○10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発

○10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
Jitter Tester for 10-Gbit/s Electrical Differential Signal and Optical Signal
小 川 幸 治 Yukiharu Ogawa, 西 小 原 匡 則 Tadanori Nishikobara, 山 口 和 彦 Kazuhiko Yamaguchi,
齋 藤 岳 人 Taketo Saito
[要 旨]
基幹通信網,伝送装置やそれらに用いられる光送受信器のジッタおよび BER 特性を測定する MP1590B ネッ
トワークパフォーマンステスタのプラグインユニットとして,10Gbit/s 電気差動インターフェースおよび光インター
フェースを備えた MU150121B 10/10.7G 送信オプティカル/エレクトリカルユニット,MU150123B 10/10.7G
受信オプティカル/エレクトリカルユニット(ワイド),MU150124B 10.3G 受信オプティカル/エレクトリカルユニッ
ト(ワイド)を開発した。電気インターフェースにおける PDJ(Pattern Dependent Jitter)が 9.9mUIpp と低
ジッタである送信部と,残留ジッタ 20mUIpp 以下の受信部を実現した。10Gbit/s XFP モジュールやそれに対
応する伝送装置,組込みデバイスの電気および光両インターフェースにおけるジッタおよび BER 特性を本装
置 1 台で測定可能となった。本稿では,新規開発したプラグインユニットと,これらを用いて得られた測定結果
例について報告する。
[Summary]
We have developed the MU150121B 10/10.7G Optical/Electrical Unit (TX), MU150123B 10/10.7G
Optical/Electrical Unit (RX WIDE), and MU150124B 10.3G Optical/Electrical Unit (RX WIDE) plugin units for the MP1590B Network Performance tester. The electrical transmitter has low intrinsic
jitter with PDJ (Pattern Dependent Jitter) of 9.9 mUIpp. The maximum receiver intrinsic jitter is
20 mUIpp. Using the MP1590B with these plug-in units enables jitter and BER measurement of
the electrical and optical interface of XFP modules, transmission equipment, and built-in devices.
1 まえがき
型化によるポート密度向上と低消費電力を実現している。しかし一
ブロードバンドネットワークの日本国内契約数は 2005 年 06 月
方では,従来は 622Mbit/s 程度であった電気伝送速度が 16 倍
末時点で 2,000 万契約を突破した。特に FTTH は 1 年間で倍増
になり,伝送路周波数特性や反射の影響を受けやすくなっている。
しており,純増数でみると DSL や CATV を上回っている。さらに
また,小型化実現のためジッタフィルタによる出力波形品質確保
北米へも拡大しつつあり,かつ固定電話網と移動通信網の統合
ができないなど,伝送品質確保が重要な課題となっている。
(FMC:Fixed Mobile Convergence)も視野に入れた IP 化ネット
高品質伝送を実現するための評価手段としてジッタ評価がある
ワークの構築が始まっている。
が,アンリツはジッタ評価手法の標準化に取り組み,測定器校正
アンリツは,これら NGN(Next Generation Network)構築に
規格である O.172 Appendix VIII を ITU-T に提案し,これに対
貢献すべく SDH/SONET および次世代基幹通信網である OTN
応した高精度ジッタ測定オプション(MP1590A-30)を 2004 年 05
(Optical Transport Network )の ネットワ ーク 評 価 用 測 定 器
月に商品化した。
さらに,今回 XFP の登場で重要度を増した電気差動信号の品
MP1590A ネットワークパフォーマンステスタ(以下 MP1590A)を
質評価用に,ジッタ測定機能を強化した MU150121B 10/10.7G
