun”という健康や栄養,活き活きと

した健康的なライフスタイルの重要性を学

ぶプログラムなどである。さらに,健康を

テーマとしたものでは,学校や地域社会と

連携し行っているという“

Mission active feature”というプログラムも「科学と生活

とのつながり」という観点からとても興味

深いものであった。このプログラムは,参

加者がワークショップを受けながら,

1 年

をかけて自分の健康状態を記録し,運動や

物事に対する態度がどのように変化してい

るかどうかを確認するというものである。

涵養活動」における特に「科学的な思考習

慣の涵養」 「社会の状況に適切に対応する

能力の涵養」を目的とする活動であると考

えられる。継続的に,かつ“自分の”健康

を記録するということを通して,ただ漠然

と科学を学ぶのではなく,より生活とのつ

ながりを意識することができるものと思わ

れる。

3.大英自然史博物館

大英自然史博物館は,

1881 年に設立され

たロンドン•サウスケンジントンにある博

館である 。7,000 万に及ぶ自然史標本

を所蔵している。

2004 年から豊富な自然史

標本を生かし,本施設を代表として“

Real

World Science”(実世界/実社会の科学)

というプロジェクトが始められた。本プロ

ジェクトは,イングランドの学校制度であ

Keystage2~4 の学齢期(8~16 歳)の

子どもたちを対象としたプロジェクトであ

り,

2014 年現在,自然史の標本を所蔵する

8 館の博物館がパートナーシップを組んで

行っている。対象となる子どもたちの科学

教育を豊かにすることを目的にパートナー

シップを組む博物館間では,標本

•資料だ

けでなく学芸員•研究者をも共有をする。

Real World Science においては,その名

のごとく,学習プログラムの中で,本物の

子どもたちを出会わせるということを行っ

ており,本プロジェクト担当のスタッフは

それが何

よりのインパクトであると強調

をしていた

さらに,本プロジェクトは,学齢期の中で

も特に中等教育に在籍をする子どもたちを

対象とする活動に力を入れているというこ

とであった。この理由として,英国内の博

物館において中等教育の子どもたちを対象

131

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-F

とした活動が初等教育の子どもたちを対象

とした活動に

比べて少ないことや,初等か

ら中等教育移行するにつれ博物館を訪れる

子どもの数が減ってしまうことが理由とし

て挙げられていた。

特に中等教育の子どもたちにとって,学習

プログラム内で研究者と直接交流をできる

解を深め,自分の職業選択やキャリア形成

を考えることができるようになるという点

からも重要である。

4.エイジ・エクスチェンジ

エイジ•エクスチェンジは,

1983 年に設

立された特に高齢者を対象として回想法 5

についての新たな価値への気づきを促す施

訓練されたファシリテーターの同伴のもと,

参加者にその時代を思い出し,話をしても

らうということであった。また,回想法の

手法を用いた「演劇ワークショップ」とい

う高齢者以外を対象とした活動も行ってい

る。

5 歳から

15 歳程度の子どもたちがある年代がどの

ようなものであったかを演じるものや,祖

父母と孫を対象とし,祖父母が若い頃に体

験したことを台本にして,演劇を作りそれ

らを家族で演じるというものがある。

本施設は,科学リテラシー涵養を目的とし

た施設ではないが,回想法を用いたプログ

ラムは,高齢者を中心としながらも,世代

を超えてともに学ぶことのできる活動事例

様な年齢の人々が利用する施設のようであ

り,筆者らが訪れた際には,常設のカフェ

スペースに子どもからお年寄りまで非常に

年齢層の幅広い人々がごく自然に居たのが

印象的であった。

図2 エイジ・エクスチェンジ外観

本施設では,回想法を館内のほか,地域の

病院や老人施設等に出張でも行っている。

回想法に使用される道具は,年代やカテゴ

リー(

健康,旅など)ごとに整理されてい

る。そして,このような物品を見ながら,

養活動」への応用については,科学技術は

発展が早いため,共通の物を見ても同時に

話ができないなどの問題もあると考えられ

る。そのような場合は,若年層,中年層,

高齢層を対象とした新しい物と古い物(例

えば古い電話機と新しい電話機)を用意し,

異なる年代の人々が一緒に語ることができ

るような仕組みを作ることもできる。回想

法の技法を応用することにより,発展の速

い科学技術についても,人々が世代を超え

て学び,考え,意見を出し合うという世代

間のコミュニケーションを促すプログラム

を開発することが可能になると考えられる。

5.おわりに

科学リテラシーは,一過的に涵養されるも

のではなく,継続的に人々自らが培ってい

くものである。従って,あらゆる年代•立場

の人々が生涯を通して学ぶことのできる

「生涯学習」として「科学リテラシー涵養

132

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-F

活動」を考えていくことが必要であると言

える。このような視点からも,排除されが

ちな世代に意識的に焦点を当るだけでなく,

1 つの世代だけでなく多様な世代がともに

学ぶことのできるプログラムを考えること,

さらには,生活とのつながりを意識し,遊

びを通した活動を取り入れるなどより興

味・関心の幅広い人に開かれた学習プログ

ラム開発が必要である。それを可能にする

ものとして,今回紹介をした

3 館での事例

は参考になると思われる。

1 ) 科 学リテラシー 」とは,国立科学

博物館(

2010)によれば「人々が自然や科

学技術に対する適切な知識や科学的な見方

及び態度を持ち,自然界や人間社会の変化

に適切に対応し,合理的な判断と行動がで

きる総合的な資質•能力」である。

2 )平成 22 年度財団法人文教協会研究助

成「知の循環型社会の構築に向けた,科学

リテラシー涵養に資する科学系博物館の学

習プログラムの体系化・構造化に関する実

践的研究」

2012 の成果

による。

3 )「ストーリーテリング」とは,文字,

画像,音などを用いて現実に起こったこと

や,空想上のできごとを描いたものであり,

日本語では「物語」や「お話」を意味する

(須曽野ら

2006 )。

4 )このようなプログラムは主に学校の先

生のために“

SCIENCE UNKEASHED

Resource Pack”という本にまとめられてい

る。

5 ) reminiscence,life review )」

とは,アメリカの精神科医バトラー

Butler,R.N. )によって 1963 年に提

唱された高齢者を対象とする心理療法であ

り,「

クライエントが,需要的,共感的,

指示的な良き聞き手とともに心を響かせあ

いながら過去の来し方を自由に振り返るこ

とで,過去の未解決な葛藤に折り合いをつ

け,そのクライエントなりに人格の統合を

はかる技法」である(黒川

2005 )。

【引用文献】

国立科学博物館 科学リテラシー涵養に

活動』を創る~世代に応じたプログラム開

発のために」

2010.

須曽野仁志ほか:「静止画を活用したデジ

教育工学会研究報告集

JSET06-3, pp.51-56,2006.

誠信書房」

2005.

