本文(全82ページ、540kb程度)

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目次

目次

はじめに

1. 実験の進め方とレポート提出

2. 準備段階の心得

3. 実験中の心得

4. 実験室のPC(パソコン)の扱い

5. 実験ノートについて

6. レポートの書き方

一般解説:数値等のデータの扱い

1. 溶液の濃度の表し方

2. 数値の扱い

1.蒸留と数値計算

2.ガスクロマトグラフィー

3.反応速度と活性化エネルギー(その1)

4.反応速度と活性化エネルギー(その2)

5.紫外可視吸収スペクトル

6.電解メッキ

7.起電力・電位差測定

8.電解質の電気伝導度測定

9.シリカゲルの合成

10.結晶水の測定:熱重量分析

レポート作成でひとこと

その1:対数の単位表現について

その2:釜残液組成の計算について

その3:物理量の単位と、他の物理量の依存性について

その4:論理性の有無について

その5:同義反復について p.16

P.31

p.38

p.67

p.82

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は じ め に

重要事項

出席を重視する。正当な理由のない遅刻・欠席ならびにレポートの遅刻、未提

出は成績評価にきわめて大きく影響するので注意してほしい。

1.

 実験の進め方とレポート提出

(1)

班分け、実験の割り当て

 この科目では合計10件の小テーマで実験を行う。1つのテーマを全員で行うことは器具の数量の都

合上困難なので、2ないし3名づつの班に分かれ、ローテーションを組んでそれぞれ指定された実験

をおこなう。ガイダンス時に班分けと、それぞれの班の実験スケジュールをプリントで配布するので

各自よく確認して準備すること。

(2)

実験の開始

・・・・・・・・・

 13:10に実験開始可能な状態 にあること(後述の実験中の心得の(1)参照)。各実験の場所はプリ

ントないしは実験室内の掲示で示してある。当日に補足訂正を行う場合もあるので、補足事項の有無

を確認の後、出欠をとれば実験を開始してよい。

 器具と試薬は原則として実験台上にすでに用意されたものを使用する。それ以外の器具、試薬が必

要な場合は教員もしくは補助員に申し出ること。準備室や棚から勝手に持ち出してはいけない。

(3)

実験の終了:帰宅チェックによる後片付け

 実験終了時には、各実験ごとに用意された「帰宅チェックリスト」に基づいて後片付けの確認を行

・・・・・・・

う。終了チェックリストには点検者の署名欄 があるので、各自が責任をもって点検する。

 基本的に使用した器具はすべて洗浄し、つぎの実験者が直ちに使用できるように配慮する。試薬な

どは使用前の状態に戻しておく。

 実験廃液や洗浄液は、みだりに混合したり、流しに捨てたりしない。原則としてテーマ別に廃液入

れが準備されている。それ以外は実験台近辺の掲示や担当教員の指示に従う。

 紙屑(燃えるゴミ)、ガラス類、金属類はそれぞれ専用の容器に捨てる。

 水道・電気等の点検を忘れないこと。

(4)

実験の終了:終了報告

 実験当日は操作・後片付け・データの整理後、教員に終了報告をしてから帰るものとする。終了報

告では面接に相当する試問を行なう。レポート課題の内、「*は当日課題」として示してある部分は当

日必ず試問される部分である。これ以外にも当日取得、整理すべきデータのチェックなどを行う。

 試問の返答が不充分な場合は終了を認めず残ってもらう。質問の中心は実験の内容を充分理解して

いるかを確認するところにある。充分な返答のためにも予習は必須となる。(3年生の専門実験の例

ではあるが)予習を怠ったために、操作は15時に終了したものの終了報告のokは21時以降になった

前例もかなりある。18:00までに終了報告のokが得られなかった班については、遅刻したものと同 page 2

等に扱う場合がある。終了報告のokを得ないで無断早退した場合も遅刻と同等とみなす。

 終了報告で提示するグラフ類は原則として手書きであること(分析装置等から直接出力された場合

をのぞく)。レポートでのグラフはPC等の出力でもよい。一見すると時代に逆行する方針とも思える

が、グラフ作成の要点を理解する上で重要である。

 単純にテキストの操作を実行するだけなら、極端な場合は小学生でも本実験は可能である。化学系

大学生の行う専門的実験の意味をよく考えてほしい。

(5)

レポート作成:提出期限の厳守

 この実験では10件のテーマで実験を行い、各実験ごとにレポートを提出するものとする(ただし、

実験3と4など一部の実験は2週分をまとめて1通のレポートにする場合もある)。レポートの提出

締切は原則として実験が終わってから1週間後とする。クラスによって作成・提出方法、厳密な締切

時刻が異なるので、それぞれの担当教員の指示にしたがうこと。

 内容は後述の「レポートの書き方」を熟読し、不備のないように心がけること。

 提出場所は原則として応用化学科事務室前のレポート提出箱とする。この箱が出ていない場合、担

当教員に直接渡すこと。事務職員に渡したり、教員のメールボックスに入れた場合は途中紛失や提出

遅れが生ずる可能性があるので注意すること(すべて自己責任と理解してほしい)。

レポートが未提出の場合は、当該実験を欠席扱いとする。レポートの提出遅れも、当該実験へ

の遅刻とカウントする。悪質な遅延は欠席扱いとする。

(6)

レポートの再提出など

 レポート内容に不備があった場合、再提出あるいは3度目の提出を指示することがある。再提出あ

るいは3度目の提出は、教員からの返却後、1週間以内に行うこと。再レポート等が未提出の場合

も、当該実験を欠席扱いとする。3度目の提出でも内容が不備であると、当該実験の評価はほとんど

0点となり、単位取得も困難となりかねない。

 「表紙だけつけて3回出せば済む」、という感覚で取り組まないように心がけてほしい。

2. 準備段階の心得

(1)

充分な予習:実験内容と操作の手順をよく理解しておく。

 実験はややもすると現象のみにとらわれ、操作に終始することになりかねない。それぞれの実験操

作は原理・原則に基づき、目的を持って行われるものであることに心すべきである。実験科目は単に

技術の習得が目的ではなく、実験を通じて原理を学ぶことも目的としている。実験室に入って初めて

テキストを読むような姿勢は言語道断である。

(2)

無理な状態での実験はしない。

 実験に無理は禁物である。学生実験では無理な実験は課していないが、早く終わりたいばかりに、

指示どおりに実験せず、試薬を速く加えるなどの行為は事故の元である。

 また病気で熱がある場合なども同様である。実験に際しては、実験に集中できる肉体・精神両面で

の健康が要求される。社会人であれば健康管理も仕事能力の一部であることは常識である。 page 3

(3)

実験の身支度

 必ず実験衣(白衣や作業衣)を着用する。薬品等による衣服の汚れを防ぎ、肌に密着していないの

で酸・塩基等を多量に浴びた場合にも、直ちに脱ぎ捨てることで災難を逃れることができるからであ

る。なお、袖口は絞っておくのがよい。

 実験室内では、安定して機敏な動作ができ、足を保護できる靴を着用すること。この観点から、ハ

イヒールやサンダルは避けるべきである。化学実験の際には、万一の爆発や劇物の飛沫が眼に入るの

を防止するために必要に応じて保護眼鏡を使用する。また、劇物や高温の器具の取扱いに際しては保

護手袋を着用するのが好ましい。

 長髪は束ねるか、実験帽などで覆っておかないと危険である。

3. 実験中の心得

(1)

実験時間を厳守する。

 出席は開始時刻の13:10ちょうどに取り始める。遅刻して、あわてて実験に取り掛かるのは失敗、

災害のもとである。

 正当な理由のない遅刻、欠席は成績に大きく影響する。無断欠席を3回すると単位取得は実質的に

かなり困難になる。遅刻は原則として2回で欠席1回にカウントする。欠席せざるを得ない事情が生

じたときは、あらかじめ教員に連絡すること。急な用件で当日までに連絡できなかった場合も、後日

なるべく早く連絡すること。

(2)

実験台の清潔・整頓に心がける。

 安全のため、実験台とその周辺の清潔と整頓を常に心掛けなければならない。雑巾は各実験台に用

意してあるので適宜使用すること。実験に必要なもの以外は実験台上に置かないという基本も大切で

ある。それ以外は実験台の引き出し(ロッカーの替わり)に各自別々に入れておく。

(3)

実験中は真面目に行動する

 実験中は落ちついて静粛にすること。集中力を要する操作を実行中の学生が周囲にいることを忘れ

ないように。大声で話したり、通路を走るなどは厳禁である。ふざけたり、手を抜いたり、慌てたり

すると自分の実験の失敗や、重大な事故の原因となる。

(4)

事故が起きた場合の対策を考えながら操作する。

 実験に当って事故を起こさないように心掛けることは大切である。しかし、万一事故が起きた際も

対処法を知っていれば、被害を最小限に止めることができる。事故が起きてから担当教員に教わりに

行くのでは、手遅れになり、被害を大きくすることがある。

(5)

器材・試薬を周到に準備する。

 学生諸君にとって未経験な器具、薬品を扱う状況が多くあるはずである。必要な器具・装置・薬品

等に関する使い方・危険性などの予備知識は、安全面のみならず、信頼性のあるデータを効率よく得

る上でも重要である。

 実験を始める前に器具や薬品を点検し、不足や破損は教員または補助員に申し出て補充する。 page 4

 装置などは実験に入る前に正常に作動するかをチェックする。

 器具は実験の目的に合致した安全なものかどうかを点検する。

 試薬も貼られているラべルを盲信せずに変質や誤表示に注意する。

(6)

実験器具や装置の組立

 使用する器具が適当であるかを確認すること(計器類の測定可能範囲・精度・反応などに使うガラ

ス容器の種類と容量、力のかかる部分の強度、かき混ぜの能力、等)。

 装置全体としての安定性を良くすること。

(7)

実験中は実験台の前を離れないようにする。

 用便などの休憩などは適宜とってよいが、正当な理由なく長時間不在であった場合は遅刻ないし欠

席の扱いをすることがある。特に操作する必要のない場合でも進行状況をよく観察すること。それが

不測の事態に備えることにもなる上、反応の進行状況のチェックすることにもなる。

 実験に失敗したときは直ちに担当教員に報告し、原因を突き止め、事後処置を相談する。

(8)

自分の実験だけでなく、他人の実験にも気を配る。

 実験室は共同で学問・研究を行う場所であるので、一人が自分勝手で無責任なことをすると、他の

実験者が迷惑するだけでなく、事故につながることもある。身勝手・無責任ではないとしても、つい

不注意で他人の実験に気を配らなかったために事故が発生する例もしばしばある。

 例えば、試験管中の溶液を加熱するときは、その口を他人の方に向けてはならない。

 あるいは、火を用いるときは周囲に引火性の溶媒がないかどうかの確認も重要になる。

(9)

怪我の対処

 化学実験では、ガラス管やガラス棒で手を切ることがしばしば起る。教員や補助員にすぐ知らせる

ことは当然であるが、各自の応急処置はさらに重要である。

 小さな切傷については、残ったガラスくずを取り除き、傷の部分を流水で洗った後、ガーゼや絆創

膏を当てておく。出血が激しいときは、ガーゼなどで傷口を押えるか、包帯で圧迫固定して止血す

る。手もとに何もなければ、手で傷口を直接押えて止血してもよい。止血後にガーゼなどを取り除

き、傷を十分におおうガーゼを当て絆創膏あるいは包帯で固定する。大きく口をあけた傷口は応急処

置の後、外科医の縫合処置を受けないと、大きな傷跡を残す。また、小さな切傷でも、関節部・腱・神

経をけがした場合には外科医の治療を受けないと機能障害を起す。局所圧迫でも止まらない大出血は

傷より上部の動脈を圧迫する。傷口をガーゼなどで押さえながら、同時に指で動脈を圧迫するとさら

に効果的である。手足が切断されたり、止血しながら長時間はこんだりしなければならないときは、

傷口にガーゼを強く当て、さらに止血帯を使って止血する。

4.実験室のPC(パソコン)の扱い

 実験室には平成19年9月現在で6台のPC(Windows XP)が用意してあり、実験中は学生が自由に

利用できるようになっている。しかし、1クラスにたった6台、であることを意識してほしい。 page 5

(1)

許可・指示のない限り、実験室PCには個人のファイルを保存しない。一時的に保存した場合

も、帰宅時には消去しておくこと。必要なら各自でUSBメモリやフロッピーなどを用意して保存す

るようにする。

(2)

教員/補助員の許可・指示なく実験室PCの設定を変更しない。またプログラム類の無断インス

トールは厳禁とする。

(3)

多数の学生、班で共有していることを意識し、PCを占有する時間を極力短くする。スクリーン

セイバーが作動するまで放置していた場合は、他の人間が使い初めても文句を言わないこと。PC

の前を離れる際にはファイルをすべて閉じておくこと。

(4)

この実験では、終了報告で提示するグラフ類は原則手書きであることを求めている。PCでのグ

ラフ作成はあくまでレポート提出用(つまり、後日他のPCでもできる)ないし、手書きのグラフ

に対する補助的なものと考えよ。

※この数年、実験結果の整理の際にPCの前で「あーでもない、こーでもない」と長時間居座った学

生が多かった。その多くは、さっさと手書きでグラフ作成すればいいものを、PCに張り付いて時

間を無駄にしていた。「グラフはPCで作らなければいけない。」という誤った先入観を持った

「PC依存症」ともいえる。これは前述のとおり(占有時間が長くなり)他人の迷惑である。しか

も結局、授業時間内にPCを使いこなせず、終了報告できなかった場合も少なくない。

 学生実験のグラフ作成がPCで可能になったのはこの10年ほどのことであり、それ以前は必ず手

書きであった。この時代にグラフ作成の訓練を受けた人間はPCを使っても適切なグラフ作成がで

きる。逆に(筆者の持論であるが)、手書きできちんとグラフ作成できない人間はPCを使っても

まともにグラフ作成できない。また、「PCから出力されたグラフなら立派なグラフである」と誤

解している学生も多い。

 学生実験は「訓練」のための実験であり、各自がグラフ用紙に手書きグラフを作成することで、

むしろグラフ作成に対する理解を深めてほしい。

5. 実験ノートについて

 実験に際しては各自が実験ノートを準備すること。ノートの使い方は各自に任せるが、実験当日まで

に分担、計画を整理しておくことは必須である。また実験記録においては、左側に整理した記録、右側

にメモなど気のついた事柄などを記録するという使い方がよく行われている。

 実験ノートは必要に応じて教員が点検したり、提出を指示することがある。

 字の上手、下手は別として、他人が見て内容が理解できる程度に記述すること。特に数値には、単位

や意味を添えておかないとわからなくなりやすい。実験では「明日の自分は他人」と心得てほしい。

 実験結果は単に測定値にとどまらず、実験中の観察事実はすべて記録することが望ましい。操作の時

点で無関係と思っても、あとの考察において重要な意味を持つことがあるからである。

 実験中や実験結果の整理において用いた計算もすべてノートの余白に書く。測定された値はありのま

ま記し、消さないようにする。これらは結果に疑問を生じた時の助けになる。

 油性のボールペンを使用するのがよい。水性ペンは水でにじむためよくない。 page 6

6. レポートの書き方

(1)

鉛筆ではなく黒のペンまたは油性ボールペンを用い、手書きで書くこと。ワープロ書きは、提出者が

本当に書いたものかが判定できないので不可とする。ただし、測定装置からのプリントアウト、コ

ンピュータからの数値出力などはそのまま、あるいはコピーして貼付してもよい。

(2) A4

レポート用紙を縦に置いて記述すること(すなわちふつうの書き方)。

左端を2∼3カ所、ホチキス等で綴じるので左から2∼3cm程度あけて使用すること。

表紙は配布されるもの(ないしはそのコピー)を使用すること。

(3)

内容は、目的、理論(解説、反応式)、使用薬品(名称、濃度、構造式または化学式)、操作、結

果、考察、結論、課題、引用リストなどの各項に分けて書く。また、首尾一貫した正しい日本語で

記述すること。日本人が読めばかろうじて意味が推測できる、という文章ではいけない。

解説など単なるテキストの丸写しでページを稼ごうとする姿勢はむしろ減点対象である。

(4)

目的は、実験の背景を理論的に示し、実験の目的を自分なりに約10行以内で明確に記す。

(5)

実験操作は自分らの行った実験操作を過去形文章で書く。箇条書きではいけないが、冗長にならない

よう簡潔な表現に心がける。装置の取り扱いなどは「テキスト○○ページの記載にしたが

い・・・」という形の表現を用いてもよい。

(6)

結果の項では観察した現象、実測値、計算値などについて、導き出された過程を記し、何を意味する

か明確にさせて書くこと。図表、グラフを有効に使うことが好ましい。(自分が何とか理解でき

る、というレベルではなく、他人が読んでわかりやすいことが重要である)

(7)

考察は各自、独自性を持ったものでなければならない。考察は、実験結果に対する理論的な検討を書

く。必要に応じて参考書、辞典、ハンドブックなどで調べることが望ましいが、実験と無関係な記

・・

述をテキストや参考書類から丸写しにしている場合は厳しく減点する。考察 は、推測、反省、感想

にならないように注意すること。

(8)

レポート課題などで明らかに他人のレポートを写している場合も厳しく減点する。この場合、オリジ

ナルとコピーの区別が付かないので、写させた側のレポートも同様に減点される。

(9)

結論の項では、結果と考察で得られた主な事項を箇条書きにする。

(10)

参考書類は、著者(訳者)、書名、ページ、発行所、年代などを明記する。このため図書館などで

参考書類をコピーする際には、巻頭や巻末でこれらの情報が記載されたページもコピーしておくと

よい。 page 7

一般解説:数値等のデータの扱い

1.溶液の濃度の表し方

 化学の世界では溶液を扱うことが多く、定量的議論では溶液の中に溶質がどれだけ存在するか、厳密

な表現とその理解が不可欠である。

(1)

パーセント濃度(重量パーセント濃度wt%、質量パーセント濃度mass%)

 溶液(溶媒 + 溶質)100g中に含まれる溶質のグラム数で表す。記号wt%で示されるが、単に%と

した場合はwt%のことである。近年「重量」ではなく、物理的に正しい表現で「質量」と表現する

ように改められつつある。

⑵ モル濃度(M:molarity、mol/ℓ)

 溶液1リットル中に含まれる溶質の物質量(モル数)を表したものである。大文字の略号Mで示

される。分子量

Zの物質のwgを溶かしてV ㎖の溶液にしたとき、その溶液のモル濃度Cは次の式に

よって計算される。

C

w

¥

1000

Z V

(mol/ℓ)

(3)

規定度ないし規定濃度(N:normality、g当量/ℓ)

 溶液1リットル中に含まれる溶質のg当量(グラム当量)を表したものであり、大文字のNで示さ

れる。近年文部科学省の指導により、日本の高等学校では特に教えなくなってしまった単位であ

る。しかし国内、国外を問わず、すでに広く普及しており、大学で自然科学を学ぶ上では避けて通

り得ない知識である。

 ここで登場する「g当量」は、どんな反応を考えるかによって定義が様々である。

  酸塩基反応では、1モルの水素を授受する酸ないし塩基の量を1g当量という。

  酸化還元反応では、1モルの電子を授受する酸化剤ないしは還元剤の量を1g当量という。

この他、沈殿滴定の反応、キレート反応などでも1モル分の何かと反応する薬品の量として1g当量

が定義されている。

 ここで大事なことは、同じ反応試剤でも、どんな反応を考えるかによってg当量数の計算が異なる

点である。例えば過マンガン酸カリウムKMnO4は、酸塩基反応では1モルで1g当量である。しかし

酸性条件での酸化還元反応では5電子酸化剤としてはたらくので、1モルで5g当量である。同じく

塩基性条件下では3電子酸化剤なので、1モルで3g当量である。

 このように規定濃度を扱う場合は、どのような試剤をどのような条件で使うか、すなわちどのよ

うな化学反応を想定しているかをはっきり把握しておく必要がある。

(4)

質量モル濃度(mol/㎏溶媒)

・・

溶媒

1

㎏中に含まれる溶質のモル数で表す。溶液1㎏中、という定義ではないことに注意。分子量Z

の物質wgを密度dg/㎖の溶媒V㎖に溶かしたとき、その溶液の質量モル濃度Cwは次の式によって計

算される。 page 8

Cw =

w

¥

1000

Z Vd

(mol/kg溶媒)

(5)

百万分率(ppm:parts per million)

 環境汚染物質の濃度としてよく耳にする単位であるが、「カドミウムの濃度が1.5ppmの水溶液」

と言われて、すぐに意味を答えられる学生も少ない。

 このように水溶液についてppm単位を使う場合、これは重量(質量)百万分率である。水溶液

100

万g中に何gの溶質が存在するかを示している。前の例で言えば、水溶液100万gに1.5gのカドミ

ウムが含まれていることを示す。

 では水溶液に対してppmが常に重量百万分率として使われているかというと、若干事情が異な

る。実際には、ppm ≒ mg/ℓ として使われるケースが多い。水の密度は1.0g/㎖にかなり近いの

で、1リットル(=1000㎖)はおよそ100万mg(=1000g)である。したがってその中に何mgの溶

質があるかを表すmg/ℓという単位は、ppmと同じであるという考え方に基づいている。

 この考え方にはいくぶん注意しなくてはならない点がある。溶質の種類や濃度によっては溶液の

密度が1.0g/㎖から大きくずれるため、

  [水溶液1リットル] ≠ [水溶液100万mg]

となってしまうからである。このような場合は、濃度をmg/ℓ単位で示すか、ppm単位で示すかに

よって数値が異なってくるので注意してほしい。

2.数値の扱い

(1)

収率(yield)

 合成反応では、原料から生成物がどの程度得られたかを示すために、収率という数値を用いる。

これは原料物質から反応式の係数にしたがって生成するはずの目的化合物の量(理論収量)と、実

際に得られた量(収量)の比をパーセントで表したものである。

 すなわち、 収率(%)=(収量/理論収量)×100 となる

 収率計算に際しては、過剰に用いた物質を基準に選んではならない。また、まず係数にしたがっ

て計算することを忘れては行けない。例えば二量化反応 2A → A

2

 では、1モルのAから0.5モ

ルのA

2

が生成するのが収率100%の状態である。

⑵単位(単位を考えない学生が多い!!)

 化学、物理学をはじめとする自然科学の分野では、数値は一般に現実世界で意味を持つ物理量で

あり、通常は単位をともなう。むしろ、単位の付いていない場合の方がまれであるといってよい。

 単位は適当につけるものではなく、その数値がどのように定義されているか、どのようにして算

出されているかによって一義的に定まるものである。単位を調べるということは、参考書で単位の

みを調べることではなく、その数値の定義方法、算出方法を調べることである。

⑶有効数字、有効桁の正しい表現

 化学や物理学で取り扱う数値は、測定機器の精度に適した有効数字の桁数で表現されなければな

らない。また、これらの数値を用いて計算を行えば、その精密さ(有効数字の桁数)によって計算 page 9

結果もある限られた精密さしかもたない。

 有効数字で示された数値のすべての数字のうち、不確実さをもつのは最後の桁のただ1つの数字だ

けに限る。通常数値の最後の1桁の数字はおよそ±1∼2の不確実さをもっと考えてよい。これより

大きい桁数で不確実さを持つことを示したい場合は、8.05±0.15のように「±」の記号で誤差範囲

を明示するのがよい。

 例えば、最小目盛りが0.1㎖のビュレットでは、滴定量は目測で目盛の間を読み、21.04㎖のよう

に読み取る。この4個の数字2,1,0,4のすべてが有効数字であり、有効数字は4桁であるという。最後

の数字4は目測であるので、不確実ではあるが、意味のある数字として省くことができない。この場

合のように1∼9の数にはさまれている0もまた有効数字となる。ただし、位どりを示すだけに用いら

れた場合の0は、有効数字ではない。たとえば0.00801は下3桁8,0,1だけが有効数字であり、位どり

を示す上3桁の0,0,0は有効数字ではない(0.00801=8.01×10

-3

と書けばよくわかる)。ビュレット

の読みがちょうど21㎖の線と一致しているように見えるときでも、0.1㎖の目盛のものであれば、

21.00

㎖と記録して測定の精密さを有効数字により明確に示さなければならない。この場合、有効数

字は2,1,0,0であり、有効桁数は4桁である。21㎖と書けば、1の数字がすでに不確実である、すなわ

ち21±1㎖であることを意味する。

 有効数字をはっきり示すには、8.01×10

-3

のように指数表記を用いるのがよい。

(4)

絶対誤差と相対誤差、測定精度

 例として、一辺が非常に長い長方形の二辺を測って面積を求める場合を考える。短い辺は普通の

定規で3.64cmと測り、長い辺は最小目盛が10cmの巻尺で5624cmと測定されたとする。

 それぞれ最小桁が目分量であることを考えると、前者の測定は小数点以下2桁まであり、絶対誤差

は0.01cm程度である。後者では絶対誤差1cm程度であるから、一見すると前者がはるかに精密な測

定にも思える(絶対誤差が小さい)。

 しかしここで相対的不確かさを考えてみる。前者の末尾の「4」は目分量であり、真の値をLsとす

ると 3.63<Ls<3.65cmである。したがってその相対的不確かさ(相対誤差)は約1/360である。

後者も同様に考えると相対誤差は約1/5600となる。すなわち後者の方が相対的に確かな値である。

 測定値の正確さを考えるときは、絶対誤差と相対誤差をきちんと区別する必要がある。一般に相

対誤差を(測定)精度と表現する。

(5)

数値の丸め方

 数値を丸めるときは、通常は四捨五入による。数値は計算途中で丸めずに、最終結果において一

度だけ丸める。途中で丸め続けると、丸めたことによる誤差(丸め誤差)が数多く積算され、計算

過程が長い場合には最終結果で大きな差となる場合がある。

 連続する計算途中で桁数が増し計算が複雑になるときには、有効数字より2桁多く残しその後を切

り捨てるとよい。ここで切り捨ててしまうのは、1つの数値を下位から順に繰り返し丸めるといった

誤りを防ぐためである。たとえば4.949321を一度で2桁に丸めれば4.9であるが、いったん4.950と

2

桁多く丸めておき、のちにそのことを忘れて、2桁に5.0と丸めるということをしないためである。

 計算に用いられる気体定数、アボガドロ定数などの定数は、もっとも有効桁数の少ない数値の桁

数よりも2桁多くとり、その後の数値は切り捨てて用いる。

 実験の回数、百分率を求めるための100、原子価を示す数などには有効数字を考えなくてよい。 page 10

(6)

数値の計算と有効桁

 実験では生データの数値をそのまま解釈できたり、報告して話が通じることはすくない。何らか

の計算処理をして別の形にして報告するケースがほとんどである。その際、生データの誤差が計算

結果に及ぼす影響を正しく評価する必要がある。以下に例をあげて説明するが、要は計算の元にな

る数値(生データ)に意図的にズレ(誤差)を入れて計算を行い、最終結果がどの程度ずれるかを

見積もればよい。

「加減法」では計算に用いるすべての数値のうち、最大の絶対誤差が含まれる位(くらい)を見極

め、それが計算結果のどの位(くらい)にあるかを考える。

例 x=10.13 [g] + 9.368 [g] + 0.1011 [g]を求めてみる。

  それぞれの数値の最後の数字が±1の不確実さをもつとすれば。

  x=(10.13±0.01) [g] + (9.368±0.001) [g] + (0.1011±0.0001) [g]

  =19.5991±0.0111 [g]

となり、19.5991の小数点以下2桁目がすでに不確実であることがわかる。したがって結果は、小数

点以下2桁に丸め19.60gとするのが適切である。機械的に19.5991gと示すのはむしろ誤りである。

この結果はもともと、10.13という数値が小数点以下第2位までしか有効数字でないことに起因して

いる。

「乗除法」では計算に用いるすべての数値のうちで、最大の相対誤差と計算結果の相対誤差が同等

でなければならない

例 x=10.843×3.69×0.7326を求めてみる。

  それぞれの数値の最後の桁の数字が±1の誤差をもつとすれば、相対誤差はそれぞれ

  1/10843、1/369、1/7326 で 1/369が最大である。

機械的に計算すれば、x=29.3118…となるが、相対誤差が1/369にもっとも近づくように、数値を3

桁に四捨五入してx=29.3(有効桁数3桁)として報告するのが適切である。この結果はもともと、

3.69

という数値が有効桁数3桁しかないことに起因している。

「対数関数」ならびに「指数関数」の有効数字は多少複雑なので、次の例のように有効数字の検討

を個々に行うとよい。

例 x=1og328を求めてみる。

真数が(328±1)の範囲にあるとすると、xは 1og329 ≧ x ≧ 1og327 の範囲であるか

ら、2.51719 ≧ x ≧ 2.51454 となる。結果より小数点以下3位に変動があるので、log328

= 2.51587

…の小数点以下3位までが有効と考え、x=2.516と報告するのが適切である。

例 

x

=

10

を求めてみる。

指数が(2.516±0.001)の範囲にあるとすると、xは

10

≧x≧

10

2 515 .