2003 年 11 月に商品化した。
NGN の課題は,高速・大容量で自由度の高いネットワークを低
送信オプティカル/エレクトリカルユニット,MU150123B 10/10.7G
コストで実現することである。そのため,装置ベンダおよび光トラン
受信オプティカル/エレクトリカルユニット(ワイド),MU150124B
シーバモジュールベンダはキーコンポーネントである光送受信モ
10.3G 受信オプティカル/エレクトリカルユニット(ワイド)を開発した。
ジュールで MSA(Multi Source Agreement)を締結し,共通仕
図1に MP1590B の外観を示す。
様に基づいた開発に取り組んでいる。光送受信モジュールで,現
MP1590B を用いることで従来は複数機器の組合せでの評価
在最も注目されている XFP(10 Gigabit Small Form Factor
を余儀なくされていた CDR(Clock Data Recovery)等のデバイ
Pluggable)は,従来の 300pin トランスポンダモジュール(以下
ス,XFP,伝送装置のジッタおよび BER 特性を 1 台で評価可能と
300pin と記す)と異なり 10Gbit/s 電気差動信号を用いることで小
なった。
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
23
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
に含まれるジッタを 1/40 程度に減衰させたのち内部クロックとして
使用するため,測定器から送信された試験信号やトランスポンダ
受信部に含まれるジッタは伝達されにくい構成になっている。その
ため,モジュールから出力される光信号に含まれるジッタは,純粋
にモジュール送信部が発生するジッタであるといえる。また,モ
ジュール送信部単体のジッタ特性評価用測定系の構築は,比較
的容易であったといえる。
図1
それに対し,XFP は物理的制約により上記のようなジッタフィル
MP1590B ネットワークパフォーマンステスタの外観
External view of MP1590B Network Performance Tester
タを持たず,ジッタ伝達帯域が 8MHz 以下と広帯域であるため,
測定器の試験信号に含まれるジッタや,モジュール受信部が発生
2 原理
するジッタが重畳し,モジュール送信部単体で発生するジッタの
従来の 300pin 測定系を 図 2 に示す。300pin は,受信した
評価が困難になっている。
10Gbit/s 光信号を,DEMUX 回路により 1/16 レートのパラレル電
このように XFP ではモジュール送信部が発生するジッタを精度
気差動信号に変換し,伝送装置内部で信号処理を行う。300pin
よく測定するためには,以下に対応したジッタ測定器が必須であ
単体評価時は,このパラレル信号を折り返し接続する。300pin 送
る。
信部はジッタフィルタを内蔵し,ジッタ伝達帯域(120kHz 以下:
(1) XFP ジッタ評価に即した電気差動入出力インタフェース
Telcordia GR-253-CORE 勧告による)を狭めることで受信信号
(2) 測定器残留ジッタの低減
300pin トランスポンダモジュール
測定器インタフェース
測定器
TX
10Gbit/s
Optical Data
RX
1:16
O/E
DEMUX
伝送装置側インタフェース
折り返し
300pin Transfer band
Jitter Filter
<120kHz
1/16 Clock
測定器
RX
10Gbit/s
Optical Data
TX
16:1
E/O
MUX
16bit Data
Pass band
Jitter measurement band
50 k–80 M
測定器インタフェース
XFP
測定器
TX
測定器
RX
RX
O/E
10Gbit/s
Optical Data
TX
E/O
10Gbit/s
Optical Data
RX
CDR
<8MHz
Tx
CDR
<8MHz
1/1 Data
XFP Transfer band
伝送装置側インタフェース
折り返し
図2
従来の光送受信モジュール測定系
Conventional test setup for optical transceiver module
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
24
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
これらの機能追加により本測定器 1 台で伝送装置全体
3 開発方針
評価から各部単体の切り分け評価まで,すべての測定に
2 章の課題解決のため,以下の方針で開発を行った。
対応が可能となる。