本研究は,平成

25 年度 JSPS 科学研究費

補助金基盤研究(

S )『知の循環型社会に

おける対話型博物館生涯学習システムの

24220013,研究代表者:小川義和)の支援

を受けている。

付記:本稿は日本サイエンスコミュニケー

ション協会誌

Vol.3, No.2, pp.44-45,2014

を転載したものである。

133

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

第2章第2節項目11-G

AAAS2014 ANNUAL MEETING から学ぶ

日本における学校教育の課題と教育関連施設の役割

塩澤仁行

ふくしま森の科学体験センター(ムシテックワールド)

1.参加の目的・期間・開催地

国立科学博物館の事業推進部学習企画・

調整課長小川義和氏の基盤研究

S)「知

の循環型社会における対話型博物 館生

涯学習システムの構築に関する基 礎研

へ参加した。

日程

日時

18:00-

8:00-

13:00-

参加先

Special Event

President’s Address

Symposia

Building National

Capacity in Science

Communication for STEM

Graduate Students」

Symposia

Use of Digital Games to

Support Youth’s

Engagement with Science and Technology」

Poster Session

American Junior

Academy of Science Poster

Session」

8:00-

9:15-

10:00-

14:00-

13:00-15:00

Symposia

Fight the PowerPoint!

Become a Science

Presentation Superstar」

Symposia

Working for Human

Rights : Communication for Effective Engagement」

Symposia

Rebooting Our Approach to Increasing Indigenous

STEM Participation :

Lessons from Hawai’i」

Poster Session

Student Poster

Competition」

Special Event

Family Science Days and Meet the Science」

Poster Session

General Poster Session」

2.概要

(1)

AAAS について

AAAS とは,「American Association for the Advancement of Science」 の略称で,

日本では「アメリカ科学振興協会」と翻訳

134

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

される。科学者間の協力を促進し,科学

自由を守り,科学界からの情報発信を

奨励し,全人類の幸福のために科学教育

大級の

学術団体で,有名な科学雑誌

Science』の 出版元としても知られてい

る。

(2)

AAAS2014 ANNUAL MEETING

について

AAS2014 ANNUAL MEETING は,世

界的にも最大級の科学的な総会であり,今

回で

180 回目となる。公式発表では今回の

総会には約

50 カ国,6500 名の参加者とな

今回のテーマは

Meeting Global

Challenges : Discovery and Innovation(発

AAAS2014 ANNUAL MEETING は,

いくつかの発表の場に分かれており,主要

なものは,①

Symposia ②Poster Session

Exhibitors ④Family Science Days で

ある。

(3)

Symposia について

図1 Symposia の様子

専門家や研究者が自らの研究している

課題や問題についてパワーポイントを使

ある。 多くはアメリカの大学教授や研究

者であっ たが,日本からも発表している

共同団体(

JST,筑波大学,北海道大学)も

あった。

下のようになっている。

Agricultural, Plant, and Food

Sciences」 Anthropology, Culture, and

Language」 Behavioral and Social

Sciences 」 Biology and Neuroscience」

Communication and Public Programs」

Computer Science, Mathematics, and

Statistics」 Education and Human

Resources」 Energy and Renewable

Resources」 Engineering, Industry and

Technology」 Environment and Ecology」

Global Perspectives and Issues」

Innovation and Entrepreneurship」

Medical Sciences and Public Health」

Physics and Astronomy」 Public Policy」

Sustainability and Resource

Management」

(4)

Poster Session について

(土)

16 日(日)に行われ,14 日の

American Junior Academy of Science

Poster Session(AJAS)」は,アメリカの各

州から選抜された高校生によるポスター

セッションである。

図2 Poster Session の様子

135

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

のようになっている。

Animal Science」 Behavioral Science」

Biochemistry」 Cellular Science」

Chemistry」 Computer Science」

Computer Science」 Environmental

Science」

Microbiology」

Physics」 Plant Science」

15 日の「Student Poster Competition」

は,大学生と大学院生によるポスターセッ

ションで,こちらは審査される競技会とな

っている。各カテゴリーで入賞した発表者

には賞金と証明書が授与され,

AAAS が出

版している科学雑誌『

Science』に掲載され

以下のようになっている。

Plant Science」 Cellular and Molecular

Biology」 Developmental Biology,

Physiology, and Immunology」 Education」

Environment and Ecology」 Math,

図3 小川義和氏発表の様子

Technology, and Engineering」 Medicine

Sciences」 Physical Sciences」「Science in

Society」 Social Sciences」

16 日の「General Poster Session」は,

専門家やポストドクターを対象としている。

このポスターセッションには,

AAAS2014

ANNUAL MEETING に出席し,科学者の多

く集まる場所で自分の研究成果を発表する

機会を与えるという考えがある。今回のカテ

ゴリーは

10 分野となっており,以下のよう

になる。

Brain and Behavior」 Education」

Environment and Ecology」 Math,

Technology, and Engineering」 Medicine and Public Health」 Molecular and

Cellular Sciences」 Nanotechnology」

Physical Sciences」 Science in Society」

Social Sciences」である。

小川氏は

Education」の分野での発表(図

3)であった。

図4 Exhibitors の様子

(5)

Exhibitors について

アメリカを中心に全世界の研究団体や

施設などが,自らの研究などを展示する

場となっている。

中には大学が出版している本を販売して

いるブースもあった。日本のパビリオンも

あり,北海道大学や名古屋大学,理研,

JST

などが出展していた。また,日本発の現地

136

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

企業では,スバルやパナソニックなどが出

展していた。

(6)

Family Science Days について

15 日(土)と 16 日(日)に,シカゴを

中心としたイリノイ州の多くの教育関連施

設,大学,企業,団体などが家族向けのサ

イエンスイベントを開催していた。

Symposia に参加して感じたことは,

リ カ人のプレゼンテーション能力の高さ

と質 疑応答のレベルの高さである。パワー

ポイントでのプレゼンテーションでは,

所々にユニークな画像を入れたり,笑いを

したり,意見交換をしたりと,場の雰囲気

も良く,堅苦しくない

Symposia であった。

もし,日本でこのような場があったとして,

このような積極的な意見交換ができるであ

ろうか。このようなアメリカ人の積極性に

関しては,アメリカ人の気質もあるかとは

思うが,その背景にはアメリカの教育シス

テムが関係しているのではないかと考え

られる。

14 日に開催された Poster Session

American Junior Academy of Science

図5 Family Science Days の様子

会場には多くの家族が訪れ,どのブース

も賑わっていた。動物の糞や毛皮を展示す

る動物園や液体窒素やドライアイスを使っ

た実験,3

D プリンターでの立体印刷物を

製作する団体など,様々な催しが行われて

いた。

3.所感

(1)