の範囲にあるから

328.851

… ≧ x ≧ 327.340… となる。一の位に変動があるので、x=3.28×10

(有効数

字3桁)と報告するのが適切である。

  page 11

(7)

データのグラフ化

 実験では2つの物理量の関係を調べて一連のデータが得ることが多い。二つの物理量の間にある

種の理論的関係が予想される場合、その予想の妥当性の検証ならびに定数等の決定を行う目的でグ

ラフを作成する。 単純に2つ物理量をグラフ化しても曲線となる場合が多いが、その曲線の形か

らある種の関数関係が予測され、座標軸の取り方を変えると直線化できることが多い。

 このようにグラフ化して直線が得られれば、その関係式から傾きaと切片bという二つの定数を求

めることができ、さらにこれらから物理定数の算出が出来る。

 以下に直線化する際の縦軸・横軸の取り方の例をいくつか示す。

関係式 y=ax+b xy=a

y

=

ax y

=

ae b bx y

=

ae b x y

=

Ë

Ê

1

abx

+

ax

¯

ˆ

直線化した式 y=ax+b y=a(1/x) ln

y

=

b

ln

x

+ ln

a

ln ln

y

=

bx

+ ln

a y

=

b x y

= ÊË

1

b

ˆ

( )

+

Ë

Ê ln

1

ab

¯

ˆ

a

縦軸 y y ln y ln y ln y

x y

横軸 x

1/ x ln x x

1/ x x

(8)

グラフの描き方

 自然科学の数値を扱う実験でグラフ化は必ず身につけなければならない技術の一つである。以下

にレポート用のグラフの様式を示す。

注1

8

質量

注4

6

注2

4

注3

2

注7

0

0 1 2 3

体積/cm3

図1:化合物Aの密度の測定(20℃)

   体積と測定重量の関係

4

注5

注6

5

注1 グラフは四角形の枠線を引き、上下左右に目盛を入れておくと見やすい。

注2 プロット点を単純な点(・)などで示すと、どこにプロット点があるのか不明確となる

のでよくない。円形(○)、四角形(□)などで示すべきである。これらの大きさは厳

密には誤差範囲を示すが、一般には位置が判別しやすいように用いる。

注3 目盛は必ず入れる。グラフ用紙の薄い線はコピーなどをすると消えてしまう。 page 12

目盛は内側へ2∼3㎜の長さで入れる。

注4 この例のように1種類しかデータがない場合は省略してもよいが、複数のデータがある

場合は必ず凡例を加える。

注5 単位は( )の中に記すか、物理量/単位のように分数の形で示す。

対数の場合、log(物理量/単位)のように表すとよい。

注6 図の題目は下に書く。※表の題目は上に書く。

注7 文字の向きにも注意する。

(9)

平均値と標準偏差

ある量を一定の条件で測定して得られる値が、いつも完全に同一の値になるとは限らない。このよ

うなときに平均値が利用される。平均値のもっとも普通のものは算術平均

x

である。

L

x n

算術平均値 

x

記号を用いてあらわせば

x

1

x

2

x

3

n x

= Ê

ËÁ

i n

Â

=

1

x i

¯˜

ˆ

n

以下、

n

Â

i

=

1

の加算範囲は「i=1からnまで」で共通なので、単に

Â

と省略表記する。

算術平均

x

とそれぞれの値

x i

との差 d

i

を偏差(deviation)という。 d

i

= -

x

d

i

2

をi=1からnまで加算したものを偏差平方和Sという。

S

=

 d

i

2

=

Â

(

x i

-

x

)

2

さらにこれらを用いて、不偏分散

s

2

(unbiased variance)、標準偏差

s

(standard deviation)が

定義される。

  不偏分散

s

2

  標準偏差

s s

2

=

n

S

-

1

=

Â

(

n x i

-

x

-

1

)

2

s

=

n

S

-

1

=

Â

(

n x i

-

x

-

1

)

2

式から明らかなように、それぞれの値

x i

が算術平均

x

に近い値をとっていれば、標準偏差

s

が小さく

なる。標準偏差

s

は多数の数値データのばらつきを示す一つの指標である。

(10)

最小2乗法

ある数値xと関連した数値yとの関係を調べるとき、両者の関係が直線上に完全にのることはきわめ

てまれである。xとyとの関係がすべての測定点で直線上にあれば

y ax b

(10-1)

の関係式の係数aと切片bが容易に定まるが、そういうことはめずらしい。

実験データ

(

,

i i

)

がn組あるとき、i番目のデータに対し、差 e

i

を次のように定義する。 page 13

e

i

=

ax i

+ -

y i

数値xと数値yの関係が(10-1)式で正しければ(10-2)式 i e

i

はすべて0になるはずである。最小2乗法は e

i

の2乗の和

S

((10-3)式)ができるだけ小さくなるように係数aと切片bを決める方法である。

S

= e

i

2

(

ax i

+ -

y i

)

2

(10-3)

(10-3)

式を展開すると、

さらに

S

=

Â

(

2

a x i

2

S

=

a

2

Â

x i

2

+

nb

2

+

b

Â

2

y

2

2

abx i

-

2

by i

-

2

ax y

)

y i

2

+

2

ab

Â

x i

-

2

b

Â

y i

-

2

a

Â

x y i

S

が最小になる条件は以下の(10-6)、(10-7)式である。

Ë

Ê

S a

ˆ

¯ =

2

a

Â

x i

2

+

2

b

Â

x i

-

2

Â

x y i

=

0

Ë

Ê

S b

ˆ

¯ =

2

nb

+

2

a

Â

x i

-

2

Â

y i

=

0

(10-4)

(10-5)

(10-6)

(10-7)

(10-6)

、(10-7)式をa,bについて解く。

a

=

n

Â

n

Â

x y i i x i

2

-

-

 Â

( )

2

y i b

=

2

x y i i n

Â

x i

2

-

Â

x x y i i i

( )

i

2

(10-8)

(10-9)

このようにして係数aと切片bが得られる。

実際の作業で

Â

x i

などを手計算ですべて算出するのは困難であり、計算ミスを生じやすい。コン

ピュータの表計算ソフトなどを駆使するのが、パソコンに習熟するという観点からも望ましい。

例:温度と蒸気圧の関係

クロロホルムの蒸気圧P/㎜Hgを温度T/℃を変化させて測定したところ、以下のようになった。

1.0 atm

(=760mmHg)におけるクロロホルムの沸点を最小2乗法により求めたい。

T/

P/

㎜Hg

40

366.4

50

525.8

60

739.5

70

1019

[

解法]

x

=

1

T

y

= ln

P

とおき、両者の関係が

y

= +

の式で表されるものとして、最小2乗法を用いて

係数aと切片bを求める。また、この問題ではデータの数n=4である。 x i

3.195

×10 -3

3.096

×10 -3

3.003

×10 -3

2.915

×10 -3 y i

5.904

6.265

6.606

6.927

x i

2

10.208

×10 -6

9.585

×10 -6

9.018

×10 -6

8.497

×10 -6 x i y i

0.01886

0.01940

0.01984

0.02019

page 14

したがって

Â

x i

=

12 209 10

-

3

Â

x i

2

= -

6

(10-8)

および(10-9)式より

a

=

n

Â

n

Â

x y

= -

.

¥

x i i

2

-

-

3

 Â

( )

i

2

y i

Â

y i

=

25 702

Â

x y i i

= 0 07829

=

( )(

( )

(

.

.

)

-

(

-

6

.

)

-

(

¥

.

-

3

)

(

.

-

)

)

b

=

=

Â

x i

2

Â

Â

y n x i

2

i

-

-

Â

Â

x i x y i

( )

i

Â

2

=

(

.

¥

( )

(

-

6

)

(

.

)

-

6

-

)

-

(

(

.

¥

-

3

-

)

(

)

.

)

したがって   ln

ËÁ

Ê

P mmHg

ˆ

¯˜ = -

¥

3

( )

1

+

  と示される。

この式でP=760[㎜Hg]すなわち1.0atmとおき、Tを求めると、T=334[K]すなわち61℃となる。

参考文献

丸田銓二朗 著、「改稿・化学基礎実験」、三共出版(1986).

朽津耕三 著、日本化学会 編、「化学で使う量の単位と記号」、丸善(2002).

小笠原正明、細川敏幸、米山輝子 著、「化学実験における測定とデータ分析の基本」、東京化学同人

(2004)

. page 15

【レポート作成でひとこと】

その1:対数の単位表現について

自然科学のデータ処理では対数を用いるケースが多い。しかし、表やグラフで対数の単位を表示しない

レポート、表示しなくていいと誤解している学生がかなり目立つ。これはおそらく、以下の考え方の間

違った解釈が原因である。

    「対数をとった場合は、一般に単位が無い(無次元になる)と解釈する。」

確かにこの考えは正しい。しかし、対数を取る前の物理量には単位があり、もとの物理量の単位は明示

されなければならない。

 以下の例で説明する。

気体の圧力を表すには

 atm(気圧) mmHg(水銀柱の高さ) hPa

(ヘクトパスカル、SI単位系)

 psi(pound per sqare inches, 平方インチあたりのポンド数)等、多くの単位が用いられる。

互いの関係を示すと 1.00atm = 760mmHg = 1013hPa である。

この圧力(1気圧)を

P

0

とおいて、

P

0

をatm単位で考えると、

P

0

をmmHg単位で考えると、

P

0

をhPa単位で考えると、

P

0 ln

の自然対数 

( )

=

( )

( )

=

.

 を計算してみる。

である。 ln

( )

= ln

( )

=

.

である。 ln

( )

= ln

(

1013

)

=

.

である。

この例のように

P

0

( )

に単位が無くても、

P

0

の単位によって、対数

の単位を示さなくてよいことにはならない。

( )

の数値がまったく異なるからである。

このような場合に

P

0

の単位はln(

P

0

/単位)の形で示すことが多い。

上の例を用いると以下のようになる。

   ln

Ê

ËÁ

P

0

atm

ˆ

¯˜ = ln

Ê

ËÁ

P

0

mmHg

ˆ

¯˜ = ln

Ê

ËÁ

P

0

hPa

ˆ

¯˜ =

この例では対数を例にして説明したが、関数一般についても単位の表現に注意してほしい。

また講義中に繰り返し述べているが、以下のことを肝に銘じてほしい。

「単位を明示しないでよい数値報告はかなり限られる。

 数値の記載にはいつも単位が伴うと心得ておけばまちがいない。」 page 16

実験1 蒸留と数値計算

【目的】

 研究室および化学工業において重要な操作である蒸留について基本知識を得るため、メタノール/水

の二成分系の蒸留を行なう。結果を単蒸留の理論値と比較し、分縮効果について理解を深める。

【解説その1:レイリー(Rayleigh)の式、単蒸留と精留】

 一定圧力下にある二成分溶液を加熱、沸騰させると、液相よりも低沸点成分に富んだ蒸気が発生す

る。たとえばこの実験のように、メタノール(標準沸点64.6℃)と水(同100℃)の混合溶液を加熱沸

騰させると、液相でのメタノール含有率が30mol%(モル分率で0.3)の場合、1気圧(760mmHg)

では約78℃で沸騰が始まり、気相でのメタノール含有率は66.5mol%(モル分率0.665)となる。この

様子をまとめたものが図1のグラフであり(矢印a-b-c)、相図、沸点図、あるいは気液平衡図などと

呼ばれている。

 発生した蒸気をコンデンサー(冷却管)内に導き完全に凝縮させることにより、原料液より低沸点成

・・・

分の多い凝縮液を得ることが出来る。この操作を単蒸留 という。

 この現象をもう少し数学的に述べてみる。なお、以下に述べるx、yなどの濃度はすべて、低沸点成

・・・・

分(実験ではメタノール)のモル分率 で表現されたものとする。

 いま濃度

x

0

の原液を蒸留釜に仕込み、釜内部の残液濃度が

x

1

になるまで単蒸留を行なったとすれ

ば、物質収支から①式が誘導される(発展課題)。この式は"レイリーの式"として知られている。

Ú

x

0

x

1

dx y

-

x

= ln

1

Ë

1

b

˜

¯

 ・・・①

 ここでxは蒸留釜内部の溶液の濃度、yはその瞬間において冷却管で凝縮する蒸気の濃度である。β

は留出率であり、たとえば100molの混合物を原液として仕込み、30molの混合物が留出すればβは

0.30

である。xとyは蒸留の進行中に絶えず変化し続けていることに注意してほしい。

 完全な単蒸留を仮定できる場合、すなわち装置の保温が完全で蒸気の凝縮が冷却管以外で起こらない

とすれば、yは釜で発生した蒸気の組成そのものであるから、濃度xの溶液と平衡にある蒸気組成と考

えてよい。

 ここで気液平衡が数値的に既知(yがxの関数として分かっている)ならば、①式の左辺はコン

ピュータなどによる数値積分で計算することができ、留出量・留出液濃度などを理論値として予測する

ことが出きる。本実験ではこれらの理論値と、留出量・留出液濃度などの実測値を比較し、レイリー式

が現実系にどの程度適合するかを確かめる。

 一方、装置の保温が不充分であれば冷却管に達する前に凝縮が起き、蒸気の一部は液化して再び蒸留

・・

釜にもどる。これを分縮 という。分縮が起きた場合、冷却管に入る蒸気は釜で発生したときよりも低沸

点成分を多く含んだ状態となる。ただしその組成については分縮の程度が保温状態などの条件に依存す

るため、yをxの関数として一般に表すことはできない。意図的に分縮を起こして特定の成分を効率よ

・・

く分離しようとする操作を精留 という。

 分縮により低沸点成分が多く留出するという現象は、多段階の蒸留と考えても解釈できる。前の例で

・・

述べた66.5mol%のメタノール-水混合液を再び

・・・

単蒸留 にかけると、70℃程度で沸騰が起こり、85mol%

程度のメタノール-水混合物が得られることになる(図1、矢印 d-e-f)。メタノール-水の系ではこの page 17

ように蒸留を繰り返すと、必要な濃度までメタノール濃度を上げることができる。さらに、このような

操作はいちいち留出液を集めて蒸留装置を組み直して行う必要はなく、精留管という器具を蒸留釜と冷

却管の間に入れることで連続的に行うことが出来る(後述の図4参照)。この連続的な多段階の蒸留

は、分縮現象そのものである。

100

液相線

気相線

9 0

8 0 b c e

7 0 a d f

6 0

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

メタノールのモル分率

図1 メタノール-水混合系の1atmにおける気液平衡

【解説その2:数値計算】

 ①式に基づき、蒸留時の留出量と濃度変化の計算が実験室のパソコンを用いて行なえる(計算方法の

詳細は参考書等を参照)。デスクトップ上の「レイリーの計算」をダブルクリックすれば起動する(本

体はRayleigh.exe)。このプログラムでは上記①式に基づき、単蒸留の条件での数値計算が行われる

(分縮が全く起こらないと仮定)。実行結果の例は図2に示す。下線部分が自分で入力する値である。

※言うまでもないとは思うが、このページに示した計算例の値そのもの(253.20g、49.80mol%、

34.30mol%

)を入力するのではなく、各自が実験で得た値を入力すること。

各自が入力する数値

この図の通りではなく、各自

が測定して得た数値を入力す

ること

図3 ピクノメータ

   図2 レイリー式の数値計算結果例 page 18

【解説その3:ピクノメータ(図3参照)】

 本実験では密度と濃度の関係(既知)を利用して、溶液のメタノール濃度(mol%)を求める。すな

わち、溶液の体積と重量をピクノメータというガラス器具で精密に測定し、溶液密度に換算する。さら

にこの密度を既知の計算式に代入してメタノール濃度(mol%)に換算する。以下に使用法を述べる

が、この手法は学生実験のため本来の方法を簡略化したものである。

1)

本体と栓の番号があっていることを確認する。

2)

乾燥したピクノメータ(本体+栓)を0.0001g(=0.1mg)単位まで正確に秤量する。この重量

データは何度か試料を変えても使ってよい。

※このあと、水道水などで後述の4)で述べる栓の差込み操作の練習をしておくとよい。

・・・・・・・

3)

イオン交換水をピクノメータの首より上まで満たし、栓を載せないで 試験温度に保った恒温水槽中

に首まで浸す。10分間保持して試料の温度を安定させるとともに、軽く振って気泡を上昇させ除去

する。※気泡が微妙に残ることがあるが、本実験では時間の都合上無視してよい。

4)

温度が安定したら恒温水槽から取り出し、栓を少しきつめに差し込む。栓の先端から水が飛び出す

ので、人のいない方向に向けて行うこと。栓の上下を間違えないように注意。

5)

栓の取付部や先端からこぼれた余分の水をキムワイプなどで手早く拭い取り、正確に秤量する。

6) 2)

と5)の重量差と、表2に示す水の密度からピクノメータの内容積を正確に算出する。10㎖表示の

ピクノメータの内容積は約10∼15㎖で、個々のピクノメータにより異なるので注意せよ。

  表2 水の密度

温度(℃) 水の密度(g/cm

3 )

20

25

30

0.998207

0.997048

0.995651

7)

密度未知の試料をイオン交換水の際と同様にピクノメータに入れ、温度を安定させて秤量する。

試料を変えて使用する際は共洗いを忘れずに。メタノール濃度の大きい試料(特に本実験では留出

液)では揮発による損失が無視できないこともあるので、栓をしてからは速やかに秤量する。

8) 7)

と2)の重量差を、6)で求めたピクノメータの正確な内容積で割って試料密度を算出する。

使用後は純水でよくすすいで、本体と栓の番号を合わせて返却する。

※ ピクノメータの使用方法に関しては、きわめて基本的な事項を質問する学生が毎年多い。安易に質

問する前に、まず自分でよく考えてほしい。「正確に同じ体積の液体を、何度も繰り返して秤量す

るための器具である」という立場で考えよ。

そしてピクノメータに限らず、「器具の使い方は、使用目的と形状からまず自分で論理的に

考えよ」 page 19

【資料:密度→組成の計算式】

メタノール/水の二成分系では、以下の近似式で密度から組成を算出せよ。

C=aρ 2 +bρ+c

温度/℃ a b

C:溶液のメタノール濃度(mol%)

ρ:溶液の密度(g/cm

3 )

20 376.29

-1156.1

a∼c:係数、右表参照

25 407.90

-1202.2

30 436.20

-1241.8

c

778.63

792.86

803.69

リービッヒ冷却管

 精留管

(図はビグロー型)

水流

100ml

メスシリンダー

スライダックで

70V

に調製

マントルヒータ

ジャッキ

AC

100V

図4 蒸留装置(精留の場合)

ジャッキ

テープヒータ

テープヒータ

はこの部分に

巻き付ける

冷却管から先は

図4と同じ

スライダックで

30

Vにする

AC 100V

図5 蒸留装置(単蒸留、精留操作なしの場合) page 20

【実験操作:図4、図5参照】

・・・

 本実験ではメタノール/水の2成分系の蒸留を、各班が 「単蒸留」と「精留」の計2回実施して相違

を検討する。「単蒸留」では精留管は用いず、リービッヒ冷却管に入る前に試料が凝縮、液化して蒸留

釜に戻ることがないようにテープヒーターで保温を行う。「精留」では精留管を用い、マントルヒー

ター以外の保温加熱をしないで蒸留する。精留管はビグロー(Vigreux)型、スチールウールを詰めた

ヘンペル(Hempel)型の2種類を用意したが、いずれを用いてもよい。

 蒸留装置は単蒸留用と精留用がそれぞれ2台づつ、計4台用意してある。各班は単蒸留、精留のどち

らから始めてもよい。例えば単蒸留から始めた場合、単蒸留の終了後に、精留を先に行った班と場所を

入れ替わって改めて精留の実験を行う。

※ 互いに入れ替わる予定の班どうしできびきび仕事を進めないと、入れ替わるまでの待ち時間が増え

て実験の終了が遅くなる。よく準備して互いに足を引っ張らないように心がけること。

1)

空の蒸留用フラスコと沸石2,3個、受器の100㎖メスシリンダーをそれぞれ秤量する。沸石の秤

量はその重さが無視できる程度かどうか確認できればよい。これらの秤量は0.1g単位でよい。

2)

専用の500㎖メスシリンダーで、用意された蒸留原液(メタノール約30mol%)約300㎖を採取し、

フラスコに入れて秤量する。空のフラスコ重量を差し引いて最初の原液重量を算出しておく。

※この段階で300㎖から少しでもずれたら実験失敗と考え、時間をかけて蒸留原液を採取しよう

 とする学生がいるが、時間の無駄である。正確に測定すべきなのは原液の重量である。

・・・・・

3)

秤量した新しい沸石 をフラスコに入れる。フラスコの首ををきちんとクランプして蒸留装置に取り

付け、冷却管に水を流し蒸留を開始する。マントルヒーターの電圧は精留、単蒸留とも70V程度に

する。単蒸留で用いるテープヒーターの電圧は30V程度とする。

※沸石を入れ忘れた場合は、必ずいったん冷却してから入れること。過熱された状態で沸石を入れ

ると、突然沸騰が始まり、熱い溶液が吹き上げて火傷事故、火災につながる可能性が高い。

※フラスコのクランプは、マントルヒータなしでも装置を安定して保持できるようにすること。あ

とでフラスコを冷却する際の操作ではフラスコが安定して固定されていないと危険である。

4)

沸騰が始まり留出液が出て来たら温度計の指示温度と時刻を記録する(通常の時計で、分単位でよ

い)。以後、5㎖留出するごとに温度計の指示温度を記録する。プラスチックメスシリンダーでは最

初の5㎖部分に目盛りがないので、10㎖以降の記録でよい。1回目の蒸留では蒸留中にピクノメー

タを用いて蒸留原液の密度を測定し、組成を計算する。2回目では原液の密度測定は省略してよ

い。ピクノメータの使用方法は解説その3を参照すること。

5)

留出液が90㎖に達したら時刻を記録の後、通電を止めマントルヒータを下げてフラスコから外して

加熱をやめて放冷する。急ぐときは氷水浴などを用意してフラスコを冷却してもよい。

※装置から外すのはマントルヒータである。フラスコは充分温度が下がるまでを装置から外さない

こと!! 加熱された釜残液が気化、散逸して損失量が多くなり、正確なデータが取れなくなる。

6)

放冷後のフラスコとメスシリンダーを秤量し、釜残液と留出液の重量を算出する。

装置外への気化による損失量も算出する。

7)

ピクノメータで釜残液と留出液の密度を測定し、組成を算出する。

・・・・・・・・・・

棚からビーカーや三角フラスコを適宜使ってよいので、必ず共洗いをしてから 、これらの容器にフ

ラスコから釜残液を移し替える。元のフラスコは洗浄し、2回目の蒸留の準備を進めるとよい。 page 21

留出液を受けた100㎖メスシリンダーも1班に2本用意したので、別のメスシリンダーで2回目の

蒸留の準備を進めるとよい。

8)

コンピュータに実測の原液重量、原液濃度、釜残液濃度を入力し、レイリー式の計算を実施する。

(釜残液濃度の前後5%について1%刻みで計算される)

実験2(ガスクロマトグラフィー)で使用するので、実験2の班に蒸留原液と単蒸留の釜残液を少

量分け与え、これらの液のピクノメータによる組成データも伝える(いずれか1班でよい)。

 加熱開始から留出開始まで約20分かかり、90㎖留出するのにさらに約30分を要する。これらの時間

は気温やマントルヒータの初期温度などで若干変化する。

【後片付け】

・釜残液と留出液は原則として回収用の容器に返却する(次週以降、再利用される)。

イオン交換水ですすいだ際の洗液は流しに捨てること。

※ほとんど水だけの溶液を安易にタンクに返さないこと。

 原液が希釈されすぎて次回の実験に用いることが出来なくなる。

・・・

 また、他班が実験を継続中にもとの タンクに返すと原液の組成が変わるので、全班が蒸留操作を

 終わるまでは回収用のタンクないしびんに保存しておく。

・蒸留装置は、特に大きな汚れがなければ洗浄しなくてよい(分解しないこと)。

・ピクノメータは前述の注意にしたがって洗浄返却する。

【予習課題】

メタノールと水の混合物が75.0gある。メタノール濃度が25.0mol%であったとき、この混合物の物質

量は何molか? メタノールの示性式はCH3OH、水はH2Oである。 (答) 3.48 mol

(参考)原子量 C:12.011、H:1.008、O:15.999 とする。

※予習してきているかどうかはあえて点検しないが、なぜ3.48molになるのか、計算方法がわからない

と当日課題のグラフのプロットができない。

【レポート課題:*印は当日課題】

この部分を当日に読み始めていたり、事前に読んでいても計算式を立ててこなければ、

当日課題をこなすことはほぼ不可能である。

1)*

以下の空欄を埋めよ。さらに精留と単蒸留を比較した場合、釜残液濃度・留出液濃度の大小関係が

予想どおりか説明せよ。(予想は根拠、思考過程を示すこと)

原液濃度/mol%       

精留 単蒸留

釜残液濃度/mol%              

留出液濃度/mol%              

※ この課題に複雑な計算過程を付記するため、提出レポートで計算結果が複数ページにまたがる例

がしばしば見られる。計算過程を明示するのは悪いことではないが、比較すべき数値を一カ所に

まとめないと比較しにくい。計算結果は計算過程とは別にまとめよ。 page 22

2)*

精留・単蒸留両方について、コンピュータによる数値計算結果を留出量(mol)を縦軸、釜残液濃

・・・

度(メタノール濃度、mol%)を横軸とする1つの グラフにプロットすること。

(「一枚のグラフ用紙に」ではなく、軸を共有する「1つのグラフに」である。)

・・・・・・・

また、同じグラフ上に 実測の(留出量/mol、釜残液濃度/mol%)を示す点を、精留・単蒸留とも

にプロットせよ。実測の留出量(モル数)についてはどのように算出したかも明確に述べよ(予習

課題をふまえて、計算方法を示す式を提示するとよい)。

3)* 2)

で作成したグラフでは、実測値のプロット点が計算値からずれるのが普通である。精留・単蒸留

のいずれが計算値とのずれが大きいと予想されるか、理由も交えて述べよ。また実際のずれが大き

いのはどちらか、予想と実験結果が異なる場合はその理由も考察せよ。

・・・・・・

4)*

精留・単蒸留両方について、留出量(㎖)を横軸、蒸気温度(℃)を縦軸として1つのグラフ に実

測値をプロットし、以下の点について説明せよ。

・精留・単蒸留とも、時間とともに徐々に温度が上がるのはなぜか。

・精留・単蒸留で蒸気温度に差があるのはなぜか。

(ただし、これらの傾向が見られなかった場合はその理由を考えて記述せよ)

5)

本実験では留出液を90㎖採取している 。これを45㎖で切り替えて前半と後半の2つに分けて採取し

た場合、メタノール濃度が高いのは前半、後半どちらの留出液か。理由を付けて答えよ。

発展課題(SPACEコースは必修)

6)

蒸留における物質収支を表す微分方程式を立て、そこから解説1で示したレイリーの式(①式)を

誘導せよ。留出率βも(論理的に)導入すること。

参考書 大江修造 著、「蒸留工学 実験室からプラント規模まで」、講談社(1990).