(1) XFP ジッタ評価に即した電気差動入出力インタフェース
(2) 測定器残留ジッタの低減
図 2 の折り返し測定と比べ,より正確な測定ソリュー
XFP の正確なジッタ評価には測定器残留ジッタ(測定
ションとなる 図 3 および 図 4 の評価系に対応することを
器自身が内部で発生するジッタ量)低減が不可欠である。
目的 として製 品開 発 を行 った。そのため,電 気 差動イン
特に SDH/SONET 信号で顕著となる PDJ(Pattern De-
タフェースを追加し,さらに入力電気振幅によるジッタ量
pendent Jitter)の低減を重点課題として取り組んだ。そ
の変 化 を評 価 するため,XFP 電 気 インタフェース規 格
の理由は SDH/SONET 特有のフレーム構成に依存して
XFI に対応(150~550[mVpp×2])した振幅可変機能
おり,フレーム先頭部分(A1byte, A2byte, J0/Z0byte)が
を具備することにした。
PRBS27-1 でスクランブルされず固定パターンが連続する
また,光信号を同時に送出する機能により XFP 集積化
ために,直流平均値変動が発生し,これが PDJ となるため
に伴う送受信間クロストークの影響評価という新たな課題
である。正確なジッタ評価のため,測定器送受信部が発生
発生を推定したソリューション提供を加えた。
する PDJ を 20mUIp-p 以下に低減することが必要である。
これらの対応で,図 5 および図 6 のように XFP を使用
そこで,今 回 追 加した電 気 差動 入出力 は低 残留 ジッタ
する伝送装置との接続も可能となり,XFP および装置間の
(20mUIpp 以下 typ.)を目指し,被測定物が発生する
障害点切り分けにも活用できる構成となっている。
PDJ も忠実に再生させることを目標においた。
EUT
測定器
TX
TD+
測定器
TX
XFP
TD-
TD+
RX
TD-
RX
10Gbit/s
Optical Data
RD+
測定器
RX
図3
測定器
RX
TX
10Gbit/s
Optical Data
10Gbit/s
Differential Data
10Gbit/s
Differential
Data
XFP モジュール送信部測定系
TX
RD-
図5
Block diagram for measuring XFP module
伝送装置の電気差動インタフェース測定系
Block diagram for measuring electrical differential
interface of equipment under test
EUT
測定器
TX
TD+
TD-
10Gbit/s
Differential
Data
TD+
測定器
RX
図4
測定器
TX
XFP
TD-
TX
XFP
10Gbit/s
Optical
Data
10Gbit/s
Optical Data
測定器
RX
RX
図6
XFP モジュールの受信部測定系
XFP を組み込んだ伝送装置の測定系
Block diagram for measuring electrical differential
Block diagram for measuring equipment under test
interface of XFP module
with XFP module
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
25
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
transmit intrinsic jitter)規定で検証評価を行い,電気出力信
4 設計の要点
4.1
号の PDJ=9.9mUIpp(図 9 参照)を実現した。
MU150121B
電 気 差 動 出 力 を具 備 し , さら に電 気 差 動 出 力 信 号 ジッタ を
20mUIp-p に抑えるため,独自の PDJ イコライザを採用した。図
7 にブロック図を示す。MP1590B 試験パターン発生ユニットであ
る MU150100A から受信したデータ信号は,クロック信号により波
形整形されるが,後段の差動アンプおよび E/O コンバータの周波
数特性によりジッタが増加する。それを防ぐため,周波数特性を補
SDH Frame OH, Unscrambled bytes
正し PDJ を抑圧する PDJ イコライザを挿入し,それぞれ最適化を
図ることで,電気出力時 900fsrms 以下,光出力時 1.1psrms の
低ジッタ出力回路を実現した。図 8 に電気出力参考波形を示す。
Data
Clock
PDJ イコ
ライザ 1
10Gbit/s
Differential
Data
TD+
振幅可変
TD-
差動アンプ
PDJ イコ
ライザ 2
E/O
コンバータ
図9