AAAS2014 ANNUAL MEETING か

ら見えるアメリカの科学教育

AAAS2014 ANNULAL MEETING

れた高校生によるポスターセッションだっ

たが,

AAAS2014 ANNUAL MEETING で

の発表に至るまでには,各州,各地域での

審査が何度もあると考えられる。世界最大

級の大会で発表できるということは,科 学

者を志す学生にとって,ものすごいモチ ベ

ーションになるであろう。また,

15 日に 開

催された

Poster Session「Student Poster

Competition」では,入賞した場合,科学雑誌

Science』に自分の研究が掲載される。こ

れは非常に名誉なことである。このような

環境ができているため,日本と比較して も

科学者を目指す学生が多いのではないか。

(2)日本の学校教育の課題

137

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

せるとによる知恵の獲得』という教育が重

要視されていないのではないだろうか。そ

という面が重要視されているからではない

かと思われる。

現在はインターネットや本などの媒体か

ら多くの情報を得ることが可能であり,知識

きた知識』つまり『知恵・叡智』を身につけ

ることがあまり重視されていないのではな

いだろうか。インプットした知識をアウトプ

ットする能力や場がこれからの教育には必

要となってくると考える。

(3)学校教育への教育関連施設の役割

『知恵・叡智』を養うためには,他者か

らの教え込む教育ではなく,自らが自発的

に興味を持って学習するという環境を子供

たちへ提供することが必要となってくる。

それが現在の学校教育で実施することが難

しい場合,博物館や科学館,その他の教育

関連施設が連携協力し,そのシステムを構

築していく必要があるであろう。小川義和

氏の基盤研究(

S)

る対話型博物館生涯学習システムの構築に

関する基礎研究」の「

PCALi」は登録利用

者と連携している教育関連施設とのつなが

りを作るということで,高い効果を得るこ

とができる事業である。さらに教育関連施

設や研究機関が連携をしていき,大きなネ

ットワークが構築できた場合,教育関連施

設が登録利用者と専門家や研究者と中継局

的存在として役に立つこともできるのでは

ないだろうか。子供たちの研究や疑問につ

いて,専門家や研究者から回答をもらうと

いうシステムができれば,子供たちの科学

に対してのモチベーションも高まることが

予想される。また,専門家や研究者にとっ

ても自己重要感を得ることができ,研究に

対してのモチベーションを高めることがで

きると思われる。

(4)科学に触れる機会を増やすことに

よる教育的効果

AAAS2014 ANNUAL MEETING より,

日本の教育関連施設でも実現可能であると

思われるのが,

Poster Session である。子

その研究の結果を発表する場を提供した場

合,以下のような効果が考えられる。

① 子供たちの科学教育レベルの向上

② 自発的学習能力の向上

③ プレゼンテーション能力の向上

④ 自己重要感・社会への貢献度の向上

⑤ 教育関連施設の利用促進などである。

それに付随した経済的な効果があるかも

しれない。また,高校生や大学生の場合,

Symposia を実施することも可能ではない

だろうか。

(5)「

PCALi」による科学的なネット

ワ ークの構築と可能性

小川義和氏の基盤研究(

S)

社会における対話型博物館生涯学習シス

テムの構築に関する基礎研究」は,これか

らの日本の科学教育を考えていく上で,先

進的な取り組みであり,科学教育が普及し

ていく可能性を持つ研究である。これが全

国の教育関連施設に広がっていくことを

願っている。また,学校と連携して科学に

興味を持つ子供や科学者を志す学生に

PCALi」が広がれば,日本の科学レベ

ルの向上に繋がっていくのではないかと

思われる。

138

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-G

(6)終わりに

AAAS2014 ANNUAL MEETING という

世界的にも最大級の科学に関する総会に参

加させていただいたことは,科学館の職員

として非常に有意義な体験となった。この経

験を今後の事業に反映させていきたい。ま

た,このような機会を与えていただいた国

立科学博物館の小川義和氏,ムシテックワ

くれた国立科学博物館の松尾美佳氏に,こ

の場を借りて心から感謝を申し上げる。

139

2-(2)-⑪-H

第2章 第2節 項目11-H

第 13 回PCST会議報告

小川義和

国立科学博物館

1.概要

PCST と は Public Communication of

Science and Technology の略である。2 年に

一度各国で開催されるサイエンスコミュニ

ケーションに関する国際会議である。参加

者は大学教員や博物館職員,メディア関係

者,研究所の広報担当,政府職員,研究者

など,サイエンスコミュニケーションに関

わる個人が参加している。会議は数か国か

ら選ばれた個人が組織する常設のコミッテ

ィー(会長は Toss Gascoigne/President, PCST

Network)によって運営されている。日本か

らは筑波大学の渡辺政隆氏が就任している。

なお渡辺氏は今回の総会で再任され今後 4

年間コミッティーメンバーを継続すること

になっている。

本会議は 1989 年のポアチエが最初で,そ

の後ほぼ 2 年ごとに開催されている。今回

南米では初めての開催で,49 か国,530 人

が参加した。日本からは 5 人の参加があっ

た。アジアでは 2006 年に韓国ソウルで開催

された。以下主な開催都市並びに科博関係

の発表者及び発表概要(著者順,*が参加し

た発表者)を示す。

1989:ポアチエ(フランス)

1991:マドリード

1994:モントリオール

1998:ベルリン

2006::ソウル

・小川*,清水*,亀井:サイエンスコミュ

ニケータ養成と大学パートシップのコン

セプト

・木村*・内尾*・小川*・縣*・三上*:21

世紀型科学教育ワークショップの成果

2008:マルメ(スウェーデン)

・小川*,高橋*:科学リテラシー涵養活動

の枠組みと評価

・有田*,小川*:科学リテラシー涵養活動

の実際

・内尾*,小川*:科学系博物館からの科学

的情報の提供における課題

2010:ニューデリー

・小川,有田*,渡辺*,高橋:科学リテラ

シー涵養活動の成果と課題

2012:フィレンツェ

・小川,有田*,中井,佐藤:サイエンスコ

ミュニケータ養成実践講座の成果と課題

2014:サルバドール

・小川*,松尾,庄中,岡田:科学リテラシ

ーパスポートシステムの概要と成果

2.会議概要

今回のテーマは science communication for social inclusion and political engagement であ

る。基本的に,ほぼ毎日 9:00~全体セッ

ション(図1,図 2 参照)があり,その後

10:30~12:00,13:15~14:30,14:15

~16:00,16:30~18:00 で行われた。パ

ラレルセッションでは指定討論者を決めて

行うパネル,個人が発表するオ

図 1

全体セッ

ションの

様子

140

2-(2)-⑪-H

図2 オープニングでは地元の楽団が登場

図表1 スケジュール例(5 月 6

日)

図3 ポスター会場

141

2-(2)-⑪-H

図4 パラレルセッションでの発表の様子

ーラルプレゼンテーション,その他ワーク

ショップ,ショーなどがあった。ポスター

(図 3)は 5 月 7 日,8 日午前 9:00~午後

5:00(コアタイム:10:30~12:00)であ

った(詳細な日程は図表1を参照)。

3.ポスター発表(図 5 参照)