大矢晴彦 著、「分離のサイエンスとテクノロジー」、コロナ社(1998). page 23

実験2 ガスクロマトグラフィー

【目的】

 ガスクロマトグラフィーの基本操作を通じて理論段数、相対モル感度などの概念を修得する。また蒸

留との類似点、相違点を確認する。

【解説その1:ガスクロマトグラフィー、図1参照】

 クロマトグラフィーとは、各種の固体(もしくは液体)を固定相とし、その一端より適当な移動相と

ともに混合物試料を固定相と接触させながら移動させ、各成分の固定相への吸着性、分配係数の差に基

づく移動速度の大小によって各成分を分離する方法である。規模が小さい場合は主に分析目的で行なわ

れるが、規模を大きくすれば各成分を分取することもできる。

 クロマトグラフィーのうち、移動相が気体であるものを特にガスクロマトグラフィーと呼ぶ。ガスク

ロマトグラフィーの装置(ガスクロマトグラフ)は一般に図1に示すような構成となっている。以下ガ

スクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフいずれもGCと略記する。

マイクロシリンジ

ゴム栓

導入口

検出器

カラム

+

− 記録計

恒温槽

図1 ガスクロマトグラフの模式図

 カラムには沸点がかなり高い(400℃以上)油状の液相物質(固定相)を染み込ませた多孔質の粉体

が充填されている。

 適切な温度に設定したカラム中にキャリアガス(本実験ではヘリウム)を流し、カラム入口でキャリ

アガス中に試料を瞬間的に導入すると、試料は気化してキャリアガスとともにカラム中を通過する。こ

のとき充填剤に吸着されやすい物質はゆっくりとカラム中を移動し、逆に吸着されにくい物質は素早く

カラム中を移動する。このような移動速度の差により、混合物が分離されて行く。

 カラムの出口には検出器があり、キャリアガス以外の物質がカラムから出て来た場合、これを電圧変

化として記録計に出力する。

 記録計では記録紙をx軸方向に一定速度で送っており、検出器の出力電圧に比例してy軸方向にペン

が移動する。これにより検出器の出力電圧をy軸、測定時間をx軸にした波形が得られる。これをクロ

マトグラムという。

 GCの心臓部はカラムと検出器である。カラムの充填液相はさまざまな種類のものが市販されてお

り、分析用途に応じて使い分ける。本実験で用いる液相物質は商品名PEG-20M(強極性)とOV-17

(無極性)であり、これを内径2.6mm、全長2mのガラスパイプに充填してある。本実験では液相の極 page 24

性が保持時間に大きく影響することも確認してもらう。すなわち、「水はメタノールに溶けるがヘキサ

ンには溶けない」という考え方と同じで、例えば極性の大きい成分を極性の強いカラムに通すと、充填

剤に吸着(正しくは分配)されやすいためカラム内の移動速度が小さくなる。

【解説その2:クロマトグラム、図2参照】

 クロマトグラムにおいて試料導入からピーク頂点までの時間を保持時間Tr(Retention Time)、試料が

まったく吸着されずに通過するのに必要な時間を死時間T

0

(dead time)

、保持時間から死時間を差し引

いた時間を補正保持時間Tr'という。本実験の条件下では空気(主に窒素と酸素)の保持時間は死時間

と考えてよい。Trは測定条件を一定にすれば物質に固有の値となり、未知物質の保持時間を既知のデー

タと比較すれば定性分析が可能である。

 ピーク頂点の半分の高さでピークを切ったときの幅を半値幅という。

 同一条件下で、同一物質については、(試料量が充分少ない範囲で)ピーク面積は試料量に比例する

ことが知られており、これを用いて各種の定量分析が行なわれる。もっとも単純なピーク面積の算出法

は、半値幅×ピーク高さで近似的に計算する半値幅法である。

 近年は数msec∼数十msecおきにデータをデジタル化して積算する装置(インテグレータ)が一般化

しているが、本実験では教育的目的からインテグレータを使用しない。

※用語の注意 クロマトグラフィー chromatography 分析方法を指す

クロマトグラフ chromatograph

分析装置を指す

クロマトグラム chromatogram

分析波形(図形)を指す

試料導入

空気ピーク

0

死時間

T

0

ピーク高さ

h

補正保持時間

T r

'

= -

T

0

保持時間

T r

図2 クロマトグラム

ピーク幅

w

試料ピーク

1

2

h

時間 page 25

【解説その3:理論段数】

 GCは物質による気液平衡の違いを利用して分離を行なうものであり、蒸留とは類似点が多い。蒸留

では一度気化したものを液化し、これを再び気化させる方法(精留)が一般的であり、このとき気化/

液化を何回繰り返すかを表わす数値として「理論段数」という概念が用いられている。この概念を応用

してGCにおいても理論段数が定義される(ただし、実際にカラム中に段が存在するわけではない)。

 詳しい理論は参考書類にゆずり結論のみ述べると、ある物質の保持時間をTr、ピーク幅をwとすると

理論段数nは(1)式で表現される。本実験ではwを半値幅の2倍で近似する。

n

Tr w

¯

ˆ 2

 ・・・(1)

理論段数nは無次元量であり、算出する場合はTrとwの単位の取り方に注意しなくてはならない。すな

わち、Trとwの単位を、時間(秒や分)ないし距離(mm や cm)でそろえる必要がある。

【解説その4:熱伝導度型検出器、図3参照】

 本実験で用いるGCの検出器は熱伝導度型検出器(TCD)である。これは図3のようにいわゆるホ

イートストンブリッジを組み、4つの抵抗のうち二つの表面にキャリアガスが流れるようにしたもので

ある。2つの流路は独立しており、一方は参照用として試料が流れ込まないようする。ブリッジに電圧

をかけると抵抗が発熱するが、その熱をキャリアガスが奪っていくので抵抗は平衡温度に保たれ、抵抗

値も一定となる。キャリアに試料が混入するとガスの熱伝導率が変化するので抵抗の温度と抵抗値が変

わり、中央のガルバノメータに流れる電流が変化する。これを電圧変化としてレコーダに出力する。

 本実験のGCは2つのカラムが並列で取り付けてあり(ダブルカラム型)、検出器の2つの抵抗には

それぞれのカラムから出たキャリアが流れる仕組みになっている。すなわち一方のカラムを使用する際

に他方のカラムを流れるキャリアは参照用として使用される。

キャリアガス

+ 試料成分

キャリアガス

参照側セル

試料側セル

G

図3 TCD原理図

表1 熱伝導率(400Kでの値)/10-4 J・sec-1・m-1・K-1

物質 熱伝導率 物質 熱伝導率

水素

ヘリウム

アルゴン

窒素

酸素

2212

1795

223.3

325.2

342

二酸化炭素

メタン

エタン

プロパン

244.1

264

484

360

295

物質 熱伝導率

ベンゼン

トルエン

195

240

メタノール

249

エタノール

245 page 26

【解説その5:内部標準法と相対モル感度】

 検出感度は測定条件と試料に依存するが、TCDでは原理から明らかなようにキャリアガスとの熱伝

導率(表1)の差が大きい物質ほど感度は大きくなる。つまり物質によって検出感度は大きく異なる。

 いかなるGCも、キャリアガスと同じ物質は原理上検出できない(感度ゼロである)ことを考えれ

ば、「物質によって検出感度は異なる」ということは容易に理解できる。

 一般にGCでは、条件一定で同一物質についてピーク面積は物質量に比例することが知られている。

しかし上に述べたように検出感度は物質ごとに異なるので、ピーク面積だけから単純に定量計算をする

ことはできない(図4の模式図参照)。GCで定量分析を行う場合は物質による検出感度の差を考慮し

なければならない。以下に内標準法について簡単に説明する。

 あるモル数の基準物質(内部標準物質)をGCで分析した場合のクロマトグラム上のピーク面積を1と

し、同条件下で同モル数の試料物質のピーク面積をその試料物質の相対モル感度という。相対モル感度

を述べるには、測定条件と内部標準物質を明示しなければならない。

 例として、ベンゼンを基準物質としてトルエンの定量を行う場合を考える。

 ある条件でトルエン1μmolのクロマトグラム上のピーク面積が3.45cm

2

であり、同条件でベンゼン

1.5

μmolのピーク面積が4.50cm

2

であったとする。一見するとベンゼンの面積の方が大きいが、これは

ベンゼンのモル数が多いためであり、ベンゼン1μmol分の面積を考えると(4.50÷1.5)=3.00cm

2

ある。したがって同じモル数ならトルエンの方が大きな面積で観測されることになる。この例でベンゼ

ンを基準物質とするトルエンの相対モル感度は(3.45÷3.00)=1.15と算出される。言い換えると、モ

ル比が1:1でも、(この例では)トルエンはベンゼンより1.15倍の高感度で検出されることを意味す

る。

 一般にGCによる定量分析では、未知試料の分析とは別途に内部標準物質と被検試料の含有量(モル

比)が既知の標準サンプルを数種類分析し、モル比対ピーク面積比の検量線を作成しておく(図5)。

相対モル感度はこの検量線の傾きに等しい(ただし原点通過を仮定する)。

 内部標準物質と被検試料のモル数をそれぞれn

,n

とし、内部標準物質と被検試料のピーク面積を

それぞれS

,S

とする。内部標準法とは 

S

2

S

1

n

2

n

1

 の関係を利用したものであり、比例定数

γが相対モル感度である。

2 . 0

ベンゼン

1.5

μmol

トルエン

1

μmol

保持時間

   図4 物質による検出感度の違い(模式図)

    物質によってクロマトグラム上の

    ピーク面積は異なる。

1 . 5

1 . 0

0 . 5

  

0 . 0

0 . 0 0 . 5

モル比

1 . 0 1 . 5

図5 内部標準法の検量線

 モル比、面積比とも

 被検試料/内部標準物質の

 比率で表した。直線は

 原点通過の最少二乗法による。 page 27

 トルエン含有量未知の試料に既知量のベンゼンを添加しガスクロマトグラム上のピーク面積比を計測

すれば、相対モル感度からトルエンの含有量が算出できる。内部標準法は分析に使用する混合試料の絶

対量には原理上影響されないという特徴がある(各成分の比が変わらなければよい)。γを求める際

に、n

,n

を個別に求める必要はなく、その比

n

2

n

1

さえわかればよいからである。分析に使用する

試料量が微量(数μℓ)で正確な注入量、あるいは正確な個別のモル数を把握、設定しにくいGCにお

いて、内部標準法は代表的な定量計算法である。

 この実験では時間の制約上、標準サンプルを1種類のみ(実験1の蒸留原液)とする1点検量線で定

量計算を行う。

【操作】

補助員もしくは教員の指導のもとでクロマトグラムをとる。測定条件は表2参照。

1)

 沸点、官能基と保持時間の関係

試料Aはエタノール(沸点78℃)、1-プロパノール(97℃)、1-ブタノール(117℃)、1-ペンタ

ノール(138℃)を、また試料Bは酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸プロピル(102℃)、酢酸ブチル

(125℃)、酢酸イソアミル(142℃)をいずれもほぼ等体積で混合したものである(混合比は正確

ではない)。それぞれクロマトグラムをとりクロマトグラム(1)、(2)とする。

また感度を上げて5μL程度の空気のクロマトグラム(3)をとる。

ピークの帰属は補助員に問い合わせるか標準データを参照せよ。

2)

 定性分析

実験1(蒸留)からメタノール-水の混合液(メタノール約30mol%)の蒸留原液を分けてもらい、

クロマトグラム(4)をとる。これとは別に水だけのクロマトグラム(5)をとる。

3)

 定量分析

実験1の班から単蒸留の場合の釜残液をもらってクロマトグラム(6)をとる。

実験1の班がピクノメータにより密度から求めた釜残液のメタノール濃度(mol%)も聞いておく。

4)

 カラムの温度、極性の影響

試料AをOV-17のカラムで測定する(クロマトグラム(7))。

また試料AをPEG-20Mで温度を140℃に上げて測定する(クロマトグラム(8))。

表2 測定条件

実験

1)

2)

3)

4)

カラム

PEG-20M

PEG-20M

PEG-20M

OV-17

PEG-20M

温度/℃ クロマトグラム

100

100

100

100

140

(1),(2),(3)

(4),(5)

(6)

(7)

(8)

チャートスピードは10mm/min(変更の場合もある)

感度(attenuation)などは補助員に問い合わせる page 28

※この他の測定条件もクロマトグラムごとに記録をつけること。例えば、測定装置(島津製作所製ガス

クロマトグラフ GC-8A)、検出器の種類(TCD)、検出器電流ないし電圧、カラムの種類(内径と

全長、充填物)、キャリアガスの種類と流量、など

※レポートにクロマトグラムを添付する場合、保持時間がよくわかるようにすること。開始点ならびに

目盛間隔と時間の関係を明示するか、目盛ごとに保持時間を記入すること。

他人が初めて見たときに、保持時間が算出できるようにしておくこと。

【結果の整理】 

予習に基づいてきびきび進めないと時間はすぐになくなる!!

・ クロマトグラム(1)、(2)から試料A,Bの各成分の保持時間Trを計測する。

空気のクロマトグラム(3)から、今回の測定条件下での死時間T

0

を計測する。

Tr−T

0

から試料A,Bの各成分の補正保持時間Tr'を算出する。 log

Tr'を横軸、沸点を縦軸とするグラフを作成し、全8成分の点が一つのグラフに入るようにプロッ

トする。(「一枚のグラフ用紙に」ではなく、「1つのグラフに」である)

・ クロマトグラム(4)、(5)を比較し、クロマトグラム(4)の各ピークの帰属(各ピークがどの成分に対応

するかを定める操作)を行う。蒸留原液はメタノールと水の2成分だけの混合物と仮定してよい。

・ クロマトグラム(4)の各ピークについて、(1)式に基づいて理論段数を算出する。ピーク幅は半値幅の

2倍と近似してよい。

・ クロマトグラム(4)に用いた蒸留原液の組成データを実験1の班からもらう(メタノールは何mol%で

あったか)。蒸留原液はメタノールと水の2成分だけの混合物と仮定し、水/メタノールのモル比を

算出の上、図5に相当する検量線を作成する。

以上から、メタノールを基準物質とした水の相対モル感度を算出する。メタノールの示性式は

CH3OH、水はH2Oである。原子量は C:12.011、H:1.008、O:15.999 とする。

・ クロマトグラム(6)の各ピークの面積と、先に求めた相対モル感度を用いて釜残液の組成を算出する。

つまり、蒸留原液を標準試料、釜残液を未知試料とみなした定量分析の練習を行う。

得られた釜残液のメタノール濃度(mol%)を、実験1の班がピクノメータにより密度から求めた数

値と比較する(多少ずれるのが普通である → レポート課題)。

【予習課題】

 水-メタノールの2成分混合物がある。メタノールの濃度が22.3mol%であるとき、水:メタノールの

モル比はいくらか。 (答 3.48)

 当日、予習してきているかはあえて点検しないが、予習していなければ当日課題は不可能である。

【レポート課題:*は当日課題】

1)*

(操作1)の結果に基づき)logTr'を横軸、沸点を縦軸とするグラフにはどのような傾向が観測され

るか述べよ。現象を科学的に観察、表現する練習である。

2)*

チャートスピードを上げると保持時間はどのように変化するか答えよ。

3)*

クロマトグラム(4)の各ピークに対応する化合物名を理由をつけて答えよ。また各ピークの理論段数

を算出せよ。

※ピークの帰属にメタノールと水の沸点順を主たる根拠とする解答が多々ある。しかしその方法

は、あらかじめ各成分の沸点を知らないと使えない手法であるばかりか、発展課題9)に述べるよう

に根拠として必ずしも正しくない。 page 29

4)*

操作3)に基づき、メタノールを基準物質とした水の相対モル感度を答えよ。

また釜残液の組成を算出せよ。

5)

課題4)で求めた釜残液の組成は、実験1の班がピクノメータにより密度から求めた値とは必ずしも

一致しない。その理由を考察せよ。

※GCは完璧な測定方法か、半値幅法は正しく面積を算出する方法か。またピクノメータによる方

法に問題はないのか。様々な観点から問題点を考察せよ。

6)

操作4)の結果から、クロマトグラム(7)、(8)をクロマトグラム(1)と比較し、その変化を簡潔に説明せ

よ。これは観察した事実を記述する練習である。クロマトグラムを提示して「このようになりまし

た」ではなく、電話で言葉のみで説明するつもりになって適切な言葉(専門用語)で表現せよ。

変化が生じた理由を説明せよ、という課題ではないことにも注意せよ。

※「クロマトグラム(7)と(1)は・・・が異なる。クロマトグラム(8)と(1)は・・・が異なる。」とい

うように、どちらの比較について述べているのか、読み手にはっきりわかる記述を心がけよ。

7)

保持時間は物質に固有である。ではGCにおいて、同一条件下で同じ保持時間を示す二つの物質は

同じ物質と言えるか。理由をつけて答えよ。 

(ヒント 身長は個人に固有 → 身長の同じ人はすべて同一人物?)

発展課題(SPACEコースでは必修)

8)

理論段数は一般に多い方が分離がよいのか、それとも少ない方がよいのか理由をつけて説明せよ。

※Trの異なる二つのピークが観測されるクロマトグラムを想定し、(1)式でそれぞれのTrが一定であ

・・・

ると仮定する。この条件下で、極端に 理論段数が多い、あるいは少ない場合にどのような形のクロ

マトグラムになるか考えてみるとよい。図示して説明するとよい。

9)

GCにおいては保持時間の順と沸点の順が逆転する例も珍しくない。今回の測定結果の中からその

ような具体例を一つあげよ。また、蒸留と異なりこのような現象が起こる理由を説明せよ。(ヒン

ト カラム充填液相の極性)

※この課題で「具体例」をあげるということは、「沸点の順では△→○だが、保持時間の順では○

→△となっている」という形で、具体的に△と○に相当する物質名をあげることである。課題1)の

結果を見て、「保持時間と沸点の順が逆転している組み合わせはない」などと思っているようでは

頭が固すぎる。

10)

天然ガス中の水素の定量を、TCDを検出器とするGCで感度よく行いたい。キャリアガスとしてヘ

リウム、窒素のいずれが適切か。理由をつけて答えよ。(ヒント 表1)

※「ヘリウムは希ガス、窒素は希ガスではなく反応性がある」という理由付けが過去に多々あった

が、GCのキャリアガスとしては、窒素も充分すぎるほど不活性である。実際、窒素はキャリアガ

スとして多用されている。

(参考書) 荒木峻 著、「ガスクロマトグラフィー」第3版、東京化学同人

田中誠之、飯田芳男 著、「機器分析」、裳華房

内海 喩 他著、「分析化学実験」第2版、東京教学社

この他にも機器分析関係の書籍は参考になる。 page 30

【レポート作成でひとこと】

その2:釜残液組成の計算について

釜残液組成の計算について過去にあった根本的な誤解の例を紹介する。

釜残液の組成 メタノール

  水

釜残液のピーク面積 メタノール

  水

=

15.98mol%

100-15.98

=84.02mol%

5.52cm

13.8cm

=

釜残液の組成 

=

  

(

.

)

¥

100

=

.