PDJ of electrical output signal of MU150121B
また,信号源 SSB 雑音が主要因である RJ(Random Jitter)も
位相雑音計を用いて 50k-80MHz帯域に含まれる SSB 雑音を測
定し,それを積分することで,6mUIpp という結果を得た。した
波形
整形器
がって,今回開発した MU150121B 電気出力信号に含まれる
トータルジッタは,
TJ = PDJ + RJ = 9.9 + 6 = 15.9 mUIpp
10Gbit/s
Optical Data
図7
MU150121B 電気出力信号の PDJ
であり,目標である 20mUIp-p を上回る良好な出力信号品質を確
MU150121B 内部ブロック
保することができた。
Block diagram of MU150121B
4.2 MU150123B/MU150124B
SDH/SONET/OTN 用 途 と し て 10G/10.7G に 対 応 し た
MU150123B と,10GbE(10.3125Gbit/s)に対応した MU150124B
を開発した。
図 10 にブロック図を示す。クロック再生回路は 2 系統あり,
MU150123B では 9953Mbit/s および 10.7Gbit/s を選択可能,
MU150124B は 10.3Gbit/s に対応し,一方はジッタ測定用の広
帯域(<80MHz),他方はトリガークロック用狭帯域(<4MHz)の2
系統出力を具備している。
電気差動信号測定時には,被測定信号を差動受信回路に入力
する。光信号または電気シングルエンド信号時は,電気差動受信回
路の正論理側に入力し,反転入力側は直流電圧を印加することで
図8
MU150121B 電気出力波形
閾値電圧を与え,可変とした。受信回路も送信部と同様に残留ジッ
Electrical waveform of MU150121B
タ低減を目指して,周波数特性改善と PDJ イコライザを採用した。
これらは,アンリツが提案したジッタ・ワンダ測定器の国際規格
これらの対策により TJ=15.9mUIpp と推定される電気信号を,
である ITU-T Recommendation O.172(Jitter and wander
MU150123B を用いて測定した結果は 19mUIpp であり,残留
measuring equipment for digital systems which are based
PDJ は十分に小さく抑えられているといえる。図 11 に復調波形を
on SDH ) Appendix VIII ( Method for characterization of
示す。
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
26
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
10Gbit/s
Optical
Data
No.1 の測定系では XFP 送信部だけでなく XFP 受信部のジッ
O/E
コンバータ
Filter
タを含むため,測定結果が大きくなる。しかし,No.1 の結果は,
No.2 と No.3 を加算した結果よりも低い値となっている。この理由と
して,測定器の残留ジッタ(約 20mUIpp)の影響以外に,以下の
2 つが考えられる。
Data +
差動
アンプ
Data −
PDJ
イコライザ
Clock
クロック
抽出1
(1) ジッタ抑圧現象
図 12 に示すように,Frame OH 部において受信部が
Clock
クロック
抽出 2
発生するジッタと,送信 部が発 生するジッタが逆 方向 に
発生しており,重畳することによりジッタが抑圧される。
Data
図 10 MU150123B 内部ブロック
Block diagram of MU150123B
受信部
受信 + 送信
送信部
図 12 ジッタ抑圧
Jitter Suppression
(2) 帯域制限効果
XFP 送信部内の CDR は,通常 8MHz 程度の帯域に
設定されており,帯域外のジッタを減衰させる LPF(Low
Pass Filter)として振る舞う。そのため,XFP 受信部で
発生したジッタは XFP 送信部の CDR により一旦減衰し,
SDH Frame OH, Unscrambled bytes
そこに送信出力部のジッタが重畳した結果が No.1 の値
であると考えられる。CDR による帯域制限効果を確認す
るため,実験的に 8MHz LPF をジッタ測定部に挿入し,
測定した結果を 表 2 に,その際のジッタ復調波形 図 13
図 11 測定器折り返し接続時復調波形
に示す。復調波形からわかるように,Frame OH 部分で
Demodulated waveform at loop back
発生するジッタの周波数は 3MHz 相当で,矩形波的で