ポスター発表において本研究の論点は以

下の通りである。

○本研究は,参加している学芸員と登録利

用者が共有できる学習プログラム情報のデ

ータベース構築を行っていること。

○利用者は情報を見るだけでなく,選んで

実際に博物館に訪問して学習プログラムを

体験でき,体験を WEB 上に記録し,後ほど

確認できること。

○利用者は学習プログラムを体験した結果,

学習プログラムについてのコメントを学芸

員に送ることができること。

○学芸員は,実施した学習プログラムにつ

いてのアンケートを利用者に送ることがで

きること。

○学芸員同士,利用者同士,学芸員と利用

者同士の対話を促し,よりよい学習プログ

ラムへと改善することを目指していること。

○利用者の異種館の利用実態から博物館利

用モデルを確立すること。

○利用者/学芸員が地域の課題に対し,解

決のために様々な博物館を活用して生涯学

習を展開することを目指していること。

ポスターのコアタイムでは,10 人ほどの

研究者と議論した。大学の研究者,博物館

関係者などがいた。本研究のコンセプト,

目指す姿,そのシステムについて評価が高

く,驚きをもって聞いてくれる人がいた。

興味持った人の中には,評価を専門にして

いる研究者がおり,このシステムの評価を

どのようにするのかを質問されることが多

かった。300 人の登録利用者を時間的に評

価できることは素晴らしいが,続けるには

どうしたらよいのかという疑問もあった。

アンケートに答えるインセンティブが重要

であることも共有できた。

実際のサイトを見せるのに,WIFI の状況

がよくないことや PC の場合アクセスまで

時間がかかり,その間に次の人が質問して

きて,という状況であった。例えばサイト

の様子を見せることができずに終わってし

まった方には,基盤Sメールに連絡して,

サイトにアクセスしてもらうことをと依頼

した。今後わかりやすいサイト(最初のペ

ージ,受講者のマイページ,学芸員のマイ

ページ,プログラム検索ページ,プログラ

ム等)を作っておいて,タブレットで瞬間

的に見せたほうが対応できる。またコアタ

イム以外は不在にすることがあったので,

今回コメントカードを置いて,不在の時に

コメントをもらうようにした。コメントに

よるとスマートホンで分析関連のアプリを

開発している人がいるようである(図 6 参

以上のように一人で対応したために,連

続する質問者に対応できないところがあっ

た。上記のような方策を検討することが今

後の課題である。また早急に量的評価と共

に質的評価を行う必要があり,数は少なく

ともコンセプトの成果を得ることが必要で

ある。さらに多くの発表がプロジェクトベ

ースであり,質問もプロジェクト終了後ど

うするのかといったものもあった。今後本

プロジェクトの一部をどのように事業化し

ていくのかが課題である。科博の事業とし

ての検討の他,外部研究機関との共同研究

や寄付講座さらには企業との連携を探って

いく必要がある。

142

2-(2)-⑪-H

なお,隣のポスター発表はブラジルの科

学技術省(Ministry of Science,Technology and Innovation)職員の発表であった。図 7

に興味深いデータが示されている。これは,

科学的イベントに参加した人のうち博物館

に来館した人の割合を示している。ヨーロ

ッパ各国が 2 割前後の数字を示しているの

に対し,ブラジルはその割合が半分以下で

あることがわかる。これは政策として科学

的イベントを促しているとともに,その割

には博物館利用者が少ないことを示してい

る。我が国に当てはめた場合どうなるであ

ろうか。

図5 ポスター発表(ポスターの下にコメント

用付箋紙を用意した)