よって釜残液のメタノール濃度は 15.98mol%

これは15.98mol%から始めて、15.98mol%を出しなおしているだけであることを以下に示す。

釜残液のメタノール濃度をx1(mol%)とする(上の例ではx1=15.98である)。

当然、水は100−x1(mol%)となる。 上の例での「 5.256 」とは、

上の例での

て整理すると

最後の

(

.

x

1

100

+

100

-

)

¥

-

=

x

1

100

x

1

=

.

x

1

- x

1

の計算は

つまり

100

- x

1

100

1

Á

Ë

Ê

100

x

1

-

+

x

Á

Ë

Ê

100

x

1

-

1

˜

ˆ

¯

x

1

ˆ

¯

˜

x

1

を実施したものであり、分子分母にx1をかけ

となる。(これは明らかに水のモル分率である)

の計算は

ËÁ

Ê

1

-

100

-

100

ˆ

¯˜¥

100

100

に相当する。

を実施したものであり、

計算すればわかるように

100 100

+ x

1

つまり x1 に戻しただけである。

 まず最初に、ピクノメータでの測定を元にした釜残液濃度を使って計算を始めていること自体が間違

いである。この実験では釜残液を濃度未知の試料として扱い、GCでの定量計算(内部標準法)を練習

している。最終的に計算結果を比較するまで、ピクノメータでの測定を元にした釜残液濃度は引用する

こと自体がおかしい。

 また、この紹介例の計算手順ではピーク面積が計算にまったく使われていない。面積比「2.5」を算出

したものの、その「2.5」は以降まったく使われていない(無駄になっている)。ピーク面積を使用しな

いのであればそもそもGCで分析する必要がないことになる。

 必要な数値を得るために、計算の意味や論理性を考えないで、四則演算(+、−、×、÷)をやみく

もに組み合わせようとする学生をしばしばみる。(天文学的に低い確率ではあるが)仮に正しい結果に

たどり着いたとしても、計算の「意味」、「論理性」をつかみ取らなくては何も学習したことにならな

い。本人にとって成長するどころかマイナスであることを肝に命じてほしい。 page 31

実験3 反応速度定数と活性化エネルギー(その1)

実験4 反応速度定数と活性化エネルギー(その2)

【目的】

(a)過酸化水素H

2

O

2

がFe

3+

触媒で分解される速さを発生する酸素の体積で追跡し、この反応がH

2

O

2

濃度について一次であることを確かめる。また、この反応の速度定数を計算する。

(b)この分解反応を異なる温度のもとで測定し、それぞれの温度における速度定数から、この反応の

活性化エネルギーを求める。

【解説その1:反応速度式】

 反応

2 2

Æ +

2

O

2

の進行する速さは、一定温度のもとではその時点で溶存している

H

2

O

2

の濃度Cに比例する。すなわちH

2

O

2

の分解される反応速度 v は(1)式で示される。

v

= -

dC

=

dt kC

・・・(1)

dC

に負号(−)をつけるのは、注目しているH

2

O

2

の濃度Cが時間とともに減少するために

dt dC

は負に

dt

なるのに対して、反応速度v 自体は正であると考えるからである。濃度の単位にはmol・ℓ

-1

(略号M)

が多く用いられる。

 (1)式で kは比例定数である。kのことを速度定数(rate constant)といい、kは温度に依存する。

H

2

O

2

の分解反応のように、反応速度が濃度の1乗に比例する反応を一次反応(first-order reaction)とい

う。一般に化学反応において、化学種Aの減少速度がAの濃度のn乗に比例するとき、この反応を「A

についてn次である」という。(1)式を(2)式に変形し、積分すると(3)式となる。

-

dC

=

C kdt

・・・(2)

lnC

= +

a

・・・(3)

(3)

式のaは積分定数である。t =0のときの濃度(初濃度)を

C

0

とすると、(3)式でt =0とおいて

lnC

0

=

a

・・・(4)

したがって(3)式は ln

C

0

C

=

kt

・・・(5)  となる。

(5)

式からもわかるように、一次反応の速度定数 kは[時間]

-1

の次元をもっており、反応の速さに応じ

て、sec

-1

, min

-1

, hr

-1

, day

-1

などの単位が用いられる。

ちなみに二次反応で kの次元は、 [濃度]

-1

[

時間]

-1

となる。

 反応開始から時間 tまでに分解したH

2

O

2

の濃度減少分

(

C

0

-

C

)

の、初濃度

C

0

に対する比は反応の進

行度を表す指標で、反応の「転化率」あるいは「反応率」と呼ばれる。これを xとすると

    

C

0

- =

C

0

C x

  ・・・(6)   変形して  

C

0

1

x

  ・・・(6)' となるので

結局(5)式は    ln

Ë

Ê

1

1

-

x

ˆ

¯ =

kt

  ・・・(7) となる。

すなわち各反応時間 tとそのときの転化率xとを(7)式にあてはめ、左辺の値を縦軸に、それに対応する

時間を横軸にプロットすると、一次反応については原点を通る直線が得られることを示している。また page 32

その直線の傾きが速度定数kとなる。実際の実験では、反応初期に誘導期間(induction period)と呼ば

れる濃度変化の観測できない時間があることもある。

 この反応ではH

2

O

2

の分解量を発生した酸素の体積の測定により追跡する。当初仕込んだ量のH

2

O

2

完全に分解したときに発生する酸素の体積を別途測定しておき、これを

V

0

とする。同じ仕込量で反応を

開始し、各反応時間での酸素発生量

V t

を測定すれば、

V t

V

0

の比

Ë

Ê

V t

V

0

¯

ˆ

がすなわちその時間での転化

率 xを示している。

【解説その2:活性化エネルギー (activation energy)】

 アレニウス(Arrhenius)は速度定数と温度の関係について下の(8)式の関係があることを見出した。

d

ln

k dT

=

E

RT

2

・・・(8) ln k

B

E

RT

・・・(9)

ここで Rは気体定数(gas constant)である。Eは反応に特有の定数で、エネルギーの次元をもってお

り、活性化エネルギー(activation energy)とよばれる。(8)式を積分すると、 Bを積分定数として(9)

式を得る。(9)式より ln k

1

T

は直線関係にあり、この直線の勾配から活性化エネルギーEが求まる。

 たとえばH

2

O

2

の分解反応では、分解により生じた

2

O

2

の系はH

2

O

2

よりもより低いエネル

ギー状態にあり、1molのH

2

O

2

当たりのエネルギーの差 ΔHが、この反応の反応熱となるが、その過程

においてエネルギーの高い活性化状態を経る。この活性化状態の系のエネルギーとH

2

O

2

系のエネル

ギーの差

Eが反応

2 2

Æ +

2

O

2

の活性化エネルギーである(図-1)。(9)式からわかるよ

E

うに ln k

1

T

のプロット(アレニウスプロット)の勾配は

-

を示す。

R

R

=

(

J

)

の値を用いると、求めた値は反応系1mol当たりの

活性化エネルギーとなる。すなわちEは

( )

の単位で求められる。

 実験で行う過酸化水素の分解反応は古くから知られている反応である

H

2

O

2

活性化状態

E

ΔH

が、現在でもその反応機構の詳細は確証されていない。これまでの研究か

ら、触媒がない状態での過酸化水素の分解の活性化エネルギーは、

H

1

2

O +

 O

2

2

190kJ/mol

と報告されている。また、反応用のガラス容器の表面状態や

図-1

溶液のpHが反応速度に大きく影響することが報告されている。

【器具と試薬】

保温水槽

注射器

撹拌子

耐圧ゴム管

マグネチックスターラー

1個

1本

1個

1本

1台

約1.5%過酸化水素水

約0.2mol/l 硫酸鉄(III)アンモニウム溶液

反応容器

石けん膜流量計

温度計

駒込ピペット

メスピペット

ストップウォッチ

1個

1本

0-100

℃ 1本

5

㎖ 1本

10

   ※教員卓から貸出

2本

1個 page 33

A: H2O2水溶液

B:

鉄触媒溶液の入った注射器

C:

D:

マグネチックスターラ

E:

耐圧ゴム管

F:

石けん膜流量計(ビュレット)

G:

ゴム栓

H:

撹拌子

J:

クリップ

F

J

H

A

C

D

B

G

E

図2 反応装置

スプリットタイム・

リセットボタン

スタ−ト・ストップ

ボタン

*

右ボタンでスタート/ストップ

*

左ボタンでスプリットタイムと リセット

1)

スプリットタイムを計る場合、右ボタンで

 スタート。

2)

左ボタンでスプリットタイムを表示。

3)

もう一度左ボタンを押すと計時を再開。

 スタートから現在 までの時間を表示。

4)

左ボタンを繰返し押すとスプリットタイム

 表示と再スタートを繰り返す。

5)

右ボタンを押すと停止。この後、左ボタン

 を押すとリセットされる。

    図3 ストップウオッチ

【一般注意】

・反応容器は1個で繰り返し実験を行う。各実験ごとに内部を純水ですすぎ、一次洗液は専用の廃液入

れに捨てる。二次洗液以降は流しに捨ててよい。その後、ドライヤーないしは乾燥機で充分に乾かし

・・

てから2度目の実験に用いる。急ぐときはアセトンで洗浄してもよいが、アセトンは別の 廃液入れに

・・・・・・・・

捨て、さらにアセトンを完全に乾燥させる こと。アセトンが微量でも残留していると過酸化水素がア

セトンの酸化に消費されるため、気体の酸素はほとんど発生しない。

【操作のスケジュール】

第1週目は表1のRun-1からRun-3、第2週目はRun-4からRun-6を実施する。

ただし、余裕のある班はRun-4を第1週目に実施してもよい。 page 34

表1 実験スケジュール

Run

温度

50

℃付近

室温(20℃)付近

室温(20℃)付近

室温(20℃)付近

30

℃付近

40

℃付近

1.5%H

2

O

2

イオン交換水

溶液量(㎖) 量(㎖) 備考

最終的な体積のみ測定

3

7

5

5

5

5

10

10

12

8

10

10

C

C

0

0

、V

、V

0

0

はRun-1の3/5倍として計算

はRun-1の7/5倍として計算

【操作:第1週目】

1)

過酸化水素からの酸素発生量

V

0

の測定(表1、Run-1)

 保温水槽をマグネチックスターラーの上に置き、温度計を入れる。電気ポットに用意した熱湯と水道

水を適度に混合し、水槽内の水温を約50℃にする。

 反応容器によく拭いた撹拌子を入れ、さらにメスピペットで正確に過酸化水素水5㎖、イオン交換水

を10㎖入れる。反応容器の口にラバーセプタムをつけ保温水槽に入れ、反応容器が倒れないようにスタ

ンドで固定する。

 石けん膜流量計に駒込ピペットで石けん液を数㎖を入れ、石けん膜流量計を倒して流量計の内側を適

度に石けん液で濡らす。ついで膜流量計を垂直に立てて下部のゴムスポイトを数回押して石けん液をゴ

ムスポイトのなかに納める。

 石けん膜流量計の下部のゴムスポイトを押して石けん膜を側管に作る。流量計につないだ耐圧ゴム管

の一方の口から息を静かに吹き込み、流量計の最下部の目盛より少し上に石けん膜を作る。

 保温水槽に入れた反応容器と流量計を耐圧ゴム管で接続する(図-2参照)。マグネチックスターラー

を動かし、10分間静置して、反応容器内の温度が一定になり、石けん膜の動きがなくなるか、一定の範

囲を往復していることを確認し、石けん膜の位置(平均)と保温水槽の水温を記録する。

 注射器に0.2mol/ℓ硫酸鉄(III)アンモニウム溶液(以下、鉄触媒溶液と略す)を2㎖とり、注射器の針

を上に向け注射器内の空気を追い出す。注射針を根本まで反応容器のラバーセプタムに刺し、ストップ

ウオッチの準備をする。

 鉄触媒溶液を反応容器内に一気に注入すると同時にストップウオッチを押し、時間を計り始める。酸

素の発生によって膜の上昇が観察され、およそ10∼15分程度で上昇が停止したところで膜の位置を

読み取る。この時の値から最初の目盛の値と鉄触媒溶液の体積2㎖を引いたものが発生した酸素の体積

であり、前述の

V

0

に対応する。同時に保温水槽の水温を記録する(反応開始前と大きく異なっていない

か確認)。

2)

過酸化水素水の分解速度の測定(表1、Run-2)

 保温水槽の湯を空にし、水道水を入れる。よく洗浄、乾燥した反応容器に撹拌子、過酸化水素水5㎖

とイオン交換水10㎖を入れラバーセプタムを付ける。Run-1と同様に石けん膜流量計に石けん膜を作

り、保温水槽に入れた反応容器と流量計をゴム栓で接続する。マグネチックスターラーを動かして約10

分間静置して、装置内の反応液の温度が一定になるのを待つ。

 10分後、石けん膜の位置と保温水槽の水温を記録し注射器で鉄触媒溶液を2㎖を加える。同時にス

トップウオッチを押して時間を計り始める。

・・・

 酸素が発生し、石けん膜の上昇が観察される。ガスの増加分 が4、6、8、10、12、14、16、18㎖に page 35

相当するときのスプリットタイムを記録する。ストップウオッチの操作は図3参照。

 ガスの増加分が18㎖に達したら測定を終了する。この時の保温水槽の水温を記録し、反応中一定で

あったかを確認する。

・・・

※ 「ガスの増加分 」に、鉄触媒溶液の体積2㎖を加えてしまわないように注意。例えば「ガスの増加分

が4㎖」になるところは、鉄触媒溶液注入前の目盛より6㎖多いところである。

※ 測定中にストップウォッチを止めてしまわないように注意。あくまでスプリットタイム(ラップタ

イム)を記録するように。

3)

初濃度

C

0

の影響の検証(表1、Run-3)

 過酸化水素の初濃度

C

0

を表1にしたがって変更し、反応速度を測定する。ただし、

C

0

( )

が小さ

いRun-3ではガスの増加分がなかなか18㎖に満たない場合もあるので、測定時間が長くかかるようであ

れば(測定間隔が20分以上になるようであれば)途中で測定を断念するとよい。

 時間的に余裕のある班はRun-4も第1週目に行なってよい。

4)

測定値の整理

 Run-1で求めた酸素の発生量

V

0

と、Run-2, 3で求めた酸素の各発生量(4㎖、6㎖,8㎖・・・)から各時

間での転化率 xを算出し(7)式に代入する。 ln 1

1

-

を縦軸に、時間 tを横軸にしたグラフをプロット

する(グラフの描き方を参照し、提出に値するきちんとしたグラフを作ること)。このグラフの勾配か

ら速度定数kを求める。実験当日は目分量で勾配を算出し、レポートでは最小二乗法等で算出する。

Run-3, 4

では

V

0

をRun-1の3/5、7/5に換算するのを忘れずに。

※ これらの実験値を整理する場合、ビュレットの目盛、ガスの増加分、計時した時間(生データとして

は分と秒に分けて)、

x

、 ln 1

1

-

などをわかりやすく表にまとめておくことが重要である。上手

に表にまとめる作業は、公式文書として他人に見せるレポートを作成する上でも重要である。

※ 解説にも示したように何らかの理由で誘導期間が生じ、

( )

対 tのプロットが必ずしも原点を

通るように見えない場合がある。この場合は原点通過を仮定した傾きと、原点を通らない(切片のあ

る)傾きの両方を算出して後の考察に用いるとよい。

【操作:第2週目】

1)

初濃度

C

0

の影響の検証(表1、Run-4)

 第1週目と同様に、過酸化水素の初濃度

C

0

を変更して測定する。

2)

反応温度の影響の検証(表1、Run-5,6)

 保温水槽の水温を30℃および40℃付近にして測定を行う。実際の反応温度は実験前後の保温水槽の水

温を必ず確認し記録すること。

3)

測定値の整理

 第1週と同様にしてそれぞれの測定について速度定数 kを算出する。 page 36

 Run-2,3,4の結果から、初濃度

C

0

を横軸、速度定数 kを縦軸とするグラフをプロットし、速度定数k

が初濃度

C

0

に依存するか検証する。このグラフでは、1.5% H

2

O

2

溶液が正確に1.5%であると仮定し、

横軸の単位を%としてグラフを作成する。鉄触媒溶液の体積2㎖が加わっていることも忘れずに。

 またRun-2,5,6の結果から、

1

T

を横軸、 ln k

を縦軸とするプロット(アレニウスプロット)を行う。

このプロットの勾配から活性化エネルギーEを求める。温度

Tは絶対温度に換算するのを忘れないよう

に。プロットの勾配の単位にも注意すること。

【後片付け】

・鉄イオンを含む溶液は指定の廃液入れに捨てること。流しに捨ててはいけない。

・単に過酸化水素の水溶液であれば、流しに捨てる。

【レポ−ト課題:*印は当日課題、1)∼3)では必ずグラフプロットを提示すること】

1)*

各測定における速度定数

k

を算出して報告せよ。(第1週、第2週でそれぞれ報告)

2)*

初濃度と反応速度定数には本来どのような関係があるか、予想される傾向を述べよ。また実際の

実験結果が予想される傾向を示しているか述べよ。(第2週で報告)

※この課題には毎年迷答・珍答が続出し、「他人のレポートを写したら厳しく減点」に該当する

者が多い。記述した内容の論理性・妥当性を各自がよく考えてレポートを提出するように。

3)*

活性化エネルギーを算出して報告せよ。(第2週で報告)

4)

硫酸鉄(III)アンモニウム触媒により、どれだけ活性化エネルギーが低下したか。

解説その2に示したように、触媒のない場合の活性化エネルギーは190kJ/molとして考えよ。

5) Run-2

∼6について、反応の半減期

t

1

2

をそれぞれの速度定数から求めよ。

発展課題(SPACEコースは必修)

6)

この反応の速度がH

2

O

2

濃度について一次であることはどうすればわかるか。

・・・・・・・・・

今回の実験結果から 判断する方法を述べよ。

7)

8)

反応速度が 

v

= -

dt

=

[ ]

2

  の形で示される反応を「Aについて2次である」と表現す

る。この型の2次反応の速度定数kの具体的な(実験的な)求め方を調べて述べよ。

※必ずしも k=・・・ の数式で示すことが求め方を述べることではない。

より一般的な反応次数の求め方として「初速度法」と呼ばれる方法がある。

この方法による反応次数の求め方を調べて述べよ。

[参考]

文献などによるこの反応の速度定数:

8.9X10

-4

(sec

-1

)at 22℃、2.5X10

-3

(sec

-1

)at 34℃

活性化エネルギ−  68 kJ・mol

-1

(硫酸鉄(III)アンモニウム触媒ありの場合)

[参考書籍など]

P.W. ATKINS

著、千原秀昭・中村亘夫 訳、「アトキンス物理化学(下)」第6版、25. 化学反応速度

(p.829∼).  この他、物理化学系の教科書で反応速度論に関する記述は参考になるはずである。 page 37

【レポート作成でひとこと】

その3:物理量の単位と、他の物理量の依存性について

実験3、4 反応速度定数と活性化エネルギー(その1、2)のレポ−ト課題 2)*、

 「初濃度と速度定数にはどのような関係があるか述べよ。」

に関連して、過去のレポートでは奇妙な記述が広まったので注意を喚起したい。

「奇妙な記述」の多くは以下のような前置きで始まっていた。

「一次反応の速度定数は(時間)-1の次元を持っている。」

「一次反応の速度定数は(時間)-1、(分)-1、(秒)-1などの単位を持っている。」

「二次反応の速度定数は(時間)-1(濃度)-1の次元を持っている。」

「二次反応の速度定数は(秒)-1(mol/L)-1の単位を持っている。」

確かにこの前置きは正しい。問題はこれに続く以下のような記述である。

「一次反応の速度定数は濃度の単位(次元)を持たないので濃度に依存しない。二次反応の速度定

数は濃度の単位(次元)を含んでいるので濃度に依存する。」

この考えを正しいと主張する学生は、以下の設問に対して納得のいく解答を出してほしい。自分の考え

の検証を行う際に、既知の事象に当てはめて矛盾がないかを調べることは、時として簡単で有効な方法

である。(一例でも当てはまらなければ、その考えが間違いであることがすぐわかる)

【設問1】

一次反応も二次反応も速度定数に(温度)の次元ないし単位は含まれていない。

では速度定数は温度に依存しないと考えてよいのか?

【設問2】

理想気体の気体定数Rは8.314J・mol-1・K-1ないしは0.0821atm・L・mol-1・K-1で示される。単位に

物質量(mol)や温度(K)が含まれているのは明らかである。では気体定数Rは物質量や温度に依

存すると考えてよいのか?

(参考その1)

解説で示した(1)式を(3)式に誘導する際に、すでに kをCに依存しない定数という前提で積分しているこ

とを考慮せよ。

v

= -

dC

=

 ・・・(1)   → →  

= +

dt kC

lnC

kt a

 ・・・(3) 

(参考その2)

レポート課題の6)について、「kの求め方」を述べるということは「k=・・・」の形の式を示すことばかり

とは限らない。実際、諸君はこの実験で

k

=

1 1

t

ln

Ê

Ë

1

-

x

¯

ˆ

の形でkを逐一算出して求めたのではないはず

である。(この形の式を利用はしているが) page 38

実験5 紫外可視吸収スペクトル法

【目的】

紫外可視吸収スペクトル法は、着色溶液の色調と呈色の強さを数値的に測定して物質を同定したり、定

量したりする方法である。ここでは硫酸銅、銅(II)-エチレンジアミン錯体、亜鉛(II)の各水溶液の可視・

紫外線吸収スペクトルを測定し、分光分析の原理を理解する。また応用例として真ちゅう(黄銅)中の

銅の含有率を求める。本実験は作業量が多いので手分けして効率よく進めること。

【解説1:分光学の基本、ランバート・べ一ルの法則】

 物質が可視光線(波長約400∼750nm)、紫外線(波長約200∼

400nm

)を吸収する場合、これは化学種の基底状態にある電子が光エネ

ルギーを吸収して励起状態に遷移することによって起こる。その吸収の

強さは波長によって異なり吸収スペクトルは物質に特有のものとなる。

 色のついた溶液を光が透過すると、透過前より光が弱くなる。これは

I

0

厚さb

濃度c

I

溶液中の化学種が光を吸収したからである。物質が光を吸収する量は、

図5-1 光の透過と強度

通過距離と溶液の濃度に関係している。

図5-1に示すように、強度

の単色光が物質層を透過して強度

Iになったとき、吸収の度合いを次のよ

うな物理量で定義する。

透過度 T 

T

=

I

I

0

透過率 T% 

T

%

=

100

T

=

100

¥

I

I

0

吸光度 A 

A

= log

T

= log

I

0

I

 (対数は底が10の常用対数)

吸光度A(Absとも表す。absorbanceの略)は、わざわざ透過度 T(transmittanceの略)の常用対数

をとっている。これは次のランバート・べ一ル(Lambert-Berr)の法則を用いて、光の吸収を定量分析

に適用するのに欠かせないからである。

A k L C

 ランバート・べ一ルの法則

k

:比例定数(吸光係数)  

L

:溶液層の厚さ  

C

:溶液の濃度

ランバート・べ一ルの法則は、溶液の吸光度Aが溶液層の厚さ Lと濃度Cに比例することを示した一般

法則である。 Lの単位にcm、Cの単位にmol/ℓを用いた場合の比例定数kを特にモル吸光係数(ないし

はモル吸光度)といい、通常は記号ε(イプシロン)で表す。したがってランバート・べ一ルの法則は

A

e

L C

 と表現されることが多い。εは1mol/ℓの溶液1cmを透過するときの吸光度に相当

する。

 吸光度分析はランバート・べ一ルの法則の比例関係から濃度を求める方法である。あらかじめ、濃度

既知の溶液の吸光度を測定して検量線を作成し、濃度未知の溶液の吸光度から濃度を求めるのが一般的

である。

 試料は一般に溶液にして測定するので溶媒の種類と濃度が適切でなければならない。また溶媒は試料

をよく溶解し、相互作用がなく、測定波長領域で吸収が小さく、揮発性の低いものが望ましい。

【解説2:色と波長の関係】

 光は電磁波の一種で、波長が400∼750nmのものは肉眼に感じるので「可視光」と呼ばれる。可視光

すべてを適度に含む光線が目に届いた場合、人間はそれを「白色光」として感じる。白色光の中からあ page 39

る特定の波長の光が物質によって選択的に吸収された場合、残りの光が目に届いて人間は「有色であ

る」と感じる。つまり人間が感じているのは吸収されなかった残りの色である。この色を、吸収された

光の色に対して「補色」という。たとえば、ある物質が青色の光を選択的に吸収したとすると、その物

質は青色の補色である黄色に見える。またこの物質に青色の光を照射したときは黒く見える。光の波

長、色、補色の関係を表5-1.に示す。

表5-1. 色と波長の関係

波長領域/nm 色 補色

波長領域/nm 色 補色

∼400

400

∼435

435

∼480

480

∼490

490

∼500

500

∼560

 (紫外)

紫 黄緑

青 黄

緑青 オレンジ

青緑 赤

緑 赤紫

  

560

∼580

580

∼595

595

∼610

610

∼750

750

黄緑

オレンジ 緑青

赤 青緑

 (赤外)

【解説3:配位子と錯体】

 遷移金属イオンの多くはd軌道に空軌道があり、他原子の非共有電子対(Lone Pair)を受け入れて

配位結合(共有結合の一種)を形成していることが多い。このような化合物を錯体(金属錯体)とい

う。硫酸銅(II)や硝酸銅(II)は、水溶液中では硫酸イオン(SO

4

2

)、硝酸イオン(NO

3−

)が解離し、

6個の水分子が酸素原子(O)の非共有電子対で銅に配位した+2価のCu(II)-ヘキサアコ錯体(錯イオ

ン)として存在している。(図5-2の左側)。この錯体は薄い青色で、このままでも吸光度から定量可

能ではあるが、モル吸光係数が小さく妨害物質の影響も受けやすいため、定量結果は信頼性に欠ける。

 ここへエチレンジアミン(NH

2

-CH

2

-CH

2

-NH

2

、略号en)を加えると、配位した6個の水分子のう

ち4個をほぼ完全に置換して青紫色のCu(II)-ビス(エチレンジアミン)錯体を形成する。エチレンジアミ

ンは配位可能な窒素原子(N)が一分子中に2個あるため、通常は二座配位(キレート配位)する(図

5-2

の右側)。この錯体はヘキサアコ錯体と比較してモル吸光係数が大きく、信頼性のある定量が可能

である。このように本実験ではエチレンジアミンを発色剤として用い、Cu(II)イオンの定量分析を行

う。なお、図5-2でCuの上下(apical位)にある水分子2個は容易には置換しない。

※ 配位子の配位によって金属イオンの色が変わる理由については参考書などを参照してほしい(実験

10

の課題にも関連する)。キーワードは電子の遷移、d軌道、配位子場などである。

H

2

O

H

2

O

OH

2

Cu

OH

2

O H

2

O H

2

2+

+ 2 en

H

2

N

N

H

2

OH

2

H

2

N

Cu

N

H

2

OH

2

2+

図5-2 Cu(II)-ヘキサアコ錯体とビスエチレンジアミン錯体

+ 4 H

2

O

 本実験では練習のためエチレンジアミンを発色剤としているが、純粋に金属イオンを定量する目的で

は価格や取り扱いの容易さ、金属の選択性、発色の強さ(モル吸光係数)などを考慮して様々な試薬が

用いられる。(例えばEDTA)

 本実験の試料水溶液で硫酸イオン(SO

4

2

)、硝酸イオン(NO

3−

)は金属錯体部分とは独立して存

在している。これらは可視部に吸収を持たないため色がなく、本実験での定量等にもまったく影響しな

い。(レポート課題のヒント) page 40

【解説4:真ちゅう(真鍮・黄銅・brass)】

 真ちゅうは銅と亜鉛との合金で黄銅とも呼ばれる。黄色で、展性・延性に富むので細線・板・箔とし

て多用される。侵食されにくいことから機械・器具の部品に用いられ、熱溶融時には流動性に富むので

精密な鋳造品にも用いられる。亜鉛分は30∼45wt%で用いられることが多く、その量によって各種の性

質を与え得る。金管楽器の多くは真ちゅう(英語 brass)を素材として作られるため、金管楽器を中心

に編成される楽団を「ブラスバンド」と呼ぶ。(株式会社岩波書店 広辞苑第五版より)

【解説5:吸収セルの使い方】

 吸収セルは、すりガラスの面と透明な面がある。手で持つ時はすりガラスの面を持つこと。セルホル

ダーに収めるときも、透過面に指紋や異物のつかないように注意する。

 試料を入れるときは、まずセルをイオン交換水で洗い、次いで試料溶液で2∼3回共洗いした後、セル

に約6割の高さ(約3mL)まで入れる。吸収セルの外側が濡れたときはキムワイプで拭う。

 試料溶液の投入、共洗いの際は、メスフラスコなどから直接セルに注ぎ込むこと。ピペット、スポイ

・・

トなどを介して入れ

・・・・・・

てはいけない 。よほど注意してピペット、スポイトを共洗いしないと試料濃度その

ままでセルに入らないからである。

【薬品・装置・器具】

共通の箱

硫酸銅(II)・5水和物

試験管と試験管立て

0.1

M エチレンジアミン(略号en)水溶液

0.01

M 塩化亜鉛ZnCl

2

水溶液

真ちゅうサンプル(鳩目、釘、針金、板材など)

班別の箱

100

㎖ビーカー 1個

蒸発皿(ガラス製、平底) 1個

時計皿 1個

標線合わせ用スポイト 1個

ガラスロート 1個

実験台上

ホールピペット 10㎖×1本

        5㎖×1本

        2㎖×1本

25

㎖ビュレット + スタンド 1式

駒込ピペット 2㎖×1本

安全ピペッター 2個

メスフラスコ 100㎖ 2本

メスフラスコ 25㎖ 6本

ピンセット 1個

ピペット台

薬さじ

キムワイプ

ポリ洗びん(イオン交換水)

ドラフト(排気装置のある実験台、実験室北西部分)

ホットプレート 2班で1台 約65% 硝酸 HNO

3

と専用ピペット

トング

共通

電子天秤(最小目盛0.0001g=0.1mg)と薬包紙

分光光度計:日本分光製 UVIDEC-210型は2班で1台)、日本分光製 V-520型は全班で一台

光路長(セル長)1.00cmのガラスセルとホルダーは各分光光度計に備え付けのものを使用

原子量 Cu:63.546、S:32.066、O:15.999、H:1.008

page 41

【操作1:銅(II)-エチレンジアミン錯体溶液の調製】

(1)

:原液(I) 100㎖の調製

硫酸銅(II)・5水和物 1.20∼1.25gを0.0001g(=0.1mg)単位まで正確に秤量し、100㎖ビー力一

中でおよそ50㎖のイオン交換水に溶解する(水が多いとあとで100㎖を越えてしまうので注

意)。この溶液を100㎖メスフラスコに移し、少量のイオン交換水でビーカーを洗浄して、洗液

もメスフラスコに加える。洗液で標線を越えてしまわないように注意する。

次にメスフラスコに標線までイオン交換水を加えて正確に100㎖にする。標線まで加えてからフ

タをしてよく振って全体が均一になるようにする。この溶液を(I)とする。原液(I)の銅イオン濃度

は秤量した硫酸銅の重量から各自が計算すること。

※適宜ロートを用いる。標線あわせは専用のスポイトか、小さいピペットを用いるとよい。

(2)

:試料(a)∼(d)の調製

共洗いを忘れずに、原液(I)を25㎖ビュレットに入れる。このビュレットから4本の25㎖メスフラ

スコにそれぞれ、下の表5-2に示す量で原液(I)を入れる。さらに10㎖ホールピペットで0.1M en

水溶液を正確に10㎖づつ加え、標線の少し下までイオン交換水でおおまかに希釈する。最後に小

さいスポイトでイオン交換水を徐々に標線まで加えて正確に25㎖にする。これらの溶液を順に

(a)

、(b)、(c)、(d)とする。希釈後によく振って濃度を均一にするのを忘れずに。

試料(a)∼(d)の銅イオン濃度も各自が計算して算出すること。添加量が表の値から多少ずれても

構わないが、添加量に基づいて各自が濃度を計算すること。

表5-2 試料(a)∼(d)の調製

 試料の記号

 原液(I)の量/㎖

(a)

1.00

(b)

2.00

(c)

3.00

(d)

5.00

  0.1M en水溶液の添加と標線までの希釈を忘れずに

本来この作業はビュレットではなくメスピペットで行うべきであるが、作業の容易さを考えて

ビュレットを用いることにした。滴定操作ではないのでビュレットの初期位置を0.00㎖にする必

要はない。それぞれの添加の際に、添加量だけではなく、開始目盛と終了目盛を記録するのを忘

れずに。

【操作2:真ちゅう未知試料溶液の調製】 ※保護めがねと手袋を着用!!