5 XFP の測定
ある。8MHz の LPF によってその高調波成分と,ランダ
5.1 評価系による測定結果の違い
ムジッタが減衰している。
開発したプラグインユニット,MP1590B と XFP を用いて図 2~
表2
6 測定系によるジッタ測定を実施した。表 1 に測定結果を示す。
表1
Difference of jitter test results depending on band width
各評価系での測定結果
Test result for each evaluation block diagram
No
評価系
DUT/EUT
Jitter [mUIpp]
帯域によるジッタ測定結果の違い
No
評価系
DUT
Filter
Jitter[mUIpp]
3-1
光入力-電気出力
XFP RX
50k-80M
141
3-2
光入力-電気出力
XFP RX
50k-8M
111
1
光入力-光出力
図2
XFP
120
このように,XFP モジュールを送受信一体測定すること
2
電気入力-光出力
図3
XFP TX
70
は多くの不確定要素を含んでおり,定量的な評価は望め
3
光入力-電気出力
図4
XFP RX
141
4
電気入力-電気出力
図5
EUT
55
5
光入力-光出力
図6
EUT+XFP
93
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
ないことがわかる。より確度の高い測定には,No.2 や No.3
のように,各部位それぞれを切り分けて測定することが必
要である。
27
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
80MHz Bandwidth
3MHz
8MHz Bandwidth
図 13 復調波形
図 15 Skew 対ジッタ測定結果
Demodulation waveform
Measurement of skew vs. jitter
5.2 差動信号間の遅延差(Skew)
まず,図 16 上段のように,Skew=0ps のとき,Data 信号の
差動信号においては,正転信号と反転信号間の遅延差
Duty が 50%であれば,Data+と Data-信号の識別点(クロスポ
(Skew)の解析も重要になっている。差動信号はノイズ耐性に優
イント)は,波形振幅の中心(50%)となる。Tr/Tf と Skew 変化によ
れる利点がある反面,2 本の信号間 Skew がジッタの増加やエ
るクロスポイントの関係は,次式で表される。
ラーレート悪化を招くと考えられている。
Data +
実際に差動間 Skew を変化させたときに,どの程度ジッタ量の
50% Crossing
変化があるかを実験した。図 14 に評価系を示す。
Data −
Skew = 0ps
信号源A
Tr/Tf = 50ps
(Tr/Tf = 20ps)
Data +
Data+ Data-
62% Crossing
Delay1
Delay2
Data +
Data-
測定器
Data −
差動
Skew = 20ps
受信部
Tr/Tf = 20ps
Data +
Data+ Data-
80% Crossing
信号源B
(Tr/Tf = 50ps)
Data −
Skew = 20ps
図 14 Skew 対ジッタ測定系
Block diagram for measuring skew vs. jitter
図 16 Skew とクロスポイントの関係
Relationship of skew and cross-point
9953.28Mbit/s のデータ信号源に Tr/Tf(信号の立上がりおよ
波形振幅の中心値から y [%]間(対振幅率)における,Tr/Tf の
び立下り時間)が 20ps(振幅の 20%-80%時)と比較的短い信号
平均値を x [ps]としたとき,単位時間あたりの電圧変化率は,
源 A と,Tr/Tf=50ps と比較的長い信号源 B の 2 種類を用意し,
差動間の遅延差を Delay 素子 1 と 2 を用いて変化させることで,
a=
ジッタ量変化を測定した。図 15 に測定結果を示す。
ジッタ量は Skew 0ps 時の数値で正規化し,変化量[dB]で示し
y
x
[%/ps]
・・・(式 1)
で表される。
た。信号源 A(Tr/Tf=20ps)では,+20ps の Skew を加えたジッタ
ここで,Tr/Tf =20ps の信号を考えると,
量は+5dB となり,信号源 B(Tr/Tf=50ps)では−0.2dB となった。
y=60[%], x=20ps であるので式 1 より,
つまり,信号源 B では Skew 依存性はほぼ無いといえる。このよう
a 20 =
に Tr/Tf の違いにより Skew の影響度に違いがある理由は,以下
[%/ps]
である。