図7 コメントの例

4.その他セッション

学部卒レベルのサイエンスコミュニケーショ

ン講座について,6 か国 7 機関(オーストラリア,

メキシコ,スペイン,イタリア,アルゼンチン,ブ

ラジル)から午前午後の連続パネルで発表が

行われた。科博でもサイエンスコミュニケータ

養成実践講座の今後あり方を検討しているとこ

ろなので,以下のセッションについて連続で参

加した。

POSTGRADUATION COURSES IN

SCIENCE

COMMUNICATION:INTERNATIONAL

EXPERIENCES SESSION I,Ⅱ

各発表の概要は以下の通りである(それぞ

れ発表者名/所属)。

図7 科学イベント参加者と博物館来館者

●Gema Revuelta/Universitat Pompeu Fabra,

Spain

20 年ほどの前に設立された2年間の修士の

コースである。1 年間に 400 時間あり,そのうち,

大学で 300 時間,インターンシップ(主に博物

館,メディア等)が 100 時間となっている。理論

は 4 割程度で,サイエンスコミュニケーションの

基礎や科学と社会との関係などを学ぶ。実践

は 6 割を占め,ワークショップ,ビデオ作成,ラ

ジオ番組,サイエンスライティング,ブログ等を

実践に即して学ぶ。

20 年間で 500 人の修士生を輩出しており,

卒業生の 75%がサイエンスコミュニケータに就

職し,80%がフルタイムである。以前は多くの

大学で同様なコースを持っていたが,スペイン

143

2-(2)-⑪-H

の就職危機(若者の 50%は就職していない状

況)以来,このような修士コースを持つ大学は

少なくなり,数少ない大学のひとつなっている

ようである。卒業生にアンケートを取っており,

この学習が職を探すときに役に立っているかと

いう質問に対しては,理論的な学習,実践,公

式な資格(修士)が役に立ったとした割合は半

分ぐらいで,ネットワークが役に立ったと答えた

割合が多かった。

● Susana Herrera Lima/Universidade Jesuita de Guadalajara, Mexico

1998 年設立された修士コースである。社会

的イベントに参加・参画することが特徴のコー

スである。

● Sue Stocklmayer/ Australian National

University, Australia

オーストラリア国立大学とサイエンスセンタ

ーによる修士コースで,20 年ほど前に設立し

た。理論を大学で行い,実践を近隣のオースト

ラリア国立科学館(クエスタコン)で行っている。

この養成講座は,研究代表者が 2004 年より始

めた科学コミュニケータ養成のための基礎研

究(科学研究費基盤B)において共同研究を

行い,その後の科博サイエンスコミュニケータ

養成実践講座の基礎となっている。

最初は学部卒の認証コースとして始めたが,

その後 Diploma として,近年は修士コースとし

て2年間のコースになっている。修士コースは

48 単位からなり,科学と大衆(6 コマ),ウェブ

(6),メディアにおける科学(6),研究者倫理

(6),サイエンスコミュニケーション(6)の戦略

等の科目からなる。3つのコースがある。その

中にはシンガポール大学と共同運用している

科学教師のためのコースもある。

●Diego Vaz Bevilaqua/Museu da Vida/Casa de

Oswaldo Cruz/Fiocruz, Brazil

生活に関する博物館の職員による発表であ

った。2年間の修士コース,年間 20 名前後の

卒業生を出している。大学院生,専門職(ジャ

ーナリスト,博物館職員,研究所広報担当等),

博士課程の学生などが多い。ジャーナリストと

サイエンスコミュニケータコースがある。

● Paola Rodari/International School for

Advanced Studies, Italy

2 年間のコースで,20 名の定員である。1年

目が基本科目(理論,ライティング,ジャーナリ

ズム,科学史,プロジェクトマネージメント,起

業等)で,2年目が実践的内容(博物館,メディ

ア,印刷,テレビ,記録等)で,1 年目と 2 年目

の間にインターンがある。期間は未定。インタ

ーンは博物館,メディアなどが多い。

受講生の 97%が満足しており,7 割がサイエ

ンスコミュニケーションに関する職に就いてい

る。

Elaine Reynoso Haynes/Universidad

Nacional Autónoma de México, Mexico

国立大学が運営する 2 年間の修士コースで

ある。理論と実践が組み合わされた内容であり,

420 時間の科目が展開されている。特徴的な

のは,1 週間で 20 時間実施される museum guide コースがある。これは博物館と連携して,

博物館内で来館者の実際に案内する実習で

ある。

●Sandra Murriello, Universidad Nacional de

Río Negro, Argentina

パタゴニア地方にある国立大学が行っている

2009 年設立の新しいコースである。研究者,

ジャーナリスト,デザイナーが主な受講生で,

例えば理論(6 コマ),セミナー(2),ワークシッ

プ(6),研究所・メディア・博物館での専門実習

(30)と実践が多い修士コースである。2 つの専

門コースがある。

●全般を通じて

いずれも大学が中心になって行っているサ

イエンスコミュニケーションのコースであり,そ

の中では科博は特異の存在である。しかし多く

のコースが実践や実習さらにはインターンとし

て博物館を活用しており,サイエンスコミュニケ

ーションの実践の場として位置づけている。そ

のカリキュラム構成の基本的な考え方・ポリシ

ーを質問したが,明確な答えが返ってこなかっ

た。基本的には,最初に理論的ことを行い,そ

の後実践的な実習を実施するというカリキュラ

ム構成が多い。この点科博のサイエンスコミュ

ニケータ養成実践講座は科目構成のラーニン

グゴール(学習目標)が示されており,独自性

144

があると考えられる。

定員はほぼ 20 名程度であり,丁寧な理論と

実践を踏まえた教育が行われ,その結果高い

就職率と満足度が維持されている。就職状況

については,国や地域によって依存するので

一概に比較する必要はないが,今後科博にお

いても修了生に対するフォローアップ調査を行

い,具体的な成果を把握しておく必要がある。

5.今後

次回は 2016 年 4 月,イスタンブールの予定

で,統一テーマは,Science Communication in

Digital Age である。2018 年はニュージーラン

ドで行うことが決まっている。本プロジェクトとし

ては,関連するテーマであり,2016 年に向けて

成果をまとめていきたい。

図 8 終了の挨拶をする Toss 会長

2-(2)-⑪-H

145

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-I

第2章 第2節 項目11-I

第 3 回 国際 STEM 学会 参加報告

小川義和,松尾美佳,庄中雅子

国立科学博物館

1. 会議の概要

STEM

と は

Science, Technology,

学会実行委員の David Anderson 氏(ブリテ

Engineering and Mathematics の略である。本

会議は,オーストラリアのクイーンズラン

ド工科大学,中国の北京師範大学と,カナ

ダのブリティッシュコロンビア大学がパー

トナーとして開催する,STEM 教育に関す

る国際会議である。参加者は学校,大学の

教育研究者や担当者,企業や個人,官公庁

が中心である。今回は3回目で,ブリティ

ッシュコロンビア大学教育学部が主催し,

バンクーバーキャンパスにて 2014 年 7 月

会参加者の Jane Kloecker 氏(アメリカ自

然史博物館)と。

本会議の開催テーマは

”STEM Education and Our Planet: Making Connections Across

Contexts”であった。

表1 メインコンファレンスの日程。

午前

7/12

基調講

午後

基調講

夕刻

オープニングレ

12~15 日にわたって行われた。

会場では,小川が招待講演を行った基調

講演のほか,口頭発表がメインのパラレル

セッション,懇親会,バンクーバーキャン

パスガイドツアーが行われた。また会議参

加者には,スポンサー施設(バンクーバー

水族館,Science World at TELUS World of

Science,ブリティッシュコロンビア大学附

属植物園等)への無料入館特典もついてい

た。

演,ポスター

発表,パラ

レルセッション

7/13

基調講

演,ポスター

発表,パラ

レルセッション

7/14

基調講

演,パラレル

演,ポスター

発表,パラ

レルセッション

基調講

演,ポスター

発表,パラ

レルセッション

基調講

演,パラレル

セプション

STEM バン

ケット

セッション セッション

7/15

パラレルセッシ

ョン

オプションツア

図1 面会者との写真

パラレルセッションには,口頭発表の他に

ワークショップやショーケースといった形

態があった。

2. 実施報告

<7 月 13 日 基調講演>

146

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-I

Communication between the public and museums: Development of Lifelong Learning

System to Foster Science Literacy

Yoshikazu Ogawa (National Museum of Nature and Science)

基調講演において述べた本研究の論点は以

下の通りである。

○日本には,子どもの頃は理科好きでも次

第に理科に対して苦手意識を持ったり興味

を失ったりする人が多い。

○本研究の前段階となる研究でサイエンス

コミュニケーターの人材教育について,ま

た,サイエンスリテラシーについて研究し

てきた経緯がある。

○本研究では,研究のツールとしてサイエ

ンスリテラシーパスポートβ(愛称:PCALi)

を構築した。このシステム上では,サイエ

ンスリテラシー涵養のための枠組みを用い

て,学習プログラムのデータを蓄積する。

ユーザー(一般の博物館利用者)と協力館

職員の双方がアクセス可能で,彼らのコミ

ュニケーション履歴,また,ユーザーの学

習プログラム参加履歴,オンラインアンケ

ートの結果などを解析することによって,

プログラムの改善や新規開発を可能にする。

○本プロジェクトの協力館は,動物園,水

族館,美術館,総合博物館,歴史博物館,

科学博物館を含む。学習プログラムが開

発・実施された館種に関わらず,全てのプ

ログラムデータが共通の枠組みで管理され

ている。

○これは,言い換えれば,学習プログラム

自体のコンテンツ内容での分類ではなく,

参加者の中で涵養される能力別の分類がな

されていると言える。このことによって,

分野横断的な学びの場の創造を試みている。

Science, Technology, Engineering,

Mathematics というこれまで 4 つに分けられ

ていた領域を統合しようとする STEM 教育

でも,このような手法を取り入れることが

可能かもしれない。

発表の様子。

会場からは,館種を超えた全ての学習プロ

グラムを,1 つの枠組みに落とし込むとい

ったアイデアに対する評価の声が聞かれた。

<7 月 14 日 ショーケース>

STEM ‘Foundations dimensions of science learning in early childhood’