用意された真ちゅう試料0.5∼0.7gを0.0001g(=0.1mg)まで正確に秤量し、薬包紙の上に用意してお

く。試料そのものだけではなく、秤量に用いるピンセットなどもよく拭いて用いること。大きな釘や板

材、線材を用いた班は、全体を4片以上の小片に切断し、再度全体を秤量すること。真ちゅう試料は後

述の操作で蒸発皿に入れやすい大きさにする必要がある。

<< 以下はドラフト内で、保護めがねと手袋を着用して作業する >>

2

㎖駒込ピペットを数回使って3∼4㎖の65%硝酸を蒸発皿に入れ、時計

皿でフタをする(図5-3)。時計皿を少し浮かせ、室温のまま真ちゅう

試料を少量(一片)ずつピンセットで入れる。激しい反応が起こるの

で、反応が穏やかになるまでフタをしたまま、次の試料を入れずに観察

時計皿

蒸発皿

図5-3 時計皿と蒸発

皿の組み合わせ方 page 42

する。

真ちゅう試料をすべて入れ終わってから数分で反応はかなり穏やかになる。この時点で、軍手をして

(ないしはトングで)蒸発皿をホットプレートに載せて加熱を開始する(2班で1台)。この実験では

ホットプレートを最大出力の8割程度で使用するが、変更などは適宜問い合わせること。

沸騰が始まり徐々に濃縮が進行するが、水分があまり不足すると温度が上がりすぎ、水に不溶の酸化銅

などが発生する。濃縮中は必ず1名以上が観察を続け、記録を取ること。水分が減りすぎないうちに

ホットプレートからおろして数分間放冷する。加熱停止は、溶液の色が濃い青色から、部分的に緑色

(褐色成分)になったところで行うとよい。水などで急激に冷やすと蒸発皿が割れることがあるので注

意する。

※ 適度な濃縮のタイミングを逸して暗緑色や黒色の固体が析出した場合、あるいは真ちゅう試料が反

応しおわる前に硝酸が揮発してなくなってしまった場合は、蒸発皿をいったんホットプレートから

おろして数分放冷し、再度1∼2㎖程度の65%硝酸を加えて溶解、濃縮を行うとよい。熱いうちに

硝酸を加えると激しく沸騰して危険である

溶解、放冷が終わったら、蒸発皿の中身をイオン交換水で希釈し、すべて100㎖メスフラスコに入れ

る。時計皿の内側に付着した分もすべて洗い込む。その後、イオン交換水で標線まで正確に希釈する。

この溶液を(X0)とする。

共洗いを忘れずに、2㎖ホールピペットで溶液(X0)を正確に2.00㎖採取して25㎖メスフラスコに入れ

る。さらに10㎖ホールピペットで0.1M en水溶液を正確に10㎖加え、イオン交換水で標線まで希釈す

る。この溶液を(X1)とする。希釈後によく振って濃度を均一にするのを忘れずに。

【操作3:亜鉛(II)-エチレンジアミン混合溶液(z)の調製】

用意された約0.01MのZnCl

2

水溶液を、5㎖ホールピペットで25㎖メスフラスコに正確に5㎖入れ

る。あとは(a)∼(d)と同様に0.1M en水溶液を正確に10㎖加え、イオン交換水で標線まで正確に希釈

する。この溶液を(z)とする。(誤って原液(I)を入れないように注意 !!)

【操作4:銅(II)-エチレンジアミン錯体溶液に対するpHの影響】

後述する吸光度測定が終わった後、上記で用意した試料(d)約1㎖を2㎖駒込ピペットで試験管に入

れ、真ちゅうの溶解に用いた65%硝酸を数滴加えて色の変化を観察する。(→ レポート課題)

【操作5:分光光度計UVIDEC-210型による検量線の作成と未知試料の測定】

装置図5-2を参照しながら次の順にしたがって測定する。

① 波長設定つまみで、波長を550nmに設定する。

波長を設定するときはつまみを短波長側から長波長側へ回して設定すること。

(行き過ぎた場合は一度戻して設定し直す)

② フィルタ切換ノブで、フィルタを2(400∼600nm用)に設定する。

③ 試料室のフタをあけ、メーターの指針が0%になるように0%調節つまみで調整する。

※フタをあけると、検出器にシャッターが降りて光が入らない状態になる。これを透過率T%=0

(吸光度A=∞)の状態として設定する作業である。

④ 溶液の入った4種類のガラスセル(イオン交換水と試料溶液(a)、(b)、(c))を、セルホルダーに page 43

セットし、試料室内に置く。一番手前にイオン交換水のセルをセットするとよい。

⑤ セルスライドノブを一杯に押し込み、一番手前のセル(イオン交換水すなわち参照液)が光路に

入るようにする。

⑥ メーターの指針が100%になるように「100%T.ABS 0 ADJ」つまみで調整する。

※光源の強さが波長によって異なるので、測定波長を変更した場合はこの操作を繰り返す。

⑦ セルスライドノブを操作して、試料(a)の入ったセルを光路にセットし、メーターの指針の位置を

読み取る。メーターは、上側が吸光度(ABS)、下側が透過率(%T)であるので両者の値を記

録する。試料(b)、(c)についても同様に波長550nmにおける吸光度と透過率を測定する。

⑧ セルホルダーのイオン交換水以外のサンプルを試料(d)、(z)、(X1)に交換して⑤以降の操作を繰り

返し、試料(d)、(z)、(X1)の波長550nmにおける吸光度と透過率を測定する。

⑨ 試料(a)∼(d)の測定結果から、Cu(II)のモル濃度(mM)を横軸、吸光度(無次元)を縦軸とした

グラフをプロットする。原点通過を仮定して直線(検量線)を引き、未知試料(X1)の吸光度を

Cu(II)

のモル濃度に換算する。本実験で使うセルは光路長1.00cmである。

⑩ 試料(X1)の調製過程をよく考えて、使用した真ちゅう中の銅の含有率(wt%)を算出する。

図5-4 分光光度計装置図(日本分光製UVIDEC-210型)

①セルスライダノブ ②波長設定つまみ

⑤光源ケースロックネジ ⑥光源部

⑨100%T,ABS 0 ADJ ⑩0%調節つまみ

③波長カウンタ

⑦ケース止めネジ

⑪メータ

④POWERスイッチ

⑧フィルタ切換ノブ

⑫試料室

【操作6:分光光度計V−520型による各溶液のスペクトルの測定】

 吸光光度法による定量分析において測定波長は通常、最大吸収波長を用いることが多い。測定物質の

最大吸収波長を知るために、いろいろな波長での吸光度を測定し、波長と吸光度の関係をグラフにす

る。この図を吸収スペクトル(吸収曲線)という。

 以下、装置図5-5、5-6と装置に付随する操作メニュー図などを参照しながら測定する。

 操作を始める前に、ベースライン補正がなされているかどうか、教員ないし補助員に確認する。

 ※UVIDEC-210で、T%=0とT%=100の補正を行う操作に相当する。 page 44

試料(a)の測定

① 操作パネルの「測定項目」を押し、LCD表示が「Menu」選択モードになることを確認する。

② 「4」を押し、測定項目を「4.Spectrum(吸収スペクトル測定)」に設定する。

③ 「入力」を押す(スペクトル測定の条件設定に進むことになる)。

④ 「Photo Mode(測光モード)」が表示されるので「入力、2、入力」を押し

「(2)Abs」に設定する。「▼」を押す。(他に透過率T%でも測定できる)

⑤ 「Start WL(開始の波長)」が表示されるので「入力、900、入力」を押す。 「▼」を押す。

⑥ 「End(終了の波長)」が表示されるので「入力、350、入力」を押す。「▼」を押す。

※⑤、⑥はスペクトルの測定波長範囲を350∼900nmにする設定。

⑦ 「WL Scale(波長間隔)」が表示されるので「入力、3(25nm/㎝)、入力」を押す。

「▼」を押す。※スペクトルを書き出す際の目盛間隔の指定。

⑧ 「Scan Speed」が表示されるので「入力、3(1200nm/min)、入力」を押す。

「▼」を押す。

⑨ 「Lower Limit(測光最小値)」が表示されるので「入力、0、入力」を押す。「▼」を押す。

⑩ 「Upper Limit(測光最大値)」が表示されるので「入力、1、入力」を押す。「▼」を押す。

※⑨、⑩はスペクトルを書き出す際に、吸光度Absで0∼1の範囲で書き出す設定。

⑪ 「Cyc1e No(測定回数)」が表示されるので「入力、1、入力」を押す。「▼」を押す。

※同じサンプルを数回繰り返し測定し、計時変化を記録する方法もあるが、今回は用いない。

⑫ 「Draw Axis(プロッタ出力の枠書き)」が表示されるので「入力、2(On)、入力」を押す。

「▼」を押す。※枠が書ける。

⑬ 「Line Mode(描線モード)」が表示されるので「入力、1(Full)、入力」を押す。「▼」を押す。

※スペクトルの曲線が実線で描かれる設定。他に点線、破線、鎖線等もある。

⑭ 「Print 0ut」が表示されるので「入力、1(Seq:sequential、スペクトルごとに紙を送る)、

入力」を押す。

⑮ イオン交換水の入ったセルを奥(参照側)に、試料(a)の入ったセルを手前(試料側)に

セットする。

⑯ 「スタート」を押す。枠書きに続いて測定が始まり、スペクトルが書き出される。

試料(b)∼(d)と(I)の測定

試料(b)∼(d)と(I)は試料(a)のスペクトルに重ね書きするため、若干設定を変えて測定する。ただし、

重ね書きや線種の設定でミスした場合も、試料(a)の測定からすべてやり直す必要はない。

紙を引っ張って紙送りを行い、ミスした試料からあらためて順次測定を続ければよい。

① 操作パネルの「測定項目」を押し、LCD表示が「Menu」選択モードになることを確認する。

② 「4」を押し、測定項目を「4.Spectrum(吸収スペクトル測定)」に設定する。

③ 「入力」を押す(スペクトル測定の条件設定に進むことになる)。

④ 「▼」を数回押して、「Print 0ut」、「Draw Axis」の設定をそれぞれ以下のように設定し直し

ていく。

「Print 0ut」の表示では「入力、2(Overlay:重ね書き)、入力」を押す。

  ※測定時に紙がいったん巻き戻され、スペクトルが重ね書きされるようになる。

「Draw Axis」の表示では「入力、1(Off)、入力」を押す。 page 45

  ※前の測定で枠書きが済んでいて、改めて枠を描く必要がない場合。

⑤ 手前のセルを試料(b)∼(d)、(I)に順次取り替えて「スタート」を押す。

それぞれ測定が始まり、試料(a)のスペクトルに重ね書きされる。

測定終了後は記録紙を手で引っぱって紙送りを行い、装置から切って外す。

試料(z)の測定

試料(z)は試料(a)∼(d)とは別のスペクトルとして書き出すため、以下のように設定する。

① 操作パネルの「測定項目」を押し、LCD表示が「Menu」選択モードになることを確認する。

② 「4」を押し、測定項目を「4.Spectrum(吸収スペクトル測定)」に設定する。

③ 「入力」を押す(スペクトル測定の条件設定に進むことになる)。

④ 「▼」を数回押して、。「Print 0ut」、「Draw Axis」の設定をそれぞれ以下のように設定し直

していく。

「Print 0ut」の表示では「入力、1(Seq)、入力」を押す。

「Draw Axis」の表示では「入力、2(On)、入力」を押す。

⑤ 手前のセルを試料(z)に取り替えて「スタート」を押す。

紙送り、枠書きにつづいて測定が始まり、スペクトルが書き出される。

※「試料(z)のスペクトルがおかしい」と質問に来る学生が例年多いが、教員・補助員に質問する

前に試料(z)をよく見て、どのようなスペクトルが妥当なのかよく考えること。

試料(X1)の測定

試料(X1)は試料(z)に重ね書きするため、以下のように設定する。

① 操作パネルの「測定項目」を押し、LCD表示が「Menu」選択モードになることを確認する。

② 「4」を押し、測定項目を「4.Spectrum(吸収スペクトル測定)」に設定する。

③ 「入力」を押す(スペクトル測定の条件設定に進むことになる)。

④ 「▼」を数回押して、。「Print 0ut」、「Draw Axis」の設定をそれぞれ以下のように設定し直

していく。

「Print 0ut」の表示では「入力、2(Overlay:重ね書き)、入力」を押す。

「Draw Axis」の表示では「入力、1(Off)、入力」を押す。

⑤ 手前のセルを試料(X1)に取り替えて「スタート」を押す。

測定が始まり、試料(z)のスペクトルに重ね書きされる。

⑥ 記録紙を手で引っぱって紙送りを行い、別途「リスト印字」を押す。

測定条件が記録紙に書き出される。

※ 希望するものは「Line Mode(描線モード)」で線の種類を変更してもよい。

※ 重ね書きや線種の設定でミスした場合も、試料(a)の測定からすべてやり直す必要はない。

紙を引っ張って紙送りを行い、ミスした試料からあらためて順次測定を続ければよい。 page 46

図5-5 紫外可視分光光度計装置図(日本分光製、V-520型)の外観

①試料室

④POWERスイッチ

②操作パネル(図5-6参照) ③LCD表示

⑤光源部 ⑥プリンタ

リスト

印 字

オートゼロ 波 長 ファイル

測定

項目

データ

印 字

8 9

÷

表示

×

メニュー

 −

前画面

,  +

次画面

CTRL

スタート ストップ

入力 測定

メモリ

図5-6 紫外可視分光光度計装置図(日本分光製、V-520型)の操作パネル

[レポート課題:*印は当日課題]

1)*

サンプル(a)∼(d)のスペクトルを提示し、Cu(II)-en錯体について(表5-1をふまえて)色とスペク

トルの関係を説明せよ。

2)*

(検量線から)Cu(II)-en錯体のモル吸光係数εを求めよ(単位を明示すること)。

なお本実験で用いたセルは、光路長(セル幅)が1.00cmである。

3)*

真ちゅう中の銅の含有率(重量%)を求めよ。結果のみではなく、計算過程を明確に説明せよ。

4)

真ちゅうには亜鉛が含まれている。また、試料(a)∼(d)には過剰のenが含まれているので、Cu(II)

と錯体を形成しない未反応のenが共存している。本実験で銅を定量する際に亜鉛や未反応のenの

影響を無視してよい理由を明確に説明せよ。(ヒント:試料(z)の測定)

5)

この実験で真ちゅうを溶解するだけならば、真ちゅう試料が溶けきった段階で加熱を停止して水

で希釈すれば済むとも思われる。わざわざ濃縮したのはなぜか、理由を説明せよ。また、硫酸 page 47

H

2

SO

4

ではなく硝酸を用いた理由も説明せよ。(ヒント:操作4)

発展課題(SPACEコースでは必修)

6)

一般に分光計の検出器は透過度Tで一定の誤差を生ずる。いま透過度

Tに0.001の誤差ΔTが常に

含まれていると仮定する。この場合、吸光度Aが0.29付近と1.88付近では、どちらの吸光度Aにお

ける精度が高いか(吸光度A

の相対誤差が小さいか)。数値計算に基づいて答えよ。

※ 問われていることに真正面から答えていない解答が毎年多い。課題をよく読んで解答を記述す

るように。

7)

操作4で試料(d)に硝酸を加えたときにどのような反応が起きたか、反応式を述べよ。

※ 有機化学の教科書でアミン類の性質や、アミンと酸との反応を調べよ。

[参考]

泉美治他

丸田銓二朗

「第2版 機器分析のてびき(1)」

「改稿 化学基礎実験」

化学実験テキスト研究会編 「機器分析」

化学同人(1996)

三共出版(1986)

日本分析化学会北海道支部 「水の分析 -第4版- 」

日本分光(株)

S産業図書(1993)

化学同人(1999)

シングルビーム分光光度計UVIDEC-210型取扱説明書

日本分光(株) 紫外可視分光光度計V-520型取扱説明書

その他、機器分析に関する文献はいずれも参考になると期待される。

※「記載された図書は図書館で出払っていて調べられません」、などという言い訳をしないように。 page 48

実験6 電解メッキ

メッキによるファラデーの法則の検証と金属樹生成によるイオン化傾向の検証

【目的】

銅電極上にニッケルめっきを行い、析出するニッケル量と流れた電気量との関係を調べ、ファラデーの

法則を検証する。また、色々な金属上への銅樹・銀樹の生成を試み、イオン化傾向についての理解を深

める。

【器具および試薬】

メッキによるファラデーの法則の検証

直流電源とクリップ付リード線

銅板(0.3×15×80mm程度)

ニッケル板(0.8×20×75mm程度)

試験管(30mmφ、エタノール洗浄用)

8

∼10M硫酸(洗浄用)

エタノール(洗浄用)

メッキ液

デジタルマルチメーターとクリップ付リード線

100

㎖トールビーカー 1個

クランプ、スタンド

プラスチックピンセット

炭酸水素ナトリウム飽和水溶液

イオン交換水(洗浄びん)

(硫酸ニッケル六水和物 NiSO

4

・6H

2

O

(ほう酸 H

3

BO

3

) (塩化アンモニウム NH

4

Cl

参考:原子量

Ni

:58.69、S:32.07、O:16.00、B:10.81、H:1.008、N:14.01、Cl:35.45

金属樹生成によるイオン化傾向の検証

シャーレ(100mmφ)

ろ紙( 70mmφ)

硝酸銀(I) AgNO

3

50

㎖ビーカー 2個

金属片(Al、Zn、Fe、Pb、Cu、Ag)

プラスチックピンセット

塩化銅(II)・2水和物 CuCl

2

10

㎖駒込ピペット 2本

・2H

2

O

直流電源

デジタルマルチメーター

プラスチック網板

クランプでつり

下げるとよい

AMP

CURRENT

CC

CV

VOLT

FINE

VOLTAGE

COARSE

クリップ

POWER

FIXED VOLTAGE

GND

Ni

Cu

メッキ液

トールビーカー

クリップ off

μAmA

COM mA

図1 電解メッキ装置概略図 page 49

【操作1:電解メッキ】 ※うまく作業分担し、操作2も同時進行させること。

(1)

銅板の洗浄:用意された容器中の硫酸(8∼10M)に銅板を5分程度沈めてからプラスチックピ

ンセットで取り出し、イオン交換水でよく洗浄する(洗液は廃液入れに)。さらに炭酸水素ナト

リウム水溶液をキムタオル等の紙につけて板が光るまで磨き、再度イオン交換水で洗浄する。

エタノールを平底試験管にとり、銅板を5分程度沈めてから取り出して、そのまま空気中で乾燥

する。これ以降、素手で触らないように。

(2) (1)

で洗浄した銅板を0.0001g(=0.1mg) の桁まで秤量する。

(3) 100

㎖トールビーカーにメッキ液を100㎖の目盛まで入れ、中央にプラスチック網板を立てる

(メッキ液の組成については後述の補足参照)

(4)

直流電源のPOWERスイッチを切った状態で、秤量した銅板とニッケル板を直流電源およびデジ

タルマルチメーターにクリップ付リード線を使って図1のように接続する。

電極どうしが接触しないように気を付けながら、銅板とニッケル板をビーカー中のメッキ液に浸

す。メッキ液に銅板が接触する面積はできるだけ多くとるが、ワニ口クリップにメッキ液が付か

ないように気を付ける。スタンドとクランプでケーブルを吊り下げるとよい。

(5)

デジタルマルチメーターのスイッチを[mA]の位置にし、RANGEボタンで小数点以下が1桁に

なるようにする。直流電源のCURRENTつまみを左一杯(最低)、FINEつまみを中央、COARSE

(粗調整)つまみを左一杯(最低)にした状態でPOWERスイッチを入れる。

(6) COARSE

つまみを徐々に右に回して電圧を上げ、デジタルマルチメーターの表示が150mA付近に

なるようにして電解メッキを開始する(通常は2.0∼2.7V程度である)。電圧の微調整はFINEつ

まみで行う。電圧が5Vを越えても150mAに達しない場合は教員・補助員に申し出ること。

※直流電源にも電流表示があるが、精度が悪いので電流はデジタルマルチメーターで測定する。

 電流変化には遅れがあるので、つまみの回転は様子を見ながら少しずつ行なうように。

※本実験で用いるデジタルマルチメーターは一定時間操作をしないと自動的に電源が切れる

 (オートパワーオフ機能)。表示が消えていたら、いったんスイッチを[off]の位置に戻し、

 再度[mA]の位置に戻す。

電解中は最低1名が監視して電流値をなるべく一定(150mA)に保ち、5分ごとに電圧値、電流

値、電解槽の様子を記録する。

※定電流モードで動作させる方法もあるが、教育的観点からこの方法は用いない。

(7) 90

分経過したらPOWERスイッチを切り、クリップ類の接続を外す。

(8)

銅板、ニッケル板をピンセットで取り出し、イオン交換水、エタノールで順に洗浄する(洗液は

廃液入れに捨てる)。エタノール洗浄後に空気中で乾燥させる。

(9)

銅板を0.1mgの桁まで再び秤量する。銅板、ニッケル板の表面を観察する。

※ 記録をとらないで見るだけでは「観察」と言わない。

銅板はメッキされた領域を定規で計測し、メッキされた面積を概算する。 page 50

【操作2:金属樹生成によるイオン化傾向の検証】

(1) 0.5mol/ ℓCuCl

2

水溶液 の調整:50㎖ビーカー中に塩化銅(II)・二水和物852mgをはかり取り、10

㎖駒込ピペットで水約10㎖を加え、溶解する。

(2) 0.1mol/ ℓAgNO

3

水溶液の調整:50㎖ビーカー中に硝酸銀(I)170mgをはかり取り、10㎖駒込ピ

ペットで水約10㎖を加え、溶解する。

(3)

シャーレにろ紙(70mmφ)を敷き、アルミニウム、亜鉛、鉄、

Al

Ag Zn

鉛、銅、銀の小片を少しずつ離してこのろ紙上に一片づつ置く。例

えば図2のように、各金属をどこに置いたか忘れないように記録し

ておく。

(4) CuCl

2

水溶液をろ紙が浸る程度入れ、銅樹の生成を試みる。溶液を

Cu

Pb

Fe

図2 金属片の配置例

入れ過ぎると金属片が浮き上がって扱いにくいので注意する。

(5)

上記操作をAgNO

3

水溶液についても行い、銀樹の生成を試みる。

(6) 10

分毎に銅樹・銀樹の成長の様子を観察する。表からだけではなく、濾紙の裏も下から観察す

る。この際、金属片の位置がずれないように注意する。

観察は60分程度続け、各金属片で銅樹・銀樹はどのように成長したか記録しておく。

[後片付け]

・生のメッキ液は元のびんに戻す。特に問題がなければ次回再利用される。

ただし洗液を入れないこと!!。濃度が変わると再利用できないので、洗液は廃液入れに捨てる。

・・・・・・・・・

・銅板は専用の廃棄びんに捨てるが、ニッケル板は

回収して再利用する

・洗浄用のエタノールは原則として回収するが、洗液をエタノールのびんにいれないこと。

・メッキ液のついたビーカー、ピンセット、電極などを洗浄した水は専用の廃液入れに入れる。

・金属樹生成で使用した金属片は専用のびんに捨てる。ろ紙は水ですすぎ、洗液は専用の廃液入れに、

ろ紙そのものは燃えるゴミに捨てる。シャーレをすすいだ洗液なども専用の廃液入れに入れる。

【レポート課題:*印は当日課題】

1)*

ファラデーの法則について述べよ。

※参考書類の丸写しではなく、要するにどのような法則なのかを述べること。

2)*

銅板、ニッケル板それぞれの電極で起きた反応を反応式で示し、成分変化の観点からメッキ液が

再利用できることを説明せよ。

3)*

電解中の電流はほぼ一定であったと仮定し、電解で使われた電気量をC(クーロン)単位で算出せ

よ。さらにこの電気量からニッケルの理論上の析出量をg(ないしmg)単位で計算せよ。

4)* 3)

の計算結果と実際の析出量を比較し、ずれる理由を考察せよ。

5)

メッキ液中の各成分濃度をmol/ℓ単位で求めよ。

6)

定規で概算したメッキの面積と金属ニッケルの密度8.90g/cm

3

から、メッキの平均厚さをμ(ミ

クロン、10

−6 m

)単位で求めよ。(電極には表と裏があることを忘れずに)

7)*

どの金属で銀樹・銅樹が成長したか報告し、銀樹・銅樹が成長するものとしないものがある理由

を述べよ。単純にイオン化傾向では説明のつかない例もあるので注意せよ。ヒント:硝酸は鉄の

容器で保存できる。なぜか? page 51

発展課題(SPACEコースでは必修)

8)

一定電流を維持するために電解中に加える電圧(印加電圧)が徐々に変化する理由を考察せよ。

※原因を提案したら、その原因が電圧の増える方向、減る方向のいずれにはたらくかも考えて述

べよ。漫然と原因を列挙せず、自分の実験結果と照らし合わせよ。

9)

電気分解におけるアノード(anode)とカソード(cathode)の定義を述べ、今回の実験ではどち

らの極がアノードでどちらがカソードであったか答えよ。

【補足:メッキ液の調製方法】

本実験で用いるメッキ液は以下のようにして調製したものである。通常は充分な量が用意されて

いるので、受講生がこの操作を行う必要はない。

硫酸ニッケル六水和物15g、塩化アンモニウム1.5g、ほう酸1.5gをイオン交換水約100㎖に溶解

する。秤量はいずれも0.1g単位で充分である。塩化アンモニウムは電気伝導度を上げるために、

ほう酸は溶液中のpHを一定に保つために加える。

【参考書類】

1)

古藤田哲哉 著、「貴金属めっき(NPシリーズ)」、槙書店(1992).