のように考えられる。
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
60
=3
20
28
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
同様に,Tr/Tf =50ps の信号の場合,
6 むすび
y=60[%], x=50ps より,
a50 =
60
= 1.2
50
従来の光インタフェースでのジッタ・BER 測定に加え,電気差
[%/ps]
動インタフェース測定も 1 台で可能な測定器を開発した。また,
であると求まる。但し,上記式は電圧変化率が一定であると仮定し
XFP を用いた伝送装置のジッタ発生箇所の切り分け手段,Skew
ている。実際には信号の High 側,Low に近い部分では非線形
によるジッタへの影響などを実験し,その有用性を示した。この測
特性を示すことがあり上記式とは差異が生じる場合がある。
定器が,CDR 等の個別デバイス,XFP 等の光送受信モジュール
このような信号に Skew が発生したときのクロスポイントの変動は,
から伝送装置まで,幅広い分野でジッタ・BER 測定に使用され,
1
Y = a⋅s
2
[%]
・・・ (式 2)
ネットワークの信頼性向上に貢献することを期待する。
で表される。ここで s は Skew[ps]である。
参考文献
次に,信号源 A(Tr/Tf=20ps)で 20ps の Skew が生じた状態を
1) 山口,西小原: “差動伝送方式によるジッタへの影響”,電子情報
考える。式 2 より,
通信学会,B-10-41(2005.03)
1
Y20 = a 20 ⋅ s = 30
2
2) 西小原,石部: “OC-192/STM-64 において発生するパターン依
[%]
存 性 ジ ッ タ に 関 す る 一 考 察 ” , 電 子 情 報 通 信 学 会 , B-10-114
(2003.3)
となるため,クロスポイントは 80%となる。通常データ波形は High
3) ITU-T Recommendation O.172, Jitter and wander meas-
側か Low 側に近づくほど歪が大きく,クロスポイントがどちらかに
uring equipment for digital systems which are based on
近づくほど,さらにジッタを生じやすいと言える。
SDH
4) Telcordia GR-253-CORE, Synchronous Optical Network
一方,信号源 B(Tr/Tf=50ps)では,同様に 20ps の Skew が
(SONET) Transport Systems: Common Generic Criteria
生じても変化量は Y50=12[%],クロスポイントは 62[%]となり,信号
源 A の 30[%],80[%]と比較して小さく,波形歪によるジッタを生じ
執筆者
にくいと言える。つまり,Tr/Tf が長いほど,Skew がジッタに与える
小川幸治
計測事業統轄本部
IP ネットワーク事業部
第 1 開発部
影響は小さくなると考えられる。
実際に XFP が出力する差動信号の Tr/Tf は 40ps 程度と比較
的長く,この結果から,XFP 差動出力信号は Skew がジッタ測定
に及ぼす影響が小さいといえる。図 17 に,XFP の電気差動出力
西小原匡則
計測事業統轄本部
IP ネットワーク事業部
第 1 開発部
波形を示す。
山口和彦
計測事業統轄本部
IP ネットワーク事業部
第 1 開発部
齋藤岳人
計測事業統轄本部
IP ネットワーク事業部
第 1 開発部
図 17 XFP 電気差動出力波形
Waveform of XFP differential output
アンリツテクニカル No. 82 Mar. 2006
29
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応したジッタ測定器の開発
論 文
10Gbit/s 電気差動・光信号に対応した
ジッタ測定器の開発
「アンリツテクニカル」82号(2006.3)
より抜粋
アンリツ株式会社
アンリツ株式会社 2006 本論文からの無断転載・複製はご遠慮ください。本論文に記載した名称の中には、
それぞれの会社が商標として使用している場合があります。
Was this manual useful for you? yes no
Thank you for your participation!

* Your assessment is very important for improving the work of artificial intelligence, which forms the content of this project

Download PDF

advertising