Jane Kloecker, Ilana April, Natalie Tahsler

(American Museum of Natural History)

○ニューヨークのアメリカ自然史博物館で

実施されている

“The Science and Nature

Program”が紹介され,参加者らは,当プロ

グラムを部分的に体験することができた。

○幼少期に STEM に対する興味を持たせ,

生涯に渡って科学に興味を持ち続ける市民

性を涵養するため,高水準の幼少期向けプ

ログラムが必要とされている。

○ “The Science and Nature Program”は,参加

者が 3 歳から 11 歳にかけての間,毎週参加

するクラスである。保護者を伴った参加形

式,多様なセッション,ハンズオンによる

探究,博物館の展示室探検の実施などが主

な特徴である。

147

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J

第2章 第2節 項目11-J

第 22 回国際動物園教育担当者協会隔年会議報告

奥山英登

旭川市旭山動物園

1.会議の概要

国 際 動 物 園 教 育 担 当 者 協 会 隔 年 会 議

( Biennial Conference of International Zoo

Educators Association)は,動物園水族館での

教育研究における国際会議である。2 年に 1

度,世界各地の動物園水族館が持ち回りで開

催し,2014 年 9 月には第 22 回目となる香港

大会が開催された。大会ホストは香港海洋公

園(Ocean Park Hong Kong)である。

参加者は,動物園水族館での教育担当者や

飼育担当者を中心に,野生動物保全団体のス

タッフ,大学教員,世界動物園水族館協会

( WAZA; World Association of Zoos and

Aquariums)のスタッフ等から構成される。

今大会ではアジア圏や欧米圏はもとより,マ

ダガスカル共和国やコンゴ共和国などから

Rainforest(熱帶雨林天地)など,様々な施設

がオープンしている。2013 年度の入園者数

は,香港ディズニーランドよりも多い約 750

万人であり,世界中のアミューズメントパー

クの中でも 12 位の入園者数を誇る。また,

アミューズメントパークとしての面だけで

なく,動物園水族館として野生動物保全に関

する教育活動や研究活動にも大変熱心であ

る。教育活動は,アメリカ動物園水族館協会

(AZA; Association of Zoos and Aquariums)

や NAI ( National Association for

Interpretation)のトレーニングを受けた

60 名以上の教育担当者によって組織的・理

論的に展開され,幼児教育から教師教育,さ

らには企業教育まで幅広く保全教育を実施

している。2012 年度では,幼稚園から中等

30 カ国以上 159 名の参加があった。我が国

からは筆者を含めて 10 名の参加があり,そ

のうち全日程に参加したのは筆者と高橋宏

之氏(千葉市動物公園・日本動物園水族館教

育研究会会長)の 2 名である。

2.香港海洋公園の概要

今大会のホストである香港海洋公園(図 1)

は,1977 年に開設された動物園・水族館・

遊園地が併設する複合施設である。敷地面積

は 915,000m

2

であり,これは旭山動物園の約

を対象としたものだけでも 37 のプログラム

を合計 58,000 人に対して実施した。香港海

洋公園は,入園者数にしても,野生動物保全

にしても,アジアに限らず世界を代表する動

物園水族館施設の一つと言えるだろう。

6 倍の規模を誇る。2005 年より再開発総合計

画(Master Redevelopment Plan)が開始さ

れ,遊園地アトラクションだけでなく,ホッ

キョクグマやペンギンなど極地動物の飼育

展示施設である Polar Adventure(冰極天地)

(図 2)や,主に南アメリカの熱帯雨林に生

息 す る 動 物 を 飼 育 展 示 す る The

図 1.香港海洋公園のメインエントランス

148

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J

大会テーマが教育評価に関するものであ

ったことから,口頭発表も教育評価研究の報

告が多くを占めた。我が国から口頭発表を行

った者は,帝京科学大学の並木美砂子氏,日

本モンキーセンターの赤見理恵氏,そして筆

者の 3 名であり,いずれも教育評価研究につ

いての発表である。

筆者は「Development of Learning Program in

Museums Encouraged by the Interactive Online

図 2.Polar Adventure の内部

3.第 22 回大会の概要

第 22 回大会は 2014 年 9 月 2 日から 9 月 6

日までの 5 日間,香港海洋公園至近の L’Hotel

Database System which Links Visitors and

Educators」と題して,サイエンスリテラシー

パスポートβ事業について発表した(図 3)。

発表の要点は,以下の通りである。

図 3.筆者による口頭発表の様子。

Island South で開催された。大会テーマは,

「Education Success –what does it look like and how do you measure it?」である。表 1 に簡単

な大会スケジュールを示した。

表 1.大会スケジュール

9/2 大会登録とアイスブレイク

9/3

9/4

9/5

9/6

Dr. Doug McKenzie-Mohr 氏による基調講演

3 会場パラレルでの口頭発表セッション 30 演題

29 演題のポスターセッション

ウェルカムディナー

Hong Kong Wetland Park と Kadoorie Farm and

Botanic Garden へのエクスカーション

Dr. Kevin Kim-Pong Tam 氏による基調講演

3 会場パラレルでの口頭発表セッション 15 演題

3 会場パラレルでのワークショップ 6 テーマ

ソーシャルナイトイベント

1 会場での口頭発表セッション 4 演題

香港海洋公園自由視察(オプションあり)