2)

榎本英彦 他 著、「複合めっき」、日刊工業新聞社(1989).

3)

英一太 著、「エレクトロニクス用機能メッキ技術(CMC books)」、シーエムシー(2000).

4)

榎本英彦・中村恒 著、「電子部品のめっき技術」、日刊工業新聞社(2002).

5)

青谷薫 著、「Pt属合金めっき(JPSシリーズ、合金めっき 4)」、日本プレーティング協会

(2003).

※「Pt属」とは周期表でPtと同族のNi, Pd, Ptを指す。 page 52

実験7 起電力・電位差測定

【目的】

 電池の起電力と溶液濃度との関係を理解するとともに、沈殿反応時の起電力から、溶解度積を求め

る。なお、SPACEコースにおいて本実験は班単位ではなく個人単位で行う。

【解説1:電極電位と濃淡電池】

 銀電極を銀イオンを含む溶液中に浸したときの電極反応は(1)式で示される。

Ag

+ + e

-

Æ

¨

Ag

・・・(1)

溶液中の銀イオン濃度

C

Ag

+

が高いと(1)式の平衡反応は右向きにかたより、Ag

は電極から電子を受け

・・・・

取ってAgとして析出しようとする。その結果、電極は相対的に 電子(負電荷)が不足状態となって正に

帯電するであろう。反対に溶液の

C

Ag

+

が低ければ(1)式の平衡反応は左向きにかたより、電極のAgが電

・・・・

子を電極に残してイオン化し、溶液中に溶け出そうとするであろう。この場合、電極は相対的に 電子が

過剰状態となって負に帯電する。いずれの場合も反応がある程度進むと静電引力によって逆方向の反応

が促進されるので、電極の電位は平衡点に達する。この平衡時の電位は溶液中の銀イオン濃度

C

Ag

+

に依

存することになる。

 (1)式に対応する電極電位

EはNernst式によると、標準水素電極の電位に対して(2)式で示される。

E

=

E

0

Ag

+

RT

F

ln

a

Ag

+

・・・(2)

ここで、

0

E

Ag

はAg/Ag

+

の標準電極電位、

a

Ag

+

は銀イオンの活量である。充分に希薄な溶液では近似的

に活量

a

Ag

+

を濃度

C

Ag

+

(正しくはmol/ℓで表したときの数値)に置き換えることができる。Rは気体定

数、Tは絶対温度、Fはファラデー定数である。したがって希薄溶液で(2)式は(3)式で置き換えられる。

E

=

E

0

Ag

+

.

RT

F

log

C

Ag

+

・・・(3)

         ※2.303は、自然対数を常用対数に置き換えるための係数である。

 二本の銀電極を、後述の図2のようにそれぞれ銀イオン濃度が異なる溶液に浸し、(4)式の電池図で示

される濃淡電池を構築した場合を考える。

Ag Ag

+

(

C

Ag

+

)

Ag

+

(

C

Ag

+

( )

)

Ag

・・・(4)

このときの起電力(平衡時の電位差)

D

E

と銀イオン濃度には(5)式の関係が成立する。

  

D

E

=

.

RT

F

log

C

Ag

+

C

Ag

+

( )

( )

=

.

RT

F

( log

C

Ag

+

( )

log

C

Ag

+

)

  ・・・(5)

したがって

C

Ag

+

( )

を固定して

C

Ag

+

( )

を変化させた場合、濃度が一桁変わると

D

E

2 303

RT

F

だけ変

化する。本実験ではこの値を測定し、理論値と実測値を比較する。 page 53

【解説2:電位差滴定と溶解度積の決定】

 (4)式の電池図、すなわち図2の濃淡電池のセル(2)にハロゲン化物イオンX

を徐々に添加していく

と、(6)式の反応によってAg

は難溶性の銀塩AgXとなって析出し、Ag電極との反応を起こさなくな

る。当量点付近では溶存しているAg

が急激に減少し、

C

Ag

+

( )

も大きく変化する。そのためX

の滴下

量を横軸、起電力を縦軸にしてグラフをプロットすると図1のような滴定曲線が得られ、当量点付近に

電位差ジャンプのあることがわかる。本実験では後述の交点法によって当量点(M)を求め、濃度未知の

KCl

水溶液の濃度を算出する。

 さらにこの滴定での起電力の変化から、溶解度積

K sp

(Solubility Product)を求めることが出来る。

 セル(2)にハロゲン化物イオン

X

-

を添加したのち平衡状態に達すると、

Ag

+

+

X

-

Æ

¨

AgX

・・・(6)

が成立し、溶解度積

K sp

は(7)式で示される。

K sp

=

C

Ag

+

( )

¥

C

X

-

( )

(5)

式と(7)式から

C

Ag

+

( )

を消去して整理すると(8)式が得られる。

・・・(7) log

K sp

=

RT

+ log

C

Ag

+

( )

+ log

C

X

-

・・・(8)

起電力

D

E

、セル(1)の銀イオン濃度

C

Ag

+

( )

、セル(2)のハロゲン化物イオン濃度

C

X

-

( )

が分かれば溶解

度積

K sp

を求めることが出来る。

C

X

-

( )

はAg

と反応しなかったハロゲン化物イオンの濃度であり、滴

定中は溶液全量が増加し続けていることも忘れずに計算する必要がある。

 厳密に考えると、組成が異なる溶液を混合した場合、混合後の体積は混合前の個々の溶液体積の和に

はならないが、本実験ではこの影響は小さいと考えて無視する。

【解説3:電位差滴定の当量点(中和点)の求め方、交点法】

P1

Lc

Ld

Lb

h

2

h

Lf

M

h

2

La

Le

P2

滴定量

           図1 滴定曲線と交点法 page 54

実験データから、図1のように滴定曲線を描く。

電位差の変化がそれほど大きくない部分の接線La、Lbを引く。

電位差の変化が大きい(電位差ジャンプ)部分の接線Lcを引き、

接線La、Lbと接線Lcの交点をそれぞれP1、P2とする。

交点P1およびP2を通り横軸に平行な直線LdおよびLeをそれぞれ引く。

直線Ld、Le間の垂直距離をhとすると、直線Ld、Leからそれぞれh/2の距離にあり、

横軸に平行な直線Lfを引く。

直線Lfと接線Lcとの交点Mを当量点(中和点)とする。

【実験装置と試薬】

テスター* (CDM-09N)+ ワニ口クリップ(赤、黒各1個) 1式

 ※本来この実験では電位差計(ポテンシオメータ)を用いて測定を行うべきであるが、

  本実験では操作の簡便化のため単純なテスター(電圧計)を用いる。

  興味のある者は「電圧計」と「電位差計」の違いを調べてみるとよい。

銀線2本 + 固定用プラスチック板 1式

温度計(共有で1本)

25

㎖ビュレット + スタンド 1式

ビーカー  50㎖× 2個 メスピペット 10㎖ 1本(KNO

3

水溶液用)

      30㎖× 6個        1㎖ 1本(AgNO

3

水溶液用)

メスフラスコ 25㎖ 1個

標線合わせ用スポイト

ガラスロート 1個

ろ紙(直径15cm、細長く切って塩橋にする)、はさみ

硝酸銀(AgNO

3

) 約0.01M 塩化カリウム(KCl)水溶液(

約0.2M 硝酸カリウム(KNO

3

)水溶液

正確な濃度は未知)

原子量: Ag: 107.87、N: 14.01、O: 16.00、K: 39.10、Cl: 35.45

ファラデー定数 F = 96485 C/mol、気体定数 R = 8.314J/(mol・K)

表1 AgClの溶解度積データ(参考文献2)より)

温度/℃

(

SP

M

2

5 15 25 35 40

)

−10.595

−10.152

−9.749

−9.381

−9.21

【注意:試薬溶液の取り出しについて】 必要以上の溶液を取り出さないこと!!

この実験ではすでに教員ないし補助員の調製した溶液を使用する部分がある。調製した溶液濃度がず

れるのを防ぐため、用意された試薬びんに直接ピペット類を差し込んではいけない。各班は試薬びん

からビーカーなどに少量づつ分け取る(共洗いを忘れずに)。いったん取り出した溶液は、溶液濃度

のズレを防ぐため、試薬びんに戻すことはできない。必要以上の溶液を出すと、大量の試薬と補助員

の労力が無駄となる。各自が正しく予習し、必要な溶液量をよく考えて取り出すこと。 page 55

【実験1:Ag/Ag

+

濃淡電池の起電力の測定】

黒(マイナス端子)

赤(プラス端子)

00.0

プラスチック板

ろ紙(塩橋)

Ag

(銀線)

Ag

(銀線)

V

テスター

セル(1) セル(2)

図2 電池の構成と接続

(1) 0.1M AgNO

3

水溶液の調製:硝酸銀(AgNO

3

) 0.42∼0.43gを0.0001g(= 0.1mg)の単位まで

正確に秤量し、30㎖ビーカー中で少量のイオン交換水に溶解する。これを25㎖メスフラスコに入

れ、使用したビーカーもイオン交換水ですすいで洗液もメスフラスコに加える。標線まで正確に

イオン交換水で希釈し、約0.1MのAgNO

3

水溶液を調製する。標線合わせは専用のスポイトを用い

るとよい。希釈後に栓をしてよく振って全体を均一にするのを忘れないように。この溶液の正確

な濃度は、秤量した硝酸銀の重量から各自で計算して求めよ。

・・・

(2)

二つの30㎖ビーカーの両方に 、(1)で用意した0.1M AgNO

3

水溶液 1.0㎖、0.2M KNO

3

水溶液

9.0

㎖をメスピペットで加えて振り混ぜ、銀イオン濃度

C

Ag

+

が1x10

-2

M

の溶液を二つ調製する。

これらを溶液A1、A2とする。銀を含む溶液の採取(1.0㎖)には1㎖メスピペット、0.2M KNO

3

水溶液の採取には10㎖メスピペットを用いよ。※後述の実験2で用いる溶液B1も含め、まとめて

3つ用意するとよい。

表2 各溶液の調製

溶液番号

A1, A2, B1

 A3

 A4

 A5

目標の

C

Ag

+

/M

1.0x10

-2

1.0x10

-3

1.0x10

-4

1.0x10

-5

調製方法

0.10M AgNO

3

水溶液 1.0㎖

   + 0.2M KNO

3

水溶液 9.0㎖

溶液A2 1.0㎖ +  0.2M KNO

3

水溶液 9.0㎖

溶液A3 1.0㎖ +  0.2M KNO

3

水溶液 9.0㎖

溶液A4 1.0㎖ +  0.2M KNO

3

水溶液 9.0㎖

(3)

表2にしたがって3つのの30㎖ビーカーそれぞれに、銀イオン濃度

C

Ag

+

を1x10

-3

M

、1x10

-4

M

1x10

-5

M

とした溶液A3∼A5を調製する。要するに溶液A2をもとに、KNO

3

溶液で10倍希釈を繰

り返すことになる。

(4)

幅3∼5mm程度に細長く切ったろ紙を数本用意し、50㎖ビーカー中で0.2M KNO3水溶液中にひた

しておく。ろ紙の長さは次の(5)の操作で使うことを考え、ビーカーに合わせて適宜決めてよい。

(必要以上の0.2M KNO3水溶液を使わないように注意) page 56

(5)

図2に示すように、(2)で調製した溶液A1、A2(それぞれ30㎖ビーカー)を、KNO3水溶液にひ

たしたろ紙で電気的に接続する(塩橋をわたす)。以後これらのビーカーを便宜的にセル(1)、セ

ル(2)とする。

(6)

キムワイプなどで銀線(電極)をよく拭いて両方の溶液にひたし、銀線の上端をワニ口クリップ

で挟んで電位差計(テスター)に接続する。銀線はプラスチック板に固定してあり、プラスチッ

ク板をスタンドにクランプすると安定する。またろ紙と銀線が触れないように注意する。

セル(1)はテスターのマイナス端子(黒)、セル(2)はテスターのプラス端子(赤)に接続する。

電位差計は直流電圧測定モードにする(Offの次、Vの下に直線と点線が描かれた位置)。

(7)

起電力

D

E

が安定するまで待ち、安定したら1mVの桁まで測定する。この装置では数十分たって

も最終桁(0.1mV単位)は安定しないので、数分程度で見切りをつけて測定を続けるとよい。

同時に気温も測定する(溶液温度とほぼ等しいとみなす)。

実験で使うテスターは操作をしないと10分程度で自動的に電源が切れる(オートパワーオフ機

能)。表示されなくなった場合はいったんoffにして再度直流電圧測定モードにする。

(8)

セル(1)はそのままにして、セル(2)を溶液A3からA5に順次変更して起電力を測定する。セル(2)は

ビーカーごと交換する。塩橋は測定ごとに新しいろ紙に交換する。 銀線はキムワイプなどで毎回

拭いてから溶液に入れる。

注意:(5)式で

C

Ag

+

( )

>

C

Ag

+

( )

のとき、

D

E

は負(マイナス)のはずである。溶液A3以降の測定で起

電力が正(プラス)に観測された場合には、テスターの端子が逆なのでワニ口クリップの接続を入れ

換えよ。溶液A1対A2の測定では

C

Ag

+

( )

=

C

Ag

+

( )

なので本来

D

E

=

0

であるが、微妙な溶液調製の

ずれや銀線の状態により、起電力の正負がゼロ付近で逆転することがある。すなわち操作(7)の段階で

は起電力の正負から接続の良否は判断できない。そこで溶液A1とA2の測定ではとりあえずそのまま

測定し、溶液A3以降の測定結果を見てから、測定値の符号を逆に解釈すべきか否かを判断するとよ

い。

【実験2:塩化銀の溶解度積の決定】

(1)

清浄な50㎖ビーカー(30㎖ではない)に、0.1M AgNO

3

水溶液 1.0㎖、0.2M KNO

3

水溶液 9.0㎖

から調製した銀イオン濃度1x10

-2

M

の溶液B1を調製する。

注意:「同じ溶液ではないか」と思って、溶液B1に溶液A2を流用しないこと。実験1では溶液調

製のために、少量の溶液A2を抜き取っている。実験2では滴定を行なうので、濃度が同じでも

Ag+

の絶対量が異なる(全溶液量が異なる)溶液を用いては意味がない。

(2)

図2においてセル(1)に溶液A1、セル(2)に溶液B1をセットし、銀線をテスターに接続して起電力

を測定できるようにする。

(3)

約0.01MのKCl水溶液( 正確な濃度は未知)をビュレットに入れて、セル(2)に滴下する。滴下す

るごとに、装置の設定を崩さない程度に軽くゆすって混ぜるとよい。滴下は最初0.5㎖ずつ行い、

そのつど滴下量と電位差

D

E

を記録する。

D

E

が急激に変化する当量点(中和点)付近ではさらに

細かく滴下、測定することが望ましい。例えば0.2ないし0.1㎖ごとの測定をするとよい。およそ

の当量点を予測しておくこと。

起電力の読みとりは1mVの桁が安定してから行う。滴下は当量点までに加えたKCl水溶液の2倍 page 57

量程度まで続ける。

注意:この実験では必ずその場でグラフ用紙に滴定曲線を描くこと。あらかじめ当量点を予測

し、グラフの横軸範囲を決めておくこと。起電力は 0 ∼ −300mV 程度の範囲で変化する。

【結果の整理】

(1)

実験1の測定結果から、セル(2)の銀イオン濃度の常用対数 logC

Ag

+

( )

を横軸、起電力

D

E

を縦軸

にとってグラフをプロットする。対数をとる際の

C

Ag

+

の濃度単位はM(=mol/ℓ)とする。

(2) (1)

で作成したグラフの傾きを求める。(5)式によるとこの傾きの理論値は

2 303

RT

F

である。

※各定数の単位を間違えないように。後述の【参考知識】も参照

(3)

実験2の結果から、横軸に滴定量(㎖)、縦軸に起電力(mV)をとって滴定曲線をプロットする。

(滴定中に済んでいるはずである)

(4)

滴定曲線の当量点から、KCl水溶液の濃度を正確に算出する。当量点は交点法で求めるとよい。

(5)

実験2で生じた沈殿は塩化銀AgClである。当量点まではセル(2)の塩化物イオンの濃度

C

Cl

-

きわめて低く保たれる。しかし当量点より後では

C

Cl

-

( )

( )

の濃度は当量点より後に加えたKCl水溶

液の量から算出できる(AgClの解離による

Cl

-

の生成は無視できるほど小さい)。総体積が増加

していることを忘れずに、当量点以降の任意の点で

Cl

-

の濃度を算出する。計算に用いる点は、滴

定曲線上で電位変化が小さい部分から選ぶとよい。さらにその点での起電力

D

E

も用いて、(8)式

からAgClの溶解度積

K sp

ないし

( )

を決定する。

【後片付け】

銀イオン含む溶液は専用の廃液入れに入れる(流しには捨てないこと)。

塩化カリウムないし硝酸カリウムのみの溶液は流しに捨ててもよい。

銀線は高価なので誤って廃棄しないように注意する。

【レポ−ト課題:*印は当日課題、SPACEコースは個人単位で終了報告】

1)*

実験1での logC

Ag

+

( )

対 起電力

D

E

のグラフをプロットし、傾き(実測値)を求めよ。

2)* 1)

のプロットの傾きを理論値

2 303

RT

と比較し、実測値と理論値がずれる理由を考察せよ。

F

(当日は理論値の算出まででよい)

例えば温度Tのずれを理由にあげた場合、何℃ずれたら実測値と理論値のずれを説明できるのか

算出し、妥当な理由かどうか判断せよ。他の理由をあげた場合も同様である。

3)*

実験2の結果から滴定曲線をプロットし、KCl水溶液の濃度を算出せよ。

4)

5)

実験2の結果から、当量点以降の任意の1点を選び、その点でのセル(2)の塩化物イオンの濃度

C

Cl

-

( )

を算出せよ。結果のみではなく計算過程を明示すること。

(8)

式に基づいて溶解度積

K sp

ないしは

( )

を算出し、表1の文献値などと比較せよ。 page 58

発展課題(SPACEコースは必修)

6)

実験2でも行なったように、銀イオン濃度は滴定で測定することもできる。これに対し、(5)式で

C

Ag

+

( )

以外の数値が既知であれば、電気化学的に測定(電位差分析)することもできる。電位

・・

差分析では濃度の対数 と測定値とが一次関数の関係にあることが特徴といえる。このような対数

を利用する測定の利点を述べよ。

・・・・・・

ヒント:濃度がまったく未知 の試料について濃度を測定する場合、滴定と電気化学測定でどのよ

うな実際の作業、前処理が必要かがポイントになる。滴定では特定の濃度の滴定液(今回は

0.01M KCl

水溶液)を未知試料に滴下し、滴定曲線や指示薬で当量点を調べることになるが、滴

定を実施する前にどのような準備、前処理が必要か考えてみるとよい。

【参考文献】

1) P.W.ATKINS

著、千原秀昭・中村亘男 訳、「アトキンス物理化学(上)」第6版、東京化学同

人. p.259、「10. 平衡電気化学」、特にp.271、「10・3 半反応と電極」を参照。

2) John A. Dean ed., "LANGE's HANDBOOK OF CHEMISTRY" 13th edition, McGrawhill,

1985.

【参考知識:電気関係の単位】

電気関係の単位はA(アンペア)から定義が始まる。

アンペア A:電流の単位 SI単位系の基本単位の一つである。

無視できる面積の円形断面を持つ2本の無限に長い直線上導体を真空中に1mの間隔で平行に置いた

とする。各導体に等しい強さの電流を流したとき、導体の長さ1mごとに2×10-7Nの力がはたらく

場合の電流の大きさを1Aと定義する。

クーロン C:電気量(電荷)の単位

1アンペアの電流が1秒間流れた場合に流れる電気量。1C=1A・sec。荷電粒子間にはたらく引

力/斥力はそれぞれの荷電粒子の電荷に比例し、荷電粒子間の距離の2乗に反比例する。

ボルト V:電位、電圧、起電力の単位

1Aの電流が流れる導体の2点間で費やされる仕事率が1Wであるとき、これら2点間に存在する電

圧を1Vと定義する。1V=1W/A

※1V(ボルト)の電位差の間を1Cの電気量が移動すると、1Jのエネルギーを放出(もしくは吸

収)する、と考えても良い。1C・V=1J

力学単位のN(ニュートン)、J(ジュール)、W(ワット)などがわからない学生は、物理や力学の

教科書をよく見て勉強しておくように。 page 59

実験8 電解質の電気伝導率測定

【目的】

 本実験では、強電解質である塩化カリウム(KCl)および弱電解質である酢酸(CH

3

COOH)

の様々な濃度

における電気伝導率を測定し、両者の伝導率の濃度依存性の違いについて考察することを目的とする。

【解説1:溶液の電気伝導】

 管状の容器内に電解質溶液を満たし、管の両端に固定した断面積が一定の電極間に電圧

V

[V

:ボル

ト]を加えた場合を考える。溶液中の陽イオンは陰極に、陰イオンは陽極に向かって移動するので、溶液

中に電流

I

[A

:アンペア)が流れる。

I

V

に比例することが実験的にわかっているので、(1)式が成り立

つ。

V

=

RI

・・・(1)

(1)

式は固体の場合のオーム(Ohm)の法則と全く同じであり、

R

は溶液の抵抗を表す。

溶液抵抗

R

[

Ω:オーム]は、固体の場合と同様に、電極間の長さ

L

[m]

に比例し、

V

A

断面積

A

[m

2

]

に反比例するので、(2)式が成り立つ(図1)。 L

R

= r

L

A

・・・(2)

図1

(2)

式における比例定数

す。 r

(ロー)[Ωm]を抵抗率といい、単位長さおよび単位面積当りの抵抗を表わ r

の逆数が電気伝導率 k

(カッパ)[Sm -1

]

である(S=Ω -1 で、Sはsiemensジーメンスと読む)。 k

は溶液の電気伝導性を表すパラメーターで、(3)式で与えられる。 k

= =

L

AR

・・・(3)

※電気伝導率は電気伝導度、電導率、導電率または単に伝導率、伝導度と称されることがある。

一般に溶液の伝導率の測定は二枚の電極を備えた伝導率測定用セルを溶液に浸し、この電極間に交流電

流を流し、その際の溶液抵抗

R

をホィートストンブリッジを用いて測定する。本実験も原理的にはこの

方法を利用しているが、伝導率 k

が直接表示される電気伝導度計を用いて伝導率の測定を行なう。

一つの伝導度測定用セルにおいては

L

A

は一定であるので、これをkとすると(3)式は k =

k

R

・・・(4)  となる。

k

をセル定数(cell constant)という。この値は伝導率既知の溶液に対して抵抗を測定することによっ

て決定される。市販の電気伝導度計の場合、あらかじめこれは測定されておりセルに表示されている。

【解説2:モル伝導率】

溶液の伝導率 k

は電解質の濃度によって変化するので、いろいろな溶液の電気伝導性を比較するのに

は、モル濃度当りの伝導率、すなわちモル伝導率

L

を用いる。溶液のモル濃度を

c

(mol/L)とする

と、モル伝導率

L

(

ラムダ、大文字)[S m

2 mol

-1

]

は(5)式のように定義される。 page 60

L = k

1000c

・・・(5)

       ※L(リットル)とm(メートル)が混在するので、係数1000が組み込まれている。

一般に

L

の値は濃度の増加とともに減少する傾向があり、塩化カリウムなどの強電解質の希釈溶液では

L

c

との関係が直線になる。これをコールラウシュ(Kohlrausch)の平方根則という。

c

Æ 0

に補

外した

L

の値を、とくに無限希釈モル伝導率

L

という。無限希釈状態では、強電解質の場合でも弱電

解質の場合でも、イオンは完全に解離している(解離度 a = 1

)とみなしてよい。この状態で、各イオ

ンは相互に影響されることなく溶液内を独立に移動し、

L •

の値は構成イオンからの寄与の和で表すこ

とができる。とたとえば陽イオン

B

+

と陰イオン

A

-

とから構成されている電解質

BA

の場合には

L

(6)

式で書ける。

L • = + + -

・・・(6)

これをコールラウシュのイオン独立移動の法則という。ただし l +

(ラムダ、小文字)と l -

はそれぞれ

陽イオンと陰イオンの無限希釈モル伝導率である。弱電解質の

L •

は、この法則を用いて間接的に求め

ることができる。

【解説3:イオン解離の理論モル伝導率】

B

+

A

-

とから構成される二元弱電解質

BA

について考えてみよう。溶液中では(7)式のような平衡関

係が成り立っており、その平衡定数

K

は、各成分の濃度を用いて(8)式のように表される。

BA

Æ

¨

B

+ +

A

-

K

=

[ ][ ]