クロージングディナー

(1)口頭発表,及びポスター発表

口頭発表は,大会 2 日目(9/3)に 30 演題,

4 日目(9/5)に 15 演題,最終日(9/6)に 4

演題の計 49 演題あった。2 日目と 4 日目は

会場を 3 つに分け並行してセッションが行

われた。1 セッションは概ね 1 時間 30 分間

であり,15 分の発表が 5 題続いた後に残り

の時間で質疑と討論が行われた。また,発表

はすべて英中同時通訳がなされていた。

・日本国内 19 機関が協力し,博物館学習

プログラムのデータベース構築を行っ

ていること。

・プログラムデータは「科学リテラシー涵

養活動」の枠組みでカテゴライズされる

こと。

・来館者であるユーザーは,データベース

に個人ページを持ち,イベント参加履歴

の蓄積やアンケートの回答などができ

ること。

・学芸員であるユーザーは,これらの評価

を参考にすることで新規プログラムの

開発や既存プログラムの改善が促され

ること。

・単なるプログラムの一覧なのではなく,

来館者と学芸員をつなぐ双方向性のデ

ータベースであること。

・旭山動物園で実施しているプログラムの

149

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J

中で「科学リテラシー涵養活動」の到達

目標が低いものと高いものの 2 つを紹

介。

・旭山動物園では,イベントの参加者がユ

ーザーとなる「新規登録率」が 25%で

あるなど成果が上がっていること。同時

学の松本朱美氏や千葉市動物公園の高橋宏

之氏ら,5 演題の発表があった。セッション

は 45 分間ずつ前半と後半に分けられ,発表

者が半数入れ替わり,それぞれ質疑を受け,

議論を深め合っていた。

ポスター発表では,動物園水族館で行われ

課題も見えてきたこと。

筆者の発表時は,約 40 あった座席のほと

んどが埋まり,立ち見の参加者も数名見られ

る教育普及活動だけでなく,実際の野生動物

保護区の住民に対する実践研究も多く見ら

れた。例えば,Yayasan Ekosistem Lestari(イ

ンドネシアの野生動物保全団体)の Lina

た。

セッション最後の質疑では,参加者の 1

人から「データベースはスマートホンに最適

化された画面で表示されるのか」と質問され,

Naibaho 氏の発表では,地域住民の約 75%が

キリスト教徒であることから,地域コミュニ

ティスペースとして重要な役割を担うキリ

スト教会において,住民に野生動物保全教育

現時点では未対応であると回答した。アンケ

ート回答など評価の即時性を高める上でも

スマートホン対応を検討してはどうかとい

った意見をいただいた。予算の懸念もあるこ

とだが,いただいた意見にあるような来館者

と学芸員双方のユーザーにとって,より使い

勝手の良いデータベースの改訂が今後とも

必要であろう。

口頭発表は 3 会場並行で行われていたた

め全ての発表を見ることはできなかったが,

を行っていた。このような地域の実態に合わ

せた野生動物保全教育は,今後より重要にな

っていくだろう。

(2)基調講演,及びワークショップ

基 調 講 演 は , 大 会 2 日 目 ( 9/3 ) に

McKenzie-Mohr & Associates の Dr. Doug

McKenzie-Mohr 氏が,大会 4 日目(9/5)に

香港科技大学の Dr. Kevin Kim-Pong Tam 氏

によって行われた。

発表の全体的な印象として,動物園水族館が

園館内に留まらず,学校教育や市民教育など

の地域コミュニティの場においても生物多

様性保全における地域の教育力向上に大き

な役割を担っていると感じさせた。WAZA

の Dr. Markus Gusset 氏による「Measuring the

Dr. Doug McKenzie-Mohr 氏は,社会心理学

の手法を用い,地域社会における持続可能な

行動に向けた態度の変容を市民に促す

図 4.ポスターセッションの様子。

Educational Impact of Visiting Zoos and

Aquariums: A Global Evaluation」の発表では,

市民の生物多様性リテラシー(Biodiversity

Literacy)が動物園水族館の来園によって涵

養されるのかを世界的に調査し,評価を行っ

ていた。これによれば,生物多様性リテラシ

ーの涵養,すなわち,それを包含する,もし

くは重複する科学リテラシー涵養の場とし

て,動物園水族館は大きな可能性を持つこと

を示していた。

ポスターセッションは,大会 2 日目(9/3)

題の発表があり,我が国からは,東京学芸大

という Community-based social marketing(以

下,CBSM)の創始者である。CBSM は 5 つ

のステップ(Selecting Behavior・Identifying

Barriers and Benefits・Developing Strategy・

Piloting ・ Broad-scale Implementation and

150

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J

Evaluation)からなり,基調講演ではこれら

のステップについて実例をもって紹介され

た。また,今回の大会では,プレイベントと

して 9 月 1 日から 2 日までの 2 日間,氏によ

るワークショップも開催され,参加者は実際

に CBSM を用いたプログラム作成を行った

法について紹介がなされた。このセッション

は,教育評価についてのプレゼンテーション

が主体ではあったが,Prof. James Marshall 氏

のスライドにあった「(教育評価を)KEEP

また,Dr. Kevin Kim-Pong Tam 氏の基調講

演(図 5)では,保全心理学を用いて動物園

水族館における体験を野生動物への関心か

ら保全への行動変容に結びつける手法につ

いて紹介されていた。氏は,そのプレゼンテ

ーションの最後に動物園水族館教育におけ

る 心 理 学 の 重 要 性 を 強 調 し , Dr. Doug

McKenzie-Mohr 氏の講演も含め,今後,心理

学が動物園水族館においてますます重要に

なってくると思わせられた。

CALM AND JUST DO IT」という言葉が印象

的であった。

もう一方のワークショップでは,学習プロ

グラムの参加者が,ある事柄に対して評定

(assessment)を下す際に利用できる様々な

手法について紹介がなされた。セッションで

は,ワークショップの参加者が,自らそれら

の手法のいくつかを実体験した。これらの中

で,スマートホンを利用した Plicker.com は

大変興味深い手法である(図 6)。これは,

プログラム参加者の評定や回答を即時的に

プロジェクターに投影することで,これらを

参加者同士やファシリテーター間で視覚的,

かつ双方向性に捉えることができるもので

ある。旭山動物園でもぜひ導入・実践を試み

てみたい。

図 5.Dr. Kevin Kim-Pong Tam 氏による基調講演。

大会 4 日目(9/5)の午後からは,ワーク

ショップが開催された。ワークショップは 1

時間 30 分のセッションが 2 つ設定され,1

つのセッションでテーマごとに 3 つの会場

に分かれて並行で開催された。

筆者は,San Diego State University の Prof.