[ ]

・・・(7)

・・・(8)

BA

の解離前の濃度を

c

(mol/L)、

BA

の解離度を a

(アルファ)として(8)式に代入すれば、(9)式が

導かれる。

K

=

1 a

-

2

c

a

・・・(9)

弱電解質溶液において、ある濃度での電解質の解離度 a

は、その濃度におけるモル伝導率

L

と無限希釈

モル伝導率

L

との比で表される((10)式)。

L

L •

= a

・・・(10)

(9)

式の a

に(10)式を代入するとイオン解離の平衡定数

K

は(11)式で表される。

K

=

(

L

2

c

L

)

・・・(11)

これをオストワルド(Ostwald)の希釈律という。

c

L

を求めれば

K

が求まることになる。 page 61

【器具と試薬】

試薬 0.1M塩化カリウム水溶液

0.1

M酢酸水溶液

器具 平底試験管(BT25)  12本(1本は予備) プラスチック試験管ラック 1組

コニカルビーカー 100㎖ 2個

安全ピペッター 2個

50

10

㎖ メスフラスコ 8個

㎖ ホールピペット 2本

洗びん(イオン交換水)

標線合わせ用スポイト 1個

装置 電気伝導度計(CM-14PもしくはCM-21P)

KCl

用、酢酸用メスシリンダー 共有で各1本

恒温水槽(30℃)

【操作1:塩化カリウム水溶液の電気伝導度測定】

(1)

恒温槽が30℃で安定していることを確認する(設定目盛ではなく、実際の温度で)。

(2) 10

㎖ホールピペット1本、コニカルビーカー1個、50㎖メスフラスコ3個を用いて以下の操作を行

う。まずメスシリンダーで0.1M KCl水溶液を約50㎖とってコニカルビーカーに入れる(共洗いを

忘れずに)。この中から10㎖をホールピペットを用いて正確に別の50㎖メスフラスコに移しとり

(メスフラスコは共洗いしてはいけない)、そこへイオン交換水を加えて正確に標線まで希釈す

る。こうして2×10

-2

M

のKCl水溶液が調製される。同様の操作で溶液を順次1/5に正確に希釈して

いき、4×10

-3

、8×10

-4

M

のKCl水溶液を調製する。ホールピペットは毎回必ず、次に移し取る

溶液で共洗いをするのを忘れないように。

※この段階の操作の良否がデータの正確さを大きく左右する。

(3) (2)

で用意した4種類のKCl水溶液(0.1、2×10

-2

、4×10

-3

、8×10

-4

M

)と、希釈に用いたイオ

ン交換水を各1本づつ平底試験管に適量入れ、プラスチック試験管ラックにセットして恒温槽に浸

す。必要な溶液量は以下の通りである。

・電導度計がCM-14Pの場合はセルを入れない状態の試験管で底から2.8cm程度(約10㎖)

・電導度計がCM-21Pの場合はセルを入れない状態の試験管で底から7.0cm程度(約25㎖)

温度を平衡に到達させるためそのまま15分程度放置する。このときイオン交換水の平底試験管に

伝導度測定セルを浸しておく。

余りの試験管1本に水道水を満たして試験管ラックの隅におき、試験管ラックが浮き上がってこな

いように重しにするとよい。

水を入れておく

試験管ラック

(4) cell constant

の数値がセル上部の記載値と一致するか確認する。(通常は省略)

(5) 15

分経過したら伝導率を測定する。この際のレンジはAUTOでもかまわない。

表示部で1000分の1を示すm(ミリ)表示の有無を見落とさないように

(6)

測定終了後、伝導度測定セルをイオン交換水で洗浄し、水滴が残らないようにキムワイプ等で拭

く。

(7)

順次、薄い溶液から濃い溶液に向かって残りの試料の電気伝導率を測定する。 page 62

【操作2:酢酸水溶液の電気伝導率測定】

酢酸水溶液についてもKCl水溶液と同様の実験を行う。試料溶液の調製は塩化カリウム水溶液の調製と

並行して行なう。ただし酢酸水溶液の場合は、0.1M溶液から順次1/5の濃度になるよう正確に希釈し、

2

×10

-2

、4×10

-3

、8×10

-4

、1.6×10

-4

、3.2×10

-

5

M

の溶液を調製して、計6種の濃度について伝導

率を測定する。イオン交換水の伝導率測定は省略してよい。

【一般注意】

(1)試料溶液の調製

KCl

水溶液と酢酸水溶液の希釈の際にはそれぞれ別のホールピペットを使用する。メスフラスコ内

の溶液を採取するときには、まずピペット内をイオン交換水で洗い水気をよく切って、しかるのち

に採取する溶液でピペット内をさらに共洗いしてから行なう。

(2)導電率測定の際の注意事項

セルは取扱いに十分注意する。セルの中に泡が入っていると測定値に影響するので、セルを注意深

く上下に振り、泡を出してから測定する。試料を変える場合には、測定セルをまずイオン交換水で

よく洗い、水気をよくふき取る。

【後片付け】

この実験に限り、すなわち塩化カリウムと酢酸しか含まない水溶液は、流しに捨ててよい。

【結果の整理】

(1)

伝導率の測定結果

KCl

水溶液と酢酸水溶液それぞれについて、濃度C、濃度の平方根

をわかりやすく表にまとめる。そして

c

、伝導率 k

、モル伝導率

L

c

対 k

(レポート課題1))および

c

L

(レポート課題

2)

)の関係をグラフ用紙にプロットする。この作業は測定中に行ない、結果を担当者に見せるこ

と。

KCl

水溶液については、プロットしたグラフから無限希釈モル伝導率

L

を求める。実験室のコン

ピュータを用いて求めてもよい。

(2).

酢酸の解離定数の算出

酢酸水溶液のモル伝導率

L

と無限希釈モル伝導率

L •

・・・・・・・

から、測定した各濃度について 酢酸の解離定

K

を求め((11)式)、整理して測定結果の表に加える。(当日課題の一つである)

L •

は以下の文献値から算出せよ((6)式)。 l +

( )

= ¥ -

2

2

mol

-

1

   l -

(

CH COO

3

-

)

= ¥ -

2

2

mol

-

1

(参考)K

とCl

の無限希釈モル電導率λ l +

( )

= ¥

-

3

2

mol

-

1

    l -

( )

= ¥

-

3

2

mol

-

1 page 63

【レポート課題:*は当日課題】

1)*

c

を横軸(単位をよく考えよ)、伝導率 k

を縦軸とするグラフを、KCl水溶液と酢酸水溶液それ

2)*

ぞれについて提示する。

c

を横軸、モル伝導率

L

を縦軸とするグラフを、KCl水溶液と酢酸水溶液それぞれについて提示

する。KCl水溶液については無限希釈モル伝導率

L •

もあわせて報告する。

3)

濃度 cの増大とともにモル伝導率Λが減少する理由を調べて述べよ。

KCl

水溶液と酢酸水溶液では主たる理由が異なるので、それぞれ別個に説明する。

4)

※(5)式を見て「 cとΛが反比例の関係にあるから」と答えないように。伝導率κは定数ではないの

で、 cとΛは反比例の関係にあるわけではない。

※KCl水溶液についてはやや難解であるので、概要を述べればよい。

L

-

c

のグラフについて、KCl水溶液と酢酸水溶液とで形状が大きく異なる理由を説明せよ。

※単に、一方が強電解質で他方が弱電解質だから、で終わってはいけない。そもそも強電解質、弱

電解質とは何を意味するのか。その違いがモル伝導率

L

の濃度依存性にどのように影響するのか、

ていねいに説明せよ。

※いわゆる「調製濃度」と実際の「イオン濃度」を明確に区別して記述するように心がけてほし

い。

5)*

各濃度において得られた酢酸の解離定数

K

の値を表にまとめて提示せよ。

(解離定数

K

の単位を明確に)

6)

「定数」と名がつくにもかかわらず、課題5)で報告した解離定数

K

の値はある程度ばらつくのが普

通である(この実験の操作、条件下では)。ずれが大きいのは濃度の高いところ、低いところのい

ずれか。またそれはなぜか? イオン交換水の伝導率の値も考慮に入れよ。

発展課題(SPACEコースでは必修)

7)

溶液の電気伝導率をホィートストンブリッジ(or コールラウシュブリッジ)を用いて測定する原

理を述べよ。単にホィートストンブリッジを説明するだけで済ませないように注意せよ。

8)

電気伝導率を測定するのに直流ではなく交流を用いる理由を説明せよ。

【参考文献】

1)

藤島昭, 相沢益男, 井上徹, 「電気化学測定法(上)」, 技報堂, p.36.

2)

3)

田村英雄, 松田好春, 「現代電気化学」, 培風蝕, p.12.

井口洋夫, 田中元治, 玉虫伶太, 「集合体の化学(上)」, 岩波書店, p.141.

4)

5)

大滝仁志, 田中元治, 舟橋重信, 「溶液反応の化学」, 学会出版センター, p.163.

W.J.Moor,

「新物理化学(上)」, 東京化学同人.

page 64

【参考:ポータブル電気伝導率計CM-14Pの使用法について】

図2 電気伝導率計本体

図3 電気伝導率セル

図4 伝導率計表示部 page 65

1000

分の1を示すm(ミリ)表示

の有無を見落とさないように

表示部

本器の大型液晶表示部には図10-18に示すように測定値と温度が表示される他にキー操作を行ったとき

表示されるものと、記憶されているデーターの表示およびチェック機能を表示するものがある。

①乾電池が消耗したとき点灯する。

②ATCで測定しているとき点灯する。

③測定値もしくは設定値を表示する。

④データが記憶されたとき表示する。

⑧温度係数設定時点灯する。

⑨温度の測定値を表示する。

⑩KEY LOCKキーを押し、キーがロックされと

 とき点灯する。

⑤セル定数設定時に点灯する。 ⑪オートパワーオフが有効なときに点灯する。

⑥データの記憶を実行しているとき点灯する。 ⑫AUTOレンジで測定しているとき点灯する。

⑦メモリデータを呼び出したとき点灯する。 ⑬AUTO HOLDキーを押し、測定値をホールドした

 ときに点灯する。

測定する前に次のことに注意する。

①電気伝導率セルの外筒がゆるんでいないか。 ②溶液温度が80℃を超えていないか。

被検液の測定

①電気伝導率セルの電極部分を被検液で共洗いする。

②電気伝導率セルを気泡排出孔まで十分被検液に浸す。(図5-(a))

③電気伝導率セルの極および極間に気泡が付着すると測定誤差を生じる。

電気伝導率セルを2、3度上下に振って、完全に気泡を追い出す。(図5-(b)、(c))

④表示値が安定したらその数値を読む。このとき温度も読む。

(なお、ATCのON/OFFを確認する。)

⑤電気伝導率セルをイオン交換水でよく洗う。

以上で測定は終了。続けて測定する場合は①から繰り返す。

   (a)           (b)            (c)

図5 電気伝導計の測定 page 66

【レポート作成でひとこと】

その4:論理性の有無について

レポート課題 6)「平衡定数

Kがずれるのは濃度の薄いところ、濃いところどちらか」に対し、一見する

と聞こえがよいが、明らかに間違った解答が出回ったことがあるので紹介しておく。

出回ったのは以下の例である。

Kのずれの値が大きいのは[課題5)]から濃度の薄いところである。

K

=

(

L

2

c

L

)

 の式からΛ∞は3.905×10-2 S・m2・mol-1、 cが小さくなる方向に考えると、Λのずれが Kのずれになっている。

また 

L = k

1000c

 であり、ずれの原因はκにあることがわかる。 k

=

1 r

である。この式からρ(=抵抗率)がκのずれに関わっているといえる。

ゆえに、濃度が低いものの方が Kの値のずれが大きい。

 細部にもおかしいところが多いが、最大の問題は「ゆえに」までの文章が、「濃度が低いものの方が

Kの値のずれが大きい。」という結論の理由になっていないところである。

 最初に「cが小さくなる方向に考えると、Λのずれが

Kのずれになっている。」という前提を置いて

いるが、この根拠が示されていない。すなわち、

K

=

(

L

2

c

L L • L

)

の式でcが小さい場合にΛのずれが

Kのずれに対して支配的である理由が述べられていない。この理由は解答の根幹を成すきわめて重要な

部分であるが、決して自明といえるほど明らかではない。(cのずれを考慮していない)

 仮に「cが小さい場合に、Λのずれが Kのずれに対して支配的である」ことを認めたとしても、その

先の文章は ρ → κ → Λ → K の順で数値のずれが伝わると述べただけである。なぜρにまでさか

のぼって引用する必要があるのか、その理由はここには一言も書かれていない。ρのずれが原因だとし

て、それが濃度の大小とどのような関係にあるのか、何も述べていない。すなわちΛのずれがρに起因

することを述べた部分は完全に無駄な文章である。

その他のおかしい部分を示す。

・「

K

=

(

L

2

c

L

)

の式からΛ∞は3.905×10-2 S・m2・mol-1」と述べているが、Λ∞の値はこの式

から求めているわけではない。しかも以降の文章でΛ∞の値は引用していない。(無駄である)

・「cが小さくなる方向に考えると、Λのずれが Kのずれになっている。」と述べているが、cが小さ

くなる方向でも大きくなる方向でも、Λがずれれば Kの値はずれる。なおかつ、この式でKのずれ

の原因をΛのみに帰着させる根拠がない。cがずれても Kの値はずれる。

教員(岩崎)よりコメント:

 一見すると「科学的でかっこいい」表現が用いられた文章である。そのことが、「この考えは正し

い」と誤解する原因かもしれない。しかし少し考えれば(本当に少しでよいから考えれば)論理性を欠

いた文章であることは明らかである。

 文章一つずつ、述べていることが根拠のあることか、自分の思いこみを前提にしていないか確認して

見てほしい。

 余談であるが、悪徳商法では耳に心地よい「かっこいい表現」で被害者を陥れるらしい。如何に心地

よい表現であってもその中身をきちんと理解し、吟味する姿勢を重視してほしい。 page 67

実験9 シリカゲルの合成

【目的】

 無機材料の合成法として多用されているゾル−ゲル法を用いて、吸着剤や乾燥剤の基本材料であるシ

リカゲル(silica-gel:SiO

2

)

を合成する。この合成法を習得するとともに、シリカゲルの乾燥状態と吸湿

状態の間の重量変化を調べ、単位重量当たりの吸湿量を測定する。

【解説1:ゾルーゲル法】

 無機材料の中で重要な位置を占める「セラミックス」は、例えば陶磁器、ガラス、セメントなど、一

般に金属塩などを焼成して得られる無機酸化物の総称である。しかし近年は、シリコンなどの半導体金

属、また炭化物や窒化物など酸化物以外のものもセラミックスに含まれるように解釈されている。これ

らセラミックスは、含まれる成分やそれら原子・分子が形成する構造・組織によって様々な物性を示す

ことから、必要な合成条件を用いて任意の材料を合成し材料を創製することができる。現在では工業的

に広く用いられており、様々な多機能性セラミックスの合成に応用されている。

 本実験では、代表的な無機合成法でありシリカ(SiO

2

)系材料

の基本的な調製法として確立しているゾル−ゲル法を用いたシリ

カゲルの合成を行う。このゾル−ゲル法は、金属(この実験では

ケイ素)の有機および無機化合物の溶液をゲル(gel)として固化

し、ゲルの加熱によって酸化物の固体を作製する方法である。

 原料化合物 

溶媒

溶 解

反 応

(加水分解・重縮合)

触媒

【解説2:シリカゲルの合成】

 ゾル−ゲル法によるシリカゲルの合成の流れは右の図1のよう

にまとめられる。まず、原料となる金属化合物を溶媒と混合(溶

解)させ均一な状態とする。一般にゾル−ゲル法では、原料に金

属アルコキシド(本実験ではオルトケイ酸テトラエチル、略称

TEOS

、Si(OC

2

H

5

)

4

)が用いられる。本実験では行わないが、複

数の成分を混合したゲルを合成する場合は、この時点で混合溶液

をつくることで多成分ゲルの調製も可能である。この原料金属の

溶解状態に水を少量ずつ加えると、溶液中で加水分解が起こる。

本実験におけるシリカゲルの合成では、この加水分解により(1)式

の反応が進行し、水酸化物であるSi(OH)

4

が析出する。

   

C

2

H

5

O

OC

2

H

5

Si OC

2

H

5

OC

2

H

5

+ 4 H

2

O HO

OH

Si

OH

OH

 生成物 

図1 合成の流れ図

+ 4 C

2

H

5

 重合体 

固 化

乾 燥

加熱処理

OH

 ・・・(1)

ここで析出した水酸化物は、生成した直後は水和錯体(アコ錯体)の状態となるため粘性はほとんどな

いが、さらに混合後の撹拌を続けることにより、脱水縮合と呼ばれる水酸化物同士の縮合が起こる。こ

の縮合反応の最初のステップのみ反応式で示すと、(2)式のようになる。

   

2 HO

OH

Si OH

OH

HO

OH

Si

OH

O

OH

Si

OH

OH

+ H

2

O

 ・・・(2) page 68

 この反応は縮合後も連鎖的に進行し、隣り合った水酸化物同士で脱水の過程を繰り返す、いわゆる重

縮合の反応が進行する。すると、生成した縮合体は粘性をもったゲルの状態へと変化する。このゲルの

大きさや密度は、合成の条件(原料や溶媒量、温度など)によって様々に変化する。

 ゲルの生成後、これを固化・乾燥(加熱)することにより、目的のシリカゲル固体ができる。固化の

段階では、溶媒および過剰の水を減圧下にて加熱し除去することにより、ゲル以外の成分をほとんど除

去することが出来る。固化後、目的の形状に成形する等の操作を経て、乾燥および加熱処理を行う。こ

れにより、ゲル成分以外の溶媒等が完全に揮発(または燃焼)するとともに、進行中の脱水縮合も高温

によって促進され、緻密な固体へと変化する。この際、縮合体同士の界面(粒子同士の境目)で新たな

縮合が進行するため、最終的なゲルは不連続な組織が3次元的に重なり合った、非晶質な(結晶性でな

い)物質として形成される。これにより、シリカゲルは無数の微細な孔(穴)をもった広い表面積を有

する物質となり、吸着剤・吸湿剤や多孔質担体など多方面に利用可能な材料となる。

【解説3:シリカゲルの合成条件】

 合成に用いる各成分のうち、TEOSはシリカゲル(SiO

2

)

のケイ素源となる出発原料、エタノールは溶媒

である。水は加水分解のための試剤であり、微量添加する塩酸またはアンモニアは加水分解および重合

速度を調節する触媒の役割を果たす。本実験では加水分解速度を速めるために塩酸を添加する。

 参考までに、出発原料化合物の沸点・比重・分子量を示す。(計算に用いる際は、有効数字に気をつ

けること。)

表1 シリカゲル合成における出発原料の諸物性値.

原料化合物・溶媒

TEOS

水 エタノール

沸点 /℃

比重 (d 20

)*

分子量

169

0.94

208.3

100

1.00

18.02

78.3

0.79

46.07

5N

塩酸

1.08

36.46**

*4

℃のH

2

O

(密度d=0.999973g/cm

)に対する、20℃での各化合物の重量比.

**HCl

の分子量.

【試薬と器具】

オルトケイ酸テトラエチル(略称TEOS:Tetraethyl orthosilicate. Si(OC

2

H

5

)

4

エタノール(洗浄びん)

メスシリンダー(各試薬に一つ)

電気ポット

すりあわせナス型フラスコ(300㎖)

トラップ球とアダプタジョイント

ビュレット

スタンドおよびクランプ

温度計

撹拌棒

プラスチック薬さじ(大型)

塩酸(5N = 5 mol/ℓ)

ウォーターバス

乾燥器(約200℃)

水流アスピレータ

スターラー(大型)および撹拌子

プラスチッククリップ

アルミニウム箔

コルク製フラスコ台

磁製ルツボ

ビーカー(200㎖) トング

原子量 C:12.011  H:1.0079  O:15.9994  Si:28.09

この実験は、各手順で時間を要するため、要領の悪い実験の進め方では実験の終了までに相当

な時間を要する上、油断をすると大変危険な実験である。よく実験手順を予習し理解した上

で、時間の無駄がないよう班全体で協力し分担して慎重に実験に取り組むこと。 page 69

【実験操作1:シリカゲルの合成】

今回のシリカゲル合成で用いる出発原料の容量(容積)を表2に示す。なお、添加剤としての水

は、5N塩酸中の水成分をそのまま用いるため、純水を別に添加することを要しない。なお、表1

および表2で示した数値を用いて、各成分(TEOS、H

2

O

、C

2

H

5

OH

、HCl)の含有量およびそれ

らの分子比を算出する事が出来る。(レポート課題)

表2 シリカゲル合成における出発原料の容量

原料化合物・溶媒

TEOS

エタノール

5N

塩酸

用いる体積(㎖)

44.5

23.3

10.0

《実験上の注意》使用する器具は計量前に必ず共洗いをし、絶対に水が混入しないよう注意する

こと。とくに、TEOSは吸湿性があるので、取り出し後の試薬ビンのフタはすぐ閉めるとともに、

手早く操作を行うこと。液体試料の計量には、メスピペット、ホールピペットまたはメスシリン

ダーを用いよ。

1.原料溶液(ゲル化前の溶液)の調製

300

㎖ナス型フラスコ(必ずエタノールで共洗いせよ)に撹拌子を入れる(入れ方注意!!)。

撹拌子

大きめのフラスコ

上から落として入れると

ガラスが割れる

図2 撹拌子の入れ方の注意

傾けて滑らせて入れる

これにTEOS(液体) 44.5 ㎖を入れる。この時点でフラスコに入れたTEOSに白濁が生じた場合

は、フラスコ内に水が残っていたことが原因として考えられるので、もう一度最初(共洗い)か

らやり直す。

スターラーの上にウォーターバスを置き、ウォーターバスに水が十分入っていることを確認して

水温が45∼50℃になるようセットする。必要に応じてウォーターバスにも別の撹拌子を入れて撹

拌してよい。水温が目標温度に到達後、ナス型フラスコをウォーターバスの中央にセットする。

その際にはスタンドをウォーターバス横に設置し、クランプでナス型フラスコを固定しウォー

ターバス内で浮いたり傾いたりしないようにすること。これらの完了後、スターラーを回してフ

ラスコ内の溶液を撹拌する。

2.溶媒+水+触媒混合液の調製

200

㎖ビーカーをエタノールで共洗い後、エタノール23.3㎖(溶媒のエタノール量は厳密でなくて

も実験には大きく影響しない)、5N塩酸10.0㎖を混合した溶液(溶媒+水+触媒)を調製する。

なお、水は5N塩酸中に含まれる水を用いるので、新たに加える必要はない。混合後、撹拌棒を用

いて均一になるまで撹拌する。また計量する容器は計量前に各液体で必ず共洗いせよ。ビュレッ

トをエタノールで共洗い後、ナス型フラスコの口の部分から滴下できるようスタンドにクランプ page 70

でセットする。ビュレットのコックが閉じていることを確認し、混合液をビュレット上部から

ロートを使って充填する。この実験では、ビュレットはこの混合液をゆっくり滴下するために用

いるだけなので、ビュレットの目盛を読み取る必要はない(混合液は全量を滴下に使う)。

3.ゲル化(加水分解)および縮合反応

 ビュレットから混合液をナス型フラスコ内の溶液にゆっくりと滴下し混合する。このとき必ず

スターラーで撹拌した状態であること。また、ビュレットからの滴下が早すぎると大きな塊の白

濁を生じ、適切な合成ができない。ビュレットから線状に混合液を滴下しないよう注意せよ。

 滴下中の溶液内には、わずかに白い濁りをもったシリカゲル前駆体が生成する。ビュレットか

ら全量を滴下後、45∼50℃を保ったまま30分間撹拌する。こうしてゆるやかな縮合を進める。

4.固化処理

 以下の固化処理の間はフラスコ内のゲ

ルの様子をよく観察すること。ただ眺め

るだけでなく、様子をノートに記録する

こと。

 生成したゲルを固化して取り出すた

め、溶媒と過剰の水を減圧除去する。

ビュレットを移動し、図3のようにナス

型フラスコの上にトラップ球を接続(ク

リップを用いて固定)、さらにトラップ

球上部にガラスのジョイントを同様に接

続する。

 水流アスピレータに水を流して排気を

始め、吸気用のゴム管にピンチコックを

取り付け、完全に閉めておく。このと

き、吸気状態と閉鎖状態の音の違いを覚

える。

アダプタ

ジョイント

クリップ

クランプ

スタンド

→ゴム管で

 アスピレータへ

トラップ球

ナス型

フラスコ

撹拌子

ウォーターバス

スターラ

図3 固化処理時の器具の組み立て

 吸気用ゴム管の末端をガラスのジョイントに接続し、ピンチコックを徐々に開けて系内を減圧

状態にする。排気開始直後は激しい突沸が起こるので、撹拌子がよく回転していること、温度が

50

℃以上に上がっていないことを必ず確認してゆっくり排気を始める。排気を開始して最低10分

程度は、低沸点のエタノール溶媒の気化により激しく突沸するが、エタノールがほぼ揮発し終わ

ると系内の突沸が収まる。この過程で徐々にピンチコックを開いていき、最終的には全開にす

る。

 静かな発泡が続く状態になったら、70℃付近までウォーターバスの水温を上昇させ、より沸点

の高い水を揮発させる。徐々に溶液の粘性が上がる。

 フラスコの内容物が水飴状になり、撹拌子から離れた部分からも気泡が出るようになったら、

内容物が温度の高い水浴の上層で加熱されるようにクランプ位置を調整する。この時点で吸引を

停止してもよい。

アスピレータ停止方法注意:アスピレータは先に水流を止めると逆流する!!

アスピレータが排気をしている状態のまま、アダプタジョイントから排気用ゴム管を外す。排気

用ゴム管が空気を吸い続けている状態にしてから水流を止める。 page 71

さらにウォーターバスの温度設定を100℃まで上げて充分に加熱する(やけどに注意)。

 これ以降は必ずしもうまく撹拌できないが、気にせず加熱を続けること。水分が充分に残った

状態で縮合、高分子化を進めないと、あとで堅く固まってしまい、薬さじでは容易に取り出すこ

とが出来なくなる。

5.取り出し

 フラスコを少し揺するか傾けるかして、内容物の液面が揺れない状態まで固まったら、ウォー

ターバス、スターラをともにOFFにしする。

 フラスコを水浴から取り出し(火傷に注意)、室温まで放冷する。この間に、取り出し用の200

㎖ビーカーを秤量しておく。この時点でトラップ、アダプタジョイントなどは外してよい。

 放冷後、フラスコ内の固化したゲルを可能な限りプラスチックの薬さじで取り出し、秤量した

200

㎖ビーカーに入れる。飛散防止のためビーカーににアルミ箔を軽くかぶせ、上部にいくつかの

穴をあける。このビーカーを約80℃の乾燥器に入れ、少なくとも30分間放置し乾燥させる。この

時点で残存する塩化水素が気化して放出されるので注意すること。

6.焼成(最終的な熱処理)

乾燥後のゲルに水分がなくなった状態であれば、アルミ箔をはずし、200℃に加熱した電気炉に

ビーカーごとトングを用いて移して焼成する。30∼60分の加熱処理で吸着水脱離やシリカゲルの

脱水縮合が完了する。

 合成した(焼成の終えた)シリカゲル試料はトングを用いて電気炉から取り出し、約15分放置

して室温まで放冷する。秤量して収量を算出する。また、完全にSiO

2

に転化したという前提で収

率を計算する。

【実験操作2:シリカゲルの吸湿性の評価】

《注意》以下の操作で、(後片づけ以外では)磁製ルツボ・フタの操作時は絶対に手でさわらな

いこと。すべてトングを用いて取り扱うこと。(実験10の図2を参照)

1.吸湿前の秤量

あらかじめ、空の磁製ルツボ(本体とフタ)を、80℃の乾燥器に10分以上入れておく。

この空の磁製ルツボをトングで取り出し、電子天秤でるつぼ全体(本体とフタ)を0.0001g

(=0.1mg)単位で秤量する。これを

x

1

(g)

とする。

つぎに用意されたシリカゲル粉末*から約0.5 gを電子天秤で量り取る。計量したシリカゲル試料を磁

製ルツボに移してフタをし、0.0001g(=0.1mg)単位で秤量する。これを

x

2

(g)

とする。

※薬包紙に載せた量とるつぼに入った量が等しくなるという保証はない。

この二回の秤量値の差

(

x

2

-

x

1

)

がシリカゲルの吸湿前重量となる。

*

各班で合成したシリカゲルを使用したいところではあるが、時間の都合上間に合わないので用意さ

れたシリカゲル粉末(青い指示薬入り)を用いる。

2.吸湿処理

※以下の操作は手早く行うこと。

 空のビーカーに電気ポットから温水を約10∼15㎖取り、これを別の空の磁製ルツボ(フタは使わ page 72

ない)に移して実験台の上に置く。その隣にシリカゲルの入った秤量済みの磁製ルツボ(フタを外

す)を置く。空の500㎖ビーカーを用意し、2つの磁製ルツボを覆うように下向きに置く(図4)。

こうするとビーカー壁面に水滴が付く状態となる。この状態で15分間放置し、シリカゲルに水蒸気

が触れやすい状態をつくる。(転倒に注意)

3.吸湿後処理

 15分経過後、500㎖ビーカーを外してシリカゲ

ルの入った磁製ルツボを取り出し、フタとともに

80

℃の乾燥器に移す(壁面などに付着した余分な

水分を乾燥除去するため)。このとき、乾燥器内

ではフタをしないで(ルツボの近くに一緒に置

く)2∼3分間乾燥させる。乾燥後、壁面の余分な

水分が除去されていることを確認し(まだ残って

いる場合はさらに乾燥を続ける)、乾燥器から取

り出してフタをし、室温まで放冷する。

4.吸湿後の秤量

シリカゲル

試料

温水

500

㎖ビーカー

下向きに伏せて使う

磁製るつぼ(フタなし)

図4 吸湿性評価実験の概略図

放冷後、吸湿後のシリカゲルの入ったるつぼ全体(本体とフタ)を0.0001g単位で秤量する。これを

x

3

(g)

とする。以上より、吸湿後のシリカゲルの重量は

(

x

3

-

x

1

)

となり、吸湿量は

(

x

3

-

x

2

)

によっ

て求められる。これらの値から、シリカゲル 1 g当たりの吸湿量を求めることが出来る。

【後片付け】

用いた器具類はすべて水洗し、所定の場所に戻す。なお、本実験で出た廃液は、TEOS原液と塩酸を

除いて通常の排水に流しても差し支えない。

得られたシリカゲルは、希望する者は持ち帰ってもよい(容器を支給する)。捨てる場合はガラス

廃棄物と同じ場所に捨てること。

【レポート課題:*は当日課題】

1)*

今回のシリカゲル合成実験で、出発原料として用いた試薬(TEOS、エタノール、5N塩酸)の容

量は表2の通りである。表1、2の値から、TEOS、H

2

O

、C

2

H

5

OH

、HClの各成分の含有量(g)

およびそれらのモル比を、表1の各値を用いて算出せよ。結果はTEOSを1としたときのH

2

O

C

2

H

5

OH

、HClの分子比(モル比)を有効桁数2桁で示せ。

ヒント:5N塩酸はH

2

O

とHClのみを成分とすると仮定せよ。

2)*

得られたシリカゲルの収量と、(TEOSを基準とする)収率を報告せよ。

テキストに指示された計算方法では、収率はおおむね120∼150%程度に算出される。100%を越

えてしまう理由を考察せよ。

3)*

吸湿性評価試験の結果から、以下の値を算出せよ。

シリカゲル試料1 g当たりに吸着したの水の重量(g)

シリカゲル試料1 g当たりに吸着したの水の分子数

4)

シリカゲルはおよそ500m

2

/gの表面積を有する。この値と吸湿性評価試験の結果を用いて、シリ

カゲルの表面1m

2

当たりに吸着したの水の分子数を算出せよ。 page 73

※何らかの事情で吸湿性評価試験で負の吸着量となった班は、3)の課題の吸着重量を

Xg(H

2

O

)/g(シリカゲル)として、課題の分子数を

Xを含む式で示せ。

5)

「ゾル−ゲル法」において、「ゾル」とは何か。またこれに対して「ゲル」とは何か。両者の違

いが明確にわかるように説明せよ。

発展課題(SPACEコースでは必修)

6)

シリカゲル合成の際に加える塩酸(HCl)は酸触媒として働くが、具体的にどのような触媒作用

を与えるか。反応機構の立場から述べよ。また、酸ではなくアンモニア水(NH

4

OH

)のような塩

基を加えた場合はどのような作用を与えるか。やはり反応機構を考察して述べよ。

※有機化学の教科書類で、カルボカチオン、アルコールの脱水、エーテルの合成、2分子求核置

換反応(SN2反応)などについて調べると、反応機構が類推できる。

7) TEOS

を原料としたシリカゲル合成では、[1]式のようにTEOS1分子に対して4分子のH

2

O

が反応

に使われる。しかし、課題1)で算出された分子比ではTEOS:H

2

O

の分子比は1:4でなく、むし

ろH

2

O

が少ない条件となっている(これが合成に適した比であるため)。その理由を考察せよ。

ヒント:TEOSからSiO2が得られる反応がトータルの反応であるととらえる。完全にSiO2が得ら

れるとするならば、TEOSに対して何倍のH

2

O

で充分か算出するとよい。

参考文献:作花済夫著「ゾルーゲル法の科学」アグネ承風社 (1988).

page 74

実験10 結晶水の測定:熱重量分析

【目的】

 重量分析は、定量したい目的成分またはその成分を含む一定組成を示す化合物を重量によって分離す

る方法で、その重量を秤量し変化を観察することにより目的成分の含有量を求める分析法である。本実

験では、重量分析の基本的操作を習得するとともに、これを応用した結晶水の定量を行う。

なお、本実験は班単位ではなく個人単位の実験とする。

【解説1:結晶水の熱的変化の測定】

 本実験では試料として硫酸銅五水和物(CuSO

4

・5H

2

O

)、硫酸鉄(II)七水和物(FeSO

4

・7H

2

O

)硫酸

コバルト(II)七水和物(CoSO

4

・7H

2

O

)、硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO

4

・6H

2

O

)などを用いる。硫

酸銅五水和物を例に取ると、明記されている結晶水は「五水和物」、すなわち硫酸銅(CuSO

4

)1モル

あたり5モルの水(H

2

O

)が結晶水として存在していることになるが、この結晶水の分子数は室温での

保存状態など周辺環境によって変化する。そこで本実験では、実際に含まれる結晶水の正確な定量を試

みる。

 結晶水の定量にはいくつかの手法があるが、本実験では揮発法を用いる。固体(液体でも可)を加熱

あるいは化学的処理をして気体を発生させ、これに適当な吸収剤に吸収させてその重量増加分から揮発

した成分の量を求めるか、または試料から放出された成分の重量減少から揮発成分の定量を行う方法を

揮発法という。

 純粋な硫酸銅五水和物を100∼110℃に熱すると、(1)式に示すように4分子の水分子を放出し青白色

の硫酸銅一水和物(CuSO

4

・H

2

O

)となる。

CuSO

4

5H O

2

CuSO

4

H O

2

+

4H O

2

・・・(1)

 よって、重量のわかった磁製ルツボに一定量の硫酸銅五水和物(CuSO

4

・5H

2

O

)結晶をはかりとり、

これを空気中で110℃に熱して結晶水を脱水させる。この際の重量減少分から脱離した水分子の重量を

求め、水分子数を計算する。

参考までに、本実験で用いる他の金属硫酸鉛について、章末の文献に記載の加熱脱水反応を示す。

〔 硫酸コバルト(II) 〕

CoSO4・7H2O → CoSO4・6H2O + H2O(41.5℃)

CoSO4・6H2O → CoSO4・H2O + 5H2O(71℃)

※章末の参考に示したTGA曲線において、41.5℃付近に重量変化が観測されないことを考える

と、本実験で用いる市販品はすでに6水和物となっている可能性が高いと考えられる。

〔硫酸鉄(II) 〕

FeSO4・7H2O → FeSO4・4H2O + 3H2O(56.6℃)

FeSO4・4H2O → FeSO4・H2O + 3H2O(65℃)

※ 室温でも表面から一部脱水している部分(白濁部分)がある。また空気中で酸化され、水酸化

物を含む褐色のFe(III)化合物になりやすい。 page 75

〔 硫酸ニッケル(II) 〕

NiSO4・6H2O → NiSO4・H2O + 5H2O(100℃)

※ 章末のTGA曲線に示すように、脱水にはやや時間がかかる傾向がある。

【解説2:デシケータの取扱い方、図1参照】

・図1のように、底面部には乾燥剤としてシリカゲルが敷いてあ

り、これが青色になっていることが使用できる条件である。シリ

カゲルは塩化コバルト(II)(CoCl

2

)修飾*によって着色されてお

り、乾燥状態では青色、吸湿状態では薄桃色に呈色する。すべて

桃色に変色している場合はシリカゲルの交換が必要である。

*

近年廃棄物の有害性を問題視する観点から重金属を用いた指示薬

は敬遠されるようになり、有機指示薬に置き換わりつつある。た

だし乾燥時・吸湿時の色は塩化コバルトとほとんど変わりない。

・ルツボを出し入れした後は、必ずフタを閉めること。フタの開閉は、

図1 デシケータ

横方向にすべらせるようにして行う(単に置くだけではダメ)。ルツボは、右のようにデシケータ内

に水平に置く。

・デシケータを持ち運ぶときは、必ず両手でフタと本体の両方を押さえること。フタを落としたり、極

端に傾けないように注意する。

【解説3:トングの取扱い方、図2参照】

・図2の(a)のように持ってはいけない。実験台に置いたとき(b)のように先端が台に触れて汚染する。必

ず(c)のように持つこと。そうすれば、台に置いたとき(d)のようになり先端が台に触れないで置くこと

が出来る。

・トングの先端部が錆や腐食で汚れている場合は、アルミ箔などを巻いてルツボ等が汚染しないよう対

処する。

図2 トングの使い方 page 76

【実験上の注意】《重要》

 この実験は、恒温槽(ないしガスバーナー)で熱したルツボを熱い状態で取り扱う必要があるので、

火傷などには十分注意し、正確に取り扱うこと。当然の事ながら、熱したルツボなどを素手で触れるよ

うなことは絶対にないよう注意せよ(不明な部分は適宜、指導を受けること)。とくに、トング(金属

製のはさみ)の使い方は注意が必要であり、上記の使い方をよく読んで取り扱うこと。今回の実験で

は、最初の清浄の操作と後片付けを除いては、ルツボの操作にはすべてトングを用い、絶対に手で触ら

ないこと。(熱いからだけでなく、重量誤差の原因となるためである。)

【試薬と器具】

磁製ルツボ(容量 約25㎖)

デシケータ

硫酸銅五水和物(CuSO

4

・5H

2

O

電子天秤(0.0001g単位)

トング

硫酸鉄(II)七水和物(FeSO

4

・7H

2

O

硫酸コバルト(II)七水和物(CoSO

4

・7H

2

O

)(市販品であり、六水和物なっている可能性もある)

硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO

4

・6H

2

O

乾燥器(220℃加熱)

定温乾燥器(GCの恒温槽を流用、各脱水温度に設定してある)

アルミ箔

(ガスバーナー)

金属皿

(三角架、三足台)

参考:各元素の原子量

Cu

:63.55

Fe

:55.85

H

:1.008

O

:15.999

Co

:58.93

S

:32.066

Ni

:58.69

【実験操作1:ルツボの恒量値の測定】

1. 容量約25㎖の磁製ルツボとシャーレを洗浄する。シャーレは本体、ふたのいずれか一方でよい。

ルツボに固形物が残っているときは所定の場所に捨てる。壁面に付着した汚れは、クレンザーや

ブラシなどを用いて研磨して取り去る。なお、金属化合物を磁製ルツボ内で強熱した場合、強熱

後にルツボの内部が着色することがある。この現象による重量変化への影響はほとんどなく、本

実験には支障をきたすことがないので、そのまま使ってよい。

※強い汚れは、濃塩酸または濃硝酸に浸漬すると落ちることが多いが、本実験では時間の都合上

省略する。

2. 洗浄したルツボをシャーレに載せ(図3)、乾燥機(200∼220℃)内部の棚で約20分間加熱す

る。シャーレはるつぼの出し入れを容易にするために用いる。秤量時はルツボのみを秤量する。

フタ

本体

加熱時

シャーレ

図3 加熱時・秤量時のるつぼの置き方

秤量時 page 77

乾燥機などへの出し入れの際は、ルツボをトングで持つと落として破損しやすいので、シャーレ

ごと出し入れすると簡単である。シャーレに限り、軍手で持っても構わない。

※この作業は本来、ガスバーナーを用いてルツボが赤熱するほどの加熱を要するが、本実験では

 設備の都合上、乾燥機による加熱で代用する。

3. ルツボが冷めないうちに、トングを用いてルツボをデシケータの中に移し、放冷する。

4. デシケータに移してから15分後(JIS規格では30分後)、トングを用いてルツボをデシケータか

ら取り出し、速やかに電子天秤で(フタも含めたルツボ全体を)0.0001g(=0.1mg)単位で秤

量する。

5. 再び2∼5の操作を繰り返す。

秤量の結果、1回目と2回目の重量の差が0.6mg以下(JIS規格では0.3 mg以下)であれば次へ進

み、それ以上であればもう一度、重量差0.6mg以下に達するまで2∼5の操作を繰り返す。

ただし、本実験では時間的制約のため、3回加熱、秤量しても重量差が0.6mg以下にならない場

合は、最後の2回の平均値を恒量値として次へ進む。

6. 秤量2回分の結果の平均値を、ルツボの恒量値(厳密な重量値)として記録する。

ルツボは再びデシケータの中に移す。

【実験操作2:結晶水の定量】

1. 指示された試料(例えばCuSO

4

・5H

2

O

)の粉末約1.0 g を薬包紙を使ってはかりとる。

※各自がどの試料を測定するかは当日発表する。

2. 恒量値を記録したルツボ(デシケータ内)を取り出し、計量した試料をルツボにすばやく移し入

れ、フタをする。これが完了後、電子天秤で全体(ルツボ+試料)を秤量する。

※ 薬包紙で秤量して、再度この状態で秤量する意味、理由をよく考えよ。

3. 計量の終わったルツボ(試料粉末が入った状態)を、フタをず

らした状態で恒温槽へ入れて加熱する。今回用いる恒温槽はG

Cを流用したものであり、ルツボを清浄なシャーレに載せ、風

と塵よけに100㎖の清浄なビーカーをかぶせるとよい(右図参

100

㎖ビーカー

るつぼと試料

シャーレ

照)。シャーレとビーカーは外側に限り軍手(ないし素手)で

触れてもよい。

 この加熱の際、ルツボのフタは少しずらして載せて、ルツボ本体と一緒に加熱する。この状態

で、最低でも40分間(JIS規格では60分間)は恒温槽内で加熱する。※待ち時間が長い実験であ

るが、待ち時間を利用して理論値(予想値)の計算を充分に進めておくこと。

設定温度は以下の通りとする。

 硫酸銅(II): 110℃

 硫酸コバルト(II): 150℃

硫酸鉄(II): 150℃

硫酸ニッケル(II): 170℃

硫酸ニッケル(II)は脱水にやや時間がかかる傾向があるが、実験時間はテキスト記載通りで行う。

4. 加熱完了後、トングでデシケータ内に移し、ルツボにフタをする。デシケータのフタをした状態

で10分以上放冷する。

5. 放冷後、デシケータからルツボを取り出し、手早く秤量する。

秤量値を1回目の加熱重量とする。

6. 計量したルツボを、再び恒温槽に入れて加熱する(3.で行った操作を繰り返す)。この状態

で、最低でも30分間再加熱する。 page 78

7. 再加熱後、4∼5の操作を繰り返し(デシケータに移して10分放冷後、電子天秤で秤量)、計量

した値を2回目の加熱重量とする。

8. 1回目と2回目の秤量値の差が1.0mg以内となったならば、恒量値に達したとして記録する。秤

量値の差がこれより大きい場合は、6∼7の操作を恒量値に達するまで繰り返し行う。ただし、

本実験では時間的制約のため、3回加熱、秤量しても重量差が1.0mg以下にならない場合は、3

回目の秤量値を恒量値としてよい。また、加熱前後の試料の色の変化についても記録せよ。

【後片付け】

・ルツボから試料粉末を取り出し、所定の回収容器に入れる。

・ルツボをよく水洗し、ルツボ内に残らないよう洗浄する。洗液は廃液入れ(無機重金属-水溶液系)に

入れる。ルツボやトング等は所定の場所に戻す。

【レポート課題:*は当日課題、特に指示のない限り、終了報告も個人単位とする。】

1)*

今回の実験で得た測定値をもとに、以下の測定値および計算値をまとめよ。化学式量は、有効数

字にも気をつけて各自で計算せよ。

① ルツボの恒量値  ② 秤量した試料の重量

※② は薬包紙上の重量ではない。この実験における計測と計算の意味を考えること。

③ 試料の加熱重量

④ 加熱により減少した重量の、試料重量(②)に対する重量百分率(%) ・・<実験値>

⑤ 試料中のn個の水分子の重量百分率(%)・・<理論値>

 ※nは解説を参照し、各自の試料の数値を当てはめて考える。

2)*

実験値と理論値の誤差、および誤差率(%)を算出し、その誤差の原因を列挙せよ。

※単に「操作が悪かった」などの曖昧な表現では理由にならない。どのように悪かったのか具体

的に記述し、誤差の正負も含めて因果関係を考察、論述すること。

3)

硫酸銅五水和物(CuSO

4

・5H

2

O

)について参考書などから結晶中の構造を調べよ。その構造をふ

まえて、CuSO

4

・5H

2

O

の5分子の結晶水のうち、4分子が残りの1分子に比べて低い温度(100∼

110

℃)で脱離する理由を推測せよ。

おそらく配位結合(共有結合の一種)、水素結合をキーワードとする理由が見つかるであろう

が、その理由は水和した化合物全般にあてはまる一般論か、それとも硫酸銅五水和物に限った理

由かも考えよ。

発展課題(SPACEコースでは必修)

4)

加熱の前後でどのように試料の色が変化したか述べよ。また、その色の変化と加熱との関係につ

いて調べ、色の変化した理由を考えよ。単に「色の違う物質になったから」という主旨ではまっ

たく説明にならない。(ヒント:実験5)

5)

硫酸銅五水和物からの結晶水の脱離を脱水反応((1)式)として考え、この反応における反応熱

(定圧反応熱)を文献類から調べて計算せよ。吸熱・発熱の区別を明確にして答えよ。脱水する

H

2

O

を液体・気体のどちらと仮定して計算したかも明示せよ。 page 79

※ 実験結果の記録および計算の例を示すので参考にしてほしい。

必ずしもこの通りに整理する必要はないが、他人が見てわかりやすく、検算もしやすいことが重

要である。

(計算例)

・第1回強熱後のルツボの重量

・第2回強熱後のルツボの重量

= 18.6500 (g)

= 18.6509 (g)

・ルツボ+硫酸銅五水和物の重量

・秤量した硫酸銅五水和物の重量*

・第1回加熱後のルツボ+硫酸銅五水和物の重量

・第2回加熱後のルツボ+硫酸銅五水和物の重量

・第3回加熱後のルツボ+硫酸銅五水和物の重量

= 19.6178 (g)

= 0.9678 (g)

= 19.3403 (g)

= 19.3391 (g)

= 19.3390 (g)

・加熱による重量減少 19.6178 (g)−19.3391 (g)

= 0.2787 (g)

・加熱による重量減少(4分子の水の)の重量百分率<実験値>

            ( 0.2787/0.9678)×100

・4分子の結晶水の重量百分率<理論値>

= 28.80 (%)

  (4×H

2

O

の分子量)/(CuSO

4

・5H

2

O

の化学式量)×100 = [ A ] (%)

誤 差:(実験値)−(理論値)= 28.80 (%)−[ A ](%) = [ B ](%)

誤差率:(誤 差)/(理論値)×100 = [ B ]/[ A ] ×100 = [ C ](%)

*

「秤量した硫酸銅五水和物の重量」とは、薬包紙で量った重量ではない。この

実験における計測と計算の意味を考えること。

(文献)

"THE MERCK INDEX, an encyclopedia of chemicals and drugs, ninth edition", Martha

Windholz ed., MERCK&CO., INC page 80

【参考:熱重量分析(TGA)】

 この実験では設備の都合上、一定温度で加熱した試料を秤量するという形で測定を行った。通常の熱

重量分析では、試料を特殊な天秤に載せ、この状態のまま徐々に温度を上げて重量変化を記録する。す

なわち測定結果として、温度を横軸、重量(%)を縦軸とするグラフを得る。

 応用化学科 反応デザイン研究室(萩原研究室)の協力を得て各種硫酸塩の熱重量分析を行った結果

(TGA曲線)を以下に示すので、参考にしてほしい。

温度/℃

図4:硫酸銅(II)五水和物のTGA曲線

温度/℃

図5:硫酸鉄(II)七水和物のTGA曲線

温度/℃

図6:硫酸コバルト(II)六水和物(ないし

七水和物)のTGA曲線

温度/℃

図7:硫酸ニッケル(II)六水和物のTGA曲線 page 81

【レポート作成でひとこと】

その5:同義反復について

レポート課題 2)「実験値と理論値の誤差、および誤差率(%)を算出し、その誤差の原因を列挙せよ。」

に対し、一部の学生が陥りやすい解答を例示しておく。

以下に典型的な例を示す。

硫酸○○の重量減少が29.85%(実測値)であり、理論値の34.27%を下回った。

誤差は29.85−34.27=ー4.42%、誤差率は(ー4.42÷34.27)×100=ー12.9%

であった。誤差率がマイナスとなった原因は加熱後の実測の重量が理論値まで減少

しなかったためである。

 「誤差率がマイナスになった」ことと、「加熱後の実測の重量が理論値まで減少しなかった」ことは

本質的に同じことである。すなわちこの文章は、同じ内容を繰り返し述べているだけである。これは理

由、原因を掲げたことにならない。論理学でいうところの「同義反復(トートロジー)」に近い。

 以下の例と比較してみてほしい。

問 「なぜ夏は暑いのか?」

答 「夏は気温が上がるからである。」

問 「シマウマはなぜ縞模様なのか?」

答 「黒と白の毛が一定間隔で交互に生えているからである。」

前者ではすぐに「ではなぜ、夏は気温が上がるのか?」という疑問につながってしまう。後者も、「な

ぜ黒と白の毛が一定間隔で交互に生えているのか?」という疑問にぶつかる。いずれも原因を考えて説

明したことにならず、問題の解決に至らないのは明らかである。

※夏に気温が上がる最大の原因は、地球の公転面に対して自転軸が傾いているためである。夏と呼ばれ

る時期には太陽光の入射角が地表面に対して垂直に近づき、地表面の単位面積あたりに降り注ぐ光エネ

ルギーが他の時期と比べて大きくなるからである。

※シマウマの縞模様は草原で背景に埋もれて発見されにくくなるため、そのように進化してきたとする

説が有力である。

 この実験の課題で問われているのは、「加熱後の実測の重量が理論値まで減少しなかったのはなぜ

か」である。誘導、演繹しようとしている結論と本質的に同じ事象を述べても、それは理由、原因には

ならない。

 世の中には時として見過ごされやすい同義の事実もあるが、少なくとも今回の実験では「誤差率がマ

イナスになった」ことと、「加熱後の実測の重量が理論値まで減少しなかった」ことはまったく同義で

ある。

 転じて、「どうすれば誤差率がマイナスにならないような実験ができるか、実験上の工夫を考え、提

案せよ。」という課題が与えられた場合、前述の例の解答では何の解決も得られない。「加熱後の実測

の重量が理論値まで減少するようにする。」と答えても、具体的にどうすればよいのか何も述べていな

いのは明らかである。

 このレポート課題に限らず、同義の事実を繰り返し挙げたり、具体的言及を避けて抽象表現に逃げて

口頭試問やレポートを済ませようと試みる学生は、実は少なくない。しかし、当該学生にとっては残念

なことに、そのような解答では教員からさらに深い質問が返ってきて、追求に拍車をかけるだけであ

る。問題、課題の主旨をよく考え、真にその疑問に答える姿勢を重視してほしい。 page 82

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