James Marshall 氏 に よ る 「 How Do You

Measure That? A Fast-Paced Tour of

Education-related Initiatives and How They

Were Measured 」 と Wildlife Conservation

– are we on track? Simple assessment techniques you can use in your programs」に参

加した。

前者では,San Diego Zoo で行われている

教育評価研究の具体例から,評価や分析の手

図 6.ワークショップにおける Plickers.com の実演。

(4)エクスカーション,

及びソーシャルナイトイベント

大会 3 日目(9/4)はエクスカーション,

大会 4 日目(9/5)の夜にはソーシャルナイ

トイベントとして,会場である L’Hotel Island

South を離れたツアーが催された。

エクスカーションでは,香港北部の新界に

ある Hong Kong Wetland Park と Kadoorie

Farm and Botanic Garden を訪問した。それぞ

れの施設で,そこに生息する野鳥や植物など

の野生生物を観察し,そこで実施される教育

活動や保全活動について,施設スタッフやボ

151

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J

ランティアから熱心な説明を受けた。

ソーシャルナイトイベントでは,香港の代

表的な観光地であるビクトリアピークやナ

イトマーケットを訪れるツアーも組まれ,多

くの大会参加者が香港の夜を満喫したよう

だ。筆者が参加したのは,Tai Po Kau Garden

という自然公園で行う夜の動物観察会であ

る。ホタルやカエルなどの小動物を香港海洋

公園のスタッフとともに観察しながら,夜の

自然公園の散策を楽しんだ。

5.香港海洋公園自由視察

ーニングされたカワウソと来園者が握手を

し,来園者は水辺の環境を守ることをカワウ

ソと約束するという興味深いアクティビテ

ィが行われていた(図 7)。動物の姿や行動

を単なるエンターテイメントとして来園者

に見せるのではなく,来園者に少しでも野生

動物保全を学んでもらおうという香港海洋

公園の姿勢は,我が国の動物園水族館が大い

に参考すべきであると感じた。

図 7.Panda Village でのカワウソの Trainer's Talk。

6.その他

ウェルカムディナーやクロージングディ

ナーだけでなく,大会期間中は,香港海洋公

園のスタッフによる温かいおもてなしと細

やかな心配りにより,快適に,そしてとても

有意義に過ごすことができた。香港海洋公園

の友人たち,そして大会で出会った各国の友

人たちに心より感謝したい。

Ⅳ.今後

次回大会は,2016 年にアルゼンチンのブ

エノスアイレスにある Fundación Temaikèn

で開催予定である。次回開催に向け,本事業

の成果をより高めていきたい。

大会最終日(9/6)の昼からは,大会ホス

トである香港海洋公園を視察した。

視察時間中は,大会参加者のために香港海

洋公園で行っている学校教育向けや企業向

けの学習プログラムを体験できるオプショ

ナルプログラムも催されたが,筆者は参加せ

ずに園内各所で開催される Animal Fun Talk

や Trainer's Talk といった来園者向けの教育

活動に参加しながら園内全体を視察した。

これら来園者向けの教育活動は,広大な園

内のそこかしこで頻繁に開催されており,全

てを見学するには 1 日滞在したとしても不

可能と思われる。筆者が滞在中に見学できた

のは 5 つのトークとアシカのショーである。

トークにしてもショーにしても,香港海洋公

園の教育担当者やトレーナーは,その解説に

は必ず野生動物保全についてのメッセージ

を含めていた。例えば Panda Village で開催さ

れていたカワウソの Trainer's Talk では,トレ

[参考文献]

Biennial Conference of International Zoo Educators

Association 2013

公 式

Web

ペ ー ジ , http://www.oceanpark.com.hk/ize2014/en/(2014.9.20)

香 港 海 洋 公 園 公 式 Web 英 語 ペ ー ジ , http://www.oceanpark.com.hk/html/en/home/

(2014.9.20)

香 港 海 洋 公 園 學 員 公 式 Web 英 語 ペ ー ジ , http://opahk.oceanpark.com.hk/en/ (2014.9.20)

International Zoos’ and Aquariums’ Educators

Association 公式 Web ページ, http://www.izea.net/(2014.9.20)

Ocean Park Hong Kong:Annual Report 2012- 2013, http://www.oceanpark.com.hk/doc/common/footer/ar/ ophk_ar12-13.pdf (2014.9.20)

Plickers.com, https://www.plickers.com/(2014.9.20)

Themed Entertainment Association:TEA/AECOM 2013

Global Attractions Report,

152

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-J http://www.teaconnect.org/pdf/TEAAECOM2013.pdf

(2014.9.20)

図 8.エクスカーションで訪れた Hong Kong Wetland Park での記念撮影。

153

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-K

第2章 第2節 項目11-K

ICOM-ITC Autumn Training Workshop 参加報告

松尾美佳

国立科学博物館

1.ICOM-ITC と Training Workshop の概要

2014 年 10 月 27 日から 11 月 4 日にかけて

第 3 回 ICOM-ITC Training Workshop が北京で

開催され、筆者は受講生として参加した。本

研修への参加は、日本博物館協会から機会を

与えられ実現したものであるが、研修中に本

研究で開発された学習プログラムについて

の紹介も行ったため、本報告書にて研修内容

含めその報告をする。

ICOM-ITC は ICOM International Training

Centre の略で、2013 年 7 月 1 日に設立され

た。運営・管理は ICOM-China 事務局の置か

れ て い る 故 宮 博 物 院 が 実 施 し て い る 。

ICOM-ITC は特にアジア太平洋地域の新興

国の博物館プロフェッショナルを対象とす

る研修の場を提供することを目的としてお

り、ICOM 事務局の置かれるフランス国外で

唯一の ICOM トレーニング施設である。

ICOM-ITC は 2013 年秋以降、年に2回、春

と秋に研修を実施している。今回は 3 回目で、

中国内外から集った 45 歳以下の参加者全 36

人が参加した。中国国内からの参加者は 16

名、国外からの参加は 20 名で、外国人参加

者は以下の国々から一人ずつ参加していた。

エストニア、キルギスタン、モンゴル、カン

ボジア、エジプト、レバノン、イラン、イン

ド、バングラディッシュ、ネパール、パキス

タン、ドミニカ共和国、コスタリカ、アイル

ランド、ケニア、タンザニア、ザンビア、パ

プアニューギニア、韓国、日本。参加者の所

属する館の種類も規模も様々であり、参加者

のポジションも、館長、キューレーター、リ

サーチャー、エジュケーター等様々であった。

講師陣は、故宮博物院の館長 Shan Jixiang

氏、副館長 Song Jirong 氏を含む 9 名であっ

た。

図1 開会式の様子

図2 紫禁城見学の様子

2.メインテーマと研修内容

今回の研修のメインテーマは、"Learning in

マは “Best Practices in Museum Management in

154

基盤研究(S)知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムの構築

2-(2)-⑪-K a Diversified and Changing World” 、第 2 回の

テ ー マ は

“Museum Collections Make

おける学び」についての視野を広げること、

また、包括的な専門知識を持つことが促され

3.Show and Tell of Best Practice

Programs

最終日の ” Show and Tell of Best Practice

Programs”では、全参加者が各自の勤務先の

館で実際に実施されている学習プログラム

た。

を3分間で簡潔に紹介した。筆者は、「アル

研修は、講義、グループワーク、北京市内

バムディクショナリー」について以下の論点

の博物館訪問による学習プログラム見学

で紹介した。

○単語とその語彙を与えられた参加者が、そ

おり、主に博物館学習プログラムの構成や開

発方法、また informal learning などを中心と

した内容だった。研修中は一貫して参加者同

士の意見や経験についての情報交換が促さ

Beijing Auto Museum, Beijing Museum of

の単語を表現すると思われる写真を博物館

内で自由に撮影し、写真と単語(とその語彙)

をセットに仕上げたものがアルバムディク

ショナリーである。

○作品を仕上げた後は、参加者同士で作品を

鑑賞し合い、作品を作った意図について簡単

Natural History, National Museum of China,

Prince Kings’ Mansion, Shijia Hutong Museum

の全 6 箇所の博物館の中の何れか一カ所を

に発表し、意見交換を行う。

○国立科学博物館で実施したが、必ずしも前

提となる科学知識が必要ではないため科学

好きでない参加者にも好評で、科学博物館へ

興味を持つきっかけの一つを作ることにつ

ながった。

会場からは「アルバムディクショナリー」

に対して Science と Art の融合した学習プロ

グラムであり興味深いとする感想が寄せら

れた。

図3 Linda Sproul 氏による講義の様子

図4 グループワークの様子

図5 筆者による発表の様子

155

156

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Thank you for your participation!

* Your assessment is very important for improving the work of artificial intelligence, which forms the content of this project